兵庫県明石浦漁協の桜鯛で南予の鯛めし
いいタイがあるので、南予風鯛めしを作る
八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に兵庫県明石市、明石浦漁業協同組合から明石鯛(マダイ)が来ていた。桜はまだちらほら残っているので、ぎりぎり桜鯛という言語を使ってもいいだろう。
以上は前回に書きとめた。
このときお茶菓子代わりに兜焼きを作り、一度ダウンして昼下がりに腹の虫を慰めるために飯もんを作った。
いちばん簡単にできる「南予風 鯛めし(鯛飯)」である。
カツオ節出しだけあればあっと言う間にできあがる
初めて食べたのは愛媛県松山市である。アンノン族のアンノン旅で、市内で食べたので、愛媛県全域を代表する料理だとすっかり思い込んでしまった。
民俗学を真面目に勉強し始め、分類学もイロハのイから始めた頃で、郷土料理にまで能の領域は伸びていなかったのもある。
ボクの故郷、徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町貞光)でも歴史上に残るくらいに車の運転が下手くそと言われたボクが、親戚のために松山市まで行ったのはアンノン族だった親戚の命令による。学生時代だったので、凄まじく古い話になる。
徳島県の山間部から松山市までがものすごく遠いことにも驚いた。運転が下手なので道に迷うやら、ブロック塀でこするやらで波瀾万丈の旅だった。
正真正銘の観光旅行がこんなに疲れるのか、と道後温泉の駐車場で仮眠を取りながら思ったものだ。高速が出来るまで、徳島県民にとって池田など旧三好郡はともかく愛媛は関西よりも、岡山よりも遠いところだったのだ。
ちなみに1990年代くらいまでの、外食の写真は我が家にはほとんどない。料理店で写真を撮ることはタブーに近かったからだ。
八幡浜周辺以南の料理だと判明したのは、2000年の大分・愛媛間にある豊後水道を渡ってみたいだけの旅のときだ。その後、宇和島市、薬師神蒲鉾さんに、宇和島漁協の食堂で御馳走していただいたのは、それ以前に食べたものよりも格段においしかった。このとき、宇和島の「鯛めし」の方がネイティブな感じがしたものだが、いかがだろう。
我がデータに愛南町が含まれていないので、「南予風鯛めし」の分布域はよくわかっていないことも明記しておきたい。
腹の虫をなだめるにはカッコミご飯がいちばん
ボクはこの汁気の多い、生卵を使う「鯛めし」は苦手だ。自分で作るときは生卵抜きでにしているが、それではただの漬け飯になる。
明石海峡の上物マダイが手に入ったので、久しぶりに生卵入り「鯛めし」を作ってみた。
タレはカツオ節だしをとっておく。
みりんと酒は煮切る(酒の苦味が大丈夫な人は不要)。
醤油・カツオ節出し、煮切りみりん・酒でそばつけ汁よりも少し薄めのタレをつくる。
ねぎを切り、明石浦漁協からいただいた初摘みの焼き海苔を揉む。
漬け込むのが嫌いなのでマダイは筋繊維と逆方向にそぎ切りにする。
食感は悪くなるが、この方がタレがよくからむからだ。
少し漬け込むなら筋繊維と同じ方向に切るといい。
後は、マダイの切り身にわさびを予めからめをつけて、卵を溶いたタレの中に投入する。
タレの量を加減しながらご飯にかける。
熱々のご飯と生卵の境目の部分に少し火が通り、それが味の重要な部分であり、生卵かけご飯を食べているようにするする入るが、豊かな刺身ののおいしさ、食感が口中ではっきり感じられる。
マダイの切り身のうま味がご飯と一緒になると、だし化しているようにも思う。
生卵入りも悪くないとわかったことも収穫である。
おいしいご飯ほどあっけないものだ、と思っているが、虚しいほどあっけない。