マアジ

Scientific Name / Trachurus japonicus (Temminck and Schlegel, 1844)

マアジの形態写真

SL 40cm前後になる。細長いが比較的厚みがない(左右に平たい)。小離鰭がない。稜鱗(「ぜんご」とも硬くトゲトゲしい鱗)は頭部後方から始まり、尾鰭まで続く測線すべてに渡ってある。[33.5cm SL・0.49kg]
マアジの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
SL 40cm前後になる。細長いが比較的厚みがない(左右に平たい)。小離鰭がない。稜鱗(「ぜんご」とも硬くトゲトゲしい鱗)は頭部後方から始まり、尾鰭まで続く測線すべてに渡ってある。[33.5cm SL・0.49kg]SL 40cm前後になる。細長いが比較的厚みがない(左右に平たい)。小離鰭がない。稜鱗(「ぜんご」とも硬くトゲトゲしい鱗)は頭部後方から始まり、尾鰭まで続く測線すべてに渡ってある。[黄型 24.5cm SL・0.239kg]SL 40cm前後になる。細長いが比較的厚みがない(左右に平たい)。小離鰭がない。稜鱗(「ぜんご」とも硬くトゲトゲしい鱗)は頭部後方から始まり、尾鰭まで続く測線すべてに渡ってある。[黄型]SL 40cm前後になる。細長いが比較的厚みがない(左右に平たい)。小離鰭がない。稜鱗(「ぜんご」とも硬くトゲトゲしい鱗)は頭部後方から始まり、尾鰭まで続く測線すべてに渡ってある。[黒型 26cm SL]小離鰭がない。稜鱗(「ぜんご」とも硬くトゲトゲしい鱗)は頭部後方から始まり、尾鰭まで続く測線すべてに渡ってある。
    • 珍魚度・珍しさ


      いつでも手に入る
    • 魚貝の物知り度


      知らなきゃ恥
    • 食べ物としての重要度

      ★★★★★
      非常に重要
    • 味の評価度

      ★★★★★
      究極の美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目アジ科マアジ属

    外国名

    学名

    Trachurus japonicus (Temminck and Schlegel, 1844)

    漢字・学名由来

    漢字/真鰺、鰺 Maaji, Aji
    由来・語源/「あじ」は一次的魚名でそれ自体は意味を持たない、魚に対しての名前だ。駅史的にも古い一般的な呼び名でもあった。
    マアジは江戸・明治・大正期の魚河岸で使われていた言語だと思う。本種だけのときは単に「あじ(あぢ)」と呼ばれ、マルアジやムロアジと区別するときには「真」や「本」をつけていた。アジ類の代表的なもので、もっともたくさん見かけるものという意味合いを持つ。
    〈TRACHURUS,C.& V. trachurus まあぢ 北海道 同 佐渡 同 新潟 同 東京市場〉『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
    延喜式 「阿遅」
    和漢三才図会 「鰺」は「あじ」、音は「そう」。『和名抄』に「あぢ」。『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
    魚鑑 〈崔氏食経(中国隋以前)に鯵(シン)の字を訓す〉。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
    「味がいい」から「あじ」。築地など流通の場所で、1980年代に一度だけ聞いている。今ではこれが流布しているので、使われ始めた歴史がたどれなくなっている。(聞取)
    旧暦の3月 「鰺」の文字は「参」が旧暦の3月、太陽暦の5月にあたり。この頃がマアジの旬ということからくる。静岡県沼津市の干物の加工業者の話。
    新釈魚名考 「海岸近くでも容易に、しかも大量にとれたために『あじ』の魚名は古くからあり〈あ〉は愛称語、〈じ〉〈ぢ〉は魚名語尾であり〈あじ〉〈アヂ〉とは美味な魚の意味だろう」。『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)
    棘のある魚 島根県で棘のあるイトヨを「川あじ(カワアジ、カワアヂ)」という。アヂは。「かじける(痩せ細る)」のカヂ、楮(カヂ コウゾ)の「紙の繊維=線状・筋」という語の変化で細り、とがりの派生で「とがり」、「とげ」を表す。アヂ(アジ)は棘のある魚。
    Temminck
    コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
    Schlegel
    ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。大陸棚を含む沖合〜沿岸の中・下層。
    北海道全沿岸〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、種子島、東シナ海大陸棚域、沖縄島。
    少ない/小笠原諸島
    黄海、渤海、朝鮮半島全沿岸、台湾、中国東シナ海・南シナ海沿岸、海南島。
    少ない/ピーター大帝湾

    生態

    産卵期は1月から11月。西日本の産卵最盛期は1月〜5月、東日本の産卵最盛期は5月〜7月。
    甲殻類(エビやプランクトン)、イワシなどの稚魚、多毛類(環形動物)などを食べている。
    「クロアジ(黒鰺)」もしくは「ノドグロアジ(喉黒鰺)と呼ばれるものと、「キアジ(黄鰺)」の2型がある。
    キアジ/身体の背部が黄色みを帯びて、よく肥満して脂肪分が多い。比較的沿岸の浅海域に生息。消化管の表面に花頭条虫科に属する擬嚢尾虫が多数寄生する。
    クロアジ/沖合を回遊。身体が細長く、脂肪含量が少ない。寄生虫がいない。

    基本情報

    単に「アジ」はマアジだ。魚類学的にアジ科で「アジ」がつくものは「アジ」という人がいるが、一般的な話ではない。流通上も「アジ」とはマアジである。
    北海道〜九州までの沿岸域、非常に浅いところから水深100mまでで群れを作る。
    アジ科には多数の食用魚があるが、もっとも漁獲量が多いなどその代表的なもの。アジの語源は「味」にあり、「味がいい」からだともいうが、こじつけにしても当たっている。漁獲量も安定している。
    アジ科ではもっとも漁獲量が多いので水産業的にも重要だ。煮干し、干もの、総菜などになる。
    鮮魚としては「青魚」、「背の青い魚」、すしダネでは「光りもの」にあたる。古くから庶民に愛されてきたもので、今でも比較的価格が安定して総菜魚として人気が高い。稚魚から老成魚まですべての段階で利用されているのも本種の特徴だろう。
    珍魚度 いつでもどこでも手に入る。日常的な魚といってもいい。

    水産基本情報

    市場での評価 年間を通じて入荷の多いもの。重要魚。網でとったものは大衆魚だが、釣りものは高級魚。大量に漁獲され、重要な水産物。漁獲許容量(TAC)が定められる。
    漁法 巻き網、定置網、釣り
    代表的な産地 長崎県、島根県、愛媛県、大分県、千葉県、鹿児島県
    ブランドアジ
    愛媛県西宇和郡伊方町「岬あじ(はなあじ)」。
    愛媛県三瓶町「奥地あじ」。
    大分県佐賀関の「関あじ」。
    宮崎県延岡市の「灘あじ(北浦)」、などなど。
    以上はとれる場所、取り扱いなどでブランド化。
    長崎県三重町「ごんあじ」。
    長崎県松浦市「旬あじ(ときあじ)」。
    山口県萩市「瀬付きあじ」。
    以上はとれた場所、時期でブランド化。
    島根県浜田市の「どんちっちあじ」はとれた場所、時期と、脂質の測定をして高いものだけをブランド化。

    沼島のマアジの一本釣り沼島の一本釣り 兵庫県南あわじ市沼島ではマアジを島周りで一本釣りする。コマセを使い、空バリ仕掛け。釣り上げて一度も手に触れないで生かして持ち帰る。秋のものもうまいが、5月の小振りのものは天下一品である。

    選び方

    鱗が柔らかく全体に丸みのあるものが脂がある。黄色いものと黒いものがあれば、黄色いものを選ぶ。腹を触って硬いもの。体表の輝いているもの。鰓が鮮紅色のものがいい。マアジは大きすぎるものよりも、中型がうまい。小さくても美味。目の色で鮮度は見ない。流通方法によっては鮮度に関わらず、目が濁り、白くなる。

    味わい

    旬は一般的には春から秋だが、秋から冬のものでも産地によっては脂が乗っている。旬がわからなくなってきている。
    尾のつけ根から稜鱗(ぜんご)という硬い鱗があるが、全体に鱗は薄く、取りやすい。皮は薄くもろい。骨はあまり硬くない。
    透明感のある白身で血合いはやや目立つ。熱を通しても硬く締まることがない。大小にかかわらず食用となっている。

    栄養

    栄養 タンパク質、脂質が豊富。特にDHA、EPAが豊富で成人病を予防し、脳の発達を促す。
    カルシウム、タウリンも豊富で肝臓の解毒作用を促進、強心、コレステロールの減少と活躍する。

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    アジ(マアジ)の料理・レシピ・食べ方/焼く(塩焼き、さんが焼き、干物)、生食(なめろう、みそたたき、刺身、酢じめ、水なます、セビチェ)、揚げる(フライ、唐揚げ、南蛮漬け、エスカベッシュ)、煮る(煮つけ、塩いり)、汁(みそ汁)、炊き込みご飯(あじめし)
    鰺の塩焼き
    アジの塩焼き 塩焼きは食堂の品書きとしても定番的なものだった。振り塩をして水洗いして1時間程度置く。これをじっくりと焼き上げる。焼き上がったときの香りのよさが素晴らしいと思う。身は適度に繊維質で身離れがよく、血合いの酸味。うま味が豊かで塩焼き用の魚としては頂点に近い。

    小アジの刺身 体長12cm・25g前後の小アジを片身一切れの刺身にする。マアジのすごいところは20g前後の刺身がとてもうまいことである。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取り、皮を剥いて出来上がりである。ほどよく脂がのり、身に濃厚なうまさがある。[神奈川県二宮沖 7月27日]
    大アジの刺身 体長36cm・660gの大アジの刺身。マアジは大小にかかわらず刺身にしてうまいが、脂の乗り方が違う。大味は身に網目状に脂が刺し、青魚というよりも白身を思わせる。三枚に下ろし、背と腹に分けて刺身にする。[三重県鵜殿産 6月18日]
    マアジのたたきアジのたたき これは昭和40年代(1965-1975)に神奈川県で行われていた料理法を、東京の料理店が店で出すようになって流行したとされている。これによってマアジの値段が高騰したとも。マアジは三枚に下ろして血合い骨などを取り、細かく切る。これに大葉、みょうがなど香りのある野菜を加える。
    マアジといちじくのタルタル風アジといちじくのタルタル風 三枚に下ろして皮を引く。これを小さく切り、パプリカ、イチジクと和え、塩で味つけ。オリーブオイルを加えてまた混ぜ合わせて、カイエンヌペッパーを加える。イチジクの甘味がマアジと相性がいい。今回は赤ワイン(丹波ワイン 鳥居野・赤)を合わせたがイチジクとの相性からかとてもいい。
    マアジのカルパッチョアジのカルパッチョ 薄切りの刺身をにんにくを刷り込み、オリーブオイルを塗った皿に並べてハーブ類やトマトなどをのせて表面からたたいたもの。甘口の白ワインに合う。

    アジフライ これぞ洋食メニューの代表的なもの。コロッケ、トンカツに並ぶ洋食というなの日本料理である。
    水洗いして小振りのものは開いて、大振りのものは三枚に下ろして使う。腹骨、血合い骨を抜き、塩コショウしてパン粉をつけて揚げる。
    さくっと香ばしい中に青魚らしい濃厚なうま味がある。いくらでも食べられると言った味わいである。また大アジもいいが、小アジのフライは無類の味である。

    マアジの煮つけアジの煮つけ マアジのようにうま味のある魚こそは煮つけに向いている。水洗いして小振りのものは丸のまま、大型のものは切り身にして調理する。水洗いしたら湯通しし、冷水に落として鱗やぬめりなどを流す。水分をよくきり、酒、砂糖、水の地で煮る。味つけは酒と塩、酒とみりんとしょうゆなどお好みで。煮汁にいいだしが出るので絡めながら食べるといい。
    マアジの煮干し 小型のマアジをザルなどにいれて流水で洗い、血液やとれた鱗を流す。水分をよくきり、4%か5%の塩水で10分前後ゆでる。ゆでたらザルなどにとり水をかけて粗熱をとり、そのままウチワなどであおぎながら放置。暖かい時期は冷蔵庫で寒くなってきたら屋外に干す。塩ゆでしたばかりを食べてもいいし、だしに使ってもいい。写真にはモロ、メアジが混ざっているが、マアジがいちばんうま味がある。

    マアジのみそ汁アジのみそ汁 アジ科の魚は汁にして味がある。沖縄では「がーら汁」にあたるが、アジ科の魚のみそ汁である。小振りのものは水洗いしてぶつ切りに、大型はあらを使うといい。煮干しも作られているように強いうま味が感じられて美味。単に汁ものというよりも、ご飯の主菜になる。
    マアジのムニエルマアジのムニエル 内湾の脂ののったものよりも外洋の黒アジなどに向く。三枚に下ろして皮付きのまま塩コショウ、小麦粉をまぶしてソテー、仕上げにバターでデグラッセする。
    マアジのあじめしあじめし 素焼きにしたマアジの身と皮をほぐし取り、これを砂糖、しょうゆで味つけして米を炊きあげたもの。生のものをしょうゆに漬け込んで、ご飯に炊き込んでもうまい。

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    好んで食べる地域・名物料理

    紀ずし(紀寿司) 長崎県五島列島に伝わるもの。もともと和歌山県などのなれずしを習ったものとされている。約400年の歴史があるとも。
    ひゅうが飯 宇和海周辺で作られている。活けアジを薄く刺身に切り、炒った白ごま、ネギを小鉢に入れて、砂糖と醤油で味つけしたところにアジを漬け込んだもの。約20分くらい寝かせて卵を加えて、5〜6分おき、熱いご飯にかけて食べる。『聞書き 愛媛の食事』(農文協)
    マアジのなめろう
    アジのみそたたき(たたき、なめろう) 水洗いした魚を細かくたたき食べるのを「たたき」とか「たたきなます」という。これにみそと香りのある野菜を加えてたたくたものを「みそたたき」、「たたき」、「なめろう」と呼ぶ。千葉県では「なめろう」に酢をかけて食べる。徳島県では「なめろう」はそのまま食べる。千葉県では「なめろう」を多めに作り、余ったものを焼き、「さんがやき」という。

    マアジのさんが焼きさんが焼き 千葉市の「寒川」でマアジがたくさん揚がって、この地でよく作られたのでこの名があるという。「なめろう」を椿の葉、青じその葉などに挟んで焼いたもの。古くはそのままたき火に放り込んで焼いたともされる。[千葉県]

    アジのたたきなます 小振りのものは鰭と頭部と内蔵を取っただけで端から骨つきのまま切る。大型は三枚に下ろして腹骨をすいて切る。これをできるだけ細かくたたく。みそと一緒にはたたかず、ねぎやみょうがなどとたたいたという。[神奈川県小田原市、真鶴町など相模湾周辺]

    たたき 三重県尾鷲市では水洗いして三枚に下ろす。皮を引き、腹骨・血合い骨はそのまま細かく切り、たたく。骨があたらないくらいに徹底的にたたく。一緒にたたく野菜は大葉(青じそ)、しょうが、ねぎ、みょうがなど。みそを加えて叩くこともある。酢醤油で食べる。[三重県尾鷲市]
    マアジの塩いり鰺の塩いり 小アジを水洗いして、少量の強い塩水で煮上げたもの。水分が少なくなるくらい煮上げるのがコツ。保存食として作られたものかも。これを大根下ろしと酢で食べる。[石川県金沢、能登]
    マアジとりゅうきゅうの酢の物あじとりゅうきゅうの酢のもの 高知県中土佐町で教わった料理。りゅうきゅう(ハスイモ)は皮をむき、5mm幅くらいに切り、塩もみ。一度水洗いして余計な塩分を落としておく。マアジは三枚に下ろして塩をして水洗い。これを合わせて甘酢に漬け込む。[高知県中土佐町]
    マアジの魚みそ魚味噌 大分県で作られているもの。素焼きにしたマアジをほぐしフライパンなどに油を引き炒める。ここにみそを加えてショウガ、砂糖などで味つけしたもの。おかずやきゅうりなどにつけて食べる。『酒と肴の文化地理 大分の地域食をめぐる旅』(中村周作 原書房)
    マアジの水なます水なます マアジを三枚に下ろして血合い骨を抜き、細かくたたいて、冷たく冷やしたみそを溶かし込んだ汁に入れる。薬味はねぎ、みょうが、きゅうりなど。[千葉県外房]
    マアジのまご茶まご茶 マアジを三枚に下ろして血合い骨を抜き細かくたたいてしょうゆ、みりんなどの地につけ込む。このときねぎ、しょうがなどを加えてもいい。これをご飯にのせて、お茶を注いだもの。静岡県で作られている。
    アジの背切り(マアジの背ごし) 小振りなものの方がいい。水洗いして頭部、鰭などを切り取る。これを端からできるだけ薄く切り放していく。これをわさび醤油か酢みそ、みそをつけて食べる。中骨がこりこりとして心地よく、皮がついているのでうま味豊かなマアジがより以上に味わい深くなる。非常においしい。[長崎県平戸市度島ほか]

    マアジの茶漬け福岡県の茶づけ 、大分県の「あつ飯」、「りゅうきゅう」と同じもの。生の魚の切り身をすりごまとしょうゆ、みりんなどのタレに漬け込んでご飯にのせたもの。「あつ飯」と同じ。福岡県宗像市ではこの地につけ込んだものを「茶づけ」としてスーパーで売られている。[福岡県、大分県全域]『酒と肴の文化地理 大分の地域食をめぐる旅』(中村周作 原書房)、『大分の伝統料理』(大分合同新聞社 1988)
    マアジの冷や汁(さつま)冷や汁(さつま) 大分県では「冷や汁」、愛媛県では「さつま」、「冷や汁」という素焼きにしたマアジの身をすり鉢ですり、軽く焼いたみそを加えてまたする。ここに骨などを焼いてとっただしを加えて、きゅうりやねぎ、みょうがの刻んだものを加えたもの。ご飯にかけて食べる。[大分県、愛媛県]
    焼きとっぱくあじとっぱくあじの塩焼き 兵庫県南あわじ市沼島では大振りのマアジを「とっぱく」という。内臓を抜き、鱗を取らないで焼き上げる。しょうがじょうゆで食べる。[兵庫県南あわじ市沼島]

    関連コラム(郷土料理)

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    静岡県伊東市の素晴らしいところは、優秀な魚屋が多いことだろう。例えば干ものなどは、駅前などのお土産屋的な大きな店では買うべからず。魚屋で買うほうがうまい。その・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真正月明けの淡路産アジ
    兵庫県淡路島のアジ(マアジ)というと島の南端にある離島、沼島の釣りものが有名だ。今回のものも沼島への連絡船の港、土生の業者の出荷なので、やはり沼島なのだろう。・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真アジのなめろう
    茨城県古河市を車で回っていたら、見事な造りの小澤糀店の前に出た。みそ屋をみつけたら買ってみる、それがボクの町巡りだ。古河市周辺で一般的だという米糀みそを買った・・・ 続きを開く

    加工品・名産品

    開き干し 日本各地で作られているが、生産量は静岡県が多い。東日本は腹開きにし、西日本は背開きにすることが多い。また西日本では頭部は開かず、胴体だけを開いたものもある。
    丸干し 小さなものは丸干しにもなる。今のところ西日本でよく見かけている。頭を落として干したものもある。
    アジのひねずし 石川県穴水町で作られるマアジのなれずし。

    マアジの開き干しアジの開き干し マアジではもっとも定番的な加工品。静岡県沼津市が生産量日本一。主に山陰から九州のマアジを使う。沼津市の開き干しは基本的に腹開きだ。[カネマル笹市 静岡県沼津市]
    じんだの開き干し マアジの開き干しは大小様々なサイズで作られている。神奈川県小田原や静岡県沼津などでは全長10cm〜14cmの幼魚の開き干しが作られている。小田原では「じんだの開き干し」というが骨が柔らかく、大型と変わらないうま味が楽しめる。名品揃いである。[牧屋 神奈川県小田原市]
    頭を開き残した、開き干し 京都府日本海側〜島根県、山口県、徳島県、高知県などで作られている。高知県など西日本の開き干しは背開きが多い。頭部が丸のままだと鮮度落ちがしやすく、干す時間もかかると思う。頭を開かない理由は不明。
    マアジのみりん干し小鰺のみりん干し 富山県で作られているもので「桜干し」とも呼ばれている。小振りのマアジを開きにしてしょうゆ、砂糖などに漬け込んで干したもの。
    マアジのみりん干しみりん干し 小振りのアジの頭部を落としてしょうゆ、砂糖、みりんなどで味つけ。干し上げたもの。乾燥の度合いが高く身がしまっていて甘味がほどよくて味がいい。[さかなや水嶋鮮魚店 京都府舞鶴市]
    あじ醤油干しあじ醤油干し 面白いのは若狭湾東部では「しょうゆ味」の干もの作りが盛んである。例えばハタハタも「醤油干し」にする。しょうゆ色に染まった干ものが塩味とは違った味わいで面白いのだ。[小浜海産物 福井県小浜市]
    マアジの煮干し煮干し 小アジをゆでて干したもの。だし用であるがカタクチイワシよりも軽く上品味に仕上がる。富山県、島根県、岩手県、徳島県などで作られている。[山根商店 島根県大田市仁摩町、越田鮮魚店 岩手県上閉伊郡大槌町]
    あじこあじこ 徳島県では小型のものをゆで干し(煮干し)にする。比較的乾燥の度合いの低いものを「あじご」という。そのまますだちなどを搾り込んで食べて美味。[板東商店 徳島県徳島市沖洲徳島中央卸売市場]
    あじ焼き干しあじ焼き干し 小アジを丸のまま炭火で焼き上げて干したもの。少量で非常に濃くて独特の風味のあるだしがとれる。うどんやそばよりも中華そば(ラーメン)などに非常に向いている。中華そばのスープは単純にしょうゆ、塩、みりんでうどんなどの和のだしを取り、ここにこしょう、ごま油などを加えるだけで作れる。[青森県東津軽郡外ヶ浜町平舘]
    マアジの丸干し丸干し 丸のまま立て塩にして干し上げたもの。切っていないのでマアジ自体のうま味が減らないとして、島根県など主に西日本で作られている。[カネヤ商店 島根県松江市鹿島町、西野商店 三重県尾鷲市天満町など]
    こあじささづけこあじささづけ 小アジの酢漬け。笹の葉が入っているのがポイントかも。[木五商店 福井県小浜市]

    釣り情報

    東京湾、相模湾などではイワシミンチのコマセ、天秤仕掛けの2本バリで釣る。年間を通して行われる船釣り。
    特に神奈川県横須賀市走水の大アジ釣りは有名。
    船でのサビキ釣りも盛ん。
    また防波堤での夜釣りは夏の風物詩。
    防波堤からのサビキ釣りも人気が高い。

    歴史・ことわざ・雑学など

    季語歳時記 夏の季語。小鰺は夏の季語。『季語集』(坪内稔典 岩波新書)
    鰺のたたき 漁師料理の沖膾(おきなます)が起源。沖膾は漁師が船上で食べる刺身の一種。全国的に広まったのは1965年頃。新宿にある高級料亭の板前が小田原の海に遊び、漁師料理の「たたき」に感動し、板前風にアレンジしたもの。これをきっかけにマアジの値段が高騰したという説もある。
    アジのたたきとマアジの高騰
    煮つけ魚 〈比目魚、鰈、鮎並、鰺、鱈、鯡、鮫、生節等は皆煮つけで、焼くのは蒸し鰈、魴鮄、鰯、飛び魚くらいであたが、煮肴は私は嫌いであった〉『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)
    アジの天ぷら 「昼になると、私は、国鉄本庁直営の食堂から、お菜を買ってくる。直営だけあって至極安い。たとえば、アジの天ぷら九円、アサリのかきあげ十円、ロールキャベツ十四円、シュウマイ十五円、カキフライ十七円、いちばん高いものでハンバーグステーキの二十八円なのだ」『いわしの頭』(中村武志 新潮社 1955)
    とつか 淡路島、徳島県などでも「とっかあじ」がある。〈紀州にて「とつか」は、土佐にて「とつばこ」と云 小しきなる物を西国にて「こびらこ」 相州にて「じんだんご」 加賀にて「さくざね」と云〉『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
    紋日・祝祭日などの食物「魚ずし」 〈秋の産土祭の時に少しつくられた貴重食であったが、1955年(昭和30年)頃から物が多く出まわり、ほとんどの家庭でつくられるようになった。材料は「さば」または「あじ」(二枚にひらいて塩漬けにしたもの)であるが、一部に「ぼうぜ(イボダイ)」「このしろ」などを使う〉[徳島県美馬郡一宇村(現つるぎ町一宇)]。

    参考文献・協力

    協力/福畑敏光さん(長崎県平戸市)、二宮定置(神奈川l県二宮沖)
    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『相模湾・海の不思議 食と自然と漁業の話』(木幡孜 夢工房)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『水産統計』(農林水産省)、『歳時記語源辞典』(橋本文三郎 文芸社)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『萩沖の魚たち』(中澤さかな、堀成夫 萩ものがたり)
    干物提供/カネマル笹市(静岡県沼津市)

    地方名・市場名

    アキアジ
    場所三重県志摩市志摩町和具 備考秋にとれるマアジ。小型という意味かも。 参考日比野友亮さん/和具の方言 
    アジ
    場所全国 備考一般的にアジという。 
    トツカアジ
    場所兵庫県尼崎市 備考秋に淡路島で揚がるもの。 参考宮部浩二さん 
    オニアジ[鬼鯵]
    場所兵庫県尼崎市・明石・兵庫県南あわじ市沼島 サイズ / 時期大型 備考大型のマアジだが、沼島では1㎏を超えるもの。 参考宮部浩二さん 
    アカアジ
    場所徳島県由岐町 参考阿波学会研究紀要・由岐町の魚類と淡水エビ類 
    マメアジ[豆鰺]
    場所東京都、神奈川県など日本各地、鹿児島県種子島 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    ジンダ
    場所神奈川県小田原市 サイズ / 時期幼魚 
    マアジ
    場所神奈川県江ノ島、新潟県寺泊、島根県浜田、福岡県 備考標準和名 参考聞取、文献 
    アブ
    場所静岡県土肥 参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 
    アジ
    場所市場など流通の場、三重県和具、高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協、鹿児島県種子島 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    ヒラアジ[平鰺]
    場所兵庫県南あわじ市沼島、徳島県鳴門市・由岐町 備考マルアジを「丸あじ」というのに対して。またマルアジをアオアジ(青鰺)というのに対して。 参考フードセンターあおき、阿波学会研究紀要・由岐町の魚類と淡水エビ類、聞取 
    トッカアジ
    場所兵庫県南あわじ市沼島 サイズ / 時期大型。 備考『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)にも〈紀州にて「とつか」〉がある。 
    トッパク
    場所徳島県 サイズ / 時期中型。 備考『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)にも〈土佐にて「とつぱ」〉がある。 
    ホンアジ[本鯵]
    場所市場など流通の場 
    アジゴ
    場所徳島県 サイズ / 時期小さいもの 備考成長にともなう呼び名の変化。 
    ジンタアジ ジンタ
    場所千葉県館山市、関東の市場 サイズ / 時期10cm弱 備考成長にともなう呼び名の変化。 
    スーパーマメアジ
    場所東京都、神奈川県の市場 サイズ / 時期稚魚に近い非常に小型のもの 
    スーパーゼンゴ
    場所愛媛県宇和島市 サイズ / 時期稚魚に近い非常に小型のものを 
    ゼンゴ
    場所愛媛県宇和島市、高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協 
    ゼンゴ
    場所大分県中津市 サイズ / 時期20cm弱 
    コアジ[小鰺] ジンダゴ アジコ ジンダコ
    場所関東の市場 サイズ / 時期小さなもの 
    ゼンゴ サイズ / 時期15cm~20cm 
    コアジ[小アジ] サイズ / 時期20cm~25cm 
    場所関東の市場 備考関東の市場で見かけた呼び名。 
    チュウアジ[中アジ]
    場所関東の市場 サイズ / 時期25cm~30cm 備考関東の市場で見かけた呼び名。『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)にも〈紀州にて「とつか」〉がある。 
    オオアジ[大鰺]
    場所関東の市場 サイズ / 時期30cm以上、大型 備考関東の市場で見かけた呼び名。 
    シモクイアジ[霜くい鯵]
    場所相模湾 サイズ / 時期大型、初冬 備考初冬の味の落ちた大アジを相模湾では「シモクイアジ(霜くい鯵)」という。 
  • 主食材として「マアジ」を使用したレシピ一覧

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