
さて、港のおっかさんのところにも最近、観光客の方達が増えている。たぶん新鮮な魚目当てだろう。でも、おっかさんの店は8時前くらいまでは魚市場関係者のための店で、観光客の方達はそんなに早く来ない方がいいよ、といいたい。小田原魚市場のある早川漁港の地元の魚介類の競りが終わるのは、午前7時から7時半の間である。陸送(他の産地)ものや地物を競り人達が整理し終わるのは、日によって変わるけど、かなり後になる。だから「市場人の時間」に来ても新鮮な魚が食べられるとは限らない。まあ、定番的なものはあり、それが実にうまいのだけれど、スタンバイできてから来た方が品書きも多いし、より新鮮なものが食べられる。余談になるが、昔、築地時代に市場グルメなどと騒がれたことがあったが、明らかに市場人とは関係のない人間が作り出した、市場人とは無関係な話だ。市場人はそんなに「さかなさかな」していない。例えば現在の豊洲だって市場人の主食は、売店の菓子パンだったり、カップ麺だったり、ちょっと高級なところで弁当だし、吉野ややカレーだったりする。豊洲場内の上の階で市場人を見かける店は2、3軒しかない。これは築地時代から変わらない。観光客は市場の食堂から市場人を完全に駆逐したのだ。ボクなど結局、市場グルメにはとてもなれなくて、小田原魚市場そば、港のおっかさんのところで、うますぎる平凡な朝ご飯を食べることを生きがいとしている。2024年12月16日も、神奈川県小田原市、小田原魚市場そば、港のおっかさんのところで市場人のための市場飯を食べる。この日は目玉焼きと煮つけである。この実に平凡だけど、実にうまいめしを表現することは非常に難しい。平凡ウマイな料理がいちばん難しく、食べる側もうまさを伝えることが難しい。

市場では急ぎ飯が原則である。しかも急激に市場行がきつくなる。市場を歩いて脳内にたまる情報が多くなりすぎて、破裂しそうになる。さて、カジキの専門店、『かね十』まできて、弁当とってもらっておけばよかった、と気がついたけどもう遅い。こんなときに限ってうまそうに食っている『かね十』オヤジが憎いね。あんたは小池さんかい。

さて、2024年12月16日、神奈川県小田原市、小田原魚市場そば、港のおっかさんのところで市場人のための市場飯を食べる。この日の定食はチャーハンと鶏の唐揚げである。〜〜昔、昔、小田原じゃー、みんな仲良くゆったりわいわい、豪華な朝ご飯を食べていたものじゃった。それがいつの間にやら、皆忙しゅうなり、飯は腹の虫をなだめるだけ、のものとなってしもうた。ああ、あの日に帰りたい、が帰らないんだろうな〜〜。ついでに、魚市場で働く人、買い出し人などで、朝ご飯に魚は食べない人の方が圧倒的に多い。カップ麺という人だっていっぱいいる。昔、築地に魚市場があったとき、築地でグルメ、とか食べ歩き、とかやっていたのは、明らかに市場とは無関係な人達である。だからチャーハンなどは上等の上の上等なのだ。身体が冷えているので、まずはみそ汁からなのだが、徳島県人なので、すだちじゃなくてレモンを数滴たらしでつゆを飲む。あれれ、のれれ、なのだ。なんだこのレモンは?非常に香り豊かだし、果汁が酸っぱいだけじゃないし。お姉さんに聞くと、山(どこなんだろう)に生えている木のもので、無農薬、ほったらかしのレモンらしい。こんなにうまいレモンが小田原にあるとは知らなかった、というかレモンのよしあしなんて考えたことがない。不覚じゃ。唐揚げに数滴落とした香りもトレビアーンだった。もちろん唐揚げも非常にうまいし、チャーハンなど皿から消えても食った気がしないくらいおいしい。でもこれチャーハンではなく焼き飯じゃないかな?小田原魚市場に4時過ぎについて、食べ終わったのが7時半前だ。箱根颪の冷たさと、半分興奮状態で同定しまくった疲れと、をかけ算したのが、とけて流れて消えちゃった♪余談になるが、この朝、はんなり、ちょっとシンネリした若い衆二人にあった。なんて面白い、お姉様達だろう。またあってお話ししたい、気もするな。

小田原魚市場には4時過ぎに到着する。そこから水揚げされた水産生物をカウントしていき、いろんな方々としゃべり倒す。めぼしいものを採取して買ってと大忙し。当然腹ペコペコである。港のおっかさんのところでは、もちろん魚料理も食べるけど、市場で働く人達用野、おいしい普通の朝ご飯を食べる。この日はオムライス。普通のオムライスだけど、もちろん普通にうまい。どんどん胃の腑が温まり、まんぞく、まんぞくなのだ。

市場人が市場周辺で食べないもの、そのNo.1は海鮮丼だと思う。場人が海鮮丼を見ると、頭が計算機にかわる。仕入れ苦労していそうだな、とか、もっと上手に仕入れよ、とか、とか。希に本物だけで作った海鮮丼に出合うこともある。そのときは泣けてくるほど嬉しくなる。ただ正真正銘の地魚海鮮丼は奇跡のごときものなのだ。正真正銘の海鮮丼に出合えた人は幸運を喜ぶべし。ボクも真剣勝負をしに小田原に行っているので、通常、市場人のための市場飯を食べる。小田原魚市場に仕事で来ている人のための飯だ。港のおっかさんのところでも、ときどき魚が出るが、そのときどきに安くておいしい魚が出てくるので、これもまたウレシ。

神奈川県小田原には午前2時に起きて、3時には家を出ている。それから小田原魚市場での競りが終わる、7時過ぎまでずーっと回転している独楽のようでもあるし、水産生物の中を泳ぐ怪しい生き物のようでもある。見るもの総てを同定して、それがそこにある意味を考える。今回は亜熱帯・熱帯系の魚がほどんどいなかったのはなぜだろう?サクラエビが浅場に上がってきたこととの関連は?なんて帰宅しても考え続けている。

不眠のまま神奈川県小田原市、小田原魚市場まで南下、魚を見て帰ってきたはいいが、シャワーをあびたらいきなりダウンする。気がついたらこんな時間になっている。疲れが溜まっているので、頭がずきずきして眩暈が止まらない。目覚めてはや1時間、やっと解消しつつある。最近、完徹ではなくほぼ徹夜すら苦しいのは年のせいだ。さて、実りある小田原行であった。夏の潮から秋の潮に替わる気配が感じられ、台風のために多くの定置が上がったまんまなのに、市場内には魚が溢れかえっていた。南伊豆の船が、伊豆諸島までくだって釣り上げたキンメダイ、メダイなどに混ざって、クサカリツボダイがあった。これを仕入れたナイトウさんが、港のおっかさんのところまで持って来てくれ、焼いていただく。じっくり焼き上がったクサカリツボダイの味は、箸をつけて、手がベトベトになり、Tシャツがクサカリツボダイの脂でまみれにまみれて、初めてうまいなとビックリした。息が詰まるほどウマシだ。ナイトウさん、ありがとさん。