体長1.9m、重さ80キロ前後になり、アジ科中最大。紡錘形。眼を通る暗色の斜めの帯がある。体色が赤紫色を帯びている。背鰭は低く(ヒレナガカンパチは高く鎌状になる)、尾鰭下葉は白い。[61cm・4.163kg/かんぱち(関東での呼び名)]
カンパチの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目アジ科ブリモドキ亜科ブリ属外国名
学名
Seriola dumerili (Risso, 1810)漢字・学名由来
漢字 間八 Standard Japanese name / Kanpachi
由来 「間八(カンパチ)」は東京をはじめ日本各地での本種の大型魚の呼び名。若い個体では「しお(潮、汐)」のつく呼び名が一般的だ。関東での「シオッコ」などもそのひとつだ。
〈かんぱち 東京市場〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
シーボルトがオランダに持ち帰った個体で、Seriola purpurascens Temminck & Schlegel, 1845 としたがすでにRissoが記載済みでシノニムとなっている。
赤鼻魚(あかばなうお) 毛吹草(江戸時代の俳諧書 1645)に肥前の名物に「赤鼻魚」とあり「鰤ニ似」とある。(『いろは物語』)
シーボルト 日本動物誌/ファウナ・ヤポニカ(Fauna Japonica ) フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトとその後継者、ハインリヒ・ビュルゲルなどが標本を持ち帰り、川原慶賀(江戸時代の長崎の絵師)が図を書いたもののひとつ。オランダライデン王立自然史博物館のシュレーゲルとテミンクが記載。のちに記載済みであることが判明する。Risso
Antoine Risso(アントワーヌ・リッソ 1777年〜1845年)、ニース生まれ。薬学・博物学者。著書に『Ichthyologie de Nice(ニースの魚類学)』がある。多くの魚類の記載をした。地方名・市場名
生息域
海水魚。沿岸の中・下層。
北海道[紋別市]、太平洋側〜九州南岸、伊豆諸島、小笠原諸島、青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海、瀬戸内海、屋久島、沖縄島、石垣島。
東シナ海大陸棚斜面縁辺〜斜面域、朝鮮半島南岸・東岸、済州島、台湾、広東省、海南島、西沙諸島、千島列島の太平洋沿岸、全世界の温帯・熱帯域。生態
産卵期は3月から8月。
寿命は最長15年前後。基本情報
全世界の温帯から熱帯域を回遊している。ブリよりも暖かい海域に多い。2m前後になる大型魚で、出世魚のひとつ。外房以西・以南、山口県日本海側以西・以南で主に漁獲される魚で、古くは外房や相模湾では若い個体が多かったが、大型魚が増えている。近年では東北宮城県で若い個体がたくさんとれるなど、急速に北上傾向にある。そのせいかは不明だが日本各地で水揚げ量が増えているように見える。
最近では盛んに養殖されていて、刺身用白身魚として重要なものとなっている。養殖魚の刺身ではシマアジ、カンパチ、ブリの順位で値段が高い。
若い個体でも刺身にして非常に味がよく、比較的温暖だった地域では古くから人気が高く、高級魚だった。
珍魚度 ありふれた食用魚だが、もしも天然ものを探すとなると少しだけ努力しなければならない。養殖魚はいつでも手に入る。水産基本情報
市場での評価 大小問わず高級魚。養殖ものもブリなどよりも高い。養殖ものは年間を通して入荷してくる。刺身材料としては定番的なもの。
漁法 釣り、定置網、巻き網
産地 長崎県、鹿児島県、宮城県など選び方
鰓が鮮紅色であること。身に張りがあること。味わい
栄養
ー危険性など
シガトキシンを持つ個体が見つかっているので、あまりにも大きいものは食べない方がいいかも知れない。ただサンゴ礁域など温かい海域に多いとなると、本当にカンパチなのだろうか? ヒレナガカンパチとの混同が考えられる。食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
カンパチの料理法・レシピ・食べ方/刺身(刺身、カルパッチョ、セビチェ)、焼きもの(塩焼き、照り焼き、幽庵焼き、西京焼き)、煮る(煮つけ、カンパチ大根、しゃぶしゃぶ)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ムニエル、フライパン照り焼き)、汁(みそ汁、潮汁)クリックで閉じます
潮っこの刺身(汐っこの刺身) 1kg前後の若い個体を関東ではとても珍重する。昔は秋になるとたくさんとれるので、秋潮にのってくるというので、「潮っこ」といった。最近では季節を問わず入荷してくる。
水洗いして三枚に下ろす。腹鰭・血合い骨を取り、皮を引き刺身状に切る。
カンパチはブリとは違い小さくてもそれなりにおいしく、1㎏を超えると脂ものってくる。身質が滑らかで酸味が控えめでとても味わい深い。古くから珍重されてきたわけがわかる。
カンパチの背の刺身 4kgほどの背の部分の刺身だ。三枚に下ろして血合いを切り、皮を引いて刺身に。同じサイズならブリよりもおいしいと思う。酸味が微かにあり、ほどよい食感がある。アジ科らしいうま味もあってとても味わい深い。クリックで閉じますカンパチのカルパッチョ 700g前後の小型を使ったが、野締めでも十二分にうまい。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。できるだけ薄く切りつける。皿にニンニクをなすりつけ、オリーブオイルを垂らして振り塩をする。ここに切り身を並べてとんとんと馴染ませる。上にトマトや辛い青唐辛子、キウイやプルーンなどの野菜果物などを並べて、仕上げに塩をしてオリーブオイルを回しかける。クリックで閉じます
汐っこの漬け(漬け茶漬け) 成魚でもいい。刺身などで余った部分とか刺身の残り物とかを適当に切る。これをネギ・ゴマ・ショウガ(好みでにんにく)・醤油・味醂と和えて少し置く。半日以上寝かせてもいい。このままで食べてもおいしいが、ご飯にのせて、またご飯に乗せてお茶をかけて食べてもいい。クリックで閉じますカンパチのセビチェ 手の平にのるサイズを使う。三枚に下ろして腹骨と血合い骨を取る。皮を引き、比較的細かく薄く切る。これをライム、塩、青唐辛子たっぷりでマリネする。適度にしまったら紫玉ねぎを加えて和える。非常に軽く爽やかな味わいでスピリッツに合う。クリックで閉じますカンパチのなめろう サイズは選ばない。鮮度さえよければ野締めでもいい。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を抜く。細かく切り、みそ、ネギ(ここでは玉ねぎ)、ミョウガや大葉と叩く。ゆっくりと少しずつつまみながら酒の肴にすると最高にいい。ご飯に乗せて茶漬けもうまい。クリックで閉じますカンパチの塩焼き 脂ののったものは大小に関わらずおいしい。水洗いして切り身にする。小さなものは二枚下ろしにして骨つきの方に塩を揉み今で1以上寝かせて焼くといい。いずれにしろ塩をして馴染ませて焼き上げる。皮目の香り、身のほぐれ感と甘さがあいまってとてもうまい。やや強めに塩をしておくと保存性も高くなる。クリックで閉じますカンパチの幽庵焼き 三枚に下ろして切り身にする。水分をよくペーパータオルなどでとり、酒・みりん・醤油同割りの地につけ込む。半日以上つけて焦がさないようにじっくりと焼き上げる。焼いても硬くならず、ふんわりと柔らかく上がりとても美味。クリックで閉じますカンパチの粕漬け 大型は漬け魚にできるところが魅力である。三枚に下ろして切り身にする。振り塩をして1時間以上寝かせて表面に出て来た水分をとる。これを練り粕(柔らかいペースト状の酒粕)・みそ少々・みりんの地に1日以上漬け込む。酒粕は漬けても硬くならず、発酵で生まれた味がプラスされてとてもうまい。クリックで閉じますカンパチのあら煮(かまの煮つけ) 頭部やかまの部分、中落ちの部分は煮ると非常にうまい。ここではかまを使った。湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・醤油・水で煮上げる。醤油によっては砂糖、みりんで甘味をつけてもいい。身離れがよく上品な味わいで、柔らかく甘味がある。クリックで閉じますカンパチのしゃぶしゃぶ 刺身は、大量に食べると飽きが来る。これを半量くらいしゃぶしゃぶで食べるといい。ここでは皮付きのまま刺身状に切る。これを昆布だしに酒・塩で味つけして好みの加減で火を通しながら食べる。ポン酢、柚子胡椒などどのように食べてもおいしい。クリックで閉じますカンパチじゃがいも 肉じゃがの肉を魚にしたもので、ブリ属、サバなどに向いている。ブリは三枚に下ろし、皮付きのままぶつ切りにする。これを油で炒めて、じゃがいもを加えて、カツオ節出し(薄め)・酒・みりん・醤油で煮る。少し甘めの味つけにするとご飯に合う。クリックで閉じますカンパチ大根 あらを集めて置く、湯通しして冷水に落として残った鱗とぬめりを流す。水分をよくきり、酒・みりん・醤油・水で煮る。ある程度煮えてきたら下煮した大根を加える。ワイルドに生の大根と最初から煮てもうまい。二日くらいすると骨までたべられる。クリックで閉じます汐っこの冷たい煮つけ(カンパチの冷たい煮つけ) 手の平にのるサイズを水洗いする。これを湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、酒・醤油・水・さし昆布であっさりと煮る。煮上がりにショウガを振る。これを冷蔵庫で冷やす。味は冷やしているときにぐっと入っていくので、調味料は控えめにする。冷たい煮つけは夏の酒の魚に最高である。クリックで閉じますカンパチのフライ 小型はフライ材料としてとても優れている。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮付きでも、皮を引いてもどっちでもいい。塩コショウして小麦粉をまぶして、衣をつけパン粉をまぶして揚げる。さくっと香ばしく身はアジ科らしくうま味がある。軽い味わいなのでご飯にもビールにも合う。クリックで閉じますカンパチの南蛮漬け 刺身にした橋の部分や鰭下の部分などを集めて置き塩とコショウで味つけする。水分をよくきり、片栗粉をまぶして揚げる。揚げたてを合わせ酢(酢・砂糖・醤油少し、水)に漬け込む。合わせ酢に漬け込んでもアジ科らしいうまみがあってとてもおいしい。クリックで閉じますカンパチの潮汁 アジ科なのであらなどからうま味豊かなだしが出る。あらを集めて置き、湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを昆布だしで煮て、酒と塩で味つけする。青みや大根など野菜を加えてもおいしい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
関東では汐っ子 関東ではあまり大型よりも2㎏弱程度の若魚を好んで食べる。特に立秋をすぎた頃から秋までの汐っ子を好んで食べているし、市場では値も高い。シオのたたき 徳島県海部郡海陽町宍喰などで作られているものを汐っこに応用したもの。高知県などでは塩味ではなく醤油とわさびで食べることもある。水洗いして三枚に下ろし、血合い骨・腹骨を取る。皮をあぶり、刺身状にきり、熱いうちに手に柚子の果汁、塩をつけてたたく。玉ねぎのせん切りと一緒に食べる。クリックで閉じますりゅうきゅう 「あつ飯」、「ごまづけ」などという呼び名がある。ごまをすり、しょうゆ、みりんでつけだれを作り、ねぎなどを加えて杖込んだもの。ご飯にのせてそのまま食べる。お茶をかけてもいい。[大分県]クリックで閉じますカンパチのりゅうきゅう
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日本各地にある、づけ・茶漬け・づけ飯とは
生の魚を刺身で食べて余ったものを、醤油などにつけて保存性を高めるものを「づけ(漬け)」と呼ぶ。日本各地で普通に行われているもので、あまった刺身などの保存のためで・・・ 続きを開く加工品・名産品
釣り情報
■ カンパチ釣りは伊豆半島や九州などが盛んである。磯でも島周りの船づりでも人気が高い。一般に関東では汐っ子と呼ばれる当歳魚が秋口から釣れ始める。これをこませを使った疑似バリ仕掛けのかったくり釣りで狙う。これは最高に楽しい釣りである。
■ 伊豆諸島などでは生き餌で釣り上げる。1メートル上のねらえる大物釣りだ。歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/山崎哲也さん(神奈川県)
『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『広辞苑』(新村出 岩波書店)、『いろはかるた物語』(池田弥三郎、檜谷昭彦 角川文庫 1973/昭和48)地方名・市場名 ?
カンパチ[貫八]
場所高知県宿毛市藻津・柏島・古満目・上ノ加江・須崎・手結・高岡・三津 サイズ / 時期大型魚 備考標準和名。頭部に逆八の字の帯状の斑紋があるため。一尾が一貫八匁くらいになるからだとも。 参考『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版)シオ
場所三重県鳥羽市小浜・尾鷲市、和歌山県那智勝浦町、徳島県全域・北灘・徳島県全域・北灘・阿南市・徳島県海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』、高知県下川口・興津・志和・田野・吉良川・室戸岬・佐喜浜・甲浦 サイズ / 時期若魚 備考鳥羽市小浜では成長にともなっての呼び名の変化がない。内湾で大型がとれないためか。 参考聞き取り、『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版)