今、食生活に必要なのは知識だ。イトヒキアジ

近所のスーパーに並んでいたイトヒキアジで沖縄料理を作る


近所のスーパーで売っていた愛媛県産イトヒキアジは、魚価が高騰している中にあってもとてもお買い得だった。
おいしい魚だが、知名度が極端に低いので安いのだ。
めぼしい魚のない日で唯一光り輝いていたのにだれも気がつかない。

その日、探していたのはおかずになる魚だ。
2切れで321gあるので、独り者なら4食のおかずになる。
当日はボクの本棚を撮影に来た若い衆がいたので、一緒に試食していただく。

作ったのはバター焼きと、まーす煮だ。
沖縄では「がーらのバター焼き」、「がーらのまーす煮」だろう。

「バター焼き」は切り身に塩コショウして小麦粉をまぶし、多めの油で焦げ目がつくくらいソテーする。
仕上げに油をすて、マーガリンをからめる。
たべる直前にしょう油を垂らす。

ボク以上にカメラマンさんが夢中になる。
温めたパンを渡すときれいさっぱり食べてくれた。
イトヒキアジは少し味が淡泊すぎる。
上品な味の魚にはマーガリンのようなインパクトのある素材が合う。
焦げたマーガリンの味と上品な身の対比がいい。

沖縄の郷土料理「がーらのまーす煮」


まーす煮はただ単に塩味で煮るだけである。
比較的強火で短時間で煮る。
煮上がったら身をほぐして煮汁とからめながら食べる。
塩味は身にしみこむことはない。
身はただただ上品な味で、この上品な切り身からこんなにうま味豊かな味が煮汁に染み出すのだ、という驚きがある。
カメラマンさんが豆腐のおいしさにびっくり仰天している。
ボクが初めて「まーす煮」を食べたときと同じだ。

イトヒキアジ知っているか、知らないのか


食料が豊富で温暖化の恐怖を感じなかったとき、危機的な状況が表面化しなかったときには、食生活はただただいろいろ食べるだけでよいと思い込んでいた。
今やそれは許されなくなっている。
温暖化がこんなに早く進むとはだれも気がつかなかったと思うけど、それ以上に「食べる」というヒトがいちばん自然と向き合う部分に、知識は欠かせなくなっている。
イトヒキアジを知っているか、知らないかはとても重要なのだ。


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