SL 35cm前後になる。銀色でときに白く見える。左右に平たく鯛型。腹鰭、尻鰭が若い個体では黄色い。頭が丸く横から見ると円形に近い。両顎の側部には3列以上の臼歯がある。[成魚 36cm SL・1.325kg]
ヘダイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
動物界脊椎動物門硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ目スズキ亜目タイ科ヘダイ亜科ヘダイ属外国名
学名
Rhabdosargus sarba (Forsskål, 1775)漢字・学名由来
漢字 平鯛 Hedai
由来・語源 東京市場(明治期の日本橋)での呼び名。田中茂穂は〈大阪、和歌山縣でヘダイ〉としている。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
〈へだい 東京市場〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
台湾でも「平鯛」。
『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)に「へうだひ」があるが本種であるかは不明。
■ 身体が平たく側扁しているから。
■ 口がへの字に見えるから。
学名のsarbaはアラビア地方(フォルスコールが探検した)現サウジアラビアのジッダ(ジェッタとも。Jeddah)での呼び名から。Forsskål
ペール・フォルスコール(ペーテル・フォルスコール)。ヘルシンキに生まれる。『諸動物の記載』【DESCRIPTIONES ANIMALIUM』(PETRUS FORSSKÅL,1732-1763 CARSTEN NIEBUHR,1733-1815】。『コペンハーゲンの教授ペーテル・フォルスコールによって東方への旅行中に観察された哺乳類、鳥類、両生類、魚類、昆虫類および下等動物の記載。著者の没後、カールステン・ニーブールによって編纂さる付録として海路の薬用草本〔の目録〕と紅海の地図を付す』。紅海東岸の魚類をミナミヒメジ、バラハタ、オオモンハタ、ナミハタ、ナンヨウツバメウオ、トゲチョウチョウウオ、モンツキクロハギほか。デンマーク国王フレデリク5世が後援して博物学者のフォルスコールが率いた6人のアラビア探検の途中、1763年マラリアのためにイェリームの町(現イエメン)にて客死。地方名・市場名
生息域
海水魚。沿岸の岩礁域や内湾。
北海道日本海沿岸、新潟県〜九州南岸の日本海・東シナ海、宮城県〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、琉球列島。
朝鮮半島南岸、中国青島、福建省〜広東省、海南島、トンキン湾、オーストラリア南西岸・南岸、アラビア海、ペルシャ湾、紅海、南アフリカ東岸、インド-西太平洋。生態
■ 最初は総てが雄、両生期を経て、その後、雄と雌に分かれる。
■ クロダイよりはやや沖合に生息。
■ 産卵期は晩春から初夏。基本情報
北海道道東・オホーツク海沿岸を除く北海道、本州以南、琉球列島までの日本各地で水揚げがある。内湾や汽水域に多いクロダイよりもやや沖合にいて、ときに群れを作るようで定置網などにまとまってはいることがある。クロダイほど黒くなくまた磯臭みがない上に値段が手頃なので九州などでは人気が高い。
流通上は、ややローカルな存在で、2000年前後、関東では比較的珍しいものだったが、近年、温暖化のためか関東への入荷量は増えているように思える。
くせのない上質の白身で料理法を選ばない。どのような料理にしても味のいい魚である。水産基本情報
市場での評価 知名度は低いものの、入荷は少なくない。値段は活魚以外は比較的安くお買い得な魚。
漁法 定置網、釣り
産地(漁獲量の多い順) 神奈川県、大分県選び方
出来れば活魚か活け〆を選びたい。目が澄んでいるもの。体色の銀色がひかっているもの。鰓が鮮紅色のもの。小さいものより、大きいものの方がうまい。味わい
旬は晩夏から晩春。産卵後の回復が早いのか、比較的年間を通して味がいい。
鱗はやや薄く取りやすい。皮は薄くタイ科のなかでも弱く、熱を通すと裂けやすい。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で血合いが赤く、熱を通しても縮まない。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ヘダイの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、カルパッチョ、焼き切り)、焼く(塩焼き、つけ焼き、幽庵焼き、干もの)、煮る(煮つけ、鍋)、汁(潮汁、みそ汁)、ソテー(ポワレ、バター焼き)、揚げる(フライ、唐揚げ)クリックで閉じます
ヘダイの刺身(成魚) 9月の脂ののった成魚の刺身は最上級の美味。水洗いして三枚に下ろして、腹骨・血合いを切り、皮を引いて単に刺身にしたもの。霜皮造りにしてもいいが少し皮が硬い。血合いが美しく舌触りがねっとりとして甘味がある。バランスのいい味わいで後味もいい。写真は腹の部分の刺身。
ヘダイの刺身(成魚) 12月、暮れも押し詰まったときの個体は脂はそれほどのっていないが、うま味がとても豊かで身の張りが感じられる。活け締めなので食感もよく非常に味わい深かった。水温が下がったために食いが落ちたために脂が少なかったものと考えられる。クリックで閉じますヘダイの刺身(若魚) 9月のまだ若い活魚の刺身。水洗いして三枚に下ろし腹骨を取るが、血合い骨が抜けない。切りつけても動くくらいなので寝かせた方がうま味は増えると思う。食感が豊かで脂がのり、舌にまったりとして非常にうまい。[全長29cm・重さ485]クリックで閉じますヘダイのカルパッチョ 比較的安い魚なのでイタリア料理店などでカルパッチョになって出てくることも多い。これもとてもうまい。三枚に下ろして皮を引き、できるだけ薄く引く。皿にニンニクをなすりつけ塩、オリーブオイル。ここに切り身を並べてスプーンなどでとんとんと馴染ませる。上にも塩とオリーブオイル、好みの香りのある野菜などをのせて食べる、スパイスはコショウでもカイエンヌペッパーでもなんでもいい。クリックで閉じますヘダイのカルパッチョ
ヘダイの兜焼き(塩焼き) 1㎏以上は兜(頭部と胸鰭まで)で十分塩焼きに出来る。体幹部分よりも皮目の香ばしさ、うま味の豊かさ、かま、頬などの身が繊維質で食感のよいところなどで優っている。頭部は梨子割りにして水分をよくきり、やや強めの塩を手ですり込む。1時間程度置き焼き上げる。クリックで閉じますヘダイの塩焼き(小型) ここでは小振りのを丸のまま、使った。水洗いして鱗と内臓を取り、水分をよく切り、振り塩をして1時間以上置いてじっくりと焼き上げる。皮に独特の風味があり、身に甘みがあってとてもうまい。この塩焼きを使って炊き込みご飯を作ってもいい。クリックで閉じますヘダイの塩焼き
ヘダイのフライ 大振りのヘダイを三枚に下ろして血合い骨を切り離す。皮つきのまま塩コショウし、パン粉をつけて揚げたもの。揚げると中がふんわりと仕上がる。身に甘みがあり、適度に繊維質で嫌みがない。クリックで閉じますヘダイのバター焼き 小振りのヘダイを水洗い。切れ込みを入れて塩コショウして少し馴染ませる。これを多めの油でソテーして仕上げにマーガリン(バター)で風味づけする。表面が香ばしく、中は塩焼きを食べているかのようにあっさりして嫌みがない。仕上げにしょうゆをたらすとご飯に合う。クリックで閉じますヘダイのポワレ 三枚に下ろして血合い骨を抜き、塩コショウ。皮目からじっくりとソテーする。皮目から8分通り火を通し香ばしく仕上げるのがコツ。皮がぱりっと香ばしく身はしっとりとして軟らかい。ポワレはヘダイの定番料理かも。クリックで閉じますヘダイのポワレ
ヘダイと舞茸の土瓶蒸し 水洗いして三枚に下ろし、血合い骨・腹骨を取る。一口大に切り、湯通しして冷水に落として表面のぬめりを流す。鍋に酒塩で味つけしたカツオ節出し(昆布とカツオ節・水でとっただし)、舞茸と切り身を入れて煮立たせないようにあたため、土瓶に移す。食べる直前に蒸し器で器全体を蒸し供する。クリックで閉じますヘダイのタイ風煮つけ 水洗いして、水分をよくきり、蒸す。蒸したときの汁は捨て、水・しょうゆ(タイしょうゆや中国のしょうゆの方がいい)、レモングラス、コブミカン、カー(しょうがでも)、唐辛子で煮上げる。仕上げにライムを振る。夏の食欲の落ちたときなどにおすすめ。クリックで閉じますヘダイのちり鍋 タイ科の魚のちりは総て絶品。水洗いして適宜に切り、湯通しする。冷水に落として残った鱗やぬめりを取る。すいぶんをよく切り、野菜、豆腐などと煮ながら食べる。しょうゆ仕立てにしてもいいが、できれるだけ単純に昆布だしに酒・塩味でポン酢などで食べた方がうまい。クリックで閉じますヘダイのちり鍋
好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
ー釣り情報
船でのコマセ釣り(コマセマダイ)であがる。天秤仕掛けのエサはオキアミ。
また防波堤(波止)、磯などでの浮き釣りに釣れてくる。歴史・ことわざ・雑学など
旧学名/Sparus sarba (Forsskål, 1775)
■ 1980年代関東ではときに漁獲されるが小型が多く、成魚は少なかった。
■ 大きなものはやはり西日本に多いようだ。
■ 一般的にクロダイよりはクセがないと思われてる。参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『日本の海水魚』(岡村収、尼岡邦夫編・監修 山と渓谷社)、『日本産魚類全種の学名 語源と解説』(中坊徹次・平嶋義宏 東海大学出版部 2015)