マダイの刺身 比較的大形は刺身がいい。皮が硬いので焼霜造り、皮霜造りには向かない。できれば活け締めを使いたい。非常に血合いが美しく、ほどよい甘味と、ほどよい食感がある。酒の肴としてもいいが、ご飯のおかずにするとこのうまさがいかんなく引き出される。
マダイの霜皮造り 小型は身(筋肉)だけではうま味に欠ける。上品ではあるが、今ひとつの味わいを補いのが皮だ。三枚に下ろして小型なら血合い骨を抜き、やや大型なら血合いを抜き刺身状に切る。皮の直下に脂が層をなしていて甘味がある。
マダイの焼霜造り 小型(全長20cmくらいから30cm)は冬季以外にはあまり味がない。これは皮目をあぶり急速に粗熱を取り、刺身状に切る。あぶったための香ばしさが皮目の味わいに深みを生む。余分な水分が抜けるのもいい。
マダイのセビチェ 産卵後や野締めなどは、刺身よりも昆布締めやセビチェにする。セビチェは細かく切り、塩と辛いトウガラシ、柑橘類(ライム、レモンなど)でマリネする。ここに紫玉ねぎを加えたもの。あっさりと爽やかな味でスピリッツにあう。
春日子の酢じめ 手のひらサイズを「春日子」という。すしダネでは酢じめにする。これは酒の肴などにもいい。小振りのものを三枚に下ろして腹骨をすき、血合い骨を抜く。水分をよくきり、振り塩をして数十分寝かせて甘酢、もしくは生酢に漬ける。寝かせる時間も漬け込む時間も季節によって違いが出る。
マダイの兜焼き 塩焼きは古くから本種の定番料理の一つ。大型は頭部だけでも十二分に1品として成り立つ。頭部は梨割りにして振り塩、1時間以上寝かせる。寝かせる時間は長くてもいい。皮目が抜群にうまい。身はほどよく繊維質でほぐれれ安く甘味があるのもいい。
マダイの兜焼き山椒風味 広島県倉橋島産の目の下一尺の兜を梨子割りにする。軽く振り塩をして少し寝かせて表面に浮かんできた水分をとる。これを七割方焼き上げてあとは濃い口醤油・たまり醤油・酒・山椒(和山椒のぶどう山椒)を粗くすったものを塗りながら焼き上げる。仕上げに山椒をもう一度振る。
マダイの障子焼き 中骨だけを焼くのを「障子焼き」という。血管棘を桟に見立てて「障子のようだ」としたもの。振り塩をして1時間以上寝かせて、じっくり焼く。ここでは焼き上がりにみりんを塗った。当然塩だけでも十分うまい。
マダイの西京焼き 麦の刈り取り時期の安い、脂の少ないものなどは単純に切り身にして漬け魚にするといい。ここでは切り身に振り塩をして、水分が出て来たら拭き取る。これを白みそとみりん、酒、好みで砂糖の地につけ込む。1日漬け込むと食べられる。
マダイ兜の酒煮 いちばん本種の兜のうまさを引き出す料理法だと思っている。20分近く煮込むがどうしてもアルコール分が残るので、酒を飲めない人には申し訳ない料理法である。兜は半割にして振り塩をして1時間以上置き、じっくり焦がさないように焼き上げる。これを酒だけでじっくりと煮上げていく。途中で塩加減をして、酒を飲んでおいしいといった加減にしていく。これを酒の中で崩しながら食べる。
マダイのはりはり鍋 中骨を焼き、冷ましておく。これを適当に切り、昆布と一緒に漬けおいてだしをとる。これで水菜と皮付きで刺身状に切ったものを煮ながら食べる。水菜を散らして、切り身を乗せて、好み通りに火が通ったら水菜と切り身を一緒にしてポン酢などで食べる。
マダイの兜煮 兜煮はマダイの定番料理のひとつ。料理店のメニューとしても定番的なものだろう。大型の頭部は梨子割りにして湯通しし、冷水に落として残った鱗やヌメリを流す。これを酒・砂糖・しょうゆで煮つける。酒・しょうゆ、酒・みりん・しょうゆで煮つけてもいい。大型の兜は身がたくさんついていて食べ出がある。
マダイのまーす煮 頭部を梨子割りにして片方を塩味だけで煮てみる。沖縄の郷土料理「まーす煮」である。頭部の鱗はできる限りていねいに取り、やや濃い目の塩水で短時間水分を飛ばしながら煮る。できれば豆腐を用意しておきたい。出来上がりを食べるに本体以上にうまいと思う事がある。
マダイのちり鍋 小振りのものは水洗いして、適当に切る。大型はあらだけでも十分だろう。水分をよく拭き取る。鮮度に問題があったら振り塩をして少し寝かせる。これらを湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、昆布だしに酒塩で味つけした汁で煮ながら食べる。野菜などはお好みで。ここにみりんや砂糖、しょうゆを使うと重くなる。
焼き鯛のスープ 頭部などを焼き上げる。これを酒・白ワインと水で煮出す。ここに昆布を加えると和風に、クールブイヨンを加えてローリエで香りづけするとフレンチになる。頭部やあらなどを崩して、スープにからめながら食べる。
マダイの潮汁 大型はあらを、小振りは水洗いして適当に切る。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを昆布だしで煮だして酒と塩で味つけしたもの。比較的控えめに味つけして美味。
マダイのかぶら蒸し 切り身は振り塩をして染み出してきた水分をよく拭き取る。器にこれを入れて上から卵白と聖護院蕪(天王寺蕪でもいい)をすりおろし水分をきったものと合わせたものをふんわりと乗せる。これを中火で蒸し上げる。仕上げにカツオ節出しに酒・塩の味つけした地をくずであんにしたものを張る。
マダイの酒蒸し 水洗いして二枚下ろしにして振り塩をする。水分が出て来たら、よく拭き取る。器にもどした昆布をしき、身を乗せて振り塩をして15分前後蒸し上げる。しっとりとして魚本来のおいしさが楽しめる。
マダイの炊き込みご飯 小骨が少なく、上品でイヤミのない味わい。これを炊き込みご飯にすると最上級の味わいになる。産地などでは生のまま炊き込むが、家庭でやるなら素焼きもしくは塩焼きにしてご飯と炊く方がいい。炊き上がったら身を取り出して骨を取り去り、またご飯に戻して混ぜ合わせる。炊き込むとき、しょうがもしくは粗挽きの黒コショウを入れる。焼き上げたマダイからは思った以上に濃厚なうま味が出てくる。このうま味豊かなだしで炊いたご飯が非常にうまい。
マダイの白子煮 春になると市場に並ぶのが真子と白子だ。白子は焼いても煮ても、真子以上に味わい深い。煮るにあっさり酒・塩の味つけにしてもいいし、こってり甘辛く味つけしてもいい。どのように味つけをしても白子の味わいは負けない。
マダイの真子煮 真子は、形がしっかりしていて、あまり成熟のすすんでいないものがいい。これを3cm幅くらいに切り、酒・砂糖・しょうゆのこってり味で煮る。酒・しょうゆのあっさりと煮てもおいしいがご飯には合わない。真子煮はご飯にとても合う。
マダイの白子焼き 焼くか煮るか? 迷うところだが白子は焼いてもうまい。強火で短時間煮焼き上げたいが、なかなか一般家庭では難しい。やや中まで火が通り過ぎてはいるものの、クリーミーな部分は楽しめる。