倉橋島の魚、目の下1尺半、鯛の潮煮
食べ始めると固体と液体が判然としないのが潮煮

4月24日、広島県呉市倉橋島、『日美丸』、平本勝美さんにいろいろ送って頂いた。
当然、中には倉橋島名物の鯛(マダイ)が入っていた。
全長50cm・2㎏上は目の下一尺半である。
桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季だ。
これを骨を残して総て料理し尽くす。
刺身は先にも書いた。それはともかく、久しぶりに潮煮を作る。
かまの潮煮の、出来上がりにすだち丸々1個搾り込んで、後は食らうだけだ。
昆布だしでことことじっくり炊き上げたもので、表面の皮から、身からして、とろりと柔らかい。
器に盛り付けるときは国宝を輸送するが如し、の気持ちでなければならない
身から飛び出した肩帯(胸鰭周辺)の骨をつまむとひょいっと抜ける。
マダイの肩帯と腰帯周り、すなわちかまの部分の骨が大きく小骨が少ないのも魅力だろう。
抜けた骨周りの身をすすり込んだら、もうそこにあるのは別世界である。
皮と身は、濃厚な昆布だしとマダイのうま味が凝縮されて液体のように舌を這う。
潮煮は日本料理の基本ともいうべき料理であるが、要するに昆布の味と魚の味を仲睦まじくさせるといいのだ。
皮や身、煮汁をすすり込む時間が永遠続くといい、とも思う。
ちなみに潮煮はご飯の友というよりも、酒と相思相愛である。
できれば燗酒を用意したい。
煮汁は別の器に半分入れて、ときどきぬる燗と半割にして飲む。
煮汁で酒がのめるのもうれしいねー。
汁も身も皮もなく、器に残ってるのは鰭と骨だけになったら、残念ながら終いである。