SL 30cm前後になる。体色は一様に赤で、頭部が小さく紡錘形で細長い。鱗は小さいが櫛鱗で硬くざらつく。吻棘はいくつかの小さい棘からなる。胸鰭下部の3つの軟条が昆虫の脚のように分離している。背鰭にも胸鰭にも目立った斑紋はない。[26cm SL・331g]
カナガシラの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目ホウボウ科カナガシラ属外国名
学名
Lepidotrigla microptera Günther, 1873漢字・学名由来
漢字 金頭、金頭魚、鉄頭、銅頭魚、加奈加之良 Kanagasira
由来・語源 頭が硬いところから。昔から日本各地で使われてきていた呼び名である。
市場などでは仮名頭(最初)、すなわちイロハの始まりが「イ」であることから、荷に「イ」と書かれていたりする。
銅頭魚 〈銅頭魚/頭骨は高く起り硬くて赤く、銅の色に大へんよく似ている。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
火魚 『魚鑑』に、16世紀中国の『寧波府志』(張時徹)に「火魚(クハギョ)」というのがある。ただ本来、カナガシラであるかはわからない。武井周作が明の本草の世界から文字をとってきたもの。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
〈頬甲族ハウバウ科カナガシラ属 カナガシラ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)Günther,
Albert Karl Ludwig Gotthilf Günther (アルベルト・ギュンター 1830-1914 ドイツ→イギリス)。動物学者。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深40メートルから340メートルの砂泥地。
北海道全沿岸、青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、青森県〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海。
朝鮮半島南西岸、渤海、黄海、済州島、東シナ海中部以北、香港、ピーター大帝湾。生態
雌の方が大型になる。
産卵期は春。
主に低生のエビや甲殻類をエサとする。基本情報
北海道まで九州まで底曳きや釣り、刺し網などで水揚げされている。底曳き網などではまとまって揚がり、味がいいので古くから人気の高い白身魚だ。
東北などで「君魚(きみよ)」というのは、殿様などが食べる上等の魚という意味を持つ。生後100日に行われるお食い初め(箸初とも)に使われる。また長崎県などでは節分に欠かせない魚として重要である。
国内では鮮魚流通で普通にみられる。比較的安いわりにとてもおいしい魚だが、水洗いなどが面倒なので、人気に陰りがみえる。
下ろしさえすれば刺身にしておいしく、煮ても焼いても最上級の味を誇る。
珍魚度 一般的な食用魚だが、消費地などではあまり小売店に並ばない。少し探せば手に入る。水産基本情報
市場での評価 秋から春にかけてときどきまとまって入荷してくる。白身に人気がなくなってきていて値段はやや安値安定。産卵期に大量に揚がる値を崩すことがある。
漁法 底曵網、定置網
主な産地選び方
赤い色合いが鮮やかなもの。古くなると退色する。身のしっかり硬いもの。鰓が鮮紅色であるもの。味わい
旬は秋から春。真子・白子が大きくなるにしたがい味が落ちるが、極端に味を落とすことはない。
鱗は背鰭下などに大きくて強いのがあり、体幹部分は小さくてしかも硬く取りにくい。皮は厚く引きやすい。骨は頭部のみ硬い。
透明感のある白身で鮮度が落ちると白濁する。熱を通しても硬く締まりすぎない。肝は非常に美味。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
カナガシラの料理・レシピ・食べ方/煮る(鍋、煮つけ、塩煮)、汁(潮汁、みそ汁)、生食(刺身、マリネ、セビチェ)、焼く(塩焼き、素焼き)クリックで閉じます
カナガシラのちり(水炊き) 頭部などからとてもいいだしが出る。身自体・皮にもうま味があるので、鍋材料としてこれ以上のものはない。
水洗いして適当に切る。肝や鳴き袋も取り分けて置く。湯通しして冷水に落として残った鱗とぬめりを流す。水分をよく切っておく。これを昆布・酒・塩の出しの中で煮ながら食べる。野菜や豆腐などはあるものをたっぷり使うといい。
身の上品な味わいにうま味豊かなだしがからむ。今回は柑橘類と醤油で食べたが、これ以上望めないと思う。
カナガシラの煮つけ 大振りのカナガシラを水洗いして半割にして肝などはそのままにして、湯通しする。水分をよくきり、煮たもの。酒・砂糖・しょうゆの味つけで臭味消しには梅干しを使ってみた。これは三重県尾鷲市でのやり方。酒・みりん・しょうゆでも、酒・しょうゆ味で煮てもおいしい。クリックで閉じますカナガシラのわた煮 寒くなると生殖巣が膨らんでいる個体が増えてくる。大きいものは雌なので卵巣を手に入れるなら大きめを選ぶといい。卵巣、肝、鳴き袋(鰾)を取り分けて置く。流水などでたいねいに洗い。水分を切る。酒・砂糖・水を煮立たせた中で煮汁を絡めるように短時間煮る。クリックで閉じますカナガシラのまーす煮 水洗いして適当に切り、塩味で煮て美味。やや強めの塩水で短時間煮る、沖縄の郷土料理、まーす煮である。甘味となるものはなにも使っていないのに、身にほどよい甘味があってとても味わい深い。クリックで閉じます
カナガシラのみそ汁 1尾丸ごと使っても、あらを使ってもいい。必ず肝もくわえること。これを一度湯通しして、冷水に落としてぬめり、鱗などを流す。これを水から煮出してみそをとく。豆腐や野菜などをくわえてもいい。実にうま味豊かなだしが出て非常においしい。クリックで閉じますカナガシラの刺身 白身でほんのり赤みがかって見た目にも美しい。特に旬の脂ののった時期の刺身は絶品。脂の口溶け感から来る甘味があり、旨みが強く、脂から甘さを感じることができる。食感もいい。食べ飽きない味わいである。クリックで閉じますカナガシラの塩焼き 水洗いする。頭部は一般家庭では切り捨てた方が焼きやすい。鰾、肝を取り出しておき、必ずもとに戻して焼いて欲しい。振り塩をして1時間以上寝かせて焼き上げる。焼きものの味わいは一級品。皮目には独特の香りがあり、身は適度に繊維質で身離れがいい。ほんのりとした甘味もいい。しかも腹にもどした鰾、肝の味わいは例えようもない。クリックで閉じますカナガシラのフライ 水洗いして三枚に下ろす。皮付きでも皮なしでもいいが腹骨・血合い骨を取る。塩コショウして小麦粉をまぶし、衣(小麦粉・卵・水。溶き卵でもいい)からめパン粉をつけて揚げる。あっさりして上品な中に強いうま味が感じられる。とても味わい深い。クリックで閉じますカナガシラのエスカベーシュ 小振りなものを使う。水洗いして三枚に下ろす。水分をよくきり、片栗粉もしくはコーンスターチをまぶしてじっくりと二度揚げをする。これを合わせ酢(白ワインビネガーと市販のハーブブイヨン、砂糖、少量の白ワインなどを合わせて一煮立ちさせる)につけ込む。にんじん、ピーマン、玉ねぎなどとからめて数時間から1日馴染ませる。クリックで閉じますカナガシラのポワレ 水洗いして三枚に下ろす。水分をよく拭き取り、塩コショウして皮目から多めのオリーブオイルでじっくりとソテーする。火が通ったら取りだし、フライパンにバルサミコ、白ワインを入れてデグラッセする。これをソースに。クリックで閉じます関連コラム(料理法・レシピ)
佐渡産産卵盛期のカナガシラでエスカベッシュ
八王子総合卸売協同組合、マル幸に新潟県佐渡市からカナガシラがきていた。ボクのもっとも好きな、もっとも愛を感じる魚である。 ちなみにカナガシラを食べると金運が上昇・・・ 続きを開く好んで食べる地域・名物料理
かながしらの白煮 ワタと鱗を除いた小さめのカナガシラを昆布だしで、けずり大根と煮る。味つけは塩のみ。津軽半島東部。クリックで閉じます
金にあやかる 長崎県では「金にあやかる」として節分に「ガッツの煮つけ(金頭の煮つけ)」を食べる。ガッツは長崎県でカナガシラ(長崎市茂木ではイゴダカホデリでも)のこと。節分のとき他には「笹いか(ケンサキイカ)」を巾着袋(財布)に見立て丸のまま煮るか、焼くかしたもの、「赤大根の酢のもの」を食べる。この風習は現在でも根強く残っていて。長崎魚市場では節分前に本種の値段が十倍に跳ね上がるという。石田拓治さん(長崎市)、『長崎の郷土料理』(井上寿子・片寄真木子 長崎出版文化協会 1982)
加工品・名産品
釣り情報
広島県倉橋島の日美丸さんからの情報では「鯛のフカセ釣」では外道のひとつ。アタリはキスに似て、上がってくるときはカレイのような感じの引きであるそう。日美丸の「鯛のフカセ釣り」というのは伝統的な釣法で、仕掛けを見る限り当たりもダイレクトだ。歴史・ことわざ・雑学など
上流階級の年越しの膳 弘前藩津軽氏の城下では上流階級の年越しの膳にも金頭魚が用いられた。『津軽藩政時代の生活』(黒瀧十二郎 北方新社 1993)
食い初めの魚 生後100日目に行われるお食い初めには、尾頭つきの魚が善に加わる。このときもっともよく使われるのがカナガシラ。頭が硬い魚なので、頭の骨がしっかりする(固まるように)とのか。(『魚の文化史』矢野憲一 講談社)
賀膳に供す 〈世間一般では子が生まれると必ずこの魚を賀膳に供する。堅固の意味をとってそうするのである。もし鮮魚のない場合は干ものを用いる〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)関連コラム(歴史)
節分に食べる・飾る魚貝類
節分とは雑節のひとつで、立春、立夏、立秋、立冬の前日のことだ。特に立春の前日は、立春を正月とする考え方をしていたときには大晦日にあたる。 季節の変わり目に現れる・・・ 続きを開く参考文献・協力
協力/魚喰民族 石田拓治さん(長崎県長崎市)、佐藤厚さん(長崎県雲仙市)
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚の文化史』(矢野憲一 講談社)、『聞書き 青森の食事』(農文協)