ホッケ

Scientific Name / Pleurogrammus azonus (Jordan and Metz, 1913)

ホッケの形態写真

40cm SL を超える。紡錘形。やや細長い。背鰭は1で欠刻(1つの鰭の中間などに極端に深い場所がある)がないか、あっても浅い。暗褐色で鰭(ひれ)などに棘がない。尾鰭(おびれ)後端が深く切れ込む。[根ボッケと言われるサイズ。48cm SL・2.07kg]
ホッケの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
40cm SL を超える。紡錘形。やや細長い。背鰭は1で欠刻(1つの鰭の中間などに極端に深い場所がある)がないか、あっても浅い。暗褐色で鰭(ひれ)などに棘がない。尾鰭(おびれ)後端が深く切れ込む。[根ボッケと言われるサイズ。48cm SL・2.07kg]40cm SL を超える。紡錘形。やや細長い。背鰭は1で欠刻(1つの鰭の中間などに極端に深い場所がある)がないか、あっても浅い。暗褐色で鰭(ひれ)などに棘がない。尾鰭(おびれ)後端が深く切れ込む。[39cm SL・689g]40cm SL を超える。紡錘形。やや細長い。背鰭は1で欠刻(1つの鰭の中間などに極端に深い場所がある)がないか、あっても浅い。暗褐色で鰭(ひれ)などに棘がない。尾鰭(おびれ)後端が深く切れ込む。ホッケ(上)・アイナメ(下)。ホッケはアイナメ科なのでアイナメに似ている。画像は色の違う個体を並べたが、同じ色合いだと魚類に関心のない人には区別できない。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★★
      重要
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カジカ亜目アイナメ科ホッケ属

    外国名

    学名

    Pleurogrammus azonus (Jordan and Metz, 1913)

    漢字・学名由来

    漢字 𩸽、北方 Hokke
    由来・語源 東北、北海道での呼び名。
    〈CHIRUS sp. ほっけ 北海道〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
    「〈魚へんに花〉というのは海の表層に群れる幼魚が美しい青緑色をしていて花のようだから」、「産卵期のオスがコバルト色になり鮮やかな唐草文様が見られるから」(参考/『魚と貝の事典』望月賢二 柏書房)
    「〈北方の魚〉で〈北方〉は『ほっけ』とも読む。〈北魚〉の意味」(参考/『新釈魚名考』榮川省造 青銅企画出版)
    Jordan
    David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深100m前後の大陸棚。
    北海道全沿岸、青森県〜山口県の日本海沿岸、青森県〜熊野灘の太平洋沿岸(東北以北に多い)。
    朝鮮半島東岸中部から沿海地方をへてサハリン、オホーツク海南部、千島列島。

    生態

    産卵期は北海道では9月から12月中旬。産卵期には婚姻色をしたオスが縄張りを持ち、メスに求愛運動をし、岩礁域の窪みなど潮通しのよい場所(縄張り)に産卵させ、産卵後はオスが卵を保護する。
    成魚は定着性が強いが、稚魚期には産卵場所の沿岸浅い海域にいて、しだいに沖合に移動する。水深100m前後と沿岸域を行き来してくらす。また大型になると大陸棚付近に定着する。
    0歳の冬から夏にかけての体長4〜16cm頃は表層で生活し、日本海で北海道とロシアとの間に生息する。6月に北方海域に移動するときのを体色からアオボッケという。
    0歳の夏から冬にかけて体長18〜22cmになって100m前後の大陸棚上で群れを作る、これをロウソクボッケ。
    翌1歳の3月から6月頃に沿岸に接岸し、盛んにエサをとるものをハルボッケ。
    生魚となり岩礁域に定着したものをネボッケ(根ボッケ)という。

    基本情報

    日本海、北日本、ロシアの沿岸域に生息している。比較的資源量は多く、水揚げ量も多い。
    生まれて成長し、水揚げされるようになると、小さいものからアオボッケ(青ボッケ)→ロウソクボッケ(蝋燭ボッケ)、ハルボッケ(春ボッケ)→ネボッケ(根ボッケ)と成長とともに呼び名が変わり、値段が上昇するので典型的な出世魚だ。
    1945年の敗戦までは産地のみで知られ、食べられていたようだ。戦後食糧難(1945年〜数年間)の時代に鮮度が非常に落ちた状態で配給されたために、まずいと思いこんでいる世代も多かった。それまで関東などではほとんど知られていなかったのが、これをきっかけとして知名度が上がったとも言える。
    今やそれも遠い昔のことだ。鮮魚よりも干物(開き干し)の原料として重要で、根強い人気がある。ホッケの開き干しは、1970年代後半くらいまでは比較的ローカルなものだった。これが脂嗜好から人気が高まり、今日に至っている。もともとは庶民的なものであったが、近年国産ホッケを使ったものは高価なものとなっている。ロシアなどから輸入ものも「真ぼっけ」とされて決して安くはない。近縁種にキタノホッケ(シマホッケ)がいるが、こちらはロシアなどから大量に輸入されてホッケとして加工されている。スーパーなどではこちらの方が主役になっている。
    鮮魚は少ないながら関東などに来ており、徐々に味の良さが認められてきている。
    珍魚度 加工品はともかく鮮魚は消費地ではあまり馴染みがない。少ないながら入荷してくるのを待つか、日本海や太平洋側の東北以北で探さないと手に入らない。

    水産基本情報

    市場での評価 加工品で出回ることが多い。鮮魚は徐々に入荷が増えている。最近では活けしめにしたものもみる。値段は全般に安いが、1㎏以上は高い。
    すり身加工では高級なもの。
    漁法 刺し網、定置網、釣り(延縄)
    産地 北海道、石川県、秋田県、青森県、新潟県

    選び方

    鮮度が落ちやすい。なるべくしっかりと硬いものを選ぶ。腹が柔らかいものもダメ。鰓の色合いも重要だ。さわってぬめっとした感触のものが脂がのっている。
    また最近では活け締めにしたものの入荷をみる。これなど狙い目。
    根ボッケという大型のものが北海道日本海側にいる。これは鮮魚でも干物でも非常に高価だ。

    味わい

    旬は春から夏。大きい方がうまい。1㎏を超えると通常では考えられないほどの味になる。
    鱗は細かく取りにくい。皮は厚みがあり硬い。骨は軟らかい。
    白身で鮮度がいいと透明感がある。脂は筋肉に混在する。
    注意/アニサキスなど寄生虫のリスクがある。生食は自己責任で。

    栄養

    危険性など

    アニサキス(シュードテラノーバ)/袋形動物門線形動物綱回虫目ヘテロケイルス科アニサキス亜科。イルカ、クジラやアザラシなどの海棲哺乳類を終宿主とする。卵、幼虫は魚類、イカなどに寄生し、これを食べることで体内に入る。胃や腸の痛み、嘔吐感を引き起こす。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ホッケの料理・レシピ・食べ方/焼く(干もの、魚田、塩焼き、さんが焼き)、生食(刺身、なめろう)、汁(だんご汁、みそ汁)、煮る(煮つけ、鍋)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ちゃんちゃん焼き、ポワレ)
    ホッケの開きホッケの開き干し 非常に上質の身ではあるが、少しだけ水分が多いように思える。単純に焼き上げると香ばしく出来上がらない。これが干すと解消する。ちなみに2㎏前後以上を開き干しにしたものは、北海道などでも取り分け高値がつくが、食べたらそれでも安いと気づくはずだ。
    水洗いして、開く。水分をていねいに取り、塩水に30〜40分つけこむ。脂の乗ったものは短いと塩が入っていかない。これを半日から1日干し上げる。
    干ものなのでじっくり焼き上げるだけだが、脂ののった上物は中から出て来た脂が身を焦がして揚げ物のようになる。
    この表面をめくると中は脂の中につかる柔らかい身で、半分液体めいている。濃厚なうまさが感じられて、御馳走そのものである。

    ホッケの幽庵焼きホッケの祐庵焼き 焼いただけでもおいしいのだけど、脂があまりのっていないものや、料理の取り合わせによっては醤油味を加え焼くといい。水洗いして三枚に下ろし、水分をきり、軽く振り塩をする。中から水分が出て来たら拭き取り、酒・みりん・醤油の地にだいたい2時間以上漬け込む。
    ホッケの塩焼き 水洗いし、二枚に下ろした骨付きの方に振り塩して1時間以上置く。これをじっくりと焼き上げたもの。家庭ではこのように二枚か三枚下ろしにしたものを焼くとやりやすい。皮目の臭いが気になる向きには仕上げに酒を塗りながら仕上げるといい。
    ホッケのさんが焼き ホッケは三枚に下ろしてかわを引き、細かく切り、肝、ねぎ、みそを合わせてたたく。この状態を千葉県では「なめろう」という。これを上火で焼き上げる。熱を通すとふんわりとふくらみ。ホッケ自体のうまみと甘味が楽しめる。ご飯にも合うし、酒の肴にもいい。
    ホッケの魚田(みそ焼き) ホッケを水洗いして三枚に下ろし、血合い骨をぬく。これをじっくりと素焼きにして、山椒風味のみそをのせて焼きあげたもの。山椒みそは酒、砂糖、みりん、鍋で練り上げたもの。
    ホッケの刺身 アニサキスの危険があるのでできるだけ新鮮なもの、活け締め、活けを買う。買い求めたらすぐ内臓を取り除き、ていねいに水洗いする。刺身にすると脂が身に混在して非常に美味。
    ホッケのなめろう 生で食べる場合は鮮度のいいものを選び、水洗いする。三枚に下ろして、皮を引き、細かく切る。これをねぎ、みょうが、青じそなど香りや辛みのある野菜、みそとよく切れる包丁でたたく。
    ホッケのフライ 非常に上質の身で、やや水分が多いものの淡泊でくせがない。フライ材料としては格好のものである。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、皮を引く。塩コショウして小麦粉をつけ、溶き卵にくぐらせてパン粉をつけて揚げる。水分が多いだけに硬く締まらずふんわりと揚がる。非常においしい。
    ホッケの竜田揚げ 小型などを使うといい。水洗いして適当に切る。酒・みりん・醤油の地に漬け込み、水分をきって片栗粉をまぶして揚げる。小型は味がないので醤油の風味を足し、油で揚げることで香ばしさもプラスする。
    ホッケのだんご汁 北海道などではホッケをすり身にしてスーパーなどでも売っている。これがあれこれ利用できてとても便利だ。ホッケのすり身に酒、塩、少量の大和芋を加えて団子を作り、昆布だしに落としていく。ここに酒、塩で味つけしたもの。ホッケのすり身は非常に上質で味わい深い。
    ホッケのみそ汁 もっとも簡単で無駄のない料理である。野菜は根菜類などを適当に切る。水洗いして適当に切ったホッケを湯通しして冷水に落とし、残った鱗とぬめりを流す。水分をよくきり、水から煮出してみそを溶く。煮出すとき差し昆布(小さく切った昆布を一緒に煮る)すると汁がより味わい深い。
    ホッケの煮つけ 上質の白身で、熱を通しても硬く締まりすぎないので液体を使った料理に向いている。水洗いして鍋に入る大きさに切る。これを湯に通して鱗、ぬめりなどを洗い。よく水分を切っておく。鍋に酒、砂糖、しょうゆ、水を入れて煮る。酒・しょうゆ、酒・しょうゆ・みりんで味つけてもいい。味つけはあくまでもお好みで。煮上がりにしょうがの搾り汁を落としてもいいし、一緒に煮てもいい。
    ホッケのちり鍋 ホッケを水洗いして適宜に切り、強めの振り塩をして数時間寝かせる。これを熱湯に通して冷水に落とし鱗、ぬめりなどを取る。水分をよく切り、昆布だし、酒塩の味つけで煮ながら食べる。野菜は好みで煮ながら食べる。
    ホッケのポワレ ホッケの皮はしっかりとしていてソテーすると実に香ばしい。水洗いをして三枚に下ろして血合い骨を抜く。塩コショウし皮目からかりっとするまでソテー。切り身を取りだし、クールブイヨンと白ワインを加えてデグラッセしソースにしたもの。
    ホッケのちゃんちゃん焼き まずは酒、みりん、砂糖、みそを合わせておく。ホッケを水洗いして三枚に下ろして大量のバター(マーガリンでも可)でソテー、きのこや野菜をのせて、ソテーして合わせみそ(みそ、酒、みりん、砂糖)を鍋で練り上げたもの)をかけ回したもの。酒よりもご飯がすすむ。

    好んで食べる地域・名物料理

    ホッケのちゃんちゃん焼き 北海道でホッケを三枚に下ろして、野菜と鉄板で焼き、バター、加減味噌などであじつけする。ホットプレートなどを利用することが多い。
    ホッケの三平汁 ホッケのぬか漬け、塩漬けを適当に切り、野菜などと汁にする。塩味の汁。

    加工品・名産品

    ぬか漬け ホッケを糠と塩でつけたもの。
    すり身 北海道などではホッケのすり身を比較的よく見かける。団子にしたり、蒲鉾(かまぼこ)にする。
    ホッケの開きホッケの開き干し 干物の定番的なもの。ホッケといえば開き干し。ホッケの開きは1970年代前後には関東でも普通に見られるようになっていたが、知らない人も多かった。今では干物の定番のひとつになっている。開き干しは産地以外にも各地で作られている。また近年ホッケが高くなって、キタノホッケ(シマホッケ)がとって代わってきている。

    釣り情報

    北海道では防波堤(波止)から、船からもっとも手頃な釣りとして人気がある。

    歴史・ことわざ・雑学など

    ホッケはまずい 2023年の現在でもホッケを食べないという人がいる。第二次世界大戦の戦後を生きた人達で、特に1945年の敗戦後、ニシンとともに産地である北海道などで確保できたのがホッケである。国内の多くの消費地で馴染みのなかった魚で、産地で食べるととてもおいしい魚だが、貨物輸送で冷蔵用の貨車も確保できなかったので、消費地に来たときには非常に鮮度がわるかった。それで「ホッケはまずい」と言われ始める。現在でも当時を思って食べない人がいる。
    農林水産局による国内の食料の統制は昭和16年(1941)に始まり、昭和23年7月(1948)から25年4月(1950)にかけて解除された。ニシンとともに大量に消費地に送り込まれたことで関東などではホッケを知ることになる。

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、『聞き書 北海道の食事』(農文協)、『NHK産業科学部編 証言・日本漁業戦後史』(NHK産業科学部 日本放送出版局)

    地方名・市場名

    ハルボッケ[春ぼっけ]
    場所北海道 サイズ / 時期成魚 備考春に沿岸域に近づいてくる個体。 
    ホッケ
    場所北海道、東北、秋田県象潟、新潟県下宿(現新潟市内だと考える)・佐渡・寺泊、東京都を初め全国的に 参考文献 
    ロウソクホッケ ロウソクボッケ
    場所北海道、青森県、秋田県にかほ市・男鹿 サイズ / 時期小型 参考青森県水産技術センター 
    タラバホッケ
    場所北海道室蘭 サイズ / 時期大型 参考文献 
    ネボッケ
    場所北海道室蘭など サイズ / 時期大型 参考聞取 
    チュウホッケ[中ほっけ]
    場所北海道室蘭市 サイズ / 時期中型 参考文献 
    マンサ
    場所富山県黒部 
    ボッケア
    場所島根県松江 参考文献 
    ドモシジュウ
    場所新潟県佐渡 参考文献 
    アカボッケ[赤ぼっけ]
    場所青森県 備考春3月前後に旬を迎えたもの。秋田県にかほ市では赤味掛かっていて脂凄く最高においしい個体という意味。 参考青森県水産技術センター、松宝丸 
    ホツキ ホッキ
    場所岩手県 
    ホッケシンジョ
    場所山形県鶴岡市由良漁港 
    アオボッケ
    場所北海道 サイズ / 時期幼魚 備考海域を移動するときの色から。 参考文献 
  • 主食材として「ホッケ」を使用したレシピ一覧

関連コンテンツ