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あんこうは鍋で食べれば万人向けの味

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、大量のエネルギーを使う養殖魚の影に隠れていたり、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり……。それを「隣の珍魚」という。たくさんの種類の魚を食べ、「隣の珍魚」を知っていると、温暖化にわずかだがストップをかけられる。とても自然に優しいし、環境にも優しい。しかも大いに自慢できる】11月の声を聞くと、「あんこう」の値がじわりじわりと上がり始める。ここまで書いて問題なのは、「あんこう」は標準和名(図鑑などに載るときの日本名)アンコウではなく、キアンコウだということだ。こんなややこしいことになったのは、明らかに世間知らずの魚類学者のせいである。これに関しては深く掘り下げないが、一般的な「あんこう」のほとんどがキアンコウという魚だということだけは知って置くべきだ。市場でキアンコウは「本あんこう」とも呼ばれている。年内から1月初めまでは高いが、それをすぎたら急激に安くなる。一般家庭で買うなら新年になってからがいい。地域差があるものの関東のスーパーなどで寒い時期になると、肝とぶつ切りがセットになって普通に売られている。手間がいらず、料理としても簡単なので、売れて困るだろうという話を魚屋にしたら、買っていくのは年配者ばかりだという。こんなにありきたりな普通の食用魚が近年じょじょに、関東ですら「隣の珍魚化」しているらしいのだ。「あんこう」は20世紀末になってもローカルな食材だった。全身ぶよぶよしたこの魚を盛んに食べていたのは、東京を始め関東周辺と大産地だった茨城県である。1980年代、東京築地場内では暮れになって「あんこう」の入荷が少ないと争奪戦になった。とても手が出ないと嘆く仲卸を何度も見ている。同じ頃、新潟県出雲崎近くの漁港で「あんこう」が捨てられていたのである。捨ててはいないかも知れないが、ボクがカメラをかまえていたら、「持っていっていいぞ」と言われてびっくりしたおぼえがある。どう見ても10㎏以上の「本あんこう(キアンコウ)」で嬉しくはあったが旅の途中なので辞退した。出雲崎ではとれてもほとんど食べないといわれたので、またビックリした憶えがある。今や「あんこう」は新潟県だけではなく、青森県、山口県下関の名物となっている。「あんこう」の食文化は流通と情報の発達によってやっと全国的に知られるようになった。それでもいまだに一般的な食用魚ではなく、料理店で食べる魚の域を超えていない。
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目玉おやじのようなマトウダイ

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、大量のエネルギーを使う養殖魚の影に隠れていたり、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり……。それを「隣の珍魚」という。たくさんの種類の魚を食べ、「隣の珍魚」を知っていると、温暖化にわずかだがストップをかけられる。とても自然に優しいし、環境にも優しい。しかも大いに自慢できる】マトウダイは例えば東京都内のスーパーでも、魚屋でも寒い時季、割と見る機会が多い。ただし肝つきの鍋材料としてだったり、煮つけ用であったり。魚売り場で目立たぬ存在、「隣の珍魚」そのものである。これが日本海側に行くとぐんと身近な存在になる。世界中で売られているサーモン(サケ科の養殖魚)よりも人気がある地域もある。当然、日本海では「隣の珍魚」とは言えず、主役だろう。マトウダイは体長30cm前後になる。なーんだ、小さい魚だねー、というと差に非ず。体高(真横から見たときの高さ)がやたらに高いのである。背鰭が非常に長いのも特徴だろう。実物はやけに大きく感じられる。真横から見ると背鰭が髪の毛で体全体が頭に見える。ゆっくりゆっくり泳いでいるのを見ていると、体側の斑紋が瞳に見え目玉だけが動いているようにも見える。ボクはこれを「海の目玉おやじ」と呼んでいる。海の中に鬼太郎がいるとは思えないが、「鬼太郎っ!」と言いそうで恐い。世界中の温帯域に生息している。国内では北海道から九州までの浅場にいる。口を閉じているとわかりにくいが非常に口が大きい。前に長く伸びる。伸びて目の前にいる魚でもエビでもイカでも、何でもかんでもスポイトで吸い取るようにつかまえる。比較的簡単に釣れる魚で、何度も釣り上げている。砂地でのヒラメ狙いのゲストだったり、浅場でのアジのサビキ釣りのゲストであったり。ボクが釣り上げた最大は32㎝もあり、サビキ仕掛けのいちばん下の錘と、いちばん下の針についていたマアジを一緒に飲み込んでいた。この獰猛さからすると、浅場にいる生き物にとって、目玉おやじではなく、サバンナのライオンのような存在に違いない。千葉の漁師さんに聞いたことだけど、こんなにのんびり泳いでいるのに、大型魚の腹から出て来たことはないという。その真意はともかく、この丸い魚には武器があるのだ。体をぐるりと取り巻いている有刺鉄線の、刺を思わせる棘である。毒がないのが救いだけど、釣り上げたのを不用意にキャッチしたときの痛かったことは今も忘れられない。きっと大きな魚だって、この棘にはなんども痛い目にあっているに違いない。
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話題多すぎ、ユメカサゴ

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、大量のエネルギーを使う養殖魚の影に隠れていたり、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり……。それを「隣の珍魚」という。たくさんの種類の魚を食べ、「隣の珍魚」を知っていると、温暖化にわずかだがストップをかけられる。とても自然に優しいし、環境にも優しい。しかも大いに自慢できる】ユメカサゴは体長30cm前後になり、体が赤い。本州から九州までの深い海底に生息している。代表的な産地は長崎県をはじめとする九州であるが、本州から九州までのほぼすべてが産地である。ちなみに人口の集中する東京湾でも水揚げがある。見た目は赤いこと以外は平凡である。問題は、比較的漁獲量が多く、これだけ美しくて、食べてもおいしい魚が、予想外に知られていないということだ。
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じわじわ増えてきているメアジ

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、大量のエネルギーを使う養殖魚の影に隠れていたり、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり……。それを「隣の珍魚」という。たくさんの種類の魚を食べ、「隣の珍魚」を知っていると、温暖化にわずかだがストップをかけられる。とても自然に優しいし、環境にも優しい。しかも大いに自慢できる】最初にアジは1種類ではなく、いろんなアジがあるということを知らなければならない。そのいろんなアジの中にメアジがある。なぜメアジなのか? 「目が大きいから目鯵」なのである。美しいし、眼がパッチリなのでアイドル系といっても間違いではないだろう。アジなの? と聞かれると、ほうらじっくりみてごらん、「アジ科特有の尾鰭の前のぜんご(稜鱗でトゲトゲした)が目立たないけどあるでしょ!」と言いたい。日本列島が北限に近く、全世界の熱帯域から温帯域に生息している。赤道に近づくほど食用魚としての重要性が強くなるが、温暖化でこの国でも無視できない存在となっている。スーパーでは見たことがないという人も多いかも知れないが、そんなことはない。確かにいつもある、といった魚ではないが、東京都内や関東周辺のスーパーの魚売り場でときどき並んでいるのである。昔は本州ではそんなに水揚げされていなかった。むしろ沖縄の魚、「がつん」といったものだったが、相模湾などではわんさかとれ始めている。今のところ、「あじ(マアジ)」と比べると人気薄で、値段も安い。
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タナカゲンゲとは、いったい何だ?

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」を知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい。しかもちょっとだけ自慢できる!】タナカゲンゲは国内では日本海の深場に生息している。珍しい魚とまでは言えないが、見た目が非常に変なのだ。顔つきが人のようだし、キツネとか耳の長〜い犬のようにも見える。しかも1m以上になり、やたらに大きい。大きくて変な姿なので思わず目が引き寄せられる。これはいったい「何だ?」と思わない人はいない、「隣の珍魚」だ。一般的に考えると、日本海周辺では比較的普通の食用魚で、ちょっとだけ珍しいくらいなので「隣の珍魚」、太平洋側では「珍魚」である。ちなみに消費地でも関西の方が「隣の珍魚」的であり、関東では「珍魚」中の「珍魚」だと思う。東京都内ではときどき珍魚大好きな魚屋が看板代わりに並べていることもあるが、極めて珍しいから大看板になる。
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がやがや、エゾメバル

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」を知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】全部、「めばる」になってしまう不思議。最近でこそ、スーパーなどで標準和名で表記されているが、現メバル科メバル属の多くがただただ「めばる」だった。急激に人気が陰っている「めばる」とされる魚で、標準和名が知られている種はまったく存在しない。この知名度の低さは、昔、メバルだった魚が3種類に分かれたのも原因だし、もっといえば「めばる」が多すぎるのも問題である。余談だが、メバル科には一般的に「めばる」と呼ばれるものと、「そい」がいて、ともに岩礁域(根周り)にいる。クロソイ、ムラソイなどの「そい」は根(底)についているが、「めばる」と呼ばれる魚は全部が全部ではないが少し海底から浮いて暮らしているのだ。北海道、東北などではこの違いが、もちろん漁業関係者の間ではだが明確にわかっているようだ。その問題多すぎの「めばる」の中でももっとも問題を抱えているのがエゾメバルである。
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頭を触ればガンコだとわかる

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」を知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】この魚、ガンコは山陰以北の日本海、銚子以北の太平洋の深場に生息している。全長50cm弱で、普通の人がいきなり見たら魚だとは思うだろうけど、それ以上なにもわからないと思う。見た目がかなり厳つい。一見刺々しく見えないし、ぶよぶよしているので触ってみようかな、と思うはずである。触ったらわかることだけど、この魚、皮膚の下が棘だらけなのだ。チクリと刺されるような棘ではなくゴツゴツトゲトゲしていて、痛いけどケガはしないはずだ。しかもまるで西部劇の悪役俳優のような頬髭、口髭を生やし、実に精悍な面構えをしている。とても根は気のいい頑固オヤジには見えない。
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黒くて何が悪い、クロダイの話

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」を知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】タイとそっくりな姿だけど赤くない、黒いけどタイ科のタイだからそのものずばり黒鯛である。実際に本種を見るととてもカッコイイし、うまそうなのだ。最低限、赤いタイ(マダイ)と黒いタイがいることくらいは知って置いてもらいたいものだ。
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アカヤガラはとっても変だけど普通の高級魚

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」とを知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】アカヤガラは至って普通の食用魚なのに、漁港や水産物のイベントではスターである。ひとだかりができていると、かなりの確率でこいつの周りに、だ。大きさの割りに鰭が小さく、鱗がない。非常に細長く口とも喉とも区別がつかない部分がフルートのように長い。鮮度がいいと赤いのも目を引く。
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ボクはアジじゃないかも? マルアジ

【学者にとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」とを知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】ぜんぜん変な魚ではない。でも意外にやっかいな存在ではある。本種は「あじ(マアジ)」にそっくりなのである。普通、「あじ」といえばマアジなのだけど、マルアジも「あじ」の内といえば、「あじ」の内で、あながち間違っているわけではない。だいたい流通のプロや魚類に関心があれば一瞬で「あじ(マアジ)」ではないことがわかる。でも普通の人に区別が出来るとは思えない。普通の人も「あじ」はマアジだけじゃない、ことを知って置くといいだろう。ときどき雑誌やテレビの写真で、「あじ(マアジ)」に化けていることがある。そんなときは「これはマルアジです」と教えてあげよう。スーパーで「あじ(マアジ)」に化けていることもあるので要注意。違いがわかると自慢できるという意味での「隣の珍魚」だ。また魚類には非常に似たもの同士で、ちょっとだけ生息域が違っている。産卵期が異なるということもある。例えば「さば(マサバ)」とゴマサバ、ムロアジとクサヤモロなどである。本種と「あじ(マアジ)」は生息域が重なっているが、本種の方がちょっとだけ南に生息域がずれている。そんなところも蘊蓄話の押さえどころだ。本種は普通の食用魚だ。一般的な「あじ」であるマアジと比べるととれる量はすくないが、水揚げ量は魚の中では多いほうだろう。なのにスーパーなどに並ぶ確率は「あじ(マアジ)」の数十分の一程度でしかないのが不思議。もっと普通にスーパーなどに登場してもいいはず。このせいで消費地ではいざ探すと、手に入れるのが難しいという意味での「隣の珍魚」だ。なぜスーパーで見つからないのだろう? 「あじ(マアジ)」と比べるとまずいとされているからだ。そんなに違いがあるわけではない、時季によってはとてもおいしいのに、とても安いのだ。この評価のせいで漁師さんは困ってもいる。
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ドラゴンのモデルなのか? タチウオ

【学者にとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。】知り合いの老人から、タチウオは一度も見た事がないと言われて、持っていって料理したことがある。現在、90歳超えだし、学者なのだから嘘ではないと思うし、本当に現物に驚いているのをみて、ボクの方がもっと驚いた。老人に、この魚は意外に進化をとげた魚で、いちばん近いのはサバ(サバ科)であること、サバは高速で長距離を泳ぐために体の形を紡錘形にしたが、きっとタチウオは長い距離を泳ぐのを止めて、エサを近場で探すことに決めたのだ。一定の場所でエサ見つけるのはそれなりに大変で、見つけたら一発必中、噛みついたら絶対に離さないために歯がこんなになったんだ、なんて教える。東京都西部に住んでいるが、確かに近所のスーパーに切り身は並んでいるけど、丸のままでは並んでいない。そのまんまの姿を見る機会が極端に少ないという意味では「隣の珍魚」かも知れない。ただ、漁獲量も増えているし、東京都、千葉県、神奈川県にまたがる東京湾では釣れて釣れて困っている。こーんなにたくさんとれても、「隣の珍魚」だと思うはなぜか? このタチウオさんくらい変な魚はほかにいないからだ。
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ケムシカジカは見た目通りに危険!

【学者にとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。】東北の漁港でボロっ切れのような物体が小山になっていて、よくよく見て見るとケムシカジカだった。あまりにも不思議な姿に思わず同定(種を判別する)を忘れて眺めていたら、選別をしていた人に「おこぜは触ったらあぶないよ(意訳)」と注意された。ただ、見た目に反して、食べたらくせのない味わいで、毎日のぞうざいなどに持って来いの魚である。実際、東北・北海道などでは普通にスーパーに並んでいる。売り場で、「どうやって食べるんですか?」と聞いたら、煮つけて朝ご飯を食べさせてくれたオッカサンもいた。この矢鱈に甘い味つけにご飯がとまらなくなって困った困った。
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隣の珍魚 金目はスターだが銀目は妖怪なのだ

【学者にとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。】この魚を高知県の一部では「あおだいしょう」と呼ぶ。明らかにヘビの仲間のアオダイショウのことで、確かによくよくみるとヘビに似た顔つきをしている。念のために漁港でこの魚を前にして「ヘビに見えませんか?」と聞くと、みな「見える見える」とうなずく。言われると心底ヘビに思えるようで、見たくないものを見てしまったように後ずさりする。水木しげるのえがく妖怪は一見市井に普通にいる人のようで、振り向くとバケモノという一定の定義を持つ。本種はもっともっと食卓に上げて欲しい魚だが、そのような妖怪じみたところがあるので流通しないのではないか、と思っている。
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ボウズギンポにあっと驚くのか?

【学者などにとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変というのを「隣の珍魚」という。】ボウズギンポは、10年前までは珍魚中の珍魚だった。今じゃ、見た目の気持ち悪さに後ずさりしたくはなるものの、ちょっと珍しいだけの魚になってしまっている。初めて見たのは12年前(2024年現在)のこと、京都中央市場のレアなもん大好き魚屋で、だ。まるでアザラシの死体ようだと思ったら魚だった、というのも変な出合いである。ぱっと見たらアザラシだけど、よくよく見るともっと奇想天外、太い丸太ん棒のようで、どっかのオヤジサンの顔を思わせたり、円谷プロの怪獣のようでもある。これを最初に競り落として、売ってみたヤツはどこのどいつなんじゃいと思う。明治時代の魚類学の父たちもかなりコイツに悩まされたようだ。そこにいるのが魚類であることは間違いない。魚類を定義する条件である顎もあるし、鰭もあるのだから。でも似たような魚がどこにもいない。結局、近縁種と思われる魚はいないことがわかり、ちょっと専門的だが1種、1属、1科で孤立無援な魚であるとされている。ちなみに本種は広い意味ではゲンゲ亜目(ゲンゲの仲間)だが、この「げんげ」は下魚とか幻魚とかの漢字が当てられ、とれてもまずいので売れない魚とか、見た目が変な魚とかいう意味を持つ。魚類学の黎明期、「わからないものはとりあえず、ゲンゲの仲間として置こうじゃないかい」的なポジションだったようだ。
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オオカミウオなんてこわくない!

【学者などにとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変というのを「隣の珍魚」という。】2005年くらいまでは東京都内では手に入らない魚だった。東京都築地市場には来ていたが、年に1度来るか来ないかといった魚で、ボクにとって市場ですれ違ってばかりで幻の魚だった。困っていたら、2002年に動物カメラマンの宮崎学さんが北海道の漁師さんを通じて手に入れてくれた。泣けるほどうれしかった。改めて、学さんにありがとう!その面構えにどこかしら見覚えがあった。まさにそれはゴジラだったのである。ゴジラ映画を初めて見たのは小学校低学年のときで、ゴジラ映画としては2作目の『ゴジラの逆襲』である。続けて1作目を見たときはもっと恐くて、夜眠れなかった。トイレに行こうと、夜空を見上げると、ゴジラがいた気がしてお漏らししたくらいだ。このあまりにも似ている面相から推察するに、たぶんゴジラの着ぐるみを作った人はオオカミウオを知っていたのだと思っている。そうでもなければ、こんなにそっくりなわけがない。ちなみにゴジラを可愛いという人がいるが、オオカミウオだって可愛いと思う人も少なくないという。ちなみに漁師さんに聞くと顔は狼系だけど、性格は猫そのものだという。ただ、怒らせたら凶暴で危険だし手に負えないらしい。オオカミウオは触らぬ神に祟りなし、なのだ。似ている魚にウツボがいるが、こちらはのべつまくなしに凶暴で、のべつまくなしに危険である。
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食べてみよう隣の珍魚 クロウシノシタ

【学者などにとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、普通の人にとっては珍魚、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変というのを「隣の珍魚」という。】梅雨入り間近のある日、福岡県北九州市小倉の市場で小学校低学年くらいの男子が顔を近づけて、ある魚をなめるように見ていた。言わなきゃいいのに、「ヒゲがあるよね」と無駄な親切心で教えてあげたのだ。小学生は、「ヒゲなの?(意訳)」とボクを指さして聞いたのだ。これはヒゲなんだろうか?ボクはそのとき長旅でヒゲぼうぼうの情けない顔をしていた。うまく説明できなかった。
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食べてみよう! 隣の珍魚 ギンカガミ

【学者などにとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、普通の人にとっては珍魚、というのを「隣の珍魚」という。】6月になり鹿児島県からやって来ているギンカガミなどもその最たるものだろう。「なんだこれ?」と思わないのは魚類学者だけだと思う。本当の珍魚というのは定置網などに数年に1度とか、年に1度とかしか入らないものだけど、こいつはとれ始めるとやたらにとれる。円盤投げの円盤のような形なので意外に扱いにくい。非常に薄いため食べるところがびっくりするほど少ない。安い上に扱いにくいので漁師さんにたいそう嫌われている。
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