オオカミウオなんてこわくない!

これぞ狼魚ではなくてゴジラ魚なのだ


【学者などにとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変というのを「隣の珍魚」という。】
2005年くらいまでは東京都内では手に入らない魚だった。東京都築地市場には来ていたが、年に1度来るか来ないかといった魚で、ボクにとって市場ですれ違ってばかりで幻の魚だった。
困っていたら、2002年に動物カメラマンの宮崎学さんが北海道の漁師さんを通じて手に入れてくれた。泣けるほどうれしかった。改めて、学さんにありがとう!
その面構えにどこかしら見覚えがあった。まさにそれはゴジラだったのである。
ゴジラ映画を初めて見たのは小学校低学年のときで、ゴジラ映画としては2作目の『ゴジラの逆襲』である。続けて1作目を見たときはもっと恐くて、夜眠れなかった。トイレに行こうと、夜空を見上げると、ゴジラがいた気がしてお漏らししたくらいだ。
このあまりにも似ている面相から推察するに、たぶんゴジラの着ぐるみを作った人はオオカミウオを知っていたのだと思っている。そうでもなければ、こんなにそっくりなわけがない。
ちなみにゴジラを可愛いという人がいるが、オオカミウオだって可愛いと思う人も少なくないという。
ちなみに漁師さんに聞くと顔は狼系だけど、性格は猫そのものだという。ただ、怒らせたら凶暴で危険だし手に負えないらしい。オオカミウオは触らぬ神に祟りなし、なのだ。
似ている魚にウツボがいるが、こちらはのべつまくなしに凶暴で、のべつまくなしに危険である。

テレビでスターになった魚だが、最近では魚屋スターに変身


2005年を境にじょじょに見かける機会が増えた。大きな魚だし、ぬるぬるべとべとしているので、発泡スチロールの中は地獄絵のようだった。
それでも少ないながら魚屋さんなどが仕入れて、切り身で売るようになってきたと仲卸で聞いている。
ついでにいうと、東京都上野の魚屋ではこの不気味な姿のまま店頭に並べて、客寄せパンダならぬ、客寄せオオカミウオとなっているようだ。
そして2024年の今現在、最低限東京都内の流通のプロ(市場人)の間では、少し珍しい程度で普通の魚に成り下がっている。
2000年前後、やたらにテレビに登場して、まさに北の魚のスターそのものだった魚が、今や魚屋の店頭に並んでいるとは、まさに時代は変わる、としかいいようがない。
北海道では浅場の釣り漁や延縄漁でどうしてもとれてしまうもので、噛みつかれると大変なのでそのままお帰り願ったり、ときに市場で廃棄される未利用魚そのものだった。これが今や売れる魚に大変身! なのだ。

見た目、外目とは大違い、中身は美しい


個人的にはフライやムニエルがうまいと思う。
そっくりな姿の Wolf fish が大西洋にもいるが、ヨーロッパなどではフィレで普通に売られているらしい。皮に独特の臭味があるので野締め(漁の時に死んでしまったもの)などは速やかに三枚下ろしにして皮を引き、フィレにするといい。
ちなみにWolf fish (オオカミウオ)の大好物はクリガニ、ケガニ、エビ、ホタテガイなどの甲殻類・貝類であるようだ。
だからこんなに身がしまっていて火を通すと味が出るのだろう。
取り分けフライは、やたらにウマシなのであーる。


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