
体長26.5cm・461g で関東では「かいず」と呼ばれているサイズで、佐渡では大小に関わらず「ちんだい」だ。
どう見ても野締め(漁の最中に死んでしまったもの)である。
これが今年の10個体目になる。
毎年20個体くらいは状態をチェックしているので、クロダイの個体数から今年も半分終わったことがわかる。
佐渡の「ちんだい」は明らかに産卵後だけど、身に張りがあるし、そんなに痩せてもいない。
ちなみに新潟県ではクロダイは決してやっかいな存在ではない。
夏だとマダイよりも高値がつくこともある。
考えてみるとクロダイを未利用魚だとか、やっかいな存在だとか言っているのは非常に狭い地域だけのことでしかない。
クロダイを未利用魚と喧伝しすぎてはいけない。
理由は、むしろ普通の食用魚として利用している地域でのクロダイの評価を下げることになるからだ。
さて、昼ご飯に刺身、焼霜造りにする。
刺身は脂こそそんなにのっていなかったものの、うま味が実に豊かだった。
夏の「ちんだい」うまいじゃないか!
なんて思ったほどだ。
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本来は捨ててしまう尾鰭と尾柄部(尾鰭のつけ根)、かま(胸鰭まわり)から非常に味わい深いだしが出てくる。
尾にもかまにもたっぷり身があってほどよく締まり、調味料と調和して甘い。
「わかし」のうま味を吸い取った夏野菜がうまいのは当たり前である。
ぎょうさん作ってこつこつ食べるのが煮つけというものの本来の形である。
ボクはこのような平凡な料理が好きで、昔々から平凡を研究している。
あたらめて、紹介させてもらうと、ボクは「け」の研究家なのである。
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人間が努力して栽培した花の数十億倍きれいである。
優れた料理も同じだと思う。
名前は知らないけど、「あの素晴らしい味をもう一度」食べたいと、泣きたいほど思う、そんなものである。
なんにも考えないで、それがなんとなく目の前にあるという事実がすごい。
きゅうりとゆでたマグロ(Tuna)とマヨネーズが材料なのであっと言う間に出来上がる。
しかも久しぶりに、非常に久しぶりに作ったのに、思った通りの味なのである。
塩気はゆでたマグロだけのものだけど、実に濃厚なうまさを感じるのは、マグロが持っているうま味成分のためだ。
真逆にあるのがきゅうりだけど、たぶんきゅうりのない夏は考えられないほど爽やかな味である。
そしてマヨネーズ、起源はどうでもいいけど、ボクが子供の頃から食卓にあった、すごいヤツなのだ。
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マイワシは年間を通して産地ごとに買って比べているので、数尾買う。
帰宅後、すべて手開きにする。
驚くことに中骨近くが赤い。
脳みそに「?」がいっぱい浮かんだが、根室から航空便(空の便を使って送られたもの)で来るには、経費から考えても上物でなければならない。
脂がないのか? あるのか?
皮を剥いたら皮の下にある脂の層が、牡丹雪が積もったようである。
口の中に入れた途端に溶ける。
醤油を落として、そのまま茶の友とする。
非常に濃い目に煮だした奈良県十津川村の番茶が合う。
刺身だって茶菓子代わりになる、のである。
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蒸し暑いし、やることが多すぎるし、で、7月になったばかりなのに滅法バテている。
こんなときには長いものがいい。
ドジョウでもいいのだけど、手に入らない。
浜名湖で買った鰻を食べて、今度は穴子を食べる。
煮立て穴子を軽くあぶって、ツメを塗って逢魔が時に本物ビールをやる。
煮穴子は舌の上で脆弱に崩れていきながら、強いうま味と、調味料の甘みが一体化する。
これをビールで流す。
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十六ささげは八百屋の特売品だし、薩摩揚げはそろそろダメになりそうだったもので、日常生活というのは、実はこのような合理性によって営まれているのである。
このとりたててうまいとも思えないものが、ないと寂しいのは米好きだからかも。
米(ご飯)というのは多様な脇役を要するものなのだ。
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別に生粋の江戸っ子ではないので、そんなに急いでは買わない。
だいたい最初は100g、20000円くらいするので、とても手が出ない。
ちなみに今回買った体長7㎝・7g前後くらいになると、開きやすくなるし、味が出てくる。
袋入りで産地不明だが、実に鮮度がよく開きやすかった。
開いて腹骨と背鰭を取り、やや強めの振り塩をする。
8分ほどおいて、安い酢で洗う。
軽く酢を切って保存する。
1時間ほどで酢が回る。
念のために新子、こはだだけは味や香りのある酢は避けたい。
できればミツカンの「白菊」クラスだけど、手に入りやすいミツカンの「銘撰」を使った。
さて、このサイズになるとしっかりニシン目ならではの味がする。
小さい割りになだらかな中にピークのある味といったらいいだろう。
非常に脆弱なのでたいして噛むこともなく半分溶ける。
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伊豆半島の以東にあまりいない魚で、西、駿河湾以南に多い。
今回のものは静岡県御前崎産であるが、過去にも何度か御前崎の荷を見ている。
体長30cm・624g なので本種としては大型である。
ベラ科タキベラ属は味のいい魚が多いが、本種は取り分けうまい。
ただ旬がよくわからない。
さて、三枚に下ろすと身に張りがあり、少ししっとりしている。
透明感がなく少し白濁しているのは、少ないながら脂ありとみた。
皮に味があるので水洗いして三枚に下ろす。
腹骨・血合い骨を取り、皮付きのまま刺身状にきる。
これを沸かした塩水の中で2、3秒湯引きする。
梅肉とわさび醤油で食べたが、やはりおいしい魚だと改めて思った。
水揚げ量がそれほど多くないので知名度が低い。
そのせいで高級魚ではあるが、それ以上ではない。
湯引きは飽きることがなく、半身分作って食べ尽くすことができた。
今回は上品過ぎると思った身にほどよい甘味があり、食感の心地よさを楽しめた。
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