■ 国産は模様が多彩で、コバルトブルーのものが混ざる。北海道は色素がほとんどない。中国産は模様が不鮮明で茶色がかる。
■ アサリの外套膜に貝殻を作る細胞と、色素を吐き出す細胞があります。この色素を吐き出す細胞がいろんな模様を作り出すのですが、このシステムは不明だそうです。また比較的泥質の東京湾湾奥、船橋のアサリなどはとったばかりのときには真っ黒です。
■ アサリは順調にいい環境で育つと比較的平たく大きくなる。悪条件だとダルマ型、ようするに丸みがあり、膨らみが強くなると言われています。
■ ひな祭りの膳/「あさりご飯につぼのみそ汁と、おかいこ切り干し、里芋、にんじん、ちくわ、油揚げの入った煮しめ、それにうるめいわしの開きとあさり(干もの)の串ざしなどを並べる」[恵那平野]『聞き書 岐阜の食事』
■ 「おひなさまには、ちらしずし、わけぎとつぼ(たにし)の味噌あえ、白酒、菱餅……あさりの身の串刺し(アサリを串に刺し干したもの)、はまぐりの吸いもの」[名古屋市紙漉町(西区)『聞き書 愛知の食事』]
■ 「昼になると、私は、国鉄本庁直営の食堂から、お菜を買ってくる。直営だけあって至極安い。たとえば、アジの天ぷら九円、アサリのかきあげ十円、ロールキャベツ十四円、シュウマイ十五円、カキフライ十七円、いちばん高いものでハンバーグステーキの二十八円なのだ」『いわしの頭』(中村武志 新潮社 1955)
むき身殻汁(むきみからじる) 『東海道中膝栗毛』に弥次さんが家に帰り着いて女房に「時に飯にしよう、なんぞ菜はないか」というのに「さつきのむき身殻汁さ」と答える。
貝のむき身に豆腐の殻(おから)で汁にしたもの。おからの汁というとみそ仕立てであると思われる。
作り方はだしを使わず、湯にアサリのむき身をたっぷり入れ、おからを入れて煮る。おからが煮えたらみそを溶き入れて、ねぎなどを加えて出来上がりだ。
濃厚なアサリのうま味に、おからのもっさりとしたふくらみのある舌触りがあって、なかなか滋味豊かな汁となる。
[『東海道中膝栗毛』(十返舎一九 麻生磯次校注 岩波文庫 享和二年〜文化十四年[1802〜1814])]