
当然、中には倉橋島名物のマダイが入っていた。
倉橋島は広島市の南にある。広島側からは江田島があり、倉橋島と大きな島が連なる。
呉市に統合されてしまっているが、もともとの呉との間には音戸の瀬戸という海峡がある。
たぶん広島県の最南端に当たるのではないか。
このあたりは、広島湾から南に島と島が重なり合い、多様な貝類、エビなどが豊富で豊かな海域である。
そんな海域で、多彩な貝類やエビなどを食べて育ったのが倉橋島のマダイだ。
全長50cm・2㎏上で、吻から目の下、尾の先までが1尺半。
マダイは目の下2尺までがいちばんうまいと思っているが、まさにそのサイズである。
桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季。
雄で体が黒ずんではいるものの、精巣(白子)はまだ硬く成熟度は低い。
『日美丸』のタイ釣りは伝統的なフカセという釣法で、いわゆる一本釣りである。
マダイはエサ(食べているもの)、漁法、扱う人によって大きな差が出る。
そのどれ一つが欠けても、うまいマダイは生まれない。
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例えば、茨城県のマルアオメエソと駿河湾のアオメエソを並べてもまったく違いがわからない。
個人的には同種だとしか思えない。
それで産地によって種を分けるしかなかった。
この銚子以北のマルアオメエソが消滅してくれた(シノニムとなる)ことは、まことに目出度い。
ただし、このアオメエソ属の画像は膨大なので、データの合体になかなか手をつけられないでいる。
しかもバケがいる。
この手頃なアオメエソ(目光)を一つかみ買って、八王子総合卸売センター、八百角でノビルを買って天ぷらにして、乾麺のそばをゆでて……。
これがボクのお昼となりぬ。
そばつゆは、めじか節厚削り節(マルソウダ)を煮だし、砂糖・醤油でつゆにして、追い鰹(かつお節削り節)をしたものだ。
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うまいに決まっているセットだけど、本命はさておき、最強クラスの脇役から。
ニシン目ヒラ科のヒラである。
体長49cm・1.384kg はこの魚としては小振りである。
魚類に興味のない人にとっては巨大なニシンのような魚で、北海道でも見つかっているが、あえて言うと瀬戸内海周辺、有明海周辺の魚といいたい。
この魚、広い内湾域がないと産卵できないのではないか、と思っている。
この点からも、自然破壊だけしかやらない、企業や行政や政治家達は、ヒラだけではなく、地球にとっても敵である。
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一般的に「ぼたんえび」というのはトヤマエビのことだ。日本海と北海道以北の深場にいる大型の美しいエビである。
標準和名(図鑑などにのるときの)ボタンエビは近縁だが別種なので要注意。もちろん標準和名のボタンエビだってやたらにうまい。
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どっちでもいいのだけど、今回は酢で食べたので、千葉県南房での料理名、「なめろう」としたい。
千葉県千倉の漁師さん、食堂のオカミサンに教わった食べ方だからだ。
最初は酢をつけないで食べてみる。
口に入れると、まことにあっけない。
噛み応えがなく舌の上で溶ける。
脂のりすぎ、といった感じである。
疲れから大量投入したにんにくの存在が感じられない。
感じられるのはみょうがだけだけど、それだけマイワシの存在感が大きい。
荷の作りから石川県七尾産とみたが、富山湾ではなく、七尾湾に入り込んだ群れやも知れぬ。
このように思いを馳せるのも楽しい限りなのだ。
さて、食べてはやや控えめに酒をあおり、あおりして食べ進んでいったら、皿の上がきれいになってしまっていた。
明日の「さんが焼き」はなし、となる。
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最大の問題点は未利用魚の定義が曖昧なことだ。未利用魚問題は、巨大なデータを見て初めてわかるが、国内を見渡す限り、どこにもそんなものはなく、あえて言えば我がサイトが一番大きい。また、魚価を知らなければ、未利用魚はわからない、が、そのためには、日常的に魚を買わないとダメだが、そんな人間見た事がない。
当然国内各地で聞取をする必要があるが、例えば漁業者に聞いてもいいが、加工品業者、買受人(大卸・仲卸)、小売業の話も重要であり、消費者も重要だということを忘れている。いちばん未利用魚がわからないのは行政、そして漁業者かも知れないと言う事実を知るべきだ。
最近、未利用魚にマイナー魚を加えるなど、驚くほど愚かな人間すらいる。今現在のところ未利用魚とは、比較的水揚げが多く、お金にならない魚のことである。
高知県や徳島県で、「赤じゃこ」とか「はりめ」と呼ばれている煮干しが作られている。
原材料はスズキ目テンジクダイ科のネンブツダイとクロホシイシモチである。
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スーパーに入ると必ず面白くて、使える食材に行き当たる。
この独自性こそは愛知県だと思う。
ちなみに愛知県といっても広すぎるし、人口もすごく多いので、地方ごとに分けた方がいいとも考えるが、その分け方がわからない。
さて、『すずみそ』の西尾市は西三河になるが、ここには豊田市も含まれるのである。
西尾市と豊田市はまったく色合いが違う。また西尾市でも矢作川近くと、幡豆町(はずちょう)では違う。
『すずみそ』は西尾市というよりも幡豆町にある、と言った方がわかりやすい。
三河湾に面しており、愛知県なので当然の如く、味噌は大豆麹大豆味噌で、大豆と塩だけで作る味噌の食文化圏である。
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たぶん竹の子がとれ始める頃に旬を迎え、たくさん入荷してくるからだろう。
浅い場所にいるメバルは、「黒めばる」と呼ばれていた。
こちらは分類的にはクロメバル、アカメバル、シロメバルの3種のことだ。
こちらも竹の子との相性がよく、竹の子の時季に旬を迎えるので、「竹の子目張」といってもいいかも知れない。
ただ、1980年代後半に築地場内で、「竹の子と煮る」というと黙ってウスメバルが出て来た。
1984年、『土井勝 魚のおかず』の「メバルの煮つけ」で竹の子と合わせているのもウスメバルだ。
東京では竹の子と合わせるのはウスメバルが主であったと考えている。
昔は浅場にいるメバルと比べると、沖合いにいるウスメバルは味的に落ちるなんていう人がいたが、今、そんなことを言う人はほとんどいない。
こんなことを言って通ぶる人は嫌いである。
ボクは、みな同じようにうまい、としておきたい。
話をややこしくしそうだが、念のために標準和名タケノコメバルという魚がいる。メバルにもウスメバルにも似ても似つかぬ魚で、見た目はあんまり美しいとは言いがたい。
魚類学の父、田中茂穂は「竹の子のとれるときに旬を迎えるので、タケノコメバルなのだろう」とあるが、明らかにこれは間違いだと思う。
ちなみに他にも同じ事を言う魚類学関係の人がいるが、ちゃんと食べていないのだと思っている。
タケノコメバルは、体の模様が孟宗竹の竹の子の皮に似ているからタケノコメバルだ。
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