SL 50cm前後になる。体は細長い。側線がなく、体に5、6本の暗色の縦筋がある。頭部が平たく、口は小さく先端にある。目に脂瞼(脂肪の膜)がある。鱗は大きく硬い。脂瞼(しけん)という脂の皮膜が目に発達する。背鰭第1〜3棘の根元は接する。[イナサイズ 19.5cm SL・94g]
ボラの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★
これは常識食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スメグマモルフ系ボラ亜系ボラ目ボラ科ボラ属外国名
学名
Mugil cephalus cephalus Linnaeus,1758漢字・学名由来
漢字/鯔、母羅 Bora
由来・語源/鰡は本来は「し」で、それに俗名の「ぼら」を当てたもの。この漢字を「なよし」と読むこともある。
要するに明治になり、一般的に使われていた呼び名を標準和名として採用したものだ。
成長とともに呼び名が代わる出世魚。ボラは古くは成魚のことをさす呼び名。
〈鰡(ぼら・なよし・ツウ) 音は支点 子魚〔黒色のことを鰡(し)という。この魚は黒いのでそれで鰡という。その声が訛って子魚となったのである〕 〔和名は奈与之。俗に保良という〕 〔小さなものを江鮒(えぶな)という。また簀走りともいう〕〉、〈伊勢の人は名吉(なよし。本朝食鑑では「みょうきち」)と称する〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
〈初生(できたち)をおぼこといひ、微しく育ちたるをゑふな…中略…二歳のものをいなといひ、三歳をすばしりといふ、…中略…四歳以上を、ぼらといふ、即鯔魚(しぎょ)なり、十歳以上を、とゞといふといえり〉『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)
その他
■ 漢字「鯔」はイナとも読む。イナはボラの若魚、稚魚で田にも入ることからだろうか。
■ 「『角笛』に似ているところから、中国の胡語〈はら〉が転じて、わが国語〈ぼら〉になった」。
■ 「ほばら(太腹)が転じて」。
■「掘るの意味で、ボラは頭を泥に突っ込んで餌を食べるから」。
■ 古名に「クチメ」、「ツクラ」、「シクラ」。Linnaeus
Carl von Linné(カール・フォン・リンネ 1707-1778 スウェーデン)。二名法を確立。地方名・市場名
生息域
沿岸の浅場、河川汽水域、淡水域。
オホーツク海をのぞく北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、種子島・屋久島、琉球列島、伊豆諸島、小笠原諸島。
アムール川河口、サハリンのオホーツク海沿岸、千島列島南部の太平洋岸、朝鮮半島全沿岸、台湾北部・西部・南部、中国遼寧省〜海南島・トンキン湾、ベトナム沿岸。北緯51度〜南緯42度の全世界の海域(熱帯アフリカ西部〜モロッコ沿岸を除く。熱帯海域には少ない)生態
3〜4歳で成熟。
低層に沈積した微生物や藻、原生動物、有機性のデトリタス(生物の死骸や排泄物が微粒状になったもの、微生物、藻類で多くが泥などに沈殿している)などを泥と一緒に食べている。
胃の内容物の出口である幽門部はそろばん玉の形をしていて、その壁は膨らんで硬く丈夫。胃の内容物を細かく咀嚼するのに適している。
産卵期は10月〜1月。秋になると暖流の影響のある海水温の高い場所に回遊、産卵する。
産卵場は黒潮や対馬暖流の影響を受ける外洋に面した海域。
産卵場は長崎県、三重県志摩半島、高知県須崎沖、薩南諸島。基本情報
全世界の温帯域から熱帯域の汽水域、海水域に群れを作る。都内ビルが建ち並ぶなかを流れる河川や水路、堀などにもいる都会にいてすらも出合えるありふれた魚である。
出世魚としても有名で、生まれたばかりのハクから、産卵に向かうトドまで食用として親しまれている。
古くから国内では重要な食用魚で、日常的に盛んに食べられていた。また産後の肥立ちがいいなどとして経産婦に食べさせたり、高級魚で江戸時代などは贈答用などにも使われていた。
都市化や工業廃水の影響で臭みのある個体が多くなり、今や食用魚としての認知度は非常に低い。今やボラ本体は未利用魚の最たるものとなっている。
秋から冬にかけて南に産卵回遊する。この卵巣で作るのが「日本三大珍味」のひとつ唐墨。中国で作られる墨に似ているところからこの名があり、塩漬けしてじっくり干し上げたもの。世界各地で作られており、独特の風味があり、非常に高価である。越前の海胆、三河のこのわた(海鼠腸)とともに日本三大珍味のひとつだ。またボラの「へそ」と呼ばれる胃の幽門部も珍重されている。
利用法/ほとんどが鮮魚で、卵巣のみ唐墨に加工されている。鮮魚は丸魚と白子で流通する。白子がおいしいのでもっと煮る、焼く、揚げるなどで利用するといい。丸魚は、生食、焼く、煮る、ソテーするなどとても多様。近年、大きな湾などの水質がよくなり臭味がある個体が減っている。また外洋や磯周辺にいる個体は一度も臭味を持ったことがない。
珍魚度 日本各地で水揚げがあり、流通もするが、都市部で見かけることはめったにない。産地などで探すしかない。水産基本情報
市場での評価 寒い時期に関東では千葉県などから入荷してくる。非常に安い。
卵巣は秋から新年にかけて入荷してくるが、非常に高価なもの。幽門部、白子も地域によっては単独で流通する。
漁法 刺し網
主な産地 長崎県、兵庫県、千葉県、愛知県、大阪府など選び方
触ってしっかり張りのあるもの。また黒っぽいものの方がよく、白っぽくなったものは古い。味わい
旬は秋から早春。大小での味の差は少ないが、大きいほど脂がのっている場合が多い。下ろすときには内臓に泥を噛んでいることがあるので注意が必要。
鱗は硬く大きいが取りやすい。皮は厚みがありしっかりしている。骨はやや硬め。
血合いが赤く、透明感のある白身。死んで時間が経つと白濁する。熱を通しても硬く締まらない。
あらなどからいいだしが出る。
幽門、白子も美味。卵巣は唐墨にしておいしい。
生息場所によっては泥臭い個体がある。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ボラの料理法/【本体】生食(洗い、刺身)、焼く(塩焼き、祐庵焼き、魚田)、煮つけ(みそ、しょうゆ)、汁(鍋物、みそ汁)、ソテー(ごま油焼き)、揚げる(唐揚げ) 【へそ】生食(たたき、刺身)、焼く(塩焼き)、煮る(煮もの)、炒め物 【白子】焼く(塩焼き)、煮る(ゆでる、煮つけ)、揚げる(揚げ出し、フライ)クリックで閉じます
トドの刺身(寒トドの刺身) 2月の鹿児島県錦江湾のトドの刺身である。きれいな水域で育った2㎏上のトドのうまさは食べてみないとわからないと思う。
水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨をとり、皮を引き、刺身状に切る。
切りつけたそばから脂がにじみ出してくる。口に含むといきなりトロっとした感じがして、その後にボラならではのうま味がくる。強いうま味の割りに後味がいい。寒のトドでなければ味わいぬ味である。わさび醤油でもいいし、酢みそをつけて食べてもいい。
ボラの刺身(酢みそ) 酢みそで刺身を食べる地域は多い。ボラは泥臭いとか、クセがあるなどというわけのわからないことを言う人がいるが、実は淡泊で上品な味なのである。今回のものは神奈川県真鶴町岩定置で揚がった新鮮なもの。水洗いして三枚に下ろし、皮を引き、薄く造る。これを辛子の利いた酢みそと洗いねぎで食べる。食べ飽きぬ味である。クリックで閉じますトドの湯引き(ボラの湯引き) 2月の脂がたっぷりのったトドを使って作った。水洗いして三枚に下ろす。血合い骨・腹骨を取り、腹の方を熱湯にくぐらせる。数秒で氷水落として水分をきり、皮目が落ち着いたら切りつける。寒のトドなので身に脂のたっぷりで口溶け感があるが、それ以上に湯引いた皮がおいしい。クリックで閉じますボラの湯引き
ボラの洗い ボラは生で食べるのが、いちばんうまいと思っている。これは定番中の定番である洗い。できれば活魚をしめて、すぐに料理したい。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、薄くそぎ切りにし、流水で洗い、氷水でしめる。切り身のなかからアデノシン三リン酸が失われ、ぎゅっと縮む。手前はへその刺身だ。味がないはずなのに、味をしっかり感じる。食感のよさが涼しさを呼ぶ。クリックで閉じますボラの洗い
ボラのポキ 刺身や塩焼きなどにすると無駄な部分が出る。それを使って作る。身は細かく切り、ねぎ(写真は島にんにく)と醤油・ごま油をかけて和える。自由な料理なのでトマトを使ってもいいし、キウイなどを混ぜてもいい。ここでは冬の橙をふった。クリックで閉じますクリックで閉じます
ボラの蒸魚(清蒸) 本種の頭部にはあまり筋肉は着いていないが、その少ない身が矢鱈にうまいのである。また目と脂瞼なども他に類を見ない味だ。これを中華風の甘いタレ、野菜と絡めて食べる口福感は例えようもない。残ったタレやあらに湯をかけてスープに、また煮だしてラーメンにしてもいい。
ボラは水洗いして頭部を梨子割りにする。頭部の鱗を包丁で削り取るようにして取る。皿にねぎを台にして置き、頭部(兜)を乗せて10〜15分蒸す。蒸し上がりにタレをかけ、香りのあるネギなどを乗せて煙が出るくらいに熱した油をかける。
ボラの鍋 上質の白身で、いいだしが出るので鍋材料に最適。大きさによって下ごしらえは違ってくる。小さなものはぶつ切りにしてもいい。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを昆布だしに酒、塩で味つけしたもので煮ながら食べる。野菜や豆腐など具はお好みで。クリックで閉じますボラの韓国風鍋 韓国にはだしを使った鍋がある。上品なだしに塩味の中で煮ながら食べると実に箸が進む。韓国の辛すぎない唐辛子が合う。水洗いして適当に切る。白子や胃袋などと一緒に湯通しして冷水に落として粗熱を取る。水分をよくきり、だし・塩・酒の中で煮ながら食べる。だしは煮干しだしでもカツオ節出しでもいい。クリックで閉じますボラの煮つけ 水洗いして筒切りにして水分をよくきる。湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。しょうゆ、酒、ざらめ糖で煮つけて、仕上げにしょうがの搾り汁をたらしたもの。煮ても硬くならず、うま味が感じられて美味。クリックで閉じますボラの煮つけ
ボラのみそ煮 水洗いして筒切りに。湯通しし、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、酒、水を合わせて煮る。煮加減を見ながらみそ、みりん、砂糖を合わせたものをとき入れていく。仕上がりにしょうがの搾り汁をたらす。すりみそでなければすって、裏ごしするときれいにあがる。クリックで閉じますボラのみそ煮
ボラのみそ汁 あらを集めるか、小型のものはぶつ切りにする。湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを水(酒を少量入れる)から煮出してみそをとき入れたもの。うま味豊かなだしがでて味わい深い。クリックで閉じますボラのみそ汁
ボラのごま油焼き 水洗いして三枚に下ろして血合い骨を抜き切り身にする。薄く小麦粉をまぶしてごま油でソテー。コチュジャン、酢、砂糖、煮きり酒、昆布だしを合わせたたれをかけたもの。淡泊な白身魚に向いている料理法だ。クリックで閉じますボラのごま油焼き
鰡の塩焼きにオリーブオイル 外国の方の食べ方に習ったものである。水洗いして三枚に下ろし、塩をする。少し寝かせて焼き上げ、香りのあるパセリやハーブなどを散らして、香辛料(ここではチリパウダー)をかけにんにくを混ぜたオリーブオイルをたっぷりとかけて食べる。単に塩焼きにするよりも万人向きでパンにも合う。クリックで閉じますボラの塩焼き 水洗いして切り身にする。振り塩をして1時間以上置き、じっくりと焼き上げる。二枚に下ろして焼いてもいい。寒のボラは脂がのっていて、表面が揚げたようになる。皮がぱりっと香ばしく、身はとても豊潤である。焼くと魚魚したところが出る。それが苦手ならショウガの搾り汁を振る。しょうが酢をかけたり、柑橘類を振るなどするといい。クリックで閉じますボラのねぎみそ焼き 水洗いして三枚に下ろして血合い骨を抜き、切り身に。じっくりと素焼き。焼き上がりにみそ、砂糖、みりん、酒、卵黄を鍋で練ったたれをのせて焦げ目をつけたもの。魚臭さ自体がダメという人はこんな料理もいいのでは。ほぐしてみそと絡めながら食べる。クリックで閉じますボラのねぎみそ焼き
クリックで閉じますボラへそのたたき
ボラの幽門(うす、へそ、そろばん珠)ボラのうすのたたき うすはざっと水洗いして水分をよく拭き取る。表面を火で炙り、適宜に切ったもの。単に刺身で食べてもうまいが、軽く炙ることでよりうま味が増す。心地よい食感が楽しめるのもいい。クリックで閉じますボラうすの塩焼き
幽門(うす、へそ、そろばん珠)ボラうすの塩焼き よく水洗いして、ちょうどそろばん珠のような形の穴の部分まで包丁を入れて切る。水分をよく切り、振り塩をして串に刺し、やや強火で焼き上げる。コリコリとした食感のなかに甘味があって非常に美味。クリックで閉じますボラへその山椒煮
幽門(うす、へそ、そろばん珠)ボラへその山椒煮 幽門は水洗いして中心の管状の部分まで包丁を入れて半分の厚みに切る。繊維に沿って包丁目をとんとんと入れておく。鍋に酒、みりん、砂糖を煮立たせておき、下ごしらえした幽門を入れてさっと煮て鍋止めする。仕上げに山椒を振る。クリックで閉じますボラへその中華炒め
幽門(うす、へそ、そろばん珠)ボラへその中華炒め 幽門は水洗いして管状の部分まで包丁を入れて、外側に細かく包丁目を入れる。厚みを半分に切ってもいい。中華鍋にしょうが、にんにくのみじん切りを入れて油をそそいで火をつけて香りづけする。ねぎを加えて軽く炒めて幽門を入れて炒め、塩と山椒(コショウでも)で味つけする。クリックで閉じますボラ白子の塩焼き
精巣(白子)ボラ白子の塩焼き 白子は水洗いして一対をふたつに切り分ける。振り塩をして1時間以上寝かせて焼き上げる。表面に焦げ目がついても中はクリーミーで甘味がある。臭味はなく、白ワインにも好相性だ。クリックで閉じますボラ白子のゆでポン酢
精巣(白子)ボラ白子のゆでポン酢 白子は適宜に切る。鍋に塩水をわかし、しょうがもしくはハッカクを入れて、白子をゆでる。冷水に落として水分を切る。丸のままでゆでて、ゆで上がりに切ってもいいが火を通すのに時間がかかる。これをポン酢で食べる。紅葉下ろし、一味唐辛子などお好みで。クリックで閉じますボラ白子の揚げ出し
精巣(白子)ボラ白子の揚げ出し 白子はざっと水洗いする。適宜に切り、片栗粉、もしくは小麦粉をまぶして強火で短時間揚げる。これを器に盛り、だしをはる。だしはカツオ節出し、みりん、酒で加減。酢をきかせてもいい。好んで食べる地域・名物料理
産後に食べる 島根県安来市広瀬町比田地区。産婦(出産直前、直後の女性)には「うす(臼)」のある魚を食べさせるとよいといって、鯔(ボラ)などを食べさせた。
ぼら雑炊 雑炊ではなく、ボラの炊き込みご飯。ボラをゆでて、ゆでた水で加減した米にほぐしたボラの身を混ぜて炊く。もしくはボラの身を入れてご飯を炊き込む方法がある。ねぎやにんじん、油揚げなどを入れる。[蟹江町]
ボラの水炊き(鍋) 寒い時期に魚屋に鍋の材料を買いに行くと、「はげかぼら」とよく言われた。魚は瀬戸内海か徳島県でも紀伊水道のものだったので、カワハギかボラが寒い時期を代表する鍋材料だった。[徳島県美馬郡貞光町南町(現つるぎ町)]いなまんじゅう 愛知県海部郡蟹江町。いな(ボラの若魚)の内蔵と中骨を口から出し、代わりにあん(ぎんなん、しいたけ、麻の実、ゆずの入った練りみそ)を入れて焼き上げたもの。[いなまん 愛知県海部郡蟹江町]クリックで閉じますいなまんじゅう
ぼらちゃず 「ボラの茶漬け」のこと。みりん、酒、砂糖、しょうゆなどでタレを作る。切り身にして素焼きし、たれを塗り、また数回焼く。これをご飯にのせてお茶をそそぐ。[石川県穴水町、能登町]『聞き書 石川の食事』(農文協)クリックで閉じますぼらちゃず
ぼらの色づけ ボラの照り焼き。三枚に下ろして5〜6等分したものを素焼き、たれを塗りながら焼き上げる。たれはしょうゆ、砂糖、酒、甘酒などで作る。この「色づけ」、「色付け焼」は江戸時代から作られていたもので、言語とともに石川県に残ったものと思われる。[石川県金沢市]『聞き書 石川の食事』(農文協)クリックで閉じますぼらの色づけ
ぼら飯 ボラを水洗い。適宜に切り、しょうゆに漬け込んでご飯と炊き込んだもの。野菜は里いも、にんじん、ごぼうなど。ご飯を炊くときに中骨の部分を入れておくと味がいい。味つけは漬け込んだしょうゆだけでもいいが、酒を加えた方がうまい。[香川県東部『聞き書 香川の食事』(農文協)]クリックで閉じますぼら飯
ぼらと大根のだいだい酢のなます(ぼらのなます) ボラを三枚に下ろして薄き切り、塩をする。大根、にんじんはせん切りにして合わせて塩をしておく。塩をしたボラ、大根、にんじんを洗い、ほどよい塩加減にして橙(だいだい)の搾り汁で和える。砂糖を加えると酸味が抑えられて美味しい。[香川県東部『聞き書 香川の食事』(農文協)]クリックで閉じますぼらと大根のだいだい酢のなます
関連コラム(郷土料理)
加工品・名産品
ークリックで閉じます長宗商店の3年物カラスミ
唐墨(からすみ)三年もの 寝かせることで塩の角がとれて、渋みがむしろ甘味とも深みともなって限りなく奥深い味わい。間違いなく「からすみ」のなかの最高峰のひとつ。[長宗商店 三重県熊野市]
台湾の唐墨(からすみ) 卵巣を塩漬けして、じっくり干し上げたもの。脂からくる独特の風味があり、旨みが濃厚。少しずつ切り取って微かにあぶって食べる。台湾、イタリアなど世界各地で作られている。国内ではボラが獲れる地域ではどこでも作られているが、長崎県が古くから有名である。肥前野母(長崎県長崎市野母)の唐墨、越前の雲丹、三河(知多とも)の「このわた」とともに日本三大珍味とされる。[写真は台湾高雄市]クリックで閉じます台湾高雄市での唐墨作り
生唐墨(なまからすみ) 卵巣の塩漬け。三重県尾鷲市などで作られるもの。思ったよりもあっさりした中に、ボラの卵巣の風味が生きていて、非常に美味。名品だと思う。パスタやおこわに加えるなど用途が非常に広い。[はし佐商店 三重県尾鷲市]クリックで閉じます生唐墨
釣り情報
内湾ではギャング針に赤い浮子で狙う。時にコマセを使うこともあるが、赤い大きな浮子に好奇心旺盛なボラが引き寄せられ、これを引っかけて釣る。歴史・ことわざ・雑学など
出世魚 ハク(3cm前後)、スバシリ(10cmくらいまで)、オボコ(5〜18cm)、イナ(10〜25cm)、ボラ(30〜40cm)、トド(40cmもしくは50cm以上)。
寒鯔 関東の陸釣り(防波堤などからの釣り)をする人の間で「寒鯔(かんぼら)」という言葉がある。
うす(臼)のある魚 〈産婦にはうす(臼)のある魚を食べさせるとよいといって、鯔(ぼら)などを食べさせた。また乳がよく出るようにといって鯉を食べさせるふうもある。〉。現島根県安来市広瀬町比田。『能義奥の民俗』(畑伝之助 島根県文化財愛護協会 1967)
秋 歳時記、俳句季語では「秋」。
いなせ 一説に〈勇み肌で、粋な若者のこと。またその様子。威勢よくさっぱりした気っ風の若者のこと。魚河岸の若者が、ボラの若魚であるイナの背のように髪を結んだ〉ことから。
江戸前の魚 〈東都(えど) 佃洋(おき)、すなわち其処なり、あじわひも、泥臭なくして、甚よし、只いなのみにあらず、諸(もろもろの) 魚神奈川沖より、こなたに生きるもの、所謂江戸前と称て、賞味せぬものぞなき〉。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
養殖 アフリカ、イスラエル、東南アジアでは重要な養殖魚。
鸚鵡籠中記吸物鯔など 婚礼の膳や引き出物に。「塩鰡弐本」。夕食に「鰡焼物」。元禄6年4月24日 『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
すばしり打ち(魚へんに走る) 汽水域でボラの幼魚である「すばしり」の投網打ちにしばしば出掛けている。元禄7年閏5月27日 『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
吸物 赤みそ へそ 「今日御慶帯を結ぶ。懐胎五月」。祝いの膳で出る。赤みそ仕立ての吸物にボラのへそという意味らしい。元禄7年9月26日 『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
七夜の祝儀 産後七日目の祝いの膳に「なよし指身(さしみ)」、祝いに「大鰡二」。(元禄8年3月16日)、他にも「魚へんに走(すばしり)の川の吸物」(元禄9年9月17日) 『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
滝沢馬琴(曲亭馬琴)鯔五本 馬琴の孫、太郎などの祝儀に、赤飯、鰹節などとともに、鯔五本を送る。
鯔開き 嘉永元年(1948)八月、〈赤雑毛の女猫を持っていって渡した。 鯔一尾をそえて渡した。〉
その他鯔色付け焼 小石川の御家人、小野家の忠四郎は幕臣舘野家に養子に行く。小野家からなにくれとなく援助。田安家の御近習番である勤め先に〈鯔色付け焼、鮑フクラ煮、……〉などを差し入れている。『小石川御家人物語』(氏家幹人 朝日新聞社 169)
ぼらの刺身 紀州和歌山藩の衣紋方(衣冠装束などを整える役目)であった酒井伴四郎はしばしば装束の稽古に三井家(江戸)に出向いている。装束の稽古のあとに料理を振る舞われているが、万延元年十一月二十四日(1860)には、「ぼらの刺身」が出てくる。『紀州藩士 酒井伴四郎関係文書』(小野田一幸 髙久智広 清文堂)参考文献・協力
協力/岩田昭人さん(三重県尾鷲市)、菅原宏志さん(宮城県気仙沼市)
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『三重県の食生活と食文化』(大川吉崇 調栄社 2008)、『本朝食鑑』(人見必大 島田勇雄 訳注 1697)、『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)、『馬琴一家の江戸暮らし』(高牧實 中公新書)地方名・市場名 ?
エブナ
場所三重県西部・和歌山県、長崎県西海、熊本 備考紀伊續風土記。〈ボラ、幼者をイナ(紀州各地)、紀伊續風土記には一年生をエブナ、至って小なるをスバシリとある。〉 参考文献、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)カラスミボラ
サイズ / 時期産卵期 参考文献
ギンコ キンビシコ グイナ クロメ クロメゴ ケラナゴ コイナ コチヨボ コッテボラ コッテブラ コッブラ コブラ サクシ サンザイ シゴイ シバ シバシリ シママワリ シュクチ シロメ シロメボラ シンコ スクチ スバ スボオ スバコ セイゴ チクラ ヂゴイ チョボ ツクラ ツボ ヅボ ツボウ ツボオ ヅボオ テコロボ デコロボ トオザイ トオリボラ トド ナイシ ナタネボラ ナヨシ ナンシ ニサイ ノボコ バイ ババ ヒカリコ ブラ ボラコマクチ ミョウギチ ミョウゲメ ミョウキチ ミョギチ メウギチ メジロ メジロボラ ヤチミコ ヤチミゴ
参考文献
ソロバンダマ[そろばん珠]
部位幽門部 備考形から。