コラム検索

検索条件
カテゴリ:
タグ:
関連する水産物等:
表示順:

全4件中 全レコードを表示しています
福井市鮎川の刺しさば
加工品

刺鯖について

脂ののったマサバを背開きにして塩漬けにしたものを「刺鯖(差鯖)」といった。要は塩蔵サバであるが、2尾一組で売り買いされ、1尾の頭部にもう1尾の頭部を刺し込んで1対にしたところから「刺鯖」と呼ばれるようになる。平安時代以前からのもので、細々とではあるが日本海の福井と鳥取に今に続いている。日本海では、5、6月(旧暦の初夏)の晩春から初夏に脂がのった大型の大量にとれた。今、多獲性魚としてのマサバの産地は太平洋が主だが、昔は日本海でも大量にマサバが揚がっていたのだ。これを浜で背開きにし、塩に漬け込む。この塩分濃度の高い塩漬けマサバは土用(太陽暦の7月半ばから8月半ばくらい)の頃に食べ頃になり、各地に行商(売り)に行く、もしくは近畿から中国地方に流通していた。歳時記では初秋である。北陸から山陰にかけて春に大型の脂ののったマサバが大量に揚がっていたときは、これを貨車に積んで日本各地に送っていたほどである。また第二次世界大戦後の1950年前後まで人が背負い、歩行と鉄道を使い山陽、近畿地方に運んでいた。日本海から山間部、京都、関西、瀬戸内海周辺へのマサバの道を、「鯖街道」といった。日本海はマサバの大産地だったのだ。京都などの「さばの棒ずし」のサバは昔は若狭から来ていたことでも有名である。この日本海のマサバが急激にとれなくなり現在に至っている。鳥取県の「刺サバ」の原料は今やタイセイヨウサバとなっている。「刺鯖」は夏の贈答品としても使われていた。江戸時代に上物は大名や将軍家などの献上品ともなっていたのだ。井原西鶴の『日本永代蔵 巻三の五』(貞享五年/1688)に没落してしまった大商人のことを表現するに〈……盆のさし鯖・正月の鏡餅も見た事なくて、……〉がある。要するに正月の鏡餅と同じくらいに、お盆には当たり前のものであったのである。『本朝食鑑』(人見必大 島田勇雄注釈 東洋文庫 平凡社 元禄10年/1697)には詳しい説明がある。〈鯖/(鯖の)しおづけ(漢字なし)にしたものを、刺鯖(さしさば)という。気味は生よりも勝れている。それで上下とも刺鯖を賞味している。近時、七月一五日には生荷葉(ハスの葉)で強飯を包んで膳に盛る。また生荷葉で刺鯖をくるんでこれに添える〉、〈(刺鯖は)昔はこれを神祇の供としたことが延喜式に記載されている、能登・伊予・土佐・讃岐・周防などの国が多く貢献した〉、〈1つの頭をもう一つの頭の鰓の間に刺し入れ、二つを相連ねて一重にし、これを一刺(ひとさし)という。当今漁市で販売しているのがこれである〉などなど。〈さしさば 塩さば二ひきを組んだものをいい、背開きのさばの塩乾もので、一ぴきのサバの頭にもう一ぴきのさばの頭を突きさして売っている。お精霊(しょらい)さんが家にいる間は生臭いものを食べてはならないのだが、両親のいる者だけは、さしさばをお膳にすえてもらえる〉。『聞き書 奈良の食事 奈良盆地の食』(農文協)からすると、奈良県でも刺鯖を旧暦のお盆に食べていた。長年、奈良県なので、古くから奈良盆地への魚の供給地であった熊野灘産のマサバと考えていたが、猛暑の初秋に食べるものだとすると日本海の町から売りに来ていたのかも知れない。今や「刺鯖」を作る業者は少なく、当方が確認できたのは福井県と鳥取県の2軒だけである。写真は加藤水産(福井県福井市鮎川町)の国産マサバを使い頭部に頭部を刺し込んだ伝統的な「刺鯖」。
滋賀県高島市朽木のさばへしこ
加工品

さばへしこ・こんかさば・さば糠漬け

魚類の塩蔵品に米ぬかを使った、「糠漬(ぬかづけ)」がある。これには2種類あり、新潟県から鳥取県の日本海と千葉県以北の太平洋側のものはまったくの別物である。日本海のものは製造に最低でも数ヶ月かかり、熟成して独特の風味があり、非常に塩分濃度が濃い。太平洋側のものは取れてすぐに糠と塩をまぶしただけのもので、糠の風味があるものの弱く、塩分濃度も低い。「へしこ」はサバ類とその卵巣、マイワシ、フグ(主にゴマフグ)、ゴマフグの卵巣、イカ(スルメイカ)が原料である。新潟県、富山県、石川県、福井県、京都府、滋賀県、兵庫県、鳥取県で作られ、販売されている。「へしこ」の語源は魚を漬け込んだときの液「ひしお」がなまった、福井県の方言「へし込む」、すなわち押す、から来ている、などの説がある。マイワシの糠漬は新潟県から鳥取県まで見られ、「へしこいわし」、「いわしへしこ」、「いわし糠漬(ぬかづけ)」、「糠いわし」、富山県では「こんかいわし」ともいう。サバ類の糠漬は今のところ、石川県、福井県、京都府、滋賀県、兵庫県、鳥取県で見つけているものの、能登半島以東の新潟県、富山県では見つけていない。サバの糠漬の分布に関してはまだわからないことが多いものの、能登半島以西の水産加工品ではないかと考えている。「さばへしこ」、「さば糠漬」という地域が多いが、石川県では「こんかさば(こんか漬)」とも言う。能登半島では糠のことを「こんか」というためだ。参考文献/『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社 1975)、『全国水産加工品総覧』(福田裕、山澤正勝、岡崎恵美子監修 光琳)、『聞き書 兵庫の食事』(農文協)
加工品

あじ煮干しの作り方

煮て干すので煮干しだ。ボクの田舎、徳島県では「いりこ」という。魚はできるだけ小さいものがいい。全長5cm前後がいちばん上等。でも15cmくらいまでは作れる。本当はマアジだけが好ましいが、神奈川県小田原市 小田原魚市場二宮定置の水揚げから拾い出したものなので、モロとメアジが混じっている。混じり物は一切気にしないでいい。メアジだけ、モロだけでもいい煮干しが作れる。今回は全長13cmだから少し大きすぎる。これをよく流水で洗って、表面についた血液やとれた鱗を流す。水分をよくきり、4%〜5%の塩水で10分前後ゆでる。ザルに上げ、シャワーにして水をかけてざっと粗熱をとる。うちわであおぎながら表面の水分を乾かす。これを寒い時季なら日が当たらない屋外で、暖かい時期には冷蔵庫で干す。
静岡県田子の潮かつお
加工品

塩かつお・塩ぎり

静岡県伊豆半島西岸、カツオ漁の基地であった田子、安良里で、盛んに作られていたのが「潮かつお」だ。カツオの内臓を取り、丸ごとを塩漬けにして寝かし、干し上げたもので、保存性が塩蔵品よりも高い。秋に塩につけ込んで干し、暮れには出来上がるのだが、生ハムのように独特の風味が生まれ、ものによってはスライスして生でも食べられる。西伊豆ではこれを正月飾りに使う。西伊豆から沼津周辺までの地域では年取魚の代表的なものであった。塩蔵して干すという工程があり、明らかに冬の保存食の意味合いがあったものと考えられる。この干しの工程のあるものとは別に手軽に作れる「塩がつお」もある。古く浜で水揚げされた多くの魚が塩蔵されるか塩乾物となって周辺域、もしくは比較的近くの都市部に送られていた。干しの工程のあるよりもより日常的な味のものである。東北太平洋側、伊豆半島周辺、紀伊半島で作られているものでカツオだけではなくハガツオ、ヒラソウダなどでも作られていた。紀伊半島三重県志摩市・尾鷲市ではカツオなどに強い塩をしたものを「塩ぎり」という。これも塩蔵品なので「塩かつお」類の一種としたい。
全4件中 全レコードを表示しています

関連コンテンツ

サイト内検索

その他コンテンツ