体長1.2m前後だが、最大2.5mになる。側扁(左右に平たい)し、ブリよりも体高が高い。体側中央に縦に黄金色の帯が走る。上顎の背後、いちばん後ろの上方の角は丸い。
ヒラマサの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目アジ科ブリモドキ亜科ブリ属外国名
学名
Seriola aureovittata Temminck & Schlegel 1845漢字・学名由来
漢字 平政 Standard Japanese name / Hiramasa
由来・語源 東京や神奈川県での呼び名。ブリと比べて左右に平たく、まっすぐ長いため。もしくはブリよりも平たく、黄金色の縦の帯が直線状(柾 まさ)であるため。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)にはアヂ科ブリ亜科ブリ属ヒラマサ。
Seriola lalandi Valenciennes, 1833→Seriola aureovittata Temminck & Schlegel 1845/2021
Seriola dorsalis (Gill,1863)
シーボルト、日本動物誌/ファウナ・ヤポニカ(Fauna Japonica ) フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトとその後継者、ハインリヒ・ビュルゲルなどが標本を持ち帰り、川原慶賀(江戸時代の長崎の絵師)が図を書いたもののひとつ。オランダライデン王立自然史博物館のシュレーゲルとテミンクが記載。Valenciennes
アシル・バランシエンヌ(Achille Valencienne 1794-1865)はフランスの動物学者。ジョルジュ・キュビエとともに『魚類の自然誌』を刊行。国内で水揚げされる多くの魚を記載。地方名・市場名
生息域
海水魚。沿岸の中・下層。
伊豆〜小笠原諸島、北海道全沿岸[オホーツク海]〜九州南岸の日本海、東シナ海、太平洋沿岸、瀬戸内海、[山口県宇部市/成魚]、屋久島、[種子島]、奄美大島、少ないが沖縄県。
天皇海山、西部北太平洋外洋域、ハワイ諸島、朝鮮半島南岸・東岸、済州島、山東省、ピーター大帝湾、千島列島の太平洋沿岸、インド-太平洋、アルゼンチン、セントヘレナ島。生態
産卵期は春から夏。
ブリより成長が早い。
肉食性でアジ、サバ、イワシ類、スルメイカ、甲殻類などを補食する。基本情報
日本列島以南の暖かい海域に広い生息域を持つ魚だが徐々に北上して北海道オホーツク海でも少ないながら水揚げがある。また三陸などでの水揚げが増えている。
一般にブリ属3種とはブリ、カンパチ、ヒラマサのこと。なかでもヒラマサはとれる量も養殖される量も少なく、もっとも知名度が低い。またカンパチとともに非常に大型になる。
産卵期が春のブリの旬は冬、本種は春〜初夏が旬で、産卵後以外あまり味が落ちない。
ブリに極めて似ており、プロでも見まごうことがある。ブリとの見分け方は体が平たい、縦縞の黄色が鮮やかであることなどで慣れれば意外と簡単である。また下記の方法も参照されたい。
また食用魚として以上に釣りの世界で人気が高い。太公望憧れのターゲットである。
珍魚度 ブリと比べると入荷量こそ少ないが、至って普通の食用魚。ときどき東京都内のスーパーなどでも切り身、刺身で並んでいる。水産基本情報
市場での評価 ブリ類ではもっとも入荷量の少ないもの。養殖されている量も少ない。値段は一年を通してやや高値。
漁法 釣り、定置網、シイラ漬け漁
産地選び方
ー味わい
大型の旬は春から夏。若魚は周年味がいい。
大型は処理(締め方)がよければ寝かせた方がうまい。小型ではブリよりも美味。
鱗は小さく、取りにくい。皮は厚みがあって強い。骨はあまり硬くない。
ブリ属特有の透明感のある白身で、血合いが赤く美しい。
熱を通すと締まる。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ヒラマサの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身、セビチェ、ポキ、なめろう)、煮る(煮つけ)、焼く(塩焼き、みりん干し)、ソテー(ムニエル、フライパン照り焼き)、揚げる(フライ、唐揚げ)、汁(みそ汁、潮汁)、蒸す(清蒸、剁椒魚頭)、卵巣(煮つけ、焼く)クリックで閉じます
ヒラマサの刺身[背下部] 同じブリ属でもブリとの違いは白身のように熟成することだ。仕立てさえよければ刺身で長い期間食べられる。写真は4日目の背の血合い近くの部分の刺身。血合いは熟成しても酸味はもたつ柔らかく広く深い味わい。大型は背の部分、腹の部分などで微妙に味が違う。脂の甘さと相まって非常においしい。また鮮度がよければ尾柄部の前、いちばん尾に近い部分も非常にうまい。
ヒラマサのセビチェ 刺身にするとどうしても無駄な部分がでる。これをより細かく切り。塩・辛い唐辛子・ライム(柑橘類はなんでもいい)でマリネする。身が白くなったら好みの野菜などを合わせて皿に盛る。レンズ豆やアボカドなどを加えるとボリューム感が出る。クリックで閉じますヒラマサのポキ ポキ(ポケ)はハワイで生まれた料理らしいが、ミクロネシアやメラネシアなど熱帯域で広く作られているようだ。皮を引いた身を細かく切り、ねぎや好みの野菜と和え、醤油・ごま油と和えるだけ。簡単でおいしく、パンにも合う。クリックで閉じますヒラマサの塩焼き 大型は焼いてもおいしい。適当な大きさに切り、振り塩をする。1時間以上寝かせて焼き上げる。脂のあるものは焼き上げると表面に脂が浮き上がり、揚げたような香ばしさが生まれる。クリックで閉じますヒラマサのみりん干し 血合い部分や腹もなどをみりん干しにした。小型は片身、開いて作ってもいい。切身などに軽い振り塩をする。表面に出た水分を拭き取り、みりん干しの地(醤油・砂糖・少量のみりん)につけ込む。2時間以上漬け込んで干し上げる。クリックで閉じますヒラマサのバター焼き 小型や尾に近い部分はソテーに向いている。適当な大きさに切り、塩コショウする。小麦粉をまぶしてじっくりソテーする。仕上げにバターで風味づけする。ニンニクやしょうがの香りをつけてもおいしい。クリックで閉じますヒラマサのフライパン照り焼き フライパン照り焼きは料理の書籍にあった料理名だった気がする。照り焼き風の味のムニエルといったところ。切身に軽く塩コショウ。小麦粉をまぶしてやや多めの油でソテーする。火が通ったら切身を取りだし、市販の照り焼きのタレ、もしくはタレ(醤油・みりん・砂糖、好みで酒)、しょうがの搾り汁を入れて煮つめ、切身の上にかける。クリックで閉じますヒラマサのフライ 小振りのものや鮮度的に刺身にならないものを使う。適当に切り、塩コショウして小麦粉をまぶす。衣(卵・小麦粉・水)をからめてパン粉をまぶして揚げる。パン粉の中に豊潤で柔らかい身が包まれている。クリックで閉じますヒラマサの唐揚げ かまや尾に近い部分を使う。適当に切り、水分をよく拭き取る。片栗粉をまぶして二度揚げする。からっと揚がったら塩コショウ(ここではガラムマサラ)を振る。中骨などを除けば二度揚げすると丸ごと食べられる。クリックで閉じますヒラマサの清蒸 兜は梨子割りにする。水分をよくとり、皿に割り箸を敷き、半割の兜を乗せる。上にねぎ、しょうがを乗せて蒸す。タレを作る。醤油(中国や台湾のものでも国産でもどちらでも)、紹興酒、魚醬を合わせて煮立てたもの。蒸し上がったら皿に溜まった汁を捨て、割り箸をとり、タレをかけてねぎや香菜などを乗せて煙が出るくらいに熱した油をかける。酒ではなくご飯に合う。クリックで閉じますヒラマサの剁椒魚頭 中国湖南省・四川省などで作られている剁辣椒(ドゥラージャオ/唐辛子の塩漬け)を使う。頭は梨子割りにする。水分をよくきり、器に乗せて、酒を振り、剁辣椒をのせて蒸す。非常に簡単な料理ではあるが、和食にはない本格的な中華の味。ご飯に合う。クリックで閉じますヒラマサの潮汁 あらを集めて置く、湯通しして冷水に落として残った鱗とぬめりを流す。水分をよくきり差し昆布(昆布だしでも)をした水のなかで煮だして酒・塩で味つけする。非常にうま味豊かな汁となり、付着した身に甘みがある。クリックで閉じますヒラマサの真子煮つけ 真子は卵粒が小さく、味がいい。真子は適当に切り、酒・みりん・醤油・水の地の中に数個ずつ落としていく。甘辛く煮つけるとご飯にも合い、非常においしい。当座のおかずとしても好ましい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
夏の魚 徳島県海部郡海陽町宍喰では6月、7月、8月に揚がりとても味が良く値が高い。徳島県南では夏の魚だ。関連コラム(郷土料理)
日本各地にある、づけ・茶漬け・づけ飯とは
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神奈川県小田原市岩定置で揚がった9.5kgのヒラマサの中骨を使った。 中骨はじっくり時間を掛けて素焼きにする。この焼いた香りと脊椎のなかの髄液、骨からのうま・・・ 続きを開く加工品・名産品
ー釣り情報
釣りの対象魚としてはもっとも人気のある魚のひとつである。山陰、関東では船釣り、関東では磯釣りでも狙える。専用の竿まである。歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)