歴史

節分に食べる・飾る魚貝類

節分とは


節分とは雑節のひとつで、立春、立夏、立秋、立冬の前日のことだ。特に立春の前日は、立春を正月とする考え方をしていたときには大晦日にあたる。
季節の変わり目に現れる鬼、怨霊などを払う儀式として宮中で行われたのに端を発する。
今現在もっとも多くの地で行われているのが柊(ヒイラギ)の枝に鰯の頭を刺し、豆幹(大豆をとったあとの茎と豆のさや)などを合わせて門などに飾り、豆をまいて鬼を払うというもの。
今や立春2月4日の前の節分に先立って煎り大豆、鬼の面がスーパーなどに並ぶ。

節分にイワシを食べる


東京都八王子市の魚屋では節分にはイワシの丸干しをいつもよりも多めに仕入れる。節分にはヒイラギの枝にイワシの頭を刺して玄関に飾るだけではなく、節分の食卓に上げるらしいのだ。埼玉県妻沼町本町(現熊谷市)では節分に〈けんちん汁と焼いた鰯を食べる〉、〈いわしを焼いて食べる。焼いたいわしの頭を、二股のひいらぎの枝にそれぞれ付けて、大豆をほうろくで煎るときに、豆をかき回すしぐさをする〉がある。
岐阜県萩原町(現下呂市)では〈「節分」には、ふだんあまり食べられないイワシを用い、バク(悪夢を食う動物)が来るという縁起をかついで、麦飯を食べ……〉というのがある。
群馬県では焼いて頭を飾るというのがあるが、頭以外は食べていたのだろう。他の多くの地域でもイワシの頭をヒイラギに刺すとあるが、結局節分にイワシ(マイワシかカタクチイワシ)を食べる日であったことになる。
徳島県つるぎ町一宇では〈ネズミモチの枝(ネゾギともいう)にヒイラギの葉と鰯の頭、(シキミの葉、ミカンの皮などもさす)等を突き刺さした「鬼の目突き」を、門や戸口にさし、これに寺などから配られた守札(俗にコチャシラヌ)添えておく。……夕食は必ず麦飯のおせち(立春を正月とすると大晦日になるので年取のご馳走という意味か)と赤鰯(マイワシである可能性が高い)を食う……)〉。
この節分に食べる魚貝類を調べてデータ化を進めていくつもりである。
『熊谷市史調査報告書〈旧妻沼町編〉 民俗編 第二集 食生活』(熊谷市史編さん室)、『萩原文庫4 萩原の四季と味』(はぎわら文庫編集委員会 岐阜県益田郡萩原町 1981)、『一宇村史』(一宇村役場 1972)

長崎市の節分は金にあやかる


長崎県長崎市では「金にあやかる」として節分に「ガッツの煮つけ(金頭の煮つけ)」を食べる。ガッツは長崎県でカナガシラ(長崎市茂木ではイゴダカホデリでも)のこと。節分のとき他には「笹いか(ケンサキイカ)」を巾着袋(財布)に見立て丸のまま煮るか、焼くかしたもの、「赤大根の酢のもの」を食べる。
この風習は現在でも根強く残っていて。長崎魚市場では節分前に本種の値段が十倍に跳ね上がるという。
石田拓治さん(長崎市)、『長崎の郷土料理』(井上寿子・片寄真木子 長崎出版文化協会 1982)

節分にはナマコを食べる


島根県隠岐の島では、節分にナマコの酢のものを食べる。砂おろしになるとして必ず「ナマコの酢のもの」を食べた。
長崎県平戸市度島でも食べたという。
協力/福畑敏光さん(長崎県平戸市) 『聞き書 島根の食事』

いりこを使う


「いりこ」の頭を節分に使う地域もある。愛媛上島町魚島では、〈この火、イリコ(煮干し)の頭を栗とトベラの葉で包み、ススキの茎に挟んだ鬼脅しを戸口や神棚などに立てる、これをナツクハナツクと呼ぶ〉。なので節分に食べるものではなく飾るもの、儀式に使うものでしかない。
この「いりこ」を使う地域も多い。
『文化伝承別冊一 魚島民俗誌』(愛媛大学民俗研究会 1975)

生焼けのオイカワを飾る


徳島県美馬郡池田町(現三好市)では〈ミカンの皮・花しば(シキミ)・ジャコ(徳島県ではオイカワのことである場合が多い)の生焼けを竹にはさんだもの、又はオニノメツキ(鬼の目突き、柊)、あるいは割竹などに、ハナシバ・イワシ・お寺の門札に刺したものなどをさす〉。
『池田町史 下巻』(徳島県三好郡池田町 1983)


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