
深海魚ならではの柔らかさ、独特の脂の味わいなど、深海魚を食べているという気にさせてくれるはずである。
後に特有の甘味をともなった渋味が残るのが特徴で、アルコールの友としてはこんなところが素晴らしい。
個人的には日本酒よりもビールの友だと思っているがいかがなものか。
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そして2025年、風通しが悪いのもあり、室内で扇風機を回して干す。
なんて無風流なんだ。
それでも干したてを焼いたら、言うに言われぬほどおいしい。
相模湾二宮沖のマアジは、温暖化の部屋干しでも結構結構である。
そこそこ脂もある。
5月も後半になると、もっともっと脂が乗るが、ボクなど今くらいの脂で十二分である。
ボクはどちらかというとカンピンタンでシンシビーである方が好き。
強く干しただけ、余計にうま味が強く、身に味があり、後味が甘い。
これで三度は飯の友ができた。
米の値上がりは痛いけど、ご飯派なので飯の友は多ければ多いほどいい。
当分、朝ご飯は二宮沖のアジの開きとなりにけり。
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1位・ムツの子、2位・カタクチイワシ、3位・ゴマサバの子だと考えた。
ムツ子などさくさくしておいしそうだし、カタクチイワシには味があるだろう? ゴマサバの子に何があるんだろう? が想像できなかった。
まさか唐揚げ選手権でダントツ1位がゴマサバの子だとは思わなかった。
かじりついたときはちょっとだけサクサクした食感で、平凡だったけど、後から味の大波が来たのである。
なんだろう? この味のピークは。
口に入れてサクサクした後に来る味。
内臓は取ってあるので、体幹部分の中心に、その味があるように思える。
ゴマサバは「さば節」の原材料であり、だしを取ると、味の通奏低音的な役割になるが、「めじか節(マルソウダ)」のような個性がない。
それなのに唐揚げにしてとんがったうま味があるのである。
何年魚を食べていても発見がある、のは当たり前だけど、今回の場合は大きくてウレシイ誤算である。
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そんな5月に、日課のようになってきたのが深夜酒だ。
肴を前に、左手に大振りのグラス、右手に文庫本の深夜酒だ。
一日を三等分しているのだけど、夜の眠りを2つに分けて深夜1時過ぎに酒を正一合だけ。
5月の酒は安くておいしい、神奈川県松田町の「松みどり」である。
最近、酒はスーパーに売っているもので、平凡な値段で、自分好みの酒を買い求めている。
黄金穴子を強火で焼いて、みりんを塗っただけで、飾り気なしどころか薬味も山椒だけ。
皿は鳥取県岩美町、延興寺窯、山下清志さんの新作だけど、黄金穴子の焼き物に似合う。
焼き上がりのみりんが焦げた香りだけでも、正一合いけそうだ。
焼き物のよいところは腹にたまらないところで、ましてはマアナゴの後ろの身はうま味の塊のようで、ひとかじりが重量級の味である。
そこを「松みどり」だけど、このインターバルが長い。
酒も肴も時間を楽しむためのものになっている。
こんなものが好きになる歳なんだなと思うのも、深夜酒のよさだ。
このところ獅子文六を読み尽くしている。
『七時間半』を読みながら、ふと、獅子文六は日本のウェストレイクじゃなかろうか、と思って調べると、なんと年の差40歳で、比ぶべくもない。
展開の早さは獅子文六の方が元祖なんだと、とかとか。
これがボクの毎深夜だ。
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近年は突然揚がり始めて、最初はてんやわんやだった、北海道日高地方のオオズワイガニが庶民の味方となりにけり、だ。
今回のものは280g前後で、このサイズなら1人前1ぱいでちょうどいい。
雌は外子の時季で身(筋肉)が痩せているが、雄はむしろ身入りがいい。
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問題ありの売れない水産生物ってとても魅力的なのだ。
いつの間にか連れてきたもので、何にしようかな?
と考えて、干すことにする。
外がぴゅーぴゅーで干もの日和なのである。
立て塩は3分なので非常に薄塩である。
干ものを作るのは湿度よりも風かも知れない。
一夜明けると見事に干し上げっていた。
後は焼くだけ、だ。
麦イカなので柔らかい。
それだってとても魅力的だけれど、干したイカを焼いた香りって、文字に出来ないところがある。
濃厚なうま味が舌に広がるのも魅力的だ。
こんなに小さな、手負いのイカがこんなにおいしいなんて。
魚にかじられてもおいしければ、売ればいいんじゃないかな?
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大きくても野締めは平凡な値段でしかないし、まして2キロ以下は安い。
それでもものがよければ、刺身にもなるし、いろんな料理にも使えて経済的である。
今回の熊野市産は野締めではあるが、鮮度がいい上に身に張りがある。
切り身にして指でなぞると脂が感じられる。
もっとも固体本来の味がわかるのが刺身である。
ここから焼いたらどう変化するか、とか、煮たら、というのがわかる。
野締めだし、「さごし」だし、当然、食感は望めないが、サバ科らしくうま味豊かだ。
思ったよりも脂があるのは、白子持ちで産卵を控えているからだろう。
今回は尾鰭近くの身を刺身にしてみたが、やはり細長い魚の尾鰭前の味は素晴らしい。
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丼はいやだったので別盛りにしてもらう。
朝は丼ではなく、朝ご飯といった感じが好きだ。
相模湾でもサクラエビが揚がるが、少ない上に今季は遅れ気味である。
さくっと揚がったサクラエビらしい風味がいいし、ご飯がうまいし。
ちなみにオッカサンのところで食べるのは、あくまでも働く市場人のための飯。
朝8時以前にくると当日ものまだ来ていない。できれば当日のものが食べられる8時以降の来店が好ましい。
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