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千葉県の食堂でトンカツ定食を食べていた。自宅では魚貝類しか食べないので、外食ではついついトンな気持ちになる。水産生物とヒトとの関わりを調べていると、その膨大な情報量と、広大無辺な世界に圧倒されて常に疲労感に浸かっているわけで、時々溺れそうになる。要するに息抜きの獣肉食いというやつだ。ところが今回、みそ汁を飲んだら、明らかにシジミの味がする。そう言えば神保町の『いもや』もシジミのみそ汁なのだから、トンカツにシジミはつきものなのかも知れない。汁を飲み干し出て来たのは、見た目的に微妙な個体だった。ただし味はシジミ科のなかでも、ヤマトシジミ(もっとも一般的なシジミ)そのものの味である。
国内で揚がる食用魚でもっとも不思議な姿をしているのが、棍棒のような形をしたアカヤガラとアオヤガラだ。両種は見わけがつかないくらいに似ている。両種を釣り上げた経験がある方ならわかると思うけど、アタリが変だ。魚が来ているのか、それとも隣とお祭りしているのか、それともジャミなのかわからない。なんとなくスーッと引き込まれるようなので、とても魚のアタリとは思えない。そのスーッと感じる時間が長いため、少しきき合わせると、抵抗して強く吸い込もうとするのがわかる。これこそが典型的なヤガラのアタリである。少し待って合わせると釣れていたりする。
イサキとはひとりぼっちで悲しい魚だという話をしたい。本州、四国、九州にいる魚で、漁獲量は多獲性魚類(サバ類、マアジ、サンマなど)であるマイワシなどと比べると少ないが、決して魚全体からみると決して少なくはない。外洋に面した磯(岩などが多い浅いところ)にいる魚で、漁港や岩場などから海をのぞくと小型なら見られるくらい在り来たりの存在である。しごくおとなしい顔をしており、歯は小さく、エサは甲殻類や小さな軟体類であるイカタコなどで、食い殺すのではなく飲み込むタイプである。小エビなどにとっては優しい悪魔だ。ここまではイサキの解説だが、まずは食用魚イサキって知ってますか? から始めなくてはいけない。たぶんだけど、この国に住むほとんどの人は知らないだろう。昔、マスコミ関係の話し合いで、食の専門家ですらイサキを知らない人がいてビックリしたが、これが現実だろうなと思ったものだ。ちなみにこの国の料理研究家は最低限の植物(野菜)と、鶏肉と豚肉、牛肉だけ知っていて、ご飯が炊けて、パンでも焼ければなれそうだと思う。間違いなく水産物の知識はゼロでもやっていける。この国のほとんどの人が食べ歩きには興味があるが、料理にも食材にも興味がないのだから、仕方がないだろう。
同じように日本海側で水揚げされて、大きさも見た目もあまり変わらないのが両種だ。両種を並べるとわかるが、1種だけを見ているとわからなくなる。トゲザコエビを「モサエビ」、「クロエビ(黒えび)」、「ガスエビ」。クロザコエビを「ホンモサ(本もさ)」、「シロエビ(白えび)」、「シロガスエビ(白がすえび)」。以上のように呼び分けている地域もある。また両種を区別しないで同じ呼び方をする人も多い。クロザコエビの方がトゲザコエビよりも生息する水深が深い。2種の見分け方クロザコエビ(向かって左) 13cm以上になり、体はに薄いベージュ。数が集まると明るい色合いをしている。殻が柔らかい。体がずんぐりしている。尾に近い節に鞍掛状(左右振り分け)の暗色横帯がある。トゲザコエビ(向かって右) 体長12cm前後で、体は暗色。数が集まると黒っぽく感じられる。殻がやや硬い。クロザコエビと比べるとスマート。体幹部分の体節の殻の下半分に白い縁取りがある。
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