銭州のサメのおこぼれマダイを食べる 2、竜田揚げ

竜田川に由来する古式ゆかしき料理名だが、野性的にうまい


ボクの覚え書きから。
「竜田揚げ」とは、奈良県生駒市などを流れる、紅葉の名所、竜田川から来ている。料理名の起源は意外に新しく、明治以降ではないかと推測する。
奈良県の竜田川(龍田川)が紅葉(特定の植物の名ではなく紅葉した植物という意味)の名所だったことから来る。わかりやすく言えば、「紅葉=赤い」、料理では「赤は醤油に染まる」、ことからの名だ。
百人一首、在原業平の〈千早ぶる神代もきかず竜田川からくれないに水くぐるとは〉が有名だったので、実際の川とはなんの関係もなくつけたのだと思う。生駒市を流れる川に実際に行ってみたらわかることだけど、ほんまにこれが名所なんかい、とがっかりすること間違いなし。
ちなみに在原氏は9世紀半ば、桓武天皇が平安京遷都をし、平城京にあった勢力からの脱皮を果たし大改革した混乱期に、歴史的にも不思議な存在である平城天皇から臣籍降下した一族である。在原氏で有名なのは鍋の名に残る行平(ゆきひら)と歌人で有名な業平だけだ。いつの間にか歴史上から姿を消す。ちなみに平安時代の和歌はどちらかというと、落ちこぼれ貴族が作るもので、左御子家の定家も、在原業平も紀貫之も落ちこぼれそのものである。

さて、目の前にある竜田揚げは醤油+甘味+にんにくなどの味がついている、ので冷めても味が落ちない。
いくつかの事象を文字で並べて関係性を調べるという、クソ面倒くさいことをやっているときの、おやつに持って来いである。
ちなみに調べ物をしながらもの食うとき、ボクは、左利き♪ である。
サメに食いちぎられた部分なので不揃い極まりないが、意外にもこのガタガタした部分がおいしい。
普通に三枚に下ろした身(筋肉)よりも、より柔らかい気がする。
これなどサメに食われたときのショックで筋肉が変質したせいかも。
柔らかいだけではなく、ちゃんとマダイの味がする。
身の甘味は、たぶん呈味成分が複雑にからみあったことからくるのだろう。
繊維質で口の中で心地よくほぐれるのもいい。
ふわっと柔らかいのに、時間がたってもこのままで、表面に油が浮き上がってこない。
意外にも〈神代もきかず〉なうまさだった。

サメの歯に食いちぎられた際を揚げたもの


八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが銭州で、やったー! 釣れた、と思ったらサメにがぶり、とやられたタイではなく、これぞまさしく半タイである。
半タイなのに重さ3㎏弱もある。いったいどないな大きさやねん、と思わないではいられない。
それにしてもサメだってかなりドでかいに違いない、が種類は不明だ。
釣り師の天敵、サメのおこぼれをいただいて、喜んでいるボクもへんだけど、これをうれしそうに持って帰ってくるクマゴロウだって変だ。
変だけどありがとう!
兜だけなのにひと抱えもある。
以上は前回書いた。
サメの歯形がついてそうな胸鰭と胸鰭の後側を適当に切り取る。
やぶけた布状なので同じくらいの大きさにする。
水分をよくきり、酒・みりん・砂糖・醤油・にんにくの地に1時間以上漬け込む。
水分をよくきり、片栗粉をまぶしてじっくり焦げないように二度揚げする。


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