
スーパーで魚を見ない、買わない人は水産学者もしくは水産研究家としてはダメだろう。水産物の今は最低限都会ではスーパーにある。定期的に通っているスーパーに本マグロのあらがあった。新潟産だとある。豊洲市場で日本海産本マグロ(クロマグロ)をたくさん見たばかりなので当然だとはいえ、うれしくなった。刺身用の冊ではなく、びっくり値段のあらを買う。1パックのあらで料理を3つ作ったが、春めいてきたとはいえ、冷え込む夜に作るのは「ねぎま」である。江戸時代、クロマグロの1m20cm(4尺)前後までは高かったが、それ以上、すなわち「まぐろ」は上流の嫌う脂がのっていたので安かった。庶民が手軽に購うことが出来た。これで作り出された料理が「ねぎま」だ。大型のクロマグロは江戸時代、江戸の町には駿河湾や相模湾、外房、伊豆大島でとれ、押送船(手こぎの早舟)などで送られて来ていた。江戸の町だけではなく甲府(山梨県)にも「まぐろ」は送られていたようだ。今にみる山梨県のマグロ好きは江戸時代に源を発していたのだ。当然、「まぐろ」イカだけではなく、「まぐろ」も生でも食べていたと思っている。ただ、残念なことに江戸の書籍にカツオの生食である漬けやたたき(湯引き)、鱠はあっても、「まぐろ」は出てこない。「ねぎま」は醤油仕立てでネギ(葱)と「まぐろ」で作った汁、もしくは鍋だ。基本的に割り下で煮ながら食べる鍋、もしくは汁にする。寒い時季なので鍋にしたが温かくなると汁に替える、というのが江戸時代などの決まりだったかも知れぬ。割り下は今回は砂糖抜き(入れる入れないはご自由に)でみりん・酒・醤油・水をちょうどいい加減に合わせて一煮立ちさせたもの。あらは血合いの少ないところを適当に切り、ゆどうしして冷水に落として粗熱を取り、水分を切っておく。ねぎは鍋の深さに切るだけ。後はことこと煮るだけ。煮るとほろっと柔らかく、筋がぷるんとして滋味豊かな味がする。煮えたねぎがやたらにうまい。酒は菊正宗純米樽酒で、冷やさない冷やでやる、

千葉県内房竹岡産に味をしめたので、地元、八王子の市場で、こんどは活け締めのクロダイを買う。産地不明で1.5kgもある。刺身にして、煮つけにして、塩焼きにしてと食べて、おいしいにはおいしいものの、味ではひとまわり小さい竹岡産に軍配が上がる。やはり活魚がいいのか、もしくは卵巣の膨らみは今回の方が大きく、そこに味の優劣が出たともいえる。春のクロダイは生殖巣の成熟度で味が決まる。あまり成熟が進んだものはおいしくない。2月もあと数日という日である。昼間は暖かいが、朝夕は寒い。まだまだ冬の鍋がよいと、鯛は鯛でもクロダイで「鯛ちり」にする。「ちり」は関西の料理だろう。同じく山陽、四国の一部では同様の鍋を「水炊き」という。昆布だしに酒・塩の単純な味つけの汁で煮ながら食べる。素材そのものの味が楽しめる。「鯛ちり」の「ちり」は、汁に魚の切り身を落とすと、ちりっと縮むので「ちり」だというが、個人的には素材を「いろいろちりばめた」ので「ちり」だと考えている。