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新潟県で伊勢ひじき、が新潟らしき

新潟県でよく見かけるのが「伊勢ひじき」である。赤い縁取りをした紙のパッケージに入っていて、昔ながらの文様が描かれている。山陰以北の日本海ではヒジキがとれないので、新潟県では古くより伊勢(三重県伊勢地方)からヒジキを取り寄せて流通させていたのかな? などと思ったりする。今回、「伊勢ひじき」を買った新潟県西区内野町『ichiman』は、新潟市の地スーパーといったところで、新潟を感じさせるものがたくさん売られていた。「伊勢ひじき」、『角平商会』(三重県多気郡明和町大淀乙655)は三重県伊勢地方のものだけど新潟らしいと感じて買ってしまう、ものでもあるのだ。
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高崎市総合地方卸売市場『市場食堂』、生姜焼定食

旅の準備に追われている最中ですが、連休最後の日なのでしばし、おいしい話をば。高崎市総合地方卸売市場に行くと、『市場食堂』で必ず朝ご飯を食べる。普通の食堂であることがうれしいし、海鮮丼的なものがないのもいい。築地でも、移転後の豊洲でもそうだが、市場人というものは意外に魚飯を食べない。簡単な定食とか、牛丼などがいいのである。高崎市総合地方卸売市場、『市場食堂』は、今どき少なくなりすぎの市場人のための市場の食堂である。ここでもっぱら食べるのは「もつ煮込み定食」である。なんだかんだで群馬と言えばもつ煮込みとなる。
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9月9日、もう「新」じゃない、コウイカ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産の店頭に、もうとても「新」のつかないコウイカが愛知県三河湾から来ていた。これを見た途端、今年は新イカを食べないで終わるのだな、と思った。別に新イカが好きなわけではないが、季節を感じられるものなので、一度くらいは食べて置きたかった。仕方がないので、外套長9cm前後を3ばい買って帰ってきた。帰宅するや間髪入れずに下処理をする。外套膜をていねいにペーパータオルにくるんで深夜を待つ。一日を3つに分けているので、ボクの深夜は丑三つ時である。湯に1秒弱くぐらせ、氷水に取り、水分をきって切りつけただけだ。まだまだコウイカらしい味がないものの、考えてみると5月の漁の最盛期以来食べていない。印象に残らない平凡な味ながら、嫌みもない。ゆっくり味わって食べないと、イカらしい味にも乏しい。まあこれはこれで、9月のコウイカの味として記憶に止めておこう。酒は新潟市西区内野町、「鶴の友 上白」が、やけにうまい、カネタタキの啼かない深夜なのであった。
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新潟市、越後新川の生物・食物図鑑9 シマイサキの赤ちゃん

最初に漁港で遊ぶときは救命胴衣を着用してほしい。漁港内で落ちたらまず助からない。子供用など2000円以下のものもある。さて新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っている。新川漁港の漁港内は釣り初心者には一日遊べるところだし、横を流れる新川側などでは上級者にとっても大物が狙える場所である。また漁港内にもいろんな魚、ホヤ類、甲殻類などがいる。網ですくうといろんな生き物がとれる。
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シマアジフライよりもクサヤモロフライの方がいい

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが銭州に行ったようで、ムロアジ属が小山になっている。ほぼクサヤモロかな、と思いながらも同定のために小振りのものを連れ帰ったら、全部クサヤモロだった。銭州では大物釣りのエサとなるので、クサヤモロはクサヤモロとは呼ばれず、エサと呼ばれている。ただ料理法によっては大物釣りの主役である「もろこ(クエやマハタかな)」やカンパチ、シマアジよりもうまい。特にフライにするとシマアジなどは目じゃないね、と言いたい。体長23cm・145g前後を三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。水分をよく拭き取って塩コショウする。小麦粉をまぶし。溶き卵にくぐらせ、パン粉をつけて揚げる。後は食べるだけだ。
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てんやわんや コクテンアオハタの話

魚類学的愚痴というものをば。てんやわんややっさもっさで、昨日が土曜日で今日が日曜日で、明日が祝日だということを忘れていた。上越市から持ち帰った古文書の準備をしているし、旅があるし、事務処理もある。そんなとき、鹿児島県鹿児島市の久保和博さんから画像が送られてきた。赤いハタで同定不能だった。遠藤広光さんまでわずらわして、コクテンアオハタというところまでたどりつく。ただ、『日本産魚類大図鑑』(益田一、荒賀忠一、尼岡邦夫、上野輝弥彌、吉野哲夫 東海大学出版会 1984)とは似ても似つかない。「アオハタ」なのに赤い。蒲原稔治の1957年は遠い遠い昔なんだなと思う。そんなこんなで忙しい最中に忙しいが重なる。やはり標準和名というのは難しい。本種、ヤハズアオハタ、アオハタモドキ、スミツキアオハタに関しては標準和名の再検討を要すとは素人的な考えなのだろう。遠藤広光さんに感謝します。非常に貴重な魚を見つけてくれた久保和博さんにも感謝!
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2025年秋、新潟旅日記01 上越市高田城址公園にて

2025年8月29日、早朝5時から上越市、一印上越魚市場で、挨拶もしないまま並んでいる水産生物を調べる。徹底的に産地と水産生物を撮影、気になるものは後々テキスト化できるようにメモを取る。横道世之介、ときどき視察という名目で背広組が市場を見学しているのに出くわすことがあるけれど、100%税金の無駄である。メモも取っているわけでもないし、何も見ていない。差別用語が含まれるが群盲象を評す以上に意味がない。市場で物事が見られるようになるためには熟練を要す。背広組の市場視察は背広組だけでは無理、やめなさいといいたい。背広組と違ってボクの市場は超過酷、かつ重労働なのだ。競りが終わったあと高田城址公園で暫しまどろむ、というか意識をなくす。目覚ましがなって堀まで歩いたら、曇り空の下そこは極楽浄土だった。夜を徹しての新潟行なので疲れはとれないが、極楽へのエレベ−ターに乗った気分になる。
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羅臼の「きんき」は素直に煮つけに

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で「きんき(キチジ)」の荷を前にしてすし屋が、左の網走、右の羅臼と交互に見て立ち尽くしている。北海道網走は近年人気が高いので、値段は非常に高い。右の羅臼も負けず劣らず高いけど網走ほどではない。煮つけにするならサイズ的には小振りな網走で、羅臼は大きすぎる。横に並んで右左を見て、つられ買いする。1尾でいいので羅臼産のいちばん小さい22cm・306gを、量りに乗せて値段を聞いてから買う。さすがに「きんき(キチジ)」をキヨミズガイはできない。帰宅して、すぐに煮つけにする。水洗いして湯通しして冷水に落とす(この工程は必須ではない)。水分をよくきり、酒・みりん・砂糖・たまり醤油(必須ではない)・濃い口醤油で煮る。煮上がりで朝ご飯のおかずにしたが、そんなに多くは食べられない。脂が多すぎるし、うますぎるからだ。とろとろ口に含むと溶け出して消える。そのはかなさよ、といいたいところだけど非常に強い味だ。保冷剤を皿に敷いてラップをして置く。昼ご飯には室温になった煮つけをおかずにする。いただきもののニラをみそ汁にしたが、余計な気がした。純粋に「きんき(キチジ)」だけでご飯を食べたい。今回は肝心の肝に触らないように気をつける。
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新潟市、越後新川の生物・食物図鑑8 クロダイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁港の漁港内は初心者には一日遊べるところだし、横を流れる新川側などでは上級者にとっても大物が狙える場所である。新川漁港内では小物が、横を流れる新川側では大物が釣れるのだが、地元の高校生が新川側に行ったり、漁港内に行ったりして次々に釣り上げていたのがクロダイである。新川側で釣り上げたのが20cmクラス、漁港内のサビキに来たのが9cmほどである。あまりにもきれいなので撮影させてもらった。要するにこれは高校生の釣果の横取りというやつだ。新川側では大物が来るようだが、さすがに日が昇り潮止まりとあってはそれは望むべくもない。それでも飽きない程度に釣れるのがいい。近所に新川釣具があって便利な釣り場でもある。釣りマナーを守れる人はぜひ、新川漁港へ。
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新潟の旅土産 新発見! 新潟産ハマグリでいろいろ

まさか新潟の市場にハマグリがあるとは思わなかった。一時は絶滅危惧種であったほどなので、まさかまさか新潟で出合えるなんて。さっそく手に入れて持ち帰った。手に取ってみるとまさしくハマグリなので、大いに感激する。帰宅した日に吸物にした。料理以前の料理で、差し昆布(昆布の切れ端を入れる)をした水に洗ったハマグリを沈めて火をつける。殻が開いたら出来上がりだけど、火を通しながら身がふくらんできているのがわかる。ふっくらと柔らかくハマグリらしいうま味に満ちている。チョウセンハマグリとの微妙な差はわからないけど、この吸物は絶品である。
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2025年9月12日、久しぶりのサンマの佃煮

4年振りかな? サンマの佃煮。佃煮の炊き上がりに合わせてご飯をたく。湯気の立っているご飯の上にサンマの佃煮をそのまま乗せて食べる。佃煮は骨が柔らかくどこにも抵抗を感じないまま、喉に消えていく。ご飯も、サンマの佃煮も駆け足で消えて行く。サンマの佃煮は脂がのっているのと、のっていないのでは別物の感がある。前回は痩せ細ったサンマで佃煮を作っているが、調味料で硬く締まった中に強いうま味があって、これはこれでおいしかった。今回の佃煮は非常に脂がのっているサンマで作ったので、ふわふわして柔らかく、調味料の甘さに、佃煮が口の中で脆弱につぶれるときに感じられる甘味がある。ただ、背の青い魚特有のうま味はさほど感じられない。要するに、脂があってもなくても、サンマの佃煮はうまい、としかいいようがない。
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むつ市の「なみのこ」をオリーブオイルで蒸す

「なみのこ」と言う名でむつ市(青森県)からやってきたコタマガイは3cm前後と小さかった。二枚貝は特別な場合を除いて小さい方が扱いやすい。何時ものようにみそ汁にして、残りをオリーブオイルで蒸した。貝から出た汁と油だけの料理だが、そこにエリンギの風味を足してみた。アサリなどと比べると淡泊な味で物足りなさを感じることが多いが、濃厚なエリンギの風味と貝の味を取り込んだオリーブオイルで、味に奥行きが生まれた。塩を使っていないのにほどよい塩分濃度なのは、貝が水から持っている塩気による。
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今季初トビウオは千葉県鴨川から

気象庁の夏は6月、7月、8月だが、9月も夏に加えた方がいい。9月も半ばになって、いまだに耐えがたい暑さが続き、どう考えても残暑などとは言っていられない状況である。残暑を見舞うのは10月になってからだ。時季時季に時季のものを購入して食べること、季節に抗わないとこをモットーとしている人間にはやけに切ない時代になったものよ、と思う。それでも9月になれば関東の海には秋の魚がやってくる。今季初トビウオは千葉県鴨川からやってきた。たぶん駿河湾でも、相模湾でも同じようにトビウオがやってきているはずだ。何尾か購入してあれこれ作る。最初は「たたきなます」だ。トビウオの味は皮にあり、身は皮の添え物でしかない。もちろん身の淡泊さを楽しんでもいいが、まずは三枚に下ろし腹骨、腹鰭の担鰭骨を取り、皮付き血合い骨そのままで薄く切りつける。それに刻んだみょうが、大葉、にんにくと和えるだけだ。天盛りにしたのは三重県尾鷲市の青い唐辛子「虎の尾」で、すだちを添えた。食べる直前に好みの量の「虎の尾」を混ぜ込み、すだちを搾り。醤油をたらして食べる。トビウオは明らかに背の青い魚である。回遊魚特有のうま味に満ちている。わずかだが酸味があるのも特徴だろう。おいしさの種類が豊富だとも言えるだろう。「虎の尾」がその味のアクセントになる。結構な「たたきなます」に、酒は新潟県新潟市内野町の「鶴の友」で、いい時間が過ごせた。
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新潟市、越後新川の生物・食物図鑑7 ヒメバカガイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者と一緒に波打ち際で見つけた生物の5番目はヒメバカガイである。
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秋めかない9月の、カドガワフエダイのカルパッチョ

9が月振りのカドガワフエダイは、刺身にして、カルパッチョにもしてみた。我が家のカルパッチョはオリーブオイル・塩・にんにくが基本で、好みの香辛野菜、香酸柑橘類などで絵を描くようにつくる。カルパッチョは描くようにつくるので、カルパッチョなのだ。皿にオリーブオイル・にんにく・塩を塗りつける。ここにできるだけ薄く切った身を貼り付けていく。全部貼り付けたらスプーンなどでたたき全体を馴染ませる。ここにスダチの果汁を点々と搾り。スダチ・ローゼル・オレンジミントを描くように散らす。カルパッチョは濃厚な味わいであるが、カドガワフエダイのうま味がそこにしっかり浮き上がってくる。逢魔が時にカルパッチョをつまみ、安いジンの水割りで口の中を洗う。久しぶりに素晴らしいカルパッチョができたという喜びがこみ上げてくる。
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Rosso di Napoli Eggplant というナス

八王子総合卸売センター『八百角』の社長は、売れそうにないのに仕入れてくる野菜がとても多い。最近、店内はかなり東南アジアなので、東南アジア系も多くエスニックな感じが強くなっている。そこに殴り込みをかけているのがヨーロッパ系である。特に、最近、ナスはイタリアなのかも知れない。たぶん八百屋で「ナポリ」と呼ばれているカボチャ型のナスも、ナポリなんだからイタリア産なのだろう。正式には、Rosso di Napoli Eggplant らしくて、エチオピア原産のナスだという。
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新潟市、越後新川の生物・食物図鑑6 アカシタビラメ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っている。今回は新川漁協で水揚げされる代表的な魚のひとつ「ねずり」と呼ばれている、アカシタビラメである。1尾だけだったので入念に同定して、水洗いする。アカシタビラメの定番料理と言えばムニエルである。皮が剥きやすいのが特徴で、ある意味、まな板を汚さない魚である。今回は産卵期なのか比較的大きな卵巣が入っていた。剥いて塩コショウする。小麦粉をつけて、じっくりとソテーし、仕上げにバターで風味づけする。鰭際の香ばしさが際立つ。不思議なもので中心部分よりも鰭と鰭筋にうま味がある。この鰭際だけでもゴージャスな味である。そこに真子の甘味が加わるのだから言うこと無し。少しだけ醤油を垂らして、ご飯を食べた。じっくりソテーしていて骨があまり気にならないので格好のおかずである。
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今季初小ヤリは産地不明

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に小ヤリ(ヤリイカの若い個体)が来ていた。小ヤリは秋の季語にしたいくらい秋のものだ。大気は真夏だけれど、海は徐々に秋なのかもしれないと思った。でも産地がわからない。荷の造りからすると茨城県かなと思われる。小ヤリの最大の産地が茨城県なのもある。新イカ(コウイカのポンポン玉くらいのもの)を食べそびれ、小ヤリもか?というときの小ヤリである。帰宅したらとっととげそを抜き、開いて墨と内臓を洗い流す。これをペーパータオルにくるんで冷蔵しておく。深夜に皮を剥かず、1、2秒湯につけて氷水に落とす。水分をよくきり適当に切って三重県尾鷲市の辛い青唐辛子、「虎の尾」とスダチを添える。醤油をかけ、スダチを搾り、ざざああと和えて後は食らうのみ。これを小鉢ものといい深夜酒の友という。そんなに味のない時季だけど、柔らかくほの甘い。スダチの酸味と青唐辛子の辛みあってのおいしさだ。合わせたのは、新潟県新潟市西区内野町の「鶴の友」。いい時間をいただけた。
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新潟市、越後新川の生物・食物図鑑5 キンセンガニ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者と一緒に波打ち際で見つけた生物の4番目はキンセンガニである。日本各地の浅い砂地にいる小型のカニで、漁の対象ではなく、子供の遊び相手といった存在である。丸っこくて見た目が可愛いので、海辺暮らしをしていればだれもが必ず出合う存在といったものだろう。
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新潟県十日町の「はっか糖」

暑さのせいで体はぼろぼろだ。慢性的に疲れているし、体が変に熱っぽい。新潟県新潟市のスーパーで、「はっか糖」を買ったのは体が涼を欲していたからかも知れぬ。白いチョークを思わせる物体を口に入れると、あっと言う間に溶ける。溶けながらハッカの香と刺激(?)が口の中を満たす。冷や冷やとして、ただただ甘い後味がいい。「はっか糖」を子供の頃、実際に食べたかどうか記憶にないが、なぜかしら懐かしい。
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珍魚とはなんだ! カドガワフエダイの話

ボクの珍魚度は学者的だということを述べたい。高級魚とか、そのへんに普通にいる魚に対して姿が面白いので騒いでいるのを見るのは嫌いである。「リュウグウノツカイはどれくらい珍しいんですか?」などという質問に、何年か前に魚類学者のSさんが困った顔で答えていた。リュウグウノツカイは、見た目が奇妙で珍魚といえなくはないが、それほどたいした珍魚ではなく、博物館などでの必要性はそんなに高くない。これに対して、今回、鹿児島県鹿児島市、大倉の久保さんが送って来てくれた画像のカドガワフエダイは、世界的に見て珍魚とは言えそうにないが、国内の魚類学者にとっては非常に貴重で、必要性も高い。だいたい国内での発見個体数が少なすぎて、生息域すらわかっていない。発見された個体の大きさを考えると、国内で再生産されているのか、どうかもわからない。カドガワフエダイの珍魚度は今のところ高いけど、温暖化でこれから国内においても増える可能性がある。先々ずーっと珍魚であり続けるかは微妙である。我がサイトの珍魚度は変化するのだ。確実にいえることは、今、大学、博物館にとってリュウグウノツカイはそれほど貴重ではないが、カドガワフエダイはとても貴重だ、ということである。一般の人は変わった形をしていないと、珍魚とは思わない。だから至って平凡な姿のカドガワフエダイは珍魚ではない。魚類学者と一般人にとっての珍魚・貴重な魚というの尺度はまったく違っている。
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新潟市、越後新川の生物・食物図鑑4 クロウシノシタ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然界にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者とともに自然界、波打ち際で見つけた生物の3番目は砂浜にいるネズリの子だ。砂の上でぴたぴた跳ねているのを見るまで、まさか手づかみで波の中にいる魚をつかまえる人がいるとは思わなかった。全長70mmしかないので、ウシノシタ科の魚であることはわかったが、そこから先は見当がつかない。マクロ撮影して拡大してその正体がわかった。
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新潟県佐渡のアラの兜焼きで暑気払い

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で買った新潟県佐渡石原水産からアラ、体長43cm・713g の兜(頭部)は塩焼きにした。あきらかに暑気がとれず、バテ気味の自分に野生を取り戻すための塩焼きである。頭部の塩焼きは食いにくい、が他のどこよりもうまい。うますぎて困っちゃうくらいうまいので、ついつい手づかみで食らう。マンモスの肉を食らうがごとき気迫でアラを食らってみる。野生を取り戻すのがいちばんの暑気払いである。うまいのは重々知っている。過去に何度もウマスギてこてんぱんにやられている。それなのにまたこてんぱんにやられた。まずは皮を引っぺがして食い、その下に隠れている身を指でほじくり出して食う。身はちょびっとなのにおいしいが大きい。最初はちょびっとずつ食らっていたら、頬肉を食べてからは一気呵成に食べ尽くす。なんとかカマの部分を残すことに成功する。さて、カマは炊き込みご飯かな?
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夏に食べる長野県、おしぼりうどん

長野県には、そばやうどんを大根の搾り汁とみそで食べる文化がある。上田市や高遠ではそばを食べ、うどんはスーパーで「おしぼりうどん(古越製麺所 御代田町・滝沢食品 千曲市)」でしか知らない。農水省のサイトには長野県坂城町の郷土料理とあるので、「おしぼりうどん」の名を、御代田町と千曲市の会社がとったのかも知れないと、最初は思っていた。ただ農水省は郷土料理を深く掘り下げたりはしない。「おしぼり」というのは辛味大根を下ろして汁を搾ったもので、「おしぼり」で食べる「うどん」ということになる。あたりまえだけど、そばを食べると「おしぼりそば」である。長野県は、そばだけではなく、うどんもよく食べるところなので「おしぼり」でそばを食べるなら、当然、長野県の各地で、「おしぼり」でうどんも食べるはずという当然のことが、農水省には見えていない。だから農水省が坂城町を挙げると、まるで坂城町だけの郷土料理のように見えしまう。またゆで汁ごと出して熱いうどんを「おしぼり」で食べる、とするとそれが法律の如く一人歩きする。無意識でも無駄な法律を作り出すのは愚か者のやることである。本流などといういかがわしいことをいう人間が出てくる。松代町で買ったときなどは普通の冷やしうどんのように食べる、と聞いた。食べ方は家々で違う可能性がある。農水省のページには往々にして、このような他の地域に対する配慮に欠ける決めつけが見受けられる。農水省が郷土料理を大切に思うなら、この点、早急に改訂すべし。
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新潟県はサケの国 秋ザケの塩焼きは滅法うまい

水産物とヒトとの関わりを調べた、その調べ始めの地が新潟県である。学生気分が抜けないときであったが、最初に新潟で感じたことはサケ比率が高いことだ。徳島から上京したとき、東京にはサケが多いと思ったものだが、新潟のサケ度は東京と比較できないほど高い。どこに行ってもサケがあり、マス(カラフトマス)があり、季節には本マス(サクラマス)がある。その頂点にあるのがサケで、庶民的なマス(カラフトマス)がある。季節限定の本マス(サクラマス)がある山形県よりも本マス(サクラマス)の地位が低いのも新潟県の特徴だろう。さて、北海道のサケ漁はトキシラズの初夏から始まるが、新潟県などでは9月中旬から始まり10月、11月が盛漁期である。今年、新潟市西区五十嵐新川にサケ漁を見に行きたいと思っているが、県内でのサケ漁の前、9月1日に、新潟市のスーパーでサケのブロックを買った。新潟中央市場、上越市一印にも北海道からたっぷりサケがやって来ていた。少なくなってはいるが、新潟県では今でもサケがとれている。でも、漁期前なのでスーパーのサケ売り場の主役は北海道産だ。これこそが産地間流通(産地はその産物をとるだけではなく、好む傾向があるので、ないときには別の産地からもってくる)というものだ。そして、新潟市のスーパーで買った北海道産サケが非常に上物であった。いいサケを見極める能力が新潟県人にはあり、それを流通のプロ達もよく知っているのだろう。
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越後新川の生物・食物図鑑3 マクラガイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然界にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者とともに自然界で見つけた生物の2番目は砂浜にいるマクラガイだ。
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産地不明、太平洋側のボタンエビ壊れがうまい

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に産地不明のボタンエビがきていた。小振りで見た目にはあまりいい状態ではないが、鮮度はいい。明らかに千葉県銚子以北の底曳き網で揚がったものである。タラバエビ科のタラバエビ属のエビは近年高騰している。完品はとても手が出ないことが多いので、思わず手が出た。一般に、「ぼたんえび」と呼ばれている標準和名トヤマエビはカゴ漁でとっていることが多いので、ときに生きているものが混ざるが、太平洋側の標準和名ボタンエビは底曳き網でとっているので品質にばらつきがある。トヤマエビは比較的流通量が多いが、ボタンエビの流通は少なく貴重でもある。今回のは壊れもあるものの、見つけると必ず買うのは流通量が少ないからだ。
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新潟県佐渡産アラの刺身

新潟に行ったはいいが、あまりにも慌ただしく、最低限の買い物しかできなかった。旅の疲れがとれた木曜日(2025年9月4日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に行くと新潟県佐渡石原水産からアラが来ていた。佐渡をはじめ新潟県を代表する魚のひとつがアラである。なんとなく縁を感じて買ってみた。体長43cm・713g なので関東でいう「小アラ」よりも大きく、「中アラ」というべきだろう。とりあえず刺身を造る。水洗いをして三枚に下ろし、皮を引き、腹骨を大きく取り、血合い骨を抜き、皮を引く。やや薄めに切りつける。それほど脂がのっているわけではないが、アラのよさはうま味と上品な舌触りにあり、なので気にならない。それにしてもうま味が長々と続き舌の上でだれない、その上、後味がいい。ついつい箸が伸びる、といった味である。だから年がら年中関東の市場に置かれ、いつも高値がついているのだ。端的に言うと、アラを食べることは贅沢をすることなのである。酒は新潟県新潟市内野町の「鶴の友」。地味だけどアラの刺身に合う。箸も止まらず、酒も止まらず、とあいなる。
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新潟市、越後新川の生物・食物図鑑1 フジノハナガイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然界にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者とともに見つけた生物の1番目は砂浜にいるフジノハナガイである。大きさ1cm前後の小さな小さな二枚貝だけど、実に美しい。形はスヌーピーのようだし、名前の通り「藤の花」の花弁のようだ。やたらに美しく、しかも可憐である。昔々は子供達の格好の遊び相手だった。
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2025年新潟旅日記1 宝暦6年『越後名寄』メモ

『越後名寄』は非常に重要な書であるが、水産生物もしくは地誌、歴史の豊富な知識を持たない人間には意味のないものである。ただし、本書を丹念に紐解くと、江戸時代の越後という土地柄がもちろんほんのわずかだが見えてくる。また本書に関してはネット上での閲覧が可能である。著者の丸山元純(天和2/1682-宝暦8/1758)は越後長岡藩(牧野家)内の医師の家に生まれ、越後寺泊で医師として暮らす。徳川綱吉から吉宗、家重と比較的安定した時代を生きる。『越後名寄』(宝暦6年 1756年)は越後の地誌である。江戸の文化史としては平賀源内以前であることも重要であるし、化政期以前になったことにも意味があると思われる。明らかに本草綱目の影響下にある『和漢三才図会』(正徳2年 1712)に習って、越後という地域の地誌を網羅したものと言えるだろう。全三〇巻の大著だが水産生物的には、巻二四、二五だけとみていい。また呼び名などでは、『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775)以上に重要である。■本コラムは、じょじょに改訂していく。本書の重要性を教えていただき、閲覧を許可していただいた、上越市公文書センターには大いに感謝。
コラム

はやり脂のある北海道根室産マイワシを焼いてしまう

昼に千葉県銚子産を塩焼きで食べて、夜に北海道根室産のマイワシを塩焼きで食べる。ともに100g前後だが、脂の量は根室産が銚子産を圧倒している。塩焼きは脂の多い方がうまいのか?残念ながら、脂がのった方がおいしい。気になるのは魚焼きグリルの中が火事になることだけ、やっぱりマイワシの塩焼きは脂ののったものがいい。根室産の方が値段は2倍もするので、値段通りの味だ、と言ってもいい。
コラム

家島諸島坊勢島の緑豆がゆ

瀬戸内海周辺は「茶かゆ」をよく食べる。家島諸島(兵庫県姫路市)坊勢島でも、「茶かゆ」を食べているのだとばかり思っていた。実際に坊勢島に水揚げや水産物の話を聞きに行って、ついでと言ってはなんだが、「茶がゆ」のことを聞くと、島では「茶がゆ」ではなく「緑豆がゆ」だという。坊勢漁業協同組合で教わって、「どんなものだろう、食べたいな」と言ったら、島のオカアサンが持って来てくれた。朝煮て、冷たくして昼に食べようと思っていたものらしい。それほど冷えてはいないが、喉ごしがいいので涼やかな味がする。程よい塩味で、緑豆のもつ、青臭み(?)が実に好ましい。気がついたら、オカアサンのお昼ご飯を全部平らげてしまっていた。お昼ご飯、大丈夫だったかな?「緑豆の入ったかゆは食べても、すぐ腹が空きます」と言われたが、本当にすぐ腹が空いてきた。坊勢島にはすしの名店があり、旅館のご飯も矢鱈においしかった。鱈腹食べた後なのに、また「緑豆がゆ」が食べたくなった。
コラム

群馬県は「もつ煮込み」だらけ

我がサイトの、テーマのひとつが季節と地域性である。群馬県といえば「もつ煮込み」が浮かぶが、なぜだろう? と思って過去の画像を渉猟する。群馬県のスーパー、直売所巡りは定期的にやっている。当然、朝ご飯もしくは昼ご飯を食べてくる。北は渋川市から南は館林市までの画像だが、朝ご飯、昼ご飯の画像整理していると、やたらに「もつ煮込み」が見つかるのである。太田市の食堂では、「群馬県は豚肉をよく食べるので、『豚もつ煮込み』もよく食べる」と教わった。肉には詳しくないが、この「もつ煮込み度」の高さは他の県には見られないのではないか。高崎市総合地方卸売市場の『市場食堂』には「もつ煮込み」の大盛りまである。群馬県内の「もつ煮込み」はどこで食べてもおいしいのもありがたい。
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長野県北信地方の「やたら」

長野県中野市・飯綱町などで食べられている夏の料理に「やたら」がある。大根などのみそ漬け、ピーマン型の青い唐辛子・ぼたんごしょう(かぐらなんばん)、八町きゅうり、丸ナス、みょうがを、すべて細かく刻んで混ぜただけの料理である。みそ漬けの塩気があるので、混ぜ合わせてもの足りなかったら、塩を加える。みそ漬けの塩気が強く、また多めにみそ漬けを刻めば塩はいらない。とにかくすべてを刻んで刻んで刻む。一心に刻むのがコツである。みそ漬けだけの塩気で全体がしっとりとして、味が馴染んでくる。長野県飯綱町、滝澤農園の滝澤さんに教わって早10年になるが、ほぼ毎年作っている。ボクの場合、徹頭徹尾、ご飯に乗せて食べているが、飽きが来ない味で、毎日食べても結構毛だらけである。
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2025年8月26日、今季最初で最後の塩イクラ

舵丸水産に北海道斜里から生筋子(サケの卵巣)が来ていた。サケの来遊が減っているので筋子が高くなるのは当然だけど、2020年から年に1度だけしか買えないし、買う量も減っている。できれば500gくらいでつくりたいのに、今年は200gで作っている。これじゃオママゴトではないか。温暖化が原因であることは明確だ。でも、猛暑でエアコンなしでは死んでしまうし、できるはずの省エネすら誰もしようとしないし、無駄なエネルギーそのものの戦争をする愚か者がいる、こんな世の中じゃあ温暖化はとまらないんだろうな。ままよと思いながら食べる塩イクラだけど、やはりうまいねー。サケの卵巣にしかない独特の風味がある。この時季はまだ卵粒の皮膜が柔らかいので、舌で潰せるのもいい。
コラム

2ヶ月ぶりに江戸前小笠原のハマダイ

今年は熱暑でしかも、盆の後先は、毎年のことながら魚が少ない。こんなとき、年間を通して状態を見ているハマダイを見つけてほっとする。小笠原産だというがパーチも箱もない。当日入荷ではないが、フエダイ科の魚なのでモチがいいので手が出た。旬というか脂のある時季は4月から6月くらいまでで、産卵が近づくと不安定になる。今回の個体は脂こそほどほどであるが、非常にうま味が豊かである。刺身は、非常に味わい深かった。そして深夜に、いただきもののークヮーサー、三重県尾鷲市の青い唐辛子、虎の尾で塩締めにしてみた。一気に夏らしくなる。刺身を食べても体の重さは取れないが、香酸柑橘類と青唐辛子の辛みが暑さのストレスから解き放ってくれる。合わせたのは安ジンのソーダ割りで、爽やかなド深夜、一人きり。
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長野県北信地方の「かぐらなんばん」

ピーマンのような形をした辛い青唐辛子が、新潟県、群馬県、長野県、岐阜県にある。他県人だとわかると、長野県の直売所でも、群馬県の直売所でも「これ唐辛子で辛いんですけど、大丈夫ですか?」と聞かれることが多い。同じ地区で「かぐらなんばん」ともいい、「ぼたんごしょう」ともいい、呼び名がこんがらがってる。「かぐらなんばん」は「神楽南蛮(なんばん)」と書かれることが多く、「ぼたんごしょう」は「牡丹胡椒(ごしょう)」だ。「牡丹胡椒」は形からだと思うが、「神楽南蛮」の由来はわからない。「かぐらなんばん」という表示の多い長野県中野市で「『ぼたんごしょう』とも言うよ」と教わったので、呼び名が違うだけで、まったく同じ品種なのだと思われる。飛びっきり辛いのもあり、あまり辛くないものもありで辛さはまちまちである。今年は長野県中野市オランチェ(直売所)、飯綱町の直売所で買っているが、ふたつともあまり辛くない。年々辛みに弱くなっているのでちょうどいいかも。
骨抜き
コラム

毛抜きは持っておいた方がいい

打ち合わせをしていた女性が、いきなり道具自慢をおっぱじめた。たぶん彼女も、このFBを読むと思うので遅まきながら教えておきたい。包丁の選び方も変だし、6千円なんて法外な骨抜きは買わない方がいいよ。骨抜きも直しがきくのだ、と思うけど、直しに持っていくのは人生の時間の無駄遣いだと思う。さて、骨抜きは一般家庭でも持っておくべき道具だと思っている。でも、千円前後がいい。安物でも何十年も使えるし、だめになったら買い替えればいい。なくしやすいので2本ぐらい買ってもそんなに懐は痛まない。どんなにいいものでも、骨抜きはダメになるときがくる、ということも忘れてはならない。ボクが今、使っているのは新潟県燕三条の朝市で特売していた700円と、川崎北部市場で買った800円だけど、10年以上使っているが問題はない。
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増毛産甘エビをづけにして丼にする

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で連続して北海道増毛産の甘エビ(ホッコクアカエビ)をたっぷり買った。お昼ご飯のためなので、づけにする。甘エビのづけはご飯にも合うし、ちょっとしたつまみにもなる。つけこんで約4時間後に「甘エビ丼」にする。といっても温めたご飯に柚子果汁を点々と振り、並べるだけ。づけは醤油の辛さが主で、少しだけみりんの甘さがある。これが甘エビをより甘くし、そして味わい深くする。そして甘味はご飯の味方である。今回はいただきものの柚子果汁と、三重県尾鷲市の青い唐辛子「虎の尾」で味にアクセントを加えた。青唐辛子のぴりッがやけに長く口中にとどまる。これが、夏丼にする。
サンマの塩焼き
コラム

今年の、サンマの塩焼きの作り方

八王子卸売協同組合、舵丸水産に根室・厚岸から13(13尾で2㎏)と11(11尾で2㎏)が来ていたということは書いた。近所のスーパーも魚売場はサンマでギラギラしている。当然、なんてたって塩焼き、な気分になる。何度か都心に出ているが、今年は、そば屋でもサンマ定食を食べた。
コラム

久しぶりにキメジ1本、まず刺身から

産地の撮影をし忘れたので、産地不明のキメジ(キハダマグロの幼魚)は、1.5kg ほどなので味はあるけど脂はない。年のせいか、この脂のない若いマグロ属(キハダマグロ、クロマグロmメバチマグロ、ビンナガマグロなど)が好きだ。ただ1本買いした半身ほどの量を食べると飽きる。
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安楽島のイワガキでフライを作ったら目から鱗だった

三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中にイワガキが入っていて、大小あって、大を蒸し、小をカキフライにした。これが想像以上のおいしさだった。あまりにもおいしくて、今夏はイワガキのフライを何度も作った。イワガキとマガキは近縁種なのでそんなに違いはない、と思っていたのが大間違いだった。
棒だら煮
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小林一茶、七番日記の「ゑぞ鱈」

七番日記(文化一二年/1815)ゑぞ鱈も御代の旭に逢にけり〈訳/蝦夷地で獲れた鱈もこのありがたい御代の旭に逢えたことよ。年/文化十二(1815)。解/蝦夷地の鱈も、ありがたい御代に会えたよ、と誇らしげ。……〉玉城司(国文学者。1953〜)現代語訳。小林一茶(宝暦13年/1763〜文政10年/1828)は信濃柏原(長野県上水内郡信濃町)に産まれる。安永六年(1555)、15歳で江戸へ奉公のために出る。文化十一年(1814)、52歳で生家の2分の1を相続する形で柏原に戻る。中農ということから自作農であり、田畑土地建物を所有したと考えていいだろう。「ゑぞ鱈」は蝦夷地で獲れた鱈なのでマダラだろう。当たり前だが乾物の棒だら、もしくは塩蔵ものとなる。北前船で松前、蝦夷地から送られて来た。なぜ、小林一茶はこれを「ゑぞ鱈」としたのだろう。柏原生まれなので、小林一茶にとって鱈といったら近い産地、越後で上がった介党鱈(スケトウダラ)のことだ。これは新潟県上越地方から現在の長野県北信地方までが、スケトウダラ食文化圏であることからも間違いないことだと思われる。
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スーパーのゴマサバで、夏の魚すき

夏の鍋ものはいい。疲れていたり、忙しいときには特にいい。一口食べると意外にも、自分の胃袋が温かみを欲していることに気づくはずだ。ただし、暑い時期なので煮ながら食べると熱すぎる。テーブルに鍋を移して食べるといい。この時季の並のゴマサバは決して脂がのっているわけではないし、味があるわけでもない。それを甘辛いすき焼きの地でカバーする。一切れがあまり大きくなく、煮つけのように強く煮ていないので比較的柔らかい。煮えた夏野菜のおいしさとゴマサバから出ただしが一体となると、やけにうまい。そしてまた、やけにご飯がうまい。くどいようだが、エアコンの冷気を24時間浴びて、体が疲弊している、そんなときこそ夏の鍋だ。ちなみにスーパーの切り身なので包丁を使うのは最小限である。今回はすき焼きの地を自分で作ったが、市販のもので充分だ。夏野菜をたっぷり食べるためにも、作ってほしい夏の鍋だ。ついでにいうと、作り方といっても、材料を鍋に並べて、熱いすき焼き地をそそぐだけで、煮る時間もそんなにかからない。家族揃って食べることの少なくなった今、鍋に材料を並べておいて随時食べてもいいと思っている。
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根室産マイワシ、ひとまわり大きくなって身に雪が積もる

皿を冷やした上に、底にも保冷剤を敷いている。そうしないと室温で表面がうるうるする。刺身を口に入れた途端に溶けるといったもので、これ刺身なんだろうか? と疑問に思えるほどだ。ただし脂がさらりとして軽く、きよらかな舌触りで、しっかり背の青い魚の味もある。濃厚で強い味なのに箸が伸びる。高値なのに飛ぶように売れていた、そのわけは食べるとわかる。群馬県中之条町の「貴娘」というイケル酒を用意したが、飲む間が見つけられなかった。酒の肴はおいしすぎてはいけないのだ。
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クロダイの塩焼きの作り方

スズキ目タイ科の魚の塩焼きは上品でいながら、味わい深い。当然、クロダイの塩焼きは抜群にうまい。クロダイの問題点は生きている水域で味が違うことだ。神奈川県相模湾のもので臭みのあるものはないが、東京都墨田区の横か北かはわからないが十間川、また江戸川区新川の個体は釣り上げたときから臭ったという。クロダイはほぼ淡水でも生きていけるし、汚染にも強い。育ちで味の違う魚だが、海で揚がったものはほぼ大丈夫である。今回の大分県佐伯産、クロダイの塩焼きは絶品だった。脂がのっていたので、焼いた香りがよく、表面に脂から産まれる香ばしさがある。あまりにも皮がうまいので、身を食べ忘れてしまいそうだった。しょうが、柚子果汁、大根おろしを用意したけど、無用だった。
キハダの心臓の干物
コラム

北村商店のキハダのハツであれこれ。まずは干もの

マグロの心臓を干したのは初めて。おいしいではないか。あまり魚の内臓は好きではないが、もともと血抜きをしていたのもあるが、再度血抜きをしたのがよかったかも。いただきもののシークヮーサーをじゃぶじゃぶかけながら食べる。非常に食べやすい。少し硬めだけど、マグロの血液の風味があり、うま味がある。後味に甘さが来るのもいい。100%酒のつまみだけど、このようなものが一品あるといい。
コラム

2025年8月18日、今季初サンマは上々吉

八王子卸売協同組合、舵丸水産に根室・厚岸から13(13尾で2㎏)と11(11尾で2㎏)が来ていた。迷うことなく根室市杉山水産の11を買う。昨年は18から始めているので、今年は滑り出しから上々である。値段は500円なのでワンコインである。ここ数年でいちばんいいものだし、安いと思う。さすがに室温で表面が潤むというほどではないが、身が脂のせいで非常に柔らかい。当然、脂から来る甘味がある。サンマには特有の渋甘い味わいがあるが、久々に魅了される。非常に酒をやりたくなったが、お昼なのでご飯で我慢する。ご飯だってすすみすぎて、困った。今年の初サンマは上々吉。これ以上はいらぬ。
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高崎市総合地方卸売市場『魚栄』で惣菜を買う

市場に来てみませんか? という話をしたい。関東を見回しても、一般客を受け入れない市場はなくなったと言っていいだろう。むしろ、一般客大歓迎といった市場ばかりである。市場では高級料理店でしか食べられない魚が、手に入る。もちろんお買い得なものもたっぷりある。野菜なども同じである。
ゆでサザエ
コラム

安楽島のサザエはゆでるだけでうまし!

サザエでもっとも簡単な料理法は、塩ゆでである。今回は、三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中にサザエがたっぷり入っていた。撮影していろんな料理にしたが、たっぷり入っていたので、何個かをそのまま水洗いして水を張り、塩を加えた鍋に入れて火をつけた。たぶん約8分くらいゆでてそのまま鍋止め(鍋のまま冷ます)する。ゆで汁は吸物程度の塩分濃度である。このやり方は昔々、防波堤釣りで川奈港(静岡県伊東市)に通っていたことがあり、そこでお昼ご飯を一緒に食べていた(引退した)漁師さんに習ったもの。島根県隠岐では少量の水分で蒸すという話を聞いたが、要はゆでるだけなので、さほど深く考える必要はない。最近までやや濃い目の塩水で煮ていたが、最近薄味でもいいと思うようになっている。ふたの隙間に貝剥き(貝棒)を入れて軟体部分を取りだし、砂を噛んでいたらゆで汁で洗う。あとは酢みそでもいいし、意外にそのまま食べてもおいしい。ルール無用なので好きなように食べるといい。ちなみに知り合いの居酒屋オヤジのおすすめはタバスコ&マヨ(ネーズ)だ。醤油で食べてもいい。ちょっと変だけど、ウスターソースで食べてみた。これが変だけどうまい。ときどきサザエは苦みだなんて通っぽいことを言う人がいるが、そんな人にはワタだけ食べてもらってもいい。ボクは通などになりたくもなし(一応一茶風に)、なのでワタの苦みはちょっぴりでいい。このどうにでもしてね、というのがサザエのよさだ。
コラム

さかな料理の入門7箇条。素直がいちばん

さかな上手とは、水産物(食用水産生物)を上手に、日々活用できる人間のことである。人間は生きていること自体が自然破壊、自然に対する悪影響を極力抑えなければならないが、生き物を無駄なく使うことも重要である。そのためには、さかな料理を習得しなければならないが、そのとき守るべきことをいくつか挙げる。さかな料理の入門八箇条(第一考)一、料理などで知ったかぶりはしない。知らないを武器にする。二、最初、向上心はいらない。もっとおいしくとか、正しい料理法とかは考えなくてもいい。向上心はおいおい勝手に自分の中に生まれてくる。三、道具は買わない。包丁くらいは家にあると思う。あればいい。さかな用に買うなんてやってはけない。だいたい包丁にこだわっている人に限って包丁を知らない。包丁を買うべき時は、自然にやってくると思うし、買うべきときが来なければ、切れない包丁を一生使い続けてもまったく問題はない。四、できるだけ下ごしらえは他人任せにする。スーパーとか魚屋でやってもらう。あとは焼くだけ、とか煮るだけ、とかがいい。五、惣菜を買って来ても勉強にはなる。外食も大いにするといい。コンビニにもさかな料理はある。刺身でも塩焼きでも煮物でも、まずは買って食べてみるべし。六、好奇心こそ料理上手を作る。さかな料理を楽しむべし。花から花へ飛んでいくモンシロチョウになれ。七、自分が作ったものは、おいしくない、と思いがちである。自分が作った料理はうまい、と思え。八、通の話は無視すべし。世に本物の通はいない。世間で通と言われる人はやけに説得力はあるが、正しいことを言っていない。自分本位である。他人のことは考えないし、排他的な考え方をする。できるだけ、通ではない素直な自分を探し出せ。入門編で終わっても、それでいいのだ。もっと詳しくなりたいと思ってから、もっと勉強すべし。さかな上手になるために、入門編は非常に大切である。この段階を経ないと「さかな上手」になるのがとても難しくなる。■写真は東京都八王子市、『舵丸水産』。
サンマ丸干し
コラム

矢野誠一の、さんまは、目黒にかぎる

〈目黒不動尊の参拝をかねて、鷹狩りに出かけた松平出羽守(出雲松江藩藩主)。「下総の下人どもが食(しょく)いたします俗に下魚(げうお)と唱えまするものゆえ、高位の君があがるものではございません」という進言を無視して、近所の百姓家でさんまを食べたのだが、さあその美味さが忘れられない。翌日、殿中の溜の間で諸侯を前にこのはなし。これをきいた黒田筑前守(筑前国福岡藩主)が早速に家来に申しつけ、房州の網元からさんまを取り寄せたのだが、御膳奉行が「塩の強い、油のはなはだしきものをあがりつけないお上ゆえ」と、塩と油気をすっかり抜いてさし出したから美味いわけがない。あくる日、出羽守をつかまえると、「まるで木をゆで、かんでいるようなもの」「まずいとおっしゃるが、ご貴殿さまはいずれから……」「家来に申しつけ、房州の網元から」「黒田候、それは房州だからまずい。さんまは目黒にかぎる」〉『目黒のさんま』矢野誠一の『落語長屋の四季の味』(文春文庫)に出てくる。先月なくなった矢野誠一のエッセイや評論はすべて我が家にある。落語はそんなに好きではないというか、時間がないのでじっくり聞いていられないのだけど、矢野誠一の文章は好きでならない。矢野誠一の死で「東京やなぎ句会」は全員が冥土に旅立ったことになる。ひとつの時代が終わったのだ。■銚子産の丸干し。少し黄ばんでいるが、江戸時代、明治時代にはもっとくすんだものだったはず
コラム

静岡県浜松市「炭焼きレストランさわやか」

ナウなことには興味がないし、テレビもザッピングでしか見ないので、世の評判などとはまったく無縁である。あらゆる情報から離れたところにいる、といってもいいだろう。国内各地に行くと、店の位置まではネットを見るが、できる限り、その土地に根づいているものを探す。お昼ご飯を食べるときは、できれば個人経営の店を目指す。余談になるが、ボクは明らかに知名度ゼロの人間である。どこからどう見ても目立たない薄汚いデブオヤジだ。たまたまだろうが、浜松市で3組の方達から声をかけられた。希に、ごく希に「ですよね」と話しかけられることがあるが、複数の方に声をかけられたのは初めてだ。昼を過ぎていたので、その中のご夫婦の方に、「このあたりに昔ながらのものが食べられるところありますか?」と聞いたら、ついてきなさいと言ったので、ついて行った。ムムム、そこは思いもしなかったところ、ボクが絶対に足を踏み入れないところ、チェーン店だったのだ。仕方なく店内に入って席に着くやいなや、目撃したその光景にビックリ仰天した。出て来た料理と店員さんとで写真をとっている家族がいたのだ。とすると、これはこれで「昔ながらのもの」なのか?あとあとウィキで調べると、なんだかんだあって今の形の創業は1989年のようだ。どう考えても老舗とは言えないと思うが、悪意で教えてくれたわけでもないだろう。
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8月の大分県産クロダイはうますぎて困った

8月になって、神奈川県小田原市、小田原魚市場で揚がっていたクロダイは触った限りだけど、身に張りがあり、脂を感じるものだった。落とせなかったのもあって、魚屋さんをつかまえて、聞いてみると、みな「最高だよ」という。比較的保守的な、と思われる人までいいと言うことは、旬だと断定してもいいようだ。さて、それでは大分県佐伯産のクロダイはどうなのか?脂ののりこそ驚くほどではなかったが、うま味が充実して、多様なアミノ酸が生み出す、甘味が感じられる。醤油をつけないで口に入れているのに生臭みを感じない。結構な味としかいいようがない。違う産地でみてもクロダイは6、7月は不安定で、8月になると回復する。ほぼ一年を通して安定している。これだけうまいクロダイの刺身を前に、やることが立て込んでいるので、深夜一人で凍頂ウーロン茶とは情けない。
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静岡県焼津市『かねじょう食品製造』、金山寺みそ

ボクが調べているのは水産生物でもあるし、地域性でもあるし、季節でもある。47都道府県のいろんな地域に行っているが、特色のあるものを、もちろん食品に限るが買って帰ってきている。静岡県に行くと必ず買ってくるのが、「金山寺みそ」である。意外に「金山寺みそ」とか、「醤油のみ(ひしお)」が好きなのだけど、静岡県に行くとどこのスーパーに寄っても「金山寺みそ」である。これほど「金山寺みそ」の多い県も少ない気がする。
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神奈川県小田原「ごっそり」を徹底的に料理する

神奈川県小田原市、小田原魚市場、二宮定置にまた「ごっそり」がまとまって入り出した。「ごっそり」は平均して1尾90g以下のイサキのことである。今回のものは小は60g、大は110gで大きさにばらつきがある。大きさが微妙に違っているし、量的に多すぎるので出荷できない。最近ではこれを買い受ける人(買える店)があるにはあるが、ほぼダンベ(大型容器)行きである。「ごっそり」は非常においしい、しかも安いので飛ぶように売れてもいいはず。なのに売れないのは消費者が無知だからだ。米の価格を騒ぐよりも、安くてうまいものを買うべし、なのだ。さて、「ごっそり」といえばまずは刺身である。イサキの特長は小さくても脂があること。「ごっそり」の刺身には脂の口溶け感からくる甘味があり、しかもうま味が豊か。これでご飯を食べると一升飯といったものだ。ちなみに刺身はごっそり作り、そのまま食べるだけ食べて、あとは醤油・みりんに漬け込んで置く。
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千葉県船橋産、ぎりぎり新子の酢じめ

八王子卸売協同組合、舵丸水産に江戸前、船橋(千葉県船橋市)から新子なのか、「こはだ」なのか微妙なのがやって来ていた。7月とは違い、10cm・15g前後なので開きやすいのもありがたい。開いてみたら1枚漬け(1尾で1かんの握り)には小さすぎるので、ぎりぎり新子ということにする。最近、豊洲でもそうだが、多少大きくても新子で通っていることが多い。個人的には1枚漬けになるサイズは「こはだ」である。ボクの最大のテーマは季節と地域性なのであるが、コノシロには未だに季節が感じられる。コノシロはこのサイズから味わい深くなる。新子は季節を味わうものだが、成長するに従いコノシロの味を楽しむものに代わる。このサイズはうま味が豊かで、柔らかいのであっけなく喉に消えていく。いくらでも食べられるし、箸が伸びて困る。非常に軽い味なので、夜の酒に合う。最近、夜酒が多く、PCを終了させてからの時間を楽しむことが多い。そんなときにもこのサイズは好ましい。群馬県前橋市、「桂川」を正一合。
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愛知県産大アサリは今や貴重だ

初めて食べたのは愛知県師崎(愛知県知多郡南知多町師)の旅館である。非常においしくなかった。以後長いこと避けていた。おいしさを知ったのは20年くらい前、ドラム缶たき火で焼いて食べたときだ。大アサリ(ウチムラサキ)焼きたてをあつつ、といいながら食べないとダメなのだ。もしくは、せめて温かい内、冷める前に口に放り込む。これほど焼きたてと、焼いて冷めたものとの味の落差のある食材はない気がしている。焼きすぎると硬くなるが、温かい内ならば、これがいいのである。無闇に噛むしかないのだけど、じわじわとおいしいがにじみ出てくる。個人的には酒と醤油少々と、貝からでてきたおいしさを、軟体にまぶしつけて食べる。終いに貝殻の内側をしゃぶるのが好きだ。
コラム

矢野誠一、「猫久」の鰯のぬた

〈鰯こしらいとくれ、鰯を。南風が吹いてるんだよ、ぽかときているんだよ、腐っちまうよ、い、わ、しッ〉五代目、柳家小さんが得意としていた、『猫久』という話の一説である。ここに出てくるのが、「鰯のぬた」だ。矢野誠一の『落語長屋の四季の味』に出てくる。先月なくなった矢野誠一のエッセイや評論はすべて我が家にある。落語はそんなに好きではないというか、時間がないのでじっくり聞いていられないのだけど、矢野誠一の文章は好きでならない。矢野誠一の死で「東京やなぎ句会」は全員が冥土に旅立ったことになる。ひとつの時代が終わったのだ。さて、時代は不明だが、「猫久」には髪結床が出てくるくらいなので、江戸時代を設定としているのだろう。昼飯のおかずに、亭主の熊さんが鰯をおろして、女房がみそをすり鉢ですり、酢みそを作るのが「鰯のぬた」だ。髪結床から帰って来たばかりの熊さんに女房が早く鰯をおろせとせっつく。言われた熊さんが、髪結床で聞いた話を話している隙に、猫がやって来て鰯をくわえていく。落ちはわかりにくいが長屋の風景が浮かんでくるようである。せっかくなので鰯(マイワシ)を買って来て、手開きにする。振り塩をして少し寝かせ、酢で一度洗ってそのまま少し置く。水分をきり、酢みそをかけてご飯ではなく、酒を一合。鰯のぬたで酒を飲みながら矢野誠一のエッセイを読む。
コラム

初めてのピンクペッパーでクロダイのカルパッチョ

ピンクペッパーは懐かしい味がした。子供の頃は草木の実を見ると、「食えるか? 食えないか?」とよく話したものだ。1960年前後まではそんな時代だったとも言える。食べられる実を教わると、食べてみるのが当たり前だった。その無数に食べた実のどれかに似ている。同じような赤い実だったけどなんだったのだろう?辛みはあまり強くなく、ちょっとだけ酸味があり、口の中に爽やかさ、いい香りが広がる。酸味もある。ピンクペッパーは薄く切りつけて塩・オリーブオイル・にんにくで味つけしたクロダイにぴったりはまる。今回のクロダイは明らかに旬を迎えていた。とても脂がのっていて、おいしかったのもあるが、このぴったり感はまるで寸法を計ったようだ。ボクが作るカルパッチョのテーマは「野に咲く花の名前は知らない」だけど、ピンクペッパーは野に咲く花のようでもある。合わせたのは安いジンの水割りだけど、滅法合う。
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小田原の朝ご飯は夏らしくカマスのフライ

2025年8月8日の港のおっかさんのところでの朝ご飯は、カマス(ヤマトカマス)のフライであった。カマスのフライはある意味、小田原夏の風物詩と言ってもいいだろう。アカカマスと比べておいしくないなんて言う人のいるヤマトカマスであるが、そんなことはありませぬ、と声を大にしていいたい。小田原魚市場にあがったばかりの「青かます」は、皮目に独特の風味があって、身に強いうま味がある。揚げたてなのでふわっふわっである。市場を歩くのは重労働なので、大盛りご飯にしたいのはやまやまである。それをぐっと堪えて小盛りご飯なのは残念でならないが、これも人生なんだと諦める。
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鳥羽市安楽島の「がんこーじ」は、うまいんだけど♬

三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中に「がんこーじ(オニサザエ)」が入っていたというのは前回も書いた。「がんこーじ」の刺身は嫌みがなく、しかもシコシコッっとした食感が心地よいので、非常に魅力的である。噛んでいると身(足)から甘味が出てくるので、最後までうまい。今回は高知県土佐山の柚子果汁と塩で食べたけど、柑橘類との相性が抜群にいい。ちなみにボクだけの個人的な考えだけど、貝の刺身と柑橘類のときにはジンとかウオッカが合う。ころころと切りつけた刺身を口に放り込んで、ウオッカで流す。ヴァランダーの深みにはまっているので飲んでいる、アブソルートととても合うのがうれしい。
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クロダイのみそ汁は夏なので濃い目

神奈川県小田原から持ち帰った魚で処理済みのもの(塩をしたり、ゆでて干したり)がまだかなり残っている。そんな魚の在庫を見てから八王子総合卸売センター・八王子卸売協同組合に行ったが、それほど欲しいものはない。八王子総合卸売センター、福泉でなんとなくクロダイを買う。小田原で話題に上ったからでもあるし、この日いちばん上等だったからだ。帰宅してクロダイを下ろしながら、一般家庭にもっとも取り入れてほしい魚料理、みそ汁を作る。中骨をとんとんと食べやすい大きさに切る。ボクは魚の臭みに敏感なので湯通しして霜降りに、冷水に落とし鰭際のぬるを流し、水分をよくきる。ちなみに沖縄本島泡瀬であったトビイカ漁師は、毎日飲むみそ汁、「いまいゆの魚汁(いうしる)」を作るときにはこんな面倒なことはやらない。適当に切って、水で煮るだけだという。考えてみると魚のみそ汁はいい加減に作るべきなのかも。家庭料理に向上心はいらないと思っているが、魚が苦手だった過去は捨てられない。差し昆布をした水に放り込み。昆布はあくまでもボク流であるのでやらなくてもいい。なににでも差し昆布をするのはボクのくせだ。煮立てて、あくをすくって多めのみそ(長崎みそ)を溶く。あとは、しょうがの搾り汁を数滴垂らし、ねぎを散らすだけ。みそは多すぎるくらいのみそ汁だけど、やけに体に効くのである。8月の大分県のクロダイは脂がのっていて、みそ汁の表面がギラついているし、強いうま味がある。市場から帰り着いて、なかなか去らなかった熱気がとれる。ちなみに先に述べたトビイカ漁師は、毎日飲むみそ汁、「いまいゆの魚汁(いうしる)」には、味の素的なものを入れるというし、チューブのにんにくも入れるという。チューブのにんにくは恐くてまだ試していないが、家庭料理にはルール無用(ルールというのは害があるけど益はない)なのでやってみたい。
ツバイの塩ゆで
コラム

和名が消えるかもわからない、ツバイ

ツバイは小型の巻き貝なので主に煮つけや塩ゆでで食べられている。身(軟体)は取りだし安く、煮ても軟らかく、甘味が強い。ワタに苦みがなく味わい深いので子供にも人気がある。安い上に、甘味があるので日本海側ではおやつとして食べたという人も少なくない。
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小田原魚市場で、ヒラソウダ、久しぶり!

ヒラソウダは産卵期の7、8、9月は不安定な時季だと思っている。9月下旬から安定する。海水温が下がるとともに脂がのってくる。それでは真夏(気象庁が定義する)はおいしくないか、というとおいしいのである。ヒラソウダは脂がのったものもうまいが、脂があまりない時季もうまい。8月8日、小田原魚市場に見事なヒラソウダが並んでいたので、買受人の『さんの水産』さんにお願いして1尾確保してもらう。今回のヒラソウダは体長44cm・1.492kgで大きい。丸々と太っていて触ると非常に硬い。三枚に下ろすと、身が赤く、脂はほどんとない。これが実にうまいのである。すいすいと箸が伸びてすいすいと胃袋に消えて行く。明らかに酸味があるが、うま味100とすると5くらいの比率である。とにかく舌がよろこんでねじれるくらいにうまい。今回は三重県尾鷲市の青唐辛子、「虎の尾」と酢と醤油で食べたら相性がよく、結局半身全部食べてしまう。プーアール茶で我慢しようとしたが無理だった。群馬県吉岡町、「船尾瀧 本醸造」をば冷やして小一合。
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長野地方卸売市場『万雷食堂』の定食

長野地方卸売市場(長野県長野市)、『万雷食堂』で朝の日替わり定食を食べた。サワラムニエルオイル焼き、納豆、食べ放題のサラダ、きゅうりの醤油味の漬物、みそ汁。どれもこれもおいしいし、満足度も高い。店員さんがほがらかで親切なのもいい。
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安楽島のサザエでさんで飯

三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中に「さんで(サザエ)」がたっぷり入っていた。荷物のふたを開けた途端に海の匂いがした。海の匂いというと「さんで飯(サザエ飯)」だろう、と素直にサザエの炊き込みご飯を作る。炊き込みご飯は炊き上がりがご馳走だが、予想通りにふたを取った途端に海の匂いがした。予想通りにうれしくてふわふわした。サザエは硬くない。たまには大人味にしたくて、生殖巣と少しだけの肝膵臓を投入してみたが、微かに苦みがある程度で子供味が好きなボクにもイケル。けだしサザエとは海のうま味と香りそのもので、醤油との相性が抜群にいい。朝昼晩と1日で2合を食べきった、ほどにおいしい。さざえめし 青空真下の 海女のたなごころ
コラム

松尾食堂にある戦時中の平貝丼

1944年、『松尾食堂』での話である。鎌倉に河岸(魚河岸?)があったらしいということも、非常に興味深い。〈……たまに麺米や平貝が俵で配給された時は、「平貝丼」——貝殻を割って取り出した生のままを5ミリ位の厚さに切り、煮立ったお醤油の中に、さっとくぐらせ、麺米の丼飯の上にならべる——を昼食に出しました。……平貝は現在出廻っているくにゃくにゃとやわらかい物と違い、逗子や鎌倉でとれた物でしたから身がこりこりと硬くしまっていて、大きな真黒な貝を割るのは大変でしたが、それはとてもおいしいものでした。〉「麺米」は資料ではみたことがあるが、実際には知らない。乾麺を細かく切って米粒のようにしたものとある。ゆでてご飯代わりにしたのだろう。それにしても逗子、鎌倉で平貝(タイラギ)が俵に入れて配給するくらいとれたというのは、信じられない話でもある。この湘南の海が今では開発が進み、いかに生き物の棲めない窮屈な海となっているかがわかる。タイラギの貝柱を取り出して、5ミリ前後に切る。これを煮立った生醤油につけて、炊きたてのご飯にのせる。さすがに麺米は探す気にもなれなかった。現代版「平貝丼」である。日本列島すべての人が不幸であった戦時中のことを思うと、申し訳ない気持ちになるが、ご飯に乗せて作る「平貝丼」は素晴らしい味である。みりんや酒を使わずにタイラギだけなのに、強い甘味が醤油にも感じられるのは、貝柱からにじみ出てきた甘味である。酢飯ではなく、ご飯というのがいい。
コラム

増毛産甘エビの刺身をたっぷり

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で北海道増毛産の甘エビ(ホッコクアカエビ)をたっぷり買った。魚を料理するには暑すぎるし、郷土料理を作りたかったのもあるし、いただいた食材と試したかったのもある。ちなみに北海道の甘エビ漁はほぼ日本海で行われているが、増毛では甘エビ(ホッコクアカエビ)、縞エビ(モロトゲアカエビ)、牡丹エビ(トヤマエビ)の3種前部が安定的に水揚げされている。もっとも行ってみたい町のひとつでもある。本種を生まれて初めて食べたのは学生時代で、アンノン族そのものだった家族とわざわざ銀座まで食べに行ったのだ。1980年前後、とてもトレンディな食べ物だったことがわかる。今や近縁種のホンホッコクアカエビとともに冷凍輸入されてもいるので、非常に身近な、どちらかというと地味なものとなっている。ただし、一度も凍らせていない国産の刺身はスーパーなどに並ぶ格安もののとは別物である。ときどき刺身を飽食したくなるのは、ただ単純にうまいからだ。頭は別の料理に使ったので、もう翌日になった頃に、安物のジンと合わせる。わさびと醤油だけで食べ始めると、非常に甘いけど、この甘いと感じる味はとても複雑である。ねっとりした身と甘いと感じる味とは一体で、口の中でなんの変容も起こさない。ここにスダチ果汁を落としただけのジンが合う。
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山口県日本海側の釣り針

巨大なシマセトダイを買ったら初めて見る釣り針を飲んでいた。夏であるし、マダイが同じ箱に入っていたので、そんなに水深はない。想像ではマダイ・アマダイなどをねらう延縄のものだろう。飾り気がなく、チモトからケンサキにかけてねむっていなくて真四角な感じ。明らかに漁師専用の針である。今どきの釣り人のキンキラキンとか赤いとかではなく、銀色で質実剛健である。最近の非常に高価な、船釣り用の針よりも釣れそうな気がする。■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。
シマセトダイの刺身
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巨大なシマセトダイと尾鷲の虎の尾

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に山口県下関市、『下関勇次水産』から真っ黒な魚が来ていた。パーチを剥がすとなんとシマセトダイだった。重さ2㎏はこの魚の最大級だと思う。刺身などいろいろ作っているときに三重県尾鷲市、岩田昭人さんから地元の青唐辛子、「虎の尾」が来た。毎年毎年とてもありがたい。助かります。シマセトダイの刺身を「虎の尾」、酢、醤油で食べ、翌日、安いジンの友にまた刺身を作った。2キロ級はめったに手に入らないと思うが、シマセトダイは小型はあまり味がなく、大きければ大きいほどおいしいと考えていたが、今回の個体など、まさにこれを立証していた。小型ばかり食べていたので、この格差に驚かざるおえない。なんと味のあることだろう。そこに「虎の尾」というのがとてもいい。今回のシマセトダイは、さほど脂がなかったものの、身に張りがありうま味が豊かである。舌に感じる味が長々と続きダレがない。
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安楽島のイワガキは蒸イワガキに

三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中にイワガキが入っていて、でかいのが1つ混ざっていた。最近、天然ものは小型化しているので、18cm・837gはすごい。これを今、いちばん食べたい蒸しイワガキにする。今年は我が故郷徳島県産も、いきなり知らない人がくれた産地不明のイワガキも蒸して食べている。最近流行りの言葉で言えば、マイブームというやつである。我がサイトのうまいもん順もイワガキの1位は蒸す、に変えている。今年に入って連続して作っているものの、今だに蒸し時間がよくわからない。5分蒸し、あとは2分ごとにみて、約10分くらい蒸した。これを食べやすい大きさに切って、すだち果汁を落としては食べる。鳥羽市安楽島のイワガキは産卵期はまだ先のようで、7月末日の個体は非常に食感がよかった。甘味や渋味は蒸すと少し弱くなるが、口の中でおいしさのとどまっている時間が長くなる。ずーっとうまい。実は、すだちはうまさのブレーキ役で、でおいしいの暴走をほどよく抑えている。酒はお礼にもらった缶アルコールいろいろの中から角ハイボールにしたけど、なんでもよかったかもな。
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北海道根室産小イワシの刺身はいい味だ

7月25日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で北海道根室市『坂井商店』からのマイワシを買った。棒受け網、花咲港揚がりである。1尾70gほどなので小羽サイズである。小さいのにものすごく高い。触ってそのわけがわかる。非常に脂が乗っているのである。しかも鮮度抜群。マイワシは最近、荷(一箱の大きさ)が小さくなり、仕立て(出荷法)で勝負する時代なのがわかる。触るそばから脂がにじみ出るので、刺身は決してきれいじゃない。脂が皮下に層を作るとともに身に刺し込んでいるからだ。1尾分、普通の濃口醤油と辛味控えめのボタンゴショウ(長野県中野市の唐辛子)で食べたら、脂だけではなく背の青い魚のおいしさにもあふれていた。あとはいただきものの鳥取県で醸された刺身醤油をかけ、にんにくをからめ、ご飯にのせて一気食い。関東の濃口醤油にはない、まったりした味の醤油と合わせると、やたらにご飯が進む。小羽なのに味が大きいね〜。
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テンジクダツの刺身がウマスギ!

八王子総合卸売センター、福泉に、ダツ(ダツ科テンジクダツ属)が来ていた。背鰭の軟条を数えているとみんなが見に来る。見ないでとも言えないので、とにかく数える。すべて25なのでテンジクダツである。1尾買うか、2尾買うかで迷った末に大きなものばかりだったので1尾だけ。ものすごく忙しい日だったので産地を見忘れた。これがボクの今季初テンジクダツ属である。8月から晩秋まで途切れることなく入荷してくる。味のよさを知る人が少ないので安いのもありがたい。押っ取り刀で家に帰り、大急ぎで下ろす。1m近いので半分にして三枚に下ろす。前の方は腹骨や血合い骨が複雑なので、腹鰭の少し前から後ろを刺身にする。この部分は血合い骨こそあるものの、マサバなどとなんら変わりがない。すすーっと刺身にして味見すると、びっくり仰天、脂たっぷりうま味も強い。なにより程よい食感があるのがいい。朝なので、凍頂烏龍茶の茶の子にしたらおいしすぎて、困るほどだった。お昼ご飯もテンジクダツの刺身定食。夜、群馬県前橋市、「桂川 本醸造」ロックで口中を洗いながらくらう。かなりたっぷり食べたのに飽きが来ない。これから背鰭の軟条を数える日々が続くけど、楽しい日々でもある。
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困ったときのツムブリの腹身の塩焼き

今、創造の世界にいて頭を叩いたり、脳みそをかき混ぜたりと、外出できないので仕方がなく保存食でご飯を食べる。最近のご飯は簡単ご飯で、一汁一菜なので、冷凍庫でめぼしいものを掘り起こす。出て来たのはツムブリの腹身で、すでに振り塩をしてある。下ろした日に左右の腹身に振り塩をし、1時間以上置き、水分を拭き取る。片方を焼き、片方を冷凍保存した、その片割れである。室温28℃もあるので、解凍はあっと言う間、水分を拭き取って焼くだけである。取り分け脂が豊かな部分なので、すぐにグリルの中で小さな炎があがる。焼き上がりが早いのでまめに位置を変えて、ひっくり返す。
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夏のタイラギの味は?

7月25日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産でタイラギを買った。いちばん悪いときなのにビックリするくらい高い。八王子というところは豊洲などと比べると安いにも関わらず、この値段か? と、知りあいのすし屋と顔を見合わせた。それでもすし屋は買って行くし、ボクも1つだけ買う。夏枯れに、大型のタイラギはありがたいくらいなのだろう。貝殻の長さが31cm・重さは614gで、軟体の重さは2割前後と痩せていた。生殖巣は見られなかったので、産卵後だと思われる。ただ、下ろしたら貝柱はそれほど痩せていない。すし屋のすごいところは重さや脇から見た感じで、良し悪しを見極めているところだ。ボクが買おうと思ったのも、すし屋の見極めを信じたからだ。貝柱はふくよかさに欠けていたが実にいい味であった。食感が心地よく、うま味が非常に豊かでしかも独特のおいしい渋味がある。甘味は後から追いかけてくるのだけれども、こちらも強い。ついでに言うと、びら(外套膜)がやたらにおいしかった。小さい方の貝柱も同様にうまい。7月末日の産地不明のタイラギはアタリだったが、自分で選ぶ自信はない。
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安楽島のサザエは素直に刺身、刺身

三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中にサザエがたっぷり入っていた。今、創造の世界にいて、引きこもり状態となっているので、ありがたや♪ ありがたや♪ by守屋浩である。(ちょい旅先で耳に飛び込んできて、頭から離れない。これはまさしく名曲だと思う)大きめのサザエを剥き身にして苦味のある内臓は少しだけ残し、足を刺身にする。ワタは湯通しして氷水に落とし、水分を切る。ちなみにサザエは剥き身にしやすく、刺身にしてもぬめりが少ない。巻き貝の中でももっとも難易度が低い。しかも料理に困ったらそのまま壺焼きにすればいい。たっぷり造って、たっぷり食べたいのがサザエの刺身だ。これにいただきものの『夢産地とさやま開発公社』(高知市土佐山桑尾)の柚子果汁をじゃぶじゃぶかけて、塩味で食べる。ちょうどヴァランダーを再読したいと思っているので、酒はスエーデンのアブソルートのソーダ割り。刺身を楊子でちまちま口に運んではアブソルートで舌を洗い、またサザエでアブソルートというのがいいのである。サザエの刺身は磯というか海の香がする。海風を思わせる味でもある。大量に造っても足りないくらいにボク好みの味で、合いの手で食べるワタも少しだけならいい感じである。刺身を食べ終わった途端、意識が遠のいて行く、ありがたや♪ ありがたや♪
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つるぎ町貞光生まれの理想の素うどん

ボクが生まれた徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)には、「うどん屋」はあったけど、「そば屋」はなかった。あくまで麺の話ではあるが、県の真ん中あたりにある剣山に、近ければ近いほど「そば食文化」で、街中にくると「うどん食文化」だった。商店だったので、小学生くらいになると店が忙しいときは、歩いてすぐのところにある、『みどり屋』か、『飯田食堂』で、うどんか中華そばを食べた。配達で奥(一宇村もしくは端山村)に行くと、土釜のうどんを食べることが決まりだった。これがボクがときどき再現している理想のうどんである。理想の素うどんのうどんはゆでうどんであり、温めるとき、芯まで温めるが熱くしてはいけない。噛んで熱いと感じたら失格だ。つゆは煮干しでとったつゆで角があって、きれがよいもので、最初に塩気が来て、醤油のこくがあり、後からうま味の大波がくる。終いはサラリとした感じるのが理想だ。丼の中全体があまり熱くないのでするすると、短時間で麺をすすり込み、もういっぱい食べたくならないとダメだ。それにしても東京に真っ赤な「板つけ」がないのが悲しい。致し方なく、油揚げを刻んだが、「板つけ」やーい、とぞ思う。ついでに丼は1950年代以前のものだけど、今現在のうどん1前を入れるには小さすぎる。うどんは昔は間食のようなものであって、食事ではなかったのだ。これに合うゆでうどんがあるともっともっと理想的だ。
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難易度高めのオニサザエ

三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中にオニサザエが入っていた。せっかくなので「食用貝類基本のキ」を書く。オニサザエは食用貝だが、認知度はきわめて低い。知っていたら学者級である。オニサザエはアッキガイ科テングガイ属の巻き貝だ。この属の巻き貝は国内に約16種いるが、大型は総て食用貝である可能性が高く、おしなべて味がいい。本種は房総半島・能登半島以南の浅い磯(岩礁域)に生息している。褐色で岩そのものの色合いで黒褐色で、非常に刺々しい。棘はざらついて長い。ちなみに同じアッキガイ科テングガイ属のオニサザエ、センジュモドキ、ガンゼキボラの3種は同じように浅い岩礁域にいて、同じ食文化を作っている。手に入れていないがセンジュガイもそこに入ると思われる。4種は非常に似ていて、貝の同定に熟達していないと区別がつかないので、よくとり違えられていることも知って置くべきだ。ただし実見した限りでは、いちばん小売店などで見かける機会が多いのがオニサザエで、また地方名も多い。『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)とボク自身が集めた呼び名を整理するとその特徴が浮かんでくる。「棘」や「針」、「鬼」がつく名前が多いのは棘だらけだから。鳥羽市安楽島の「がんこーじ」は直感的だが「岩」に関係しているでは、と考えている。同様な例では「岩ぼら」がある。「さざえ」と呼ぶ地域があるがこれも「細石」の転訛だとしたら石のことだ。「鬼の手拳」、「鬼の手ご」なども貝殻が非常に硬いことと、その刺々しいところから来たのだろう。
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福島県浪江町、請戸の「ふっこ」を塩煮に

石川県・福井県に「塩いり」・「浜いり」、沖縄県に「まーす煮」というのがある。やや強めの塩水で短時間水分を飛ばしながら煮るというもの。郷土料理ではあるが古代には日本列島全域で作られていたものだろう。また我がサイトでデータとして聞取し、画像を持っているのがこの3県だけだという話で、全国を見渡すといずれかの地域に同様の料理が残っているはずである。スズキの頭部やあらを塩煮にしようとして、豆腐がないことに気がついた。塩煮の豆腐は魚以上にうまい。非常に残念だが、なければそれでいいのが家庭料理のよさなのである。ていねいに鱗をとり、水分をきったあらを用意する。大きめの鉄鍋に水と多めの塩を煮立たせたなかに放り込む。あとは一気呵成、終始強火で煮るだけである。物理的には塩分濃度の高い煮汁の中にうま味が出てしまいそうだが、出ない。水分量が少ないためだと思う。それでも煮汁は非常に味が濃い。塩が濃いというよりもうま味豊かだと言えばわかってもらえるだろう。請戸のスズキが非常にていねいに処理され、乗っているためだろうか、煮上がりが美しいし、非常に柔らかい。全部が全部おいしさの塊のようである。最近、長野県長野市「若緑」本醸造をロックで飲む、そんなひ弱なボクだけど、いい酒の時間が過ごせた。
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ツムブリとイタリアナスのソテー

イタリアナスはイタリア語でVioletta di Firenze と言うらしいと、近所のオバチャンが調べてくれた。最近、やっちゃ場(青果市場)では在り来たりな野菜らしい。初めて来たときは飛びついたが、今は安いときだけ買う。近所のスーパーにもあって、かなりお高かった。八王子総合卸売センター、八百角ではなく普通の店で買うと高いのだろうな。これをツムブリとソテーしたら、丸ナスとか普通のナスよりも上、とまでは言えないけど、切身のふんわり感にナスのふんわり感がとても調和してよかった。要するにツムブリを多めの油でソテーすると、うま味と、焦げた風味がじわりと出る。それを少しだけふんわりしたイタリアナスが吸う。なんだか食べでがあるし、一気に食べてしまうだけの魅力がある。昼に、これと凍頂烏龍茶だけで、夜まで間食なしで過ごせた。腹持ちのいいナスである。本当の主役はツムブリなのに、脇役のはずの西村晃が目立っていたといった感じ。
ツムブリのなめろう
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銭州のツムブリでなめろう

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが銭州で釣り上げて来たもので、3㎏を超える雄の白子持ちの個体でこれでもか、と料理した。中でももっとも大量に作ったのが「なめろう(みそたたき)」だ。「なめろう」は、「みそたたき」の千葉県外房での呼び名だが、特徴は酢で食べることだ。「なめろう」はできるだけ切れる包丁で、ツムブリの身、夏の青じそ、みょうが、長野県中野市の青唐辛子「ぼたんごしょう」、静岡県浜松市『加藤醤油』の「大地」というみそでかなり徹底的にたたく。魚のうま味に香辛野菜の味、夏の青唐辛子の辛味、そしてみその味わいを全部足し算したのが「なめろう」である。「うまいに決まってるだろう」と千葉県千倉のオッカサンに言われてことがあるが、「なめろう」は作る魚で味が違っている。アジ科の魚はすべて「なめろう」に向いている。あまり脂が乗っていなかったツムブリだけど、豊かなうま味がある。酸味はほとんどないが、酢をつけながら食べることで夏の熱気が失せる。小型のツムブリで作ったことはあるが、うま味は今回の個体ほどにはなかった。鱠皿いっぱいのツムブリの「なめろう」が見る間に消えて行く。それにしても浜松市のみそはうまい。「ぼたんごしょう」の辛味もいい。半分翌日の「さんが焼き」に残したいと思ったが、残せなかった。「なめろう」に合わせたのは、サッポロの銀座ライオンビヤホールスペシャルという、長い名前のビールを350mlだけ。なめろう(みそたたき)はビールにも合う。
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福島、請戸ものの「ふっこ」を塩焼きに

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に福島県浪江町請戸から「ふっこ(スズキの若い個体)」が来ていた。いわき市の『海宝水産』からで、体高があり、背が左右に膨らんでいる。触らなくても上物だ、と思えたので、いきなり確保する。体長34cm・0.6㎏なのでまさに「ふっこサイズ」だ。以上は前回書いた。今回は刺身、塩焼き、煮つけと平凡な料理ばかり作った。取り分けおいしかったのは塩焼きである。塩焼きの作り方は切り身にして振り塩をするだけ。コツはすぐに焼かないことだ。できれば1時間以上は寝かして欲しいものである。今回は買ったその日に振り塩をして、翌日夜に酒の肴に焼いた。ときどき小さな炎が上がるので、焼け具合を見ながら焼く。皿に盛り、いの一番に香りをいただく。汽水域に多いスズキは皮目の香りが御馳走である。
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銚子産キハダマグロの刺身

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産でキハダマグロの若い個体18kg前後のロインをサクにしていた。忙しい日だったので1サク買って帰ってきた。キハダマグロのサク買いは安くて、おいしくて、市場から帰った日のお昼ご飯にすぐ食べることができて、といいこと尽くめである。ちなみに築地に大物競りを見に通っていた2005年から2010年くらいまで、大物競り場でたくさんの人の話を聞いた。本マ(クロマグロ)だけの築地だとばっかり思っていたら、意外にキハダマグロを好む仲買が決して少なくないことに気づいた。大物の目利きで、キハダマグロをついでに競って帰る人がいる。気になったので、キハダマグロを競り落とした方の店までサクを買いに行ったこともある。このサクのおいしかったこと、は今も忘れない。以来のキハダ好きである。ちなみに雑喉場研究家だった故酒井亮介さんは、大阪の「はつ好き」(はつは大阪でのキハダマグロの呼び名)は産地である紀州(和歌山)が近いからだと言っていた。東京では周辺であまりとれないので、あまり食べなかったようだ。それが今や東京近海はクロマグロよりも、キハダマグロが多い気がする。関東でもキハダマグロをふんだんに食べるべきなのである。銚子産のキハダの刺身がやたらにうまかった。18kgくらいだろうと言っていたが、もっと大型かも知れぬ。もちろんクロマグロの脂の甘さや濃厚なうま味はないものの、さらりとおいしくてちゃんとマグロらしいうまさが楽しめる。
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伊豆諸島あたり、クサヤモロの炊き込みご飯

節約生活になり、やってくる荷物を待ったり、テレビ電話に応じたりで、外出不能となったときは、炊き込みご飯とあいなる。炊き込みご飯は簡単だし、しかも素材を無駄なく使える。7月半ば、八王子卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが利島か銭州で釣り上げた、クサヤモロを塩焼きにした。大失敗して炭っぽくなったのを、捨てないで表面の粉状の炭をこそげ取り冷凍保存して置いた。解凍してあらくほぐして、小骨だけをよけて。中骨などはそのまま、醤油・酒で炊き込む。炊き上がりにミョウガ、粗挽き黒コショウを混ぜ込み、長野県北信の青唐辛子「ぼたんごしょう」を刻み盛る。焼きすぎた塩焼きを炊き込むと、焼きすぎがむしろ味となる。クサヤモロは脂こそそんなに豊かではないが強い味がある。このところし醤油味で炊き込んでいるが、醤油の風味との相性もいい。黒コショウのピリもいい感じである。鉄釜での2合炊きで、4食分になるのだから助かる。大量買いした安い緑晩茶ではなく、静岡県掛川の上煎茶を淹れる。
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広〜い長野県北信地方の,丸ナス

中野市、長野市、飯綱町、信濃町の北信地方のナスといったら丸ナスである。実際、この地域のスーパーにも直売所にも、普通のナスもあるけど、地元で栽培されだろう丸ナスが幅をきかせている。新潟でもナスの分布域を調べたいけど、まだ実行していない。今現在新潟県の情報は妙高市新井の女性も丸ナスをよく食べていたということだけだ。長野県飯綱町の滝澤さんにも、信濃町の老人にも、中野市のそば屋さん、妙高市の女性にしても、基本的な料理法は油で炒める、である。実際、多めの油でソテーして、醤油をかけ回して食べると、やたらにおいしい。もちろんみそ汁に入れてもいいけど、油を使った料理に向いている気がする。■写真は丸ナスを青唐辛子の「ぼたんごしょう」と多めの油で炒めて醤油を回しかけたもの。
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カツオの血合いのミンチカツ

生まれて初めてのミンチカツは、徳島市内、市場で買ってもらったものだと記憶してる。ボクの生まれた徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)商店街の、家の通りを挟んだ正面の肉屋にはなかった気がする。上京したら「ミンチカツ」じゃなくて「メンチカツ」と書かれていた。それほど気にしないでミンチカツと言ったりメンチカツと言ったりした。東京都世田谷区弦巻の洋食店で、1週間に1度だけ外食していた時期があって、メンチカツばかり食べていた。ロースカツよりも安かったからだ。どうやら関西圏ではミンチカツで、関東ではメンチカツみたいだと明確に脳みそに刻みつけたのはその頃だ。ということでカツオの血合いを叩いてカツ(フライ)にしたものも、徳島生まれのボクにはミンチカツかな。ナツメッグがきいているのもいい。いつもは牛乳を使うのだけど、切らしていてバターと卵黄、小麦粉を加えてソフトにした。ミンチにしてもカツオ特有のうまい、がぐんぐんと舌を押してくる。しっとりしているのはバターのせいだが、硬く締まりがちなカツオの身が柔らかいのもいい。じゃぼじゃぼとウスターソースをかけて、お昼ご飯にする。
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小さいけど、ケンサキイカはケンサキイカ

そろそろイカだな、と思って八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産の店先に行き。バライカ(スルメイカの若い個体)にするか、ダルマ(小型のケンサキイカ)にするか迷って、ケンサキイカを2はいを手に取る。長崎県平戸産である。メヒカリイカ型(小型のまま繁殖する個体群)で小さいが抱卵していた。素直に刺身にして酒の肴にする。小さくてもちゃんとねっとりして甘い。非常に味が濃い。意外なおいしさにちょっとだけ驚き、味のメモをとろうとして文字が浮かばない。平戸産小型のケンサキはうまいとしか書きようがない。
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ミョウガの足でみそ汁

ミョウガの足のみそ汁をすすりながら暫し思ったこと。「ミョウガの足」は東京都八王子市やっちゃ場(青果市場)での呼び名で、高知県では「みょうがの茎」というらしい。八王子総合卸売センター、八百角で見つけると必ず買うもので、根本は少し硬いが赤茶色の花(?)の部分は柔らかい。ミョウガのみそ汁は毎日でもいいので、これをざくざく粗く刻んでだし(このときのだしは、アジ節/ムロアジ、さば節/ゴマサバに日高昆布)にぶっ込み、みそを溶く。ミョウガは物忘れもしそうだが、暑さ忘れも出来る。
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松尾食堂での、むつ子から鱈子へ

『松竹大船撮影所前 松尾食堂』(山本若菜 中公文庫)は単行本としては1986年のもの。神奈川県鎌倉市大船、撮影所前にあった『松尾食堂』の歴史でもあるが、ここには松竹大船撮影所の歴史というか映画の歴史がある。食堂という場所でなければ見られない映画監督、俳優の、地の部分が垣間見えるのも面白い。文章の中に少ないながら料理の変遷や料理名の変化が見て取れる。
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銭州のツムブリは久しぶり

年間を通して、いろんな大きさのツムブリを食べているが、やはり2㎏以上がおいしい。旬は8月以降で秋が深まると脂が乗ってくる。7月の3㎏ものは小さな白子を抱えていた。産卵はまだまだ先である。毎年、8月後半から脂が乗ってくるので、7月はまだ脂の乗りはわるい。ただ獲物を飽食しているのだろう。刺身は食感がほどよく強いうま味がある。この味が舌の上で延々と残る。
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エゴマの醤油漬けでご飯

エゴマの醤油漬けでご飯、というのがやたらに好きだ。醤油と胡麻油で1枚1枚漬け込んでいるだけの醤油漬けは、ご飯をどんどん消費していく。やめられなくなる。しかも夏を感じる味でもある。エゴマの独特の風味はエゴマの風味としか表現できない。青じそとの違いは葉に甘みがあることかも。そこがご飯に合う。
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山田のさばカツはよくできている

水産生物と人間との関わりを調べている限り、普通の小売店、魚屋、スーパー巡りは欠かせない。市場や漁場で水産生物を探しているだけでは、なんにもわかりはしない。さて、長野県飯綱町、第一スーパーで見つけたのが「山田のさばカツ」だ。大分県佐伯市『山田水産』が作っているもので、九州から北信に送られて来たんだな、というのも感慨深い。大きな会社らしいが、このようなオヤジの琴線に触れる商品を作っているところがすごい。サバのカツ(フライ)に甘辛いたれを染み込ませたもので、実にイケている味である。ちょっと温めるとやたらにおいしくて、もうひとつの「さんまの蒲焼き」も買えばよかったと後悔した。ちなみに最近、やたら無機質なラベルの、無機質で上品な加工品が多くなってきている。ちっとも魅力的ではないけど、売れるんだろう。「山田のさばカツ」のような人間味のある商品が増えるといいな。たぶん今どきの若い衆も好きだと思う。
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男鹿沖、痩せている赤テリ

秋田県男鹿半島沖、痩せた個体が多い場所の赤テリ(ウスメバル)を刺身、焼霜造り、煮つけ、バター焼きにしてみた。3尾いて一番左右幅のあるものの刺身は、非常においしかった。ウスメバルは漁期ははっきりしているが、卵胎生の魚の特徴として旬がわかりにくい。今回、この個体だけ身に張りがあり、刺身に引くと味と甘味があった。舌の上で味のだれがない。このおいしさは予想外。
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ほとんどの地域で価値が低すぎる、コノシロ

コノシロは北海道南部から九州までの汽水域や内湾に生息している。内湾にたまった泥を飲み込み、中にいる珪藻や甲殻類などを食べている。「子代」という漢字を当てることがある。下野に住んでいた娘と有間皇子(ありまのみこ。孝徳天皇の悲劇の皇子。640年-658年)が登場するわざとらしい話があるなど、話題豊富な魚である。大都市圏のある内湾域に多い魚なので知名度は高い。古くからの共通固有名詞があるので、なんらかの形で古代に流通していたはずである。この魚の問題点は食べる地域が狭すぎるということだ。関東では全長20cmくらいまではすし種に使うが、それ以上になると流通量がぐっと減り、最底辺の価格帯になる。当然、産地で水揚げされても廃棄(フィッシュミール)などになることが多い。■写真は全長25cm以上の「このしろサイズ」のコノシロ。
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福島、請戸ものの「ふっこ」が素晴らしい

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に福島県浪江町請戸から「ふっこ」が来ていた。いわき市の『海宝水産』からで、体高があり、背が左右に膨らんでいる。触らなくても上物だ、と思えたので、いきなり確保する。体長34cm・0.6㎏なのでスズキとしては小振りである。帰宅後、下ろしながら浮き浮きしているボクがいる。「野バラ咲いてる♪」を唄っているボクがいる。下ろすのが楽しい。活け締めしたばかりのような身色だし、味見すると心地よい食感だし、とりあえず、昼ご飯のおかずにして楽しむ。うま味豊か、小振りなのに、脂の乗りがほどよい。醤油なしで食べても、おいしいのにびっくり。おいしい刺身はご飯がいい。酒の味が邪魔ですらある。それにしても20年以上前の請戸のことが思い出される。福島の水産は新しい時代を迎えているのかも。
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メバルの画像整理をしながら

都心に出たり、テレビ電話(なんていうんだろう?)とか、あまりに生活が苦しいので、なんでもかんでも引き受けている。たまには本音を言わせてもらうと、水産生物と人との関わりを調べるのってとっても大変なのだ。自己否定の繰り返しなので、精神的にも辛いし、めまいの症状が出てしまう。さて、メバルは2008年まで1種とされていて、それが3種に分かれる。それ以前に撮影したネガもポジもデジタル画像も3種に分けていないわけで無意味なものとなる。比較的無意味ではない画像を整理していたら、ここ1週間でたぶん5時間くらい時間を消費している。ボクは、日々大量の水産生物を撮影して料理しているし、テレビ電話とか、いろんな仕事上の相談とかがあるので、このメバル3種に費やした5時間だってバカにならない。ただ3種に分けた魚類学者は何年もかけて、遺伝子まで調べているわけで、その研究に費やした時間は信じられないくらい膨大だろう。3種に分けるということは19世紀、キュビエの時代にまで遡る必要があるのだ。例えばタイプがフランスにあるとしたら、とか考えると息苦しくなる。その話をテレビ電話で Dに話したら、「(2008年なのに)昔にもさかなクンがいたんですね」と言われてびっくりした。さかなクンには会ったことがないので実力はわからない。でもテレビを見ないボクにとっては、著書がない。論文もない可能性が高いし、あっても第一著者論文はないんじゃないかな。動物学はある意味論文が総てなので、ボクにとってさかなクンは無でしかない。それをこのメバル3種に分けたある意味、偉大な魚類学者たちになぞるのはあまりにもハレンチじゃないかな?思わず、Dにバカと言ったことは後悔しているが、本音だぞ、と言いたい。念のために、過去に、さかなクンの番組のホンカキに対して不愉快だなと思ったことはあるが、本人に対しては白紙である。会ってみないとわからないけど、さかなクンというのは魚類学者ではないと思っている。
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ビンナガマグロはバヌアツ産

近所のスーパーの魚売り場は定期的に見て回っている。ボクは水産生物の一般性を調べているので、これをやらないわけにはいかない。今や水産物の「一般を感じられるもの」はスーパーにしかない。売り場で唄を唄っている人がいた。「マグロはマグロ〜♪」もちろん聞き耳を立てているので聞けたというくらいの小声で。ふたりの会話はあっちのマグロはこっちの半分の大きさでほぼ1000円、こっちは半額で大きさは2倍、「同じマグロなら、これでいいわ」ということらしい。ボクのお目当てもビンナガで、国内で豊漁と聞いたから来た。残念ながら宮城県産も和歌山県産もなかった。3軒のスーパーをまわり、2軒にビンナガがあった。こちらのスーパーの産地はバヌアツで、もう一軒は太平洋産だった。せっかく鼻歌を盗み聞きしたので一冊買った。なにしろあっちの本マグロ解凍の2分の1の値段は大きい。ビンナガマグロは脂こそのっていないものの、酸味がほどよく、味がある。ボクはマグロなどなんでもいい派かも知れない。
コラム

我がデータベース最北、男鹿沖のムツ、脂あり

近藤亮さん(第八松宝丸 秋田県男鹿市)に秋田県男鹿半島沖の魚を送っていただいた。中にムツが混ざっていた。これが我がサイト、最北のムツである。圧倒的に伊豆諸島以南の太平洋側に多く、日本海のものは少ないので非常に貴重である。近藤さんには感謝しかない。さて、今回の体長25cm・重さ299gの個体は、相模湾では深場に落ちていく途中のサイズである。近藤さんが釣り上げた水深も120mなので、だいたい相模湾と同じではないかと思っている。さて、男鹿沖のムツであるが、脂が乗っている。この点でも相模湾のものと変わらない。水洗いして三枚に下ろすと、包丁が微かに重い。頭に近い方は皮を引き刺身にする。ムツの脂は非常に上質でさらさらしており、下に接触するととろっと甘く感じる。身は柔らかく舌にねっとりしている。一昨年の兵庫県香住産同様、非常にいい。上物といっていいだろう。
コラム

バライカのげそかき揚げで半田素麺

このところバライカ(スルメイカの若い個体)ばっかり買っている。魚がないからで、市場でも買い、東京都杉並区下高井戸、いつもの肉屋そばの魚屋でも念のためにバライカを買った。小さなスルメイカほど重宝するものはない。それなりに、たまった冷凍げそを解凍し、布巾に包んですりこぎでしばく、たたく、しばく、そして細かく切る。郷土料理のために買った水耕栽培の三つ葉を適当に刻む。ボウルにバライカのばらばらと、刻んだ三つ葉を合わせて小麦粉をまぶす。徳島県美馬郡つるぎ町、杉本手延製麺の半田素麺は、だいたい4分から5分で茹で上がる。ゆでている間にバライカ・三つ葉のボウルに衣を投入してしゃもじですくっては揚げる。思い切って強めに揚げてかりっとさせる。素麺が茹で上がったら冷水に取り、水を何度か取り替え、少し揉み洗いして、水切りをする。つゆは長崎県平戸市の「あご煮干し」でとっただしに、塩・みりん・薄口醤油だ。

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