おいしい魚だが、知名度が極端に低いので安いのだ。
めぼしい魚のない日で唯一光り輝いていたのにだれも気がつかない。
その日、探していたのはおかずになる魚だ。
2切れで321gあるので、独り者なら4食のおかずになる。
当日はボクの本棚を撮影に来た若い衆がいたので、一緒に試食していただく。
作ったのはバター焼きと、まーす煮だ。
沖縄では「がーらのバター焼き」、「がーらのまーす煮」だろう。
「バター焼き」は切り身に塩コショウして小麦粉をまぶし、多めの油で焦げ目がつくくらいソテーする。
仕上げに油をすて、マーガリンをからめる。
たべる直前にしょう油を垂らす。
ボク以上にカメラマンさんが夢中になる。
温めたパンを渡すときれいさっぱり食べてくれた。
イトヒキアジは少し味が淡泊すぎる。
上品な味の魚にはマーガリンのようなインパクトのある素材が合う。
焦げたマーガリンの味と上品な身の対比がいい。
コラムの続きを読む
6日目も同じく非常に美味であった。
福島県郡山市から12日に来て、撮影し、12日の深夜、翌日、と刺身を造っているが、味も食感もそれほど落ちない、というかうま味は増すばかりだった。
サザナミダイなどメイチダイ属の魚には不慣れなはずの下北半島揚がったものなのに、サザナミダイと気がついた人がいたこと自体が奇跡。
味の素晴らしさも相まって、感動的でもある。
12日深夜は食感こそよかったものの、うま味自体は少なく、おいしいとは思ったものの、平凡な味だった。
これが翌日、翌々日とうま味が増大する。
食感がなめらかで、それだけでもいいのに、舌に触れた途端に甘味が感じられ、うま味が延々と続く。
ちなみに今回のサザナミダイは非常に上品な白身で、時季のせいかそほど脂がのっていなかった。
身のうま味だけのおいしさなのに、強い衝撃が残る。
最後に残った菊正宗樽酒を用意していたが、無用だった。
コラムの続きを読む
雄ガニは年を越してから買うことにしていたが、今年は早々と山形県産で初物食いをすませてしまった。
山形県はズワイガニ漁解禁の狂騒の中にいないが、ボクには十二分においしいというか、十二分に贅沢である。
雄はともかく、今季日本海の初雌ガニは兵庫県浜坂産だ。
雌ガニである「せこがに」の問題点は食中に食べるものでも、酒の肴でもないことだ。
それならなんだ? と言われたら、おやつだ! と答えるしかない。
強めの塩水でゆでること10分ほど。
背を下にしてゆで、上にして板などに取る。
冷たい水をかけて粗熱を取る。
コラムの続きを読む
荷の箱が見つからなくて産地不明だったが岩手県産かも知れない。
持ち帰って驚いた。
全体に小さくて、破片としか思えない大きさのものまで混ざっている。
なのに高い。
舵丸水産では大きくて粒ぞろいのものは仕入れられなかったようだ。
今回は片栗粉を絡めて洗う。
布の上でつぶを揃えながら、極小だけを集めて、醤油に漬け込む。
この極小がバカにならないほど多いが、つぶを揃えたものの値段を聞くととても手が出ない。
こんなに遅い初むきガキも初めてだし、こんなにつぶの揃っていない小さなむきガキも初めてだ。
同時に炊飯の用意。
コラムの続きを読む
商店街が生きているのがいい。
こんなところに来たら、何をやるのか?
ただただ歩くだけ、それで充分楽しい。
歩きながら和菓子屋を見つけたら片っ端から買い求めようとしたが、なんだか中条町の和菓子屋は和菓子屋のようで和菓子屋のようでなく、洋菓子屋のようで、洋菓子屋のようでもない。
これと同じ感じは根室にもあった。
そろそろ新潟市に向かおうかと中心地から少し外れたところに、また和菓子屋があって、入ると洋菓子屋だった。
新潟県の菓子店の特徴は和洋がはっきりしないこと、かも知れない。
そこで買ったのが、久しぶりに出合った「たぬきケーキ」、そして「ロックケーキ」だ。
考えてみると「たぬきケーキ」は千葉県以来ではないか。
要するにタヌキの形をしていれば、「たぬきケーキ」だということがわかってきた。
周りが少し硬い生地で中がカステラ、上にクリーム(これなんていうんだろう)で頭を造り、繋がった目と鼻と尾がある。
そんなに出合っているわけではないが、このタイプは初めてだ。
コラムの続きを読む
小さいのに強い張りがあって大きく感じる。
しかも魚屋で釣り師なので首を折って血抜きしていて、カタカタである。
持ち帰ってすぐ計測して撮影、水洗いする。
三枚に下ろしてペーパータオルにくるんで保存、夕方に刺身、焼霜造りにする。
刺身を食べた途端に、焼霜造りは屋上屋を架すものだと思った。
シンプルな刺身一切れの食感が素晴らしいのである。
硬いのではなく、なんなくかめるのにシコっとする。
そして一気に甘味が広がり、明らかにその甘味は複雑なアミノ酸からくるものだとわかる。
旅の前で減酒に励んでいるのに、コップに酒をそそいでいる自分がいる。
やりすぎかな、と思った焼霜造り(あぶり)も結構毛だらけである。
どこにも欠点がない。
炙った皮目の香り、強いうま味で脳みそがうれしくて沸き立つ。
今は刺身びいきだけど、食べ終えた後に評価が揺れる。
いけないとは思いながら菊正宗樽酒を正2合。
コラムの続きを読む
どちらでもいいのだけど、頭を割らない開き干しを見ると西日本のものだろうと思ったりする、この地域性がとても重要だ。
高知県の開き干しは頭を落として開いたりもするが、この頭そのままが多いようだ。
しかもこの黒潮町の開き干しは絶品なのだ。
塩加減がまさにちょうどいいし、鮮度がいいもので作ったのか、ボクの苦手な酸化による苦みがない。
塩慣れしているので、うま味が増していて、ご飯に乗せて食うとやたらにいい。
甘味のあるご飯と相乗効果を産む。
ちなみに高知県の干ものに土佐市白木果樹園の「ぶっしゅかん(モチユ)」をたっぷり搾る。
干ものに酢みかんとはいい夫婦のようなものだ。
コラムの続きを読む
たぶんもう取り返しがつかないと思うが、今に残るものを少しずつ整理してきたい。
非常に健全であったときの貞光川を知っている人は今やほとんどいない。
ただ1960年代、小さい川であるが長い上流域があり、短い中流域があり、吉野川との合流近くは下流域に近い環境であった。
それが今やかなり奥(上流)の旧端山村あたりまで行かないと中流域の環境ではなくなっている。
山が荒れているので吉野川合流地点から貞光市街地の端、木綿麻橋(ゆうまばし)くらいまでの川原が荒廃してしまっている。
この市街地周辺の流域にもいたオオヨシノボリは、木綿麻橋の上流域に行かないと見られないのだと思う。
岸に植えられた竹の枝がたわむくらいいたホタルはまだいるのだろうか?
吉野川の大川に対して小川(こがわ)と呼ばれていた貞光川にいなかったニゴイが、わんさかいるのも不気味だ。
この原因は明らかである。
剣山周辺の森林の荒廃と自然環境を考えない護岸である。
人間は自分の住む区域(生活圏)を暴力的に広げ、針葉樹の無理な植林をし、森林管理を放棄している。
その結果、川の生き物の種類が減り、川原も川底も泥だらけになった。
現在の貞光川には歴史的遺産が残り、美しかったときの名残はわずかしかない。
過去に見つけたのは2つ。
そのひとつが「かんのう」、そして青石の構造物だ。
コラムの続きを読む


ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典
イラスト図解 寿司ネタ1年生



