キチヌ

Scientific Name / Acanthopagrus latus (Houttuyn, 1782)

代表的な呼び名キビレ

キチヌの形態写真

SL45cm前後になる。クロダイなどと比べ、全身から見て頭部が小さい。目は小さくやや前方にある。腹鰭、尻鰭、尾鰭が黄色い。背鰭棘条中央下の横列の鱗数は3.5。
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SL45cm前後になる。クロダイなどと比べ、全身から見て頭部が小さい。目は小さくやや前方にある。腹鰭、尻鰭、尾鰭が黄色い。背鰭棘条中央下の横列の鱗数は3.5。SL45cm前後になる。クロダイなどと比べ、全身から見て頭部が小さい。目は小さくやや前方にある。腹鰭、尻鰭、尾鰭が黄色い。背鰭棘条中央下の横列の鱗数は3.5。[SL21cm]
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚類綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目タイ科ヘダイ亜科クロダイ属

    外国名

    学名

    Acanthopagrus latus (Houttuyn, 1782)

    漢字・学名由来

    漢字 黄茅渟
    由来・語源 クロダイは茅渟の海(大阪湾)でたくさんとれたので、関西では「茅渟(ちぬ)」。そのクロダイに似て鰭などが黄色いという意味合い。
    どこの呼び名かは不明。松原喜代松は・岡田彌一郎はキヂヌ。田中茂穂は「キビレ」としている。
    Houttuyn
    Maarten Houttuyn (Martinus Houttuijn マールテン・ホッタイン 1720-1798年)。オランダの医師、博物学者。リンネの継承者。ドクダミなどを記載。

    地方名・市場名

    生息域

    海水・汽水域。内湾。
    茨城県利根川河口、千葉県外房[千葉県千倉/成魚]、[東京湾江東区中央防波堤前]〜九州南岸の太平洋沿岸、[富山湾 2008-2018 年に富山湾で新たに記録した魚類 木村知晴・西馬和沙・不破光大・稲村 修(魚津水族館)]、[京都府天橋立内海阿蘇海]、兵庫県浜坂〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海、小笠原諸島。朝鮮半島南岸・東岸、台湾、中国東シナ海・南シナ海、トンキン湾、フィリピン諸島北岸、オーストラリア北西岸・北岸、ペルシャ湾〜インド沿岸。

    生態

    最初は総てが雄、15センチを超える頃に両性期となり、その後、雌になる。
    産卵期は秋。
    クロダイよりも塩分濃度の低い内湾、河口域を好む。

    基本情報

    1980年代関東では珍しい魚だった。関東ではほとんど見られなかったといってもいい。これが今、流通や釣り人の間では当たり前の魚になりつつある。ただし、今でも関東に少なく西日本に多い。もともと関東での取扱量は少ない魚種であったが、2011年くらいから入荷量が増えている。
    比較的暖かい内湾、汽水域に生息し、ときどき河川を遡上することもあり「川鯛」とも呼ばれる。
    透明感のある白身でクセがなく、とても味のいい魚だ。クロダイが寒い時季が旬であるのに対して、晩春から夏にかけて味がいい。
    とても味がいいのにも関わらず、知名度が低く、関東では売れない魚の代表的なものとなっている。ヘダイ亜科(黒いタイ)全体が値を下げているのもあって、関東ではとてもお買い得な魚となっている。

    水産基本情報

    市場での評価 関東では珍しい魚のひとつであったが近年増えている。夏などはクロダイよりも本種の方が入荷量は多い。比較的安い。
    東シナ海で大正時代には大量に漁獲されていた。急激に漁獲量は減り、現在に至っている。
    漁法 刺し網、定置網、釣り
    産地(漁獲量の多い順) 日本各地で大分県、広島県、愛媛県など

    選び方

    目が澄んでいて、鰓が鮮紅色のもの。鰭の黄色みの強いもの。白っぽく退色しているものはダメ。

    味わい

    旬は春から夏。春になるとじょじょに筋肉が締まり、脂がのってくる。
    鱗は硬くなく取りやすい。皮はしっかりしている、引きやすい。
    透明感のある白身。活け締めの血合いは赤くきれいだが、野締めの血合いの色合いは濃く食欲をそそらない。
    熱を通すと適度に締まり、粗などからいいだしがでる。微かに川魚に似た臭みを感じることがあるが、これが本種の特徴でもある。


    キチヌの身色 透明感のある白身で血合いの赤みが強い。熱を通しても硬く締まらない。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    生食(刺身、セビチェ、カルパッチョ)、煮る(酒塩煮、しょうゆ煮)、汁(潮汁、みそ汁)、揚げる(フライ)、ソテー(バター焼き)

    キチヌの剁辣椒蒸(辛い唐辛子の塩漬け蒸、蒸し魚) 蒸し魚は白身魚の価値観を押し上げてくれるものだと思う。国内でももっと日常的に蒸し魚を作るべきだと考えている。
    水洗いする。頭部の鱗などを徹底的に取る。水分をよくきり、皿にもって酒を振って、剁辣椒をのせて蒸し器で15分ほど蒸す。蒸し上がったらねぎなどをのせて出来上がり。辛みと塩気がきいて実に味わい深い。ご飯がすすむ。剁辣椒を使わないで清蒸(蒸してたれをかけ、香りのある野菜をのせ、熱く熱した油をかける)にしても非常にうまい。

    キチヌの刺身キチヌの刺身 活け締め、活魚を使うと身がきれいであるし、食感もいい。水洗いして三枚に下ろして皮を引き刺身状に切ったもの。焼霜造りや皮霜造りにしてもおいしい。身に甘みがあって春から夏にかけては脂がのっていてこくがある。皮は熱を通すと柔らかくなるので霜皮造り、焼霜造りにしてもいい。

    キチヌのセビチェ 水洗いして三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を取る。皮を引き、細かく切る。刺身などで余った切り落としを使ってもいい。辛い唐辛子、紫玉ねぎ(普通の玉ねぎでもいい)を合わせてライムと塩で締める。爽やかな味わいでスピリッツに合う。
    キチヌの酒塩煮キチヌの酒塩煮 水洗いして二枚に下ろして骨つきの方を切り身にする。湯通しして冷水に落とし、残った鱗やぬめりを流し、水分をよく切る。これを酒塩の味つけで煮る。上質の白身でほんのり甘味があり、皮が柔らかい。すだちなど柑橘類をふりながら食べて欲しい。
    キチヌの兜煮キチヌの兜煮 兜の部分を梨子割りにする。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、酒、砂糖、しょうゆ味でこってり煮汁が少なくなるまで煮る。こってり煮たはずなのに付着した身は蒸し上がったように白く、皮目は煮汁を含んで甘い。卵巣や肝も美味。
    キチヌのみそ汁キチヌのみそ汁 小振りのキチヌ1尾を使ったみそ汁。水洗いして適宜に切る。湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりなどを流す。これを水(昆布だしでも)から煮出してみそを溶く。実に滋味豊かな味のみそ汁になる。ご飯にもよく合い、主菜になる。
    キチヌの塩焼きキチヌの塩焼き 塩焼きはタイ科の魚にもっとも適した料理法である。本種もそうだが上質の白身で皮目に独特の好ましい風味がある。身離れがいいのも魅力。切り身に振り塩をして1時間以上置き、じっくりと焼き上げる。身に甘みがあってとてもうまい。
    キチヌのフライキチヌのフライ クセのない白身で熱を通しても硬く締まらないので、揚げ物にしてもいい。三枚に下ろして皮付きと皮を引いてでは味が違うのでお好みで。普通にフライにして表面は沸く通してなかは至って豊潤で甘味があって非常に美味。
    キチヌのポワレキチヌのポワレ キチヌは三枚に下ろして血合い骨を抜く。塩コショウして少し置く。これを油(グレープシードオイルでもオリーブオイルでもなんでもいい)でじっくりとソテーする。焼き上がったら本体を取りだし、白ワインでデグラッセ。味見して塩コショウする。ソースにして少量のバルサミコ酢をたらす。
    キチヌのホイル焼きキチヌのホイル焼き キチヌは水洗いして塩コショウする。出て来た水分を拭き取る。ホイルにバターを塗り、身を置き、キノコ、玉ねぎ、にんじんなどを乗せ、バターを載せてホイルをとじてガステーブルの魚焼き、オーブントースターなどのなかで焼く。

    好んで食べる地域・名物料理

    産後に食べる 愛媛県西条市ではチヌ(クロダイ)かキビレ(キチヌ)は産後の乳の出がいい、というので食べる。[聞取]
    ヒヂヌの煮つけ 広島県広島市ではヒヂヌ、もしくはチヌの煮つけを、乳の出がよくなると食べさせる。できるだけ早く食べる方がいいので産後すぐ産院に、自宅に戻ったときに届けるという。煮つけ方は普通だが、できるだけたくさんヒヂヌを食べて欲しいのでほかのものは入れない。[聞取]

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真剁辣椒を使ってみる
    中国湖南省の名物料理に剁椒魚頭(ドゥオジャオユィトウ)がある。魚の頭に剁辣椒という赤い唐辛子の塩漬けをのせて蒸したものだ。 湖南省は山岳地帯なので本来魚は淡水魚・・・ 続きを開く

    加工品・名産品

    釣り情報

    関東ではクロダイ釣りの外道として、本命に準じるというよりも同等に扱われている。ただし数は少ない。これが西日本に行くと釣れる機会が増える。近年は静岡県では湾内でのカニエサの探り釣りでは大釣りも少なくはない模様。

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/和歌山県雑賀崎の漁師・寺井政見さん、中山陽一さん(京都府)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、[B]は聞き取り

    地方名・市場名

    キチヌ キヂヌ
    場所別名・標準和名 参考文献 
    ハカタ
    場所和歌山県 
    キビレ
    場所大阪府大阪市、有明海、山口県下関市 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 
    キチン
    場所山口県下関市 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 
    ゼヂン セヂン
    場所山口県宇部市 参考青山時彦さん(宇部市青山鮮魚) 
    ヒヂヌ
    場所広島県広島市草津 参考20190517 広島市𠮷文 
    ヒチヌ
    場所愛媛県宇和島 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 
    シラチン
    場所有明海 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 
    シラタイ
    場所東京都、和歌山県湯浅・田辺 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 
    チン チンゴ
    場所福岡県志賀島 参考文献 
    シロタイ(シロダイ)
    場所静岡県大井川町 
    シオチヌ
    場所香川県 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 
    ヒレアカ
    場所高知 
    ホンチヌ
    場所高知 参考文献 
    キビレチヌ チヌ チン
    場所鹿児島県種子島 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    カワダイ[川鯛]
    場所各地 参考文献 
    ニタリ
    場所三重県尾鷲 
    ハダカノチヌ
    場所和歌山県雑賀崎 
    セジン
    場所大分県中津市中津魚市場 
    ヒダイ
    場所東京 参考文献より。 
  • 主食材として「キチヌ」を使用したレシピ一覧

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