ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典
魚通、釣り人、魚を扱うプロの為の初めての「高級魚」の本。
美味しいマイナー魚介図鑑
製作期間5年を超す渾身作!

すし図鑑
バッグに入るハンディサイズ本。320貫掲載。Kindle版も。
美味しいマイナー魚図鑑ミニ
[美味しいマイナー魚介図鑑]の文庫版が登場

すし図鑑ミニ ~プロもビックリ!!~ すし図鑑が文庫本サイズになりました。Kindle版も。
からだにおいしい魚の便利帳
発行部数20万部突破のベストセラー。

イラスト図解 寿司ネタ1年生 イラストとマンガを交えて展開する見た目にも楽しい一冊。
全国47都道府県 うますぎゴーゴー!
ぼうずコンニャク新境地!? グルメエッセイ也。

更新情報など

最新コラムより

コラム 

相模湾の、青アジの旬は今だ

青アジ(マルアジ)はアジ科でもムロアジ属である。
ムロアジ属の魚は血合いが多く保存性が低いので、主に節(アジ節)や干ものになる。
都内のスーパーにもときどき安く並んでいるが、主に加熱用だ。
もちろん刺身用、もしくは刺身も売っているが希である。

旬は秋だと思っていたが、Kaiくんは、いまだという。
食べたら、確かに今だった。
実際、下ろすと白子を持っていて、この白子がまだ小さい。
相模湾での産卵期は7、8月だろう。
要するに7月、8月の小田原の青アジに脂がないのは産卵後だからだ。
データを見ると、9月下旬、10月の青アジは脂が乗っている。
とすると相模湾の青アジの旬は晩春と秋の2回ということになる。
何十年魚を調べてきても、教わることの方が多かりき、だ。

さて、青アジの刺身は血合いが大きいので見栄えは悪い。
マアジのような成熟した、妖艶な味でもない。
むしろ若葉のように爽やかな味である。
そこに豊かな味がある。
アジ節の原料になるのは味があるからだ、ということがわかる。
ていねいに締めているので、食感がここちよい。
しょうがも用意したが、醤油・一味唐辛子、すだちがよかった。
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コラム 

小さくても下ろし安くてうまい、小ハシキンメの刺身

神奈川県小田原市、小田原魚市場で、こいつだけが漫画の世界のキャラクターのようである。
あえて言うとダルマサンに似ている。
もう少し後になるともっとたくさん揚がるが、この日はちょろりちょろりとまとまらない。
当然、ダンベ(大型水槽で魚粉などになるものを入れる)行きとなる。
でもふざけた顔して、うまいのに、なー。

しかも下ろしやすくて、手間がいらずで小骨がない。
今回のものが今季初小ハシキンメであるので、初物に乾杯、だ。
ハシキンメは若魚の時には定置網にも入るが、成長すると深海に移動する。
春から初夏だけが、小ハシキンメが食べられるとき、でもある。

小さいけれど、刺身はとても美しい。
たぶんこんなにきれいな刺身も珍しかろう。
しかも体長10cm・40g前後しかないのに、ちゃんと脂がある。
甘みがあって、うま味もそこそこで何よりも、ほどよい食感がある。

変に肌寒いので頂き物の、菊正宗樽酒を一合弱だけ燗つける。
燗酒にも合う、合う。
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コラム 

水産生物呼び名学001 呼び名採取の世界

もうかれこれ半世紀にわたって水産生物の名前を採取している。徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)生まれなので、貞光川での呼び名集めから始めた。
最初の1種は「ジンゾク」(地方名もカタカナ「」つき表記とする)である。中学生の頃、「ジンゾク」=ヨシノボリとノートに書いた。
次に「カワドジョウ」を調べた。「カワドジョウ」=シマドジョウとなる。「イダ」=ウグイ、「ジャコ」=オイカワで、「エッシュウ」=カマツカだ。
1960年代から1970年代の採取時に必要だったのは、同定能力と聞取能力であるが、ボクにはそれが欠けていた。
この情報は、後々の魚類学上の進歩で、変わってくる。「ジンゾク」=ヨシノボリは、ヨシノボリではなくカワヨシノボリになる。「カワドジョウ」=シマドジョウのシマドジョウはニシシマドジョウになる。
誤解もある。貞光川で「ノミンジャコ(農民雑魚)」と呼ばれてる魚がいる。最初稚魚だとは思わなかった、小学生低学年のときはメダカ(現ミナミメダカ)だと思っていた。そう教えてくれた大人もいる。小が高校学年のとき初めてメダカを見た。吉野川右岸、ボクの住む貞光町にはメダカがいなかったのだ。中学生の時、メダカではなくウグイとオイカワの稚魚共通の呼び名だろうと気がついた。
採取する人間は確かな同定(種の検索)能力を身につけ、動植物学的な進歩に添うように最新化していく必要があるのだ。
例えば採取者は専門知識と歴史や民俗学など分野を越えて身につけておくべきだし、また世間を知らないといけない。
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コラム 

ホウライヒメジのムニエルはゴージャスな味

ヒメジ科の魚をフランスでは、ルジェー(ルージェ、ルジェとも。Rouget)という。ルジェーは赤い魚という意味である。
ルジェーのムニエルやポワレは珍しいものではなくなっているが、昔はめったに巡り合えないものだった。
初めてルジェーのムニエル、もしくはポワレを食べたのは、まだ若造で、ただの便利な運転手のようにこき使われていたときだ。
フランス直送の素材を使っているという青山の店だった。
魚の写真を見た限りルジェーは、ヒメジ科アカヒメジ属まではたどることができた。
アカヒメジ属の魚はヒメジ科でもあまり大きくならない。
メニューの脇に「ヒメジのムニエル」とあったが、もちろん日本にいる標準和名のヒメジ属ヒメジとは属段階で違う。
最近、ヒメジ科のムニエル、ポワレは輸入素材が増え、国産のヒメジ科アカヒメジ属・ウミヒゴイ属の流通が増えたので珍しいものではなくなっている。
「ヒメジのムニエル」は「ヒメジ科の魚」と考えるとあながち間違いではないが、店での魚の紹介で、切り身にしてムニエルにならない小魚のヒメジの写真を添えていることが多い、これがなんとなく滑稽である。
見当違いですよ、と言いたくなる。

そのときの、ルジェーが実にまずかった。冷凍輸入したものだろうし、飾りが多すぎるしで、フランス料理の名店などくそくらえ、と思ったものだ。
実は、自分で作ると非常においしいのである。

今回のホウライヒメジはウミヒゴイ属で大型になるタイプ。
大きくなるとソテーにしにくいが、このサイズはソテーに向いている。
三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を取る。
表面の水分をていねいに取る。
塩コショウして、小麦粉をまぶし、少し置く。
これを最初弱火でじっくりソテー、中火に上げて、仕上げる。
仕上げにタイムの枝とバターでモンテ(強火にして泡立てて塩コショウで味を調える)する。

皮は香ばしく、身は豊潤である。
最大の魅力は皮の風味と、身よりも遙かに強い甘味だ。
甘味がすぐに消えないのもいい。
身は端正な味である。
柔らかな筋繊維が束になっていて、口の中でほどよくほどける。

いけないと思いながら山梨県の一升瓶赤をロックでやってしまう。
Vin rouge なので、赤 et 赤だ。
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小田原江之浦沖のやや大アジの刺身

神奈川県小田原市、小田原魚市場で年間を通じて水揚げをみると、必ず年間での魚の味の変化がわかるだろうと思っていた。
たしかに個々の魚の味の、大きな波の上下はわかってきたが、いちばんわからないのがマアジとは思いもしなかった。
日渉丸、江の安漁場のワタルさんが選んだ個体とか、二宮定置の山崎さんなどの若い衆が選んでくれた固体は時季に関わらずおいしい。
結果、大きさによる味の違いがわからなくなってきた。
結果、時期はずれ期間がはっきりしなくなっている。
5月、6月は当たり外れがない時季ではある。
でも、この時季が相模湾西部の旬だとも言い切れない。
漁場によるずれがあるのである。

小田原随一の目利き、仕立てのプロである、江の安漁場のワタルさんが選んだ固体、江之浦漁港前のマアジなので、食べる前から結果はみえている。
脂のいちばんのる時季は少し後だけど、水揚げ15時間後の刺身は室温に置くと、表面が脂で滲み始める。
うま味はこの時点ではイマイチだけど、この時点だからこその強い食感がある。
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黄金の穴子は凄い! 天ぷら編

最近、舵丸水産は穴子(マアナゴ)に力を入れている。
大量仕入れなのでいろんなマアナゴがくるが、この金色の固体は初めてらしい。
そんなに期待していなかったのだけど、がしっと二つ割りにすると液化した脂がキラリキラキラだった。

香ばしい衣の下に、皮のうまさがあって、その下に半液化した脂がある。
身の甘さがあって、強いうま味がある。
なによりも香りが素晴らしい。
マアナゴは小骨がある。
この小骨が柔らかいので気にならない。だから非常に高価なのだ。
ただ、固体によっては小骨の気になる5P(200g)もあるけ、この金色の固体の小骨はまったく気にならない。
マアナゴは金色を探せ! なのかも知れない。

春菊の天ぷらと合わせて、朝ご飯を食べたら、「今日も頑張れるぞ!」なんて思った。
やはり、「ありがとう」くらい言うべきだったかも。
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春の小田原、ムツ子の唐揚げ

今回はカタクチイワシと、ムツ子、ゴマサバ子を2日にわたって唐揚げにして食べた。
小魚の唐揚げはいうなれば定番的な料理である。
突き出しに小皿に2、3尾とうこともある。
ちなみに唐揚げの料理店の料理としての地位は、西日本で高く、東日本で低い。
西日本では御馳走で、東日本ではなんとなく注文するものでしかない。
西日本の料理人は積極的に作るが、東日本では嫌う料理人が多い。

さて、今回唐揚げ3品の第一弾がムツ子である。
まだ温もりのある内に口に放り込んだ。
非常に上品な味わいで、身にも味がある。
冷めたら香ばしさが増して、スナック菓子のような感じになる。
味わい深く、上等すぎるスナック菓子である。
唐揚げとしては特徴がないのが残念であるが、ついつい箸が伸びる。
今回は揚げて塩味(しおあじ)だけだが、これが正解だった。
ムツの唐揚げはたいへん軽い味なので、コショウもなにもいらない。
こんなにさくっと軽いとは思わなかった。
ひとつかみではなく、もっと持ち帰ってきてもよかった。

飲み物は、まだ逢魔が時なので凍頂烏龍茶。
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クロダイのカルパッチョは一枚の絵なのだ

初めて魚のカルパッチョを食べたのは、昔々その昔である。
サッカー人気が話題になっていたときなので、ほんまに昔だろう。
そのときのものは魚の生の切り身を皿に並べて、上に彩りよく香りのある野菜やハーブを並べてお絵かきをするといったもの。
ものすごくにんにくがきいていて、テーブルの上で追いオリーブオイルをかけてくれた。
以来、そのときに何軒か回った店のスタイルに従っている。

ボクの作るカルパッチョは、クロダイの身を皿に馴染ませた状態など、絵描きがカンバスを張るようなものかも。
その上に神奈川県秦野市で買った種なし赤ピーマンと、フルーツトマト、タイムを散らしてみた。
あるだけの材料なので、とてもシンプルなものとなる。

締めて3日目のクロダイの、端切れを集めて薄く切ったのでエレガントではない。
今回は夏泳いだ後のような、疲れの波を受けていたのでどっさりとにんにくを使った。
仕上げに追いオリーブオイルではなくライムを搾る。
ちょっとだけ味は野性的である。
甘い素材は今回はなし、あるときはキウイ、季節によってはラズベリーなどを使う。

ただ塩とオリーブオイルとにんにくと、白コショウだけの味つけで、うま味たっぷりの3日目の、クロダイの味をそのまま堪能出来てあまりある。
ちょっと濃い味だなというところを、ライムの酸味とタイムの香りが救ってくれる。
おざなりに作ってもカルパッチョはうまいのだ、ということがわかる。
ついつい、皿に並べてチャンチキおけさ♪ なんて唄っている自分がいる。
午後2時なのに、山梨で買った一升瓶の赤ワインをロックで一杯。
昼酒できないのに、浮かれ飲みして1時間だけダウンする。
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