コラム「さばへしこ・こんかさば・さば糠漬け」

日本海のサバ類のぬか漬け、さばへしこ

滋賀県高島市朽木のさばへしこ

魚類の塩蔵品に米ぬかを使った、「糠漬(ぬかづけ)」がある。これには2種類あり、新潟県から鳥取県の日本海と千葉県以北の太平洋側のものはまったくの別物である。日本海のものは製造に最低でも数ヶ月かかり、熟成して独特の風味があり、非常に塩分濃度が濃い。太平洋側のものは取れてすぐに糠と塩をまぶしただけのもので、糠の風味があるものの弱く、塩分濃度も低い。
「へしこ」はサバ類とその卵巣、マイワシ、フグ(主にゴマフグ)、ゴマフグの卵巣、イカ(スルメイカ)が原料である。新潟県、富山県、石川県、福井県、京都府、滋賀県、兵庫県、鳥取県で作られ、販売されている。
「へしこ」の語源は魚を漬け込んだときの液「ひしお」がなまった、福井県の方言「へし込む」、すなわち押す、から来ている、などの説がある。
マイワシの糠漬は新潟県から鳥取県まで見られ、「へしこいわし」、「いわしへしこ」、「いわし糠漬(ぬかづけ)」、「糠いわし」、富山県では「こんかいわし」ともいう。
サバ類の糠漬は今のところ、石川県、福井県、京都府、滋賀県、兵庫県、鳥取県で見つけているものの、能登半島以東の新潟県、富山県では見つけていない。
サバの糠漬の分布に関してはまだわからないことが多いものの、能登半島以西の水産加工品ではないかと考えている。「さばへしこ」、「さば糠漬」という地域が多いが、石川県では「こんかさば(こんか漬)」とも言う。能登半島では糠のことを「こんか」というためだ。
参考文献/『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社 1975)、『全国水産加工品総覧』(福田裕、山澤正勝、岡崎恵美子監修 光琳)、『聞き書 兵庫の食事』(農文協)

日本海のマサバ

歴史のある水産加工品で、元々は能登半島から山陰にかけてたくさんとれた大型の脂ののったマサバを使って作られていた。昔、この地域では3月から5月にかけて脂ののった大型のマサバが大量にとれていたのだ。
「へしこ」もそうだが、お中元の起源にもなったとされるお盆に食べる「刺し鯖」、祭事に食べていた「さばの棒ずし」なども、同じく大量にとれた日本海のマサバを使って作られていたわけだ。日本海のマサバが産みだした食文化が、関西をはじめ西日本を中心に広範囲に広がっている可能性は非常に高いと考えている。
豊漁期には東京にも出荷するほどで、但馬地方、兵庫県日本海側香美町、山陰本線鎧駅にはとれたものを、すぐに貨車に積み込んで出荷するための施設、インクライン跡(写真)が見られる。残念ながら日本海のマサバは不漁が続いている。
今や「さばへしこ」の材料の多くがノルウェーなどからのタイセイヨウサバである。本来、春にとれるマサバを春に漬け込み、梅雨を越してから食べていたとう季節感はなくなっている。
参考文献/『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社 1975)、兵庫県但馬水産事務所


あぶって食べる

基本的な食べ方は糠(ぬか)を残した状態で好みの大きさに切る。これを軽くあぶるというもの。焼きすぎると糠が焦げてしまい、おいしくない。
産地では一般家庭はともかく、居酒屋などでも出してくれる。
糠の甘味と独特の風味が感じられるもので、1980年代に初めて食べたときも端的にうまいと感じた。


あぶってお茶漬けに

基本あぶって食べるものだが、ご飯のおかずにもなるし、茶漬けにもなる。
小腹が空いたときなど、汁気のある茶漬けは非常にありがたい。
糠の独特の風味とサバ類の豊かなうまみが相まってやたらにうまいもので、ついつい食べすぎてしまう味である。
しかも飽きが来ないのは糠の風味もそうだが、熟成することで生まれた味の深みのせいでもある。


あぶってほぐしてお握りに

福井県三方湖周辺、三方地方では山仕事や漁のときに焼いた「へしこ」を持っていたという。また同三方地方で学校に「へしこ」のお握り(弁当としてだと思う)を持っていったという人にも会っている。
特に「へしこ」を焼いてほぐしてご飯に混ぜて握ったお握りは非常においしい。


糠を完全に落として生で

基本的に熱を通して食べるものだが、石川県、滋賀県、福井県では何人かの方に糠をていねいに洗い落としたら、そのままでも食べられるという話を聞いた。そのまま食べることを進めている商品もある。
確かに生で食べても、味わい深く、酒の肴などには生の方が合うかも知れない。柑橘類がとても合う。



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