鯛子好き
魚島直前、明石鯛子
マダイ真子煮
産卵期のマダイの撮影をしていてなにがうれしいかというと真子に尽きる。年を取ってからは白子派に傾きつつあるが、いまだに子供舌なので真子が出てくるだけでうれしい。ほくほく甘いのが好きなのは舌が若い証拠でもある。
スズキ目の魚はおしなべて白子の方が味わい深いが、卵巣に真がついているのは万人向きだからだろう。真子はほくほくとして甘味があるものの味に奥行きがない。その短兵急な味がわかりやすいのだ。
マダイの生殖巣の真子、白子だけをさす言語はないようだ。本朝食鑑、物類称呼、大言海、広辞苑を見ても、歳時記を見ても見当たらない。市場では「鯛真子(たいまこ)」、「鯛子(たいこ、たいご)」だ。関西では「たいご」と語尾が濁音だったと思うがはっきりしない。
どんな真子でもいいわけではない。東京湾から四国、瀬戸内海などの個体は、もちろんだいたいの話ではあるが、2月くらいになると卵巣は膨らみ始める。3月、4月と徐々に大きくなるが、この時季の実熟なものは決していいとはいえない。4月の後半から卵巣を触ると張りが生まれて来ていて、卵粒が小さく粒立っては見えない。5月いっぱいはこの張りが続き、6月になると成熟しすぎて卵粒がばらけて水っぽくなる。日本列島で見ると日本海側では少し遅れ、東北日本海側では1月くらい遅い可能性が高いと感じている。
ということで関東から四国の太平洋側、瀬戸内海の鯛子の旬は4月末から5月末までが目安だと思っている。
真子料理といっても煮るか焼くかだと思っているが、断然甘辛く煮たものが好き。焼くよりもほくほく甘いのが、よりほくほく甘いからだ。
真子は胆嚢をつぶさないように取り出す。汚れや血液を流水で流して水分をよくきる。
一口大に切る。
鍋に酒・砂糖・醤油・水を煮立たせた中で煮汁を絡めながら煮る。ぐつぐつ味を含ませながら煮てはいけない。真子の表面に味がつくだけでいい。
個人的にはこれで飯、だ。甘辛くほくほくしてうま味もあるのが糖質である飯に合いすぎる。
酒には個人的意見ながら合わぬ。