アカナマコ

Scientific Name / Apostichopus japonicus (Selenka, 1867)

アカナマコの形態写真

全長30cm×8cmくらいになるが、身体は縮んだり、伸びたりするので大きさがわかりづらい。体色は赤い。前方に口、後方に肛門がある。身体に縦に6列のイボイボがあり、内骨格は退化して、内側に痕跡的に残る。

    • 物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    棘皮動物門ナマコ綱楯手亜綱楯手目シカクナマコ科マナマコ属

    外国名

    学名

    Apostichopus japonicus (Selenka, 1867)

    漢字・学名由来

    漢字/赤海鼠、赤生子 Manamako
    由来・語源/ナマコの仲間でもっとも普通に見られるもので赤いタイプ。
    ナマコの由来・語源
    古くは単に「こ」と呼ばれていた。漢字「海鼠」も本来は「こ」と読む。これはナマコは古くは、ゆでて干したものが都などに送られた。これを「干海鼠(ほしこ)」、「熬海鼠(いりこ)」という。それが室町時代には生鮮品が見られるようになり、これを特に「生(なま)の海鼠(こ)」と呼ぶ。それが江戸時代元禄期には生鮮品が一般的になり、「海鼠」を「なまこ」と読むようになった。これは山間地である京から海を臨む江戸に、文化の中心が移行したことも大きいのではないか。
    また「こ」とは指示代名詞「that」ではないか? ナマコを見て、不思議な姿から「あれ」といっただけで通じたのではないか? すなわち海中で見られる「あれ」がナマコであったのでは?
    異名いろいろ 〈タワラゴ(俵子)・タワラなどともいい、上方ではトラゴともいった。〉『たべもの語源辞典』(清水桂一 東京堂出版 1980)

    地方名・市場名

    アカコ
    場所関東の市場で。 

    生息域

    海水生。浅海。
    北海道〜九州。中国大陸、朝鮮半島。

    生態

    雌雄異体。
    キュビエ器官は持たない。
    赤いナマコ(アカナマコ)はやや外洋性でじゃりなどのある岩礁地帯に生息。
    泥とともに珪藻類、海藻、貝類、アマモの破片などを食べている。
    産卵期は3月〜9月。
    産卵後、餌(えさ)をとることをやめ、深場に落ちる。
    冬に活発に餌をとり、活動する。
    腸や身体を再生することができ、危険を感じると腸(内臓)を出して、敵の目をごまかす。

    基本情報

    ナマコの仲間は世界中に生息し、熱帯にたくさんの種類がいてる。食用としている国は少なく、熱帯域のようにナマコの加工、乾物生産はしても、食用としない地域も多い。日本のように生で食べる習慣がある国は非常に希。
    中華高級食材の海参は非常に有名。日本でも江戸時代など中国向けの海参を生産し、俵物と呼ばれていた。
    国内で食用となるのはマナマコとアカナマコ、キンコの3種類。
    本種は市場ではマナマコと混同されて流通し、近年あまり区別しなくなっている。

    水産基本情報

    市場での評価酢寒くなると入荷してくるもの。量的にはあまり多くないが重要なものとなっている。価格はやや高値安定。マナマコ(青・黒)よりもやや高い。
    漁法 底曳網(ナマコ桁網、曳網、抄網)、見突き漁
    主な産地 北海道、青森県、長崎県、山口県、愛媛県、兵庫県、石川県

    選び方

    生きているもの。触って硬く、太っているものがいい。

    味わい

    旬は冬
    口と排泄孔を切り取り、内側の白い皮をはずすだけなので歩留まりがいい。
    筋肉は微かに渋み、苦みがあるが、これが持ち味だ。生で食べて食感があり、硬いが適度にかみ切れる。意外に消化はいい。
    腸、生殖巣なども独特の味わいがある。

    栄養

    ビタミン類が豊富。
    カルシウム、コンドロイチン、コラーゲンに富む。
    ナマコが持つ、ホロトキシンというサポニンの一種には水虫を起こす白癬菌の成長を抑制し、殺菌効果もある。

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    マナマコの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身、酢のもの)、煮る(茶振りなまこ)

    アカナマコの刺身 ザルなどに入れて塩で少し締めて、口と排泄孔周辺を切り取り、裏面から包丁を入れて、内臓を出す。体腔膜(筋肉に内側から張りついている膜)を剥がして刺身状に切ったもの。ナマコそのものに塩味があるので、あえてしょうゆなどをつける必要はない。これにポン酢やきゅうりを合わせると酢のものになる。シコシコとして一瞬硬く感じるが口内でゆっくり溶けていく。柑橘類が合う。

    茶振なまこ(アカナマコの茶振り海鼠) 漬け地は昆布だし・酢・煮きり酒・煮きりみりんを合わせたものを一度煮立たせる。調味料は好みでいろいろやるといい。ザルなどに入れて振り塩をして締める。肛門、口を切り取り、内臓を取る。これを煮立った緑茶(番茶)のなかでさっと湯通しする。ザルなどに入れて茶の中で振ることから「茶振」だ。これを冷やした地に1日以上つけ込む。

    好んで食べる地域・名物料理

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    加工品・名産品


    このわた 消化管(腸)の塩辛だ。腸管を取りだし、なかの泥などをていねいにしごきとる。これを塩で漬け込む。塩が慣れたら出来上がりだ。食べるときにとんとんと食べやすく刻んで出す。非常に高価。愛知県三河湾、石川県七尾湾、瀬戸内海周辺が有名。
    このこ(くちこ) 生殖巣の塩辛。2月くらいになると「こ(卵巣)」が大きくなる。これを塩水でていねいに洗って塩漬けしたもの。「このわた」の渋味がなく、微かに甘味を感じる。「このわた」以上に貴重で高価である。愛知県三河湾、石川県七尾湾、瀬戸内海周辺が有名。
    ばちこ(干しくちこ) 生殖巣を干し上げたもの。1固体から少量しかとれない生殖巣をていねいに洗い。細い紐にかけて干し上げる。軽くあぶって食べるが渋味を伴う強い甘味があり、微かに硫黄を思わせる香りがある。石川県、瀬戸内海周辺で作られている。

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    吾輩は猫である 〈始めて海鼠(ナマコ)を食い出せる人はその胆力において敬すべく、始めて河豚を喫せる漢はその勇気において重んずべし。〉
    冬至ナマコ 〈一二月から二月がうまい。冬至ナマコといってこのころが旬である。〉『たべもの語源辞典』(清水桂一 東京堂出版 1980)

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    参考文献・協力

    『ナマコ学 -生物・産業・文化-』(高橋明義・奥村誠一編 誠文堂書店)
  • 主食材として「アカナマコ」を使用したレシピ一覧

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