ヒゲソリダイの水炊き
ヒゲソリダイにも感じられる温暖化
ヒゲソリダイ
ヒゲダイがいるからヒゲソリダイがいる。ヒゲダイは立派なヒゲがあり、ヒゲソリダイはほんのちょっぴりのヒゲがあるだけ。だから鬚剃鯛となる。このヒゲダイ、ヒゲソリダイの名とか分類は長年混乱があって、それはそれで面白いのだけど、ここでははしょる。
外房以南の浅場にいる魚で、相模湾でも昔からとれてはいたが、固体数が少ないのか、めったに見ることが出来なかった。とれても小型が多かった。それが最近では量的にも増えているし、大型が増えた。関東の市場でも昔は珍魚のたぐいだったが、流通量が増えて、普通の食用魚となってしまっている。
温暖化が顕著に感じられる魚ではないが、確実に温暖化で増えている、そんな魚である。
初めて見たときは、イサキ科なのにイサキのようなスマートな体形ではなく、鯛型(体高が高く)で身が厚く、どことなく鈍い感じのする魚だな、と思ったものだ。
デジタルカメラでの初の撮影は2004年で、広島県倉橋島の日美丸さんという漁師さんにいただいたものである。体長25cmくらいだったけど、関東ではめったに手に入らない魚だったので、ハッスルして120画像も保存してしまっていた。
以後、イサキ科の主流はイサキのようにスマートではなく、鯛型でやや左右に分厚いということを知る。
11月半ばから12月1日にかけて3尾、買ったり送ってもらったりしている。刺身にしたり、塩焼きにしたりしていろいろ考えてみたら、意外なことに鍋の画像がないことに気がついた。
我が家のまかないというか、撮影しない料理としては作っているが、身質やうま味の特性を深く考えて作ったことがなかったのだ。
本種の特徴はマダイなどとと比べると皮が厚く、より身が硬く締まっていて適度に繊維質であることだろう。とすると、マダラのように生に近い状態から煮ながら食べるよりも、予め煮てから鍋にした方がよさそうである。
液体を使った汁とか鍋を作るとき、煮汁の塩分濃度と温度で、本体のエキスというか本体の味の濃度が変化する。
特に温度が重要だ。水産生物自体の味を大切にするならあまり煮立たせない方がいい。反対に液体にうま味を放出したいときにはガラガラと長時間煮ればいい。これら加熱法はフレンチでは明確に定義されているが、和食では曖昧である。
合わせるのは白菜だけにしたが、いろいろお好みで
ヒゲソリダイの水炊き
福岡県博多の水炊き、また九州の豚骨スープは徹底的にガラガラと煮立てて、うま味を液体に放出させてスープを取る。今回は、そのうま味放出型の鍋を作る。
ヒゲソリダイの頭部、腹骨、かまなどを適当に切る。
湯通しして氷水に落として残った鱗やぬめりを流す。
水分をきり、水に入れて火をつける。このとき差し昆布(素材を煮るとき昆布を入れる)をする。
煮立ってきたら昆布を取りだして、フタをして強火で煮る。
骨つきの鶏肉ほど汁は真っ白にはならず、薄濁りになる。
ヒゲソリダイの身が柔らかくなったら酒と塩で味つけして、土鍋に移す。
白菜と一緒に煮ながら食べる。