
5分以内に食べられるものを、と作ったのが市販のドレッシングで和えただけのサラダだ。
余談になるが、ボクはある系統の人間とは数秒で仲良くなれる。
あまり幸せな出会い(そんなに深刻ではない)ではなかったが、近所の家族と会うたびに長話をする仲になっている。
その5人家族がモーレツ忙しい。
夫婦が同じ職業でもあるので、今現在のように子供の病気が大流行(何が流行っているのかはわからない)しているときなど、端から見ても地獄のようだ。
一家は魚をまったく食べない。
「どうしたら子供が魚を食べるかな?」と聞かれたので近所のスーパーで塩蔵サバの特売をしていること、それを使ったサラダの作り方を教えた、それが今回の料理だ。
手順は、焼く(この状態で保存する)、切る、混ぜ合わせる、ドレッシングを加える、の4つでしかなく、コツなどない。
忙しいときなど10分で作る料理を5分で作る、ことを目指すべきだが、これなどもっと時短できる。
アレンジもきく。
回遊性の魚はうま味が豊かだし、ほどよく繊維質である。
ほぐした身と四葉きゅうりの歯触りがいい感じである。
そしてトマトの全体をまとめる感。
近所の居酒屋が使っているという、優れもののドレッシングは魔法の調味料である。
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へそ曲がりと言われそうだが、7月も土用丑の日にはウナギ(ニホンウナギ)を食べない。
お盆過ぎくらいまでは食べないので、これをウナギの断(だん)と勝手に呼んでいる。
なぜなら店で食べるとして行列嫌いだし、取り寄せはしないし、安すぎて自然破壊になりかねない大量生産、冷凍ウナギ、輸入ウナギは買わないからだ。
『海老仙』さんの白焼きをみると、背開きである。
食べたら地焼き(蒸しの工程がない)である。
厚みがあって膨らみを感じる。
早朝のウナギ水揚げや、裂いているのを見ているので、水揚げし、泥抜きを終えた個体を揚げてすぐに裂いて、焼いたものであることがわかる。
帰宅当日深夜は、白焼きの尾に近い部分をそのままあぶって酒の肴にする。
浜名湖はそんなに遠くはないものの、往復の運転で体の底の方に疲れがたまっている。
仮眠してもこの疲れの塊はとれない。
これをウナギで追い払う。
冷めた白焼きは少しあぶると表面に脂が滲み出してきて、泡立つ。
ふっくらした感じが戻る。
おいしい白焼きはわさび醤油が合う。
この日は静岡県藤枝市、『志太泉 生酒』の冷え冷えを2合も飲む。
あとは深い眠りにつくのみである。
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1尾くらいいなくなってもいいだろう、と思って失敬してきた。ごめんね。
クサヤモロって、勝手に連れてきたくなるほどうまいのである。
問題は鮮度落ちと、血合いの変色が早いことだけなので、早めに食べれば最上級の魚といってもいい。
銭州でクサヤモロというと、エサ取りとか、大物のエサといった存在に思われていそうだけど、「もろこ(マハタなどの老成魚)」とか、シマアジなどと比べて決して味が劣るわけではない。
持ち帰って、すぐに三枚に下ろし、12時間後に刺身で食べたが、食感がいい上にうま味豊かである。
血合いの酸味もとてもいい。
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時差をつけてマイワシの濃厚なうま味が襲い来る。
このうま味はオリーブオイルと一緒くたになったおいしさで、スパゲッティとくんつほぐれつ口の中で混合して、セモリナ粉の風味と食感、マイワシのおいしさなどでブラックホールの中のようになる。
刻んだバジルは異次元の風味というか、そこだけおいしさの離れ小島のようである。
刻んだマイワシの丸干しが素揚げになり、じゃり、かりっとして非常にうまい。
そんじょそこいらのイタリアンに負けてたまるかよ、って味である。
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東京湾上総のアサリが完全復活したようだ。
3パック買ったのに、なぜか木更津ブルーが見つからない。
これを名付け親不幸という。
木更津ブルーを見つけると、幸せになるとか、ならないとか?
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ボクのために釣ってきたに違いないので、断りもなく連れ帰ってきた。
記載されたのが2011年で、標準和名がついたのが2013年という真新しい魚だが、我がデータベースには2002年の画像が不明種として残っている。
あまりにも特徴がないというか、地味すぎるので、忍び(隠蔽種)であったのかも知れない。
ニザダイ科テングハギ属の魚が相模湾全域で増えているが、シノビテングハギは伊豆諸島では平凡な魚と思っていいのかも。
いまだに珍魚ではあると思っているが、非常に味のいい魚でもある。
ニザダイ科の魚ではあるが臭味がなく、身質がよく、血合いが美しい。
7月7日の個体など脂が乗っていて、同日のシマアジよりも箸が伸びがちだった。
本種に関しては、とても博物館に差し上げたくはない、そんな魚である。
酒はなしの凍頂烏龍茶であるが、お茶で食べてもうまい。
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今、地図を見ると崇峻天皇陵のあたりだと推測する。
当時は文献地図帖を持っての旅で、一本道を下りながら、ゆるやかに遭難したのだ。あのとき、農家らしい家の方が、大量の水と茶がゆを恵んでくれなかったら、死んでいたのかも知れない。
当時は熱中症という言葉はなく、熱射病だった。
あのときの水のおいしかったことと、梅干しと茶がゆが喉を通ったときの感覚は今でもおぼえている。
以来、「茶がゆ」は夏の味である。
さて、遅摘みの茶をしんなりさせて、釜で煎るタイプのお茶は、西日本各地にあるが、不思議なことに、ボクが勝手に「茶がゆ圏」としている奈良県、三重県西部、和歌山県のものは独特である。
焙じる前の製法はわからないが、例えば同じ番茶と言われるものでも島根県伯太町(現米子市)のものとは似ても似つかないものだ。
茶がゆ圏の番茶は苦味が強くどっしりと重い感じがする。伯太町の伯太番茶など限りなく軽く優しい味である。
この、「茶がゆ圏」の古いタイプの番茶を探す旅がしてみたい。
今回はその崇峻天皇陵近くで教わった通りのやり方で茶がゆをたいてみた。
濃く煮だした奈良県十津川村の番茶に洗わない米を投入してたく、という奈良県ではもっとも一般的なやり方である。
洗った米を投入すると、さらさらと軽い味になるし、茶色に染まる米粒の色も淡い。
洗わないで入れると濃い茶色に米粒が染まり、かゆ自体が重い味になる。
非常に濃く入れた茶の苦味が口にも喉にも残るが、この苦味が夏バテの薬なのではなかろうか。
三重県伊賀市で会った赤目(三重県名張市)出身の大正生まれの女性は、「茶がゆ」は、「さいら(サンマ)」の丸干しと食べることが多かったという。
当時の丸干しは木槌でよく叩かないと硬くて食べられなかったといが、この日合わせた三重県尾鷲市、『丸清北村商店』の丸干しは硬干しではあるけど、そのまま焼けば食べられる。
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体長26.5cm・461g で関東では「かいず」と呼ばれているサイズで、佐渡では大小に関わらず「ちんだい」だ。
どう見ても野締め(漁の最中に死んでしまったもの)である。
これが今年の10個体目になる。
毎年20個体くらいは状態をチェックしているので、クロダイの個体数から今年も半分終わったことがわかる。
佐渡の「ちんだい」は明らかに産卵後だけど、身に張りがあるし、そんなに痩せてもいない。
ちなみに新潟県ではクロダイは決してやっかいな存在ではない。
夏だとマダイよりも高値がつくこともある。
考えてみるとクロダイを未利用魚だとか、やっかいな存在だとか言っているのは非常に狭い地域だけのことでしかない。
クロダイを未利用魚と喧伝しすぎてはいけない。
理由は、むしろ普通の食用魚として利用している地域でのクロダイの評価を下げることになるからだ。
さて、昼ご飯に刺身、焼霜造りにする。
刺身は脂こそそんなにのっていなかったものの、うま味が実に豊かだった。
夏の「ちんだい」うまいじゃないか!
なんて思ったほどだ。
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