80cm SL 前後になる。吻は長く先端が尖る。尾柄部は長い。背鰭軟条は12-14本。体側に黒い斑点があるものとないものがある。斑点はあっても鱗と同じ大きさか、それよりも小さい。[東京湾、斑紋のないタイプ フッコサイズ全長30cm、重さ274]
スズキの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★
いつでも手に入る魚貝の物知り度
★★
これは常識食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目スズキ科スズキ属外国名
学名
Lateolabrax japonicus (Cuvier, 1828)漢字・学名由来
漢字 鱸 須々木 Suzuki
由来・語源 鱸は「ろ」で鱸魚で「ろぎょ」とも。ただしこの鱸の文字は中国大陸明時代のもので、正確にはタイリクスズキのこと。
室町期などの茶会記では「すすき」となっている。濁点を省いて書き記す習慣がある時代だが。実際の音が「susuki」であった可能性も高い。スズキはススキだったと言い切ってもいいだろう。
〈すゞき 北海道〉『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)に〈川鱸は脂多く味が美(よ)い。海鱸は脂は少なく味が淡い。〉とある。古くから川鱸(スズキ)と海鱸(ヒラスズキ)を分けていたようだ。
ススキと表記 〈ススキ群ススキ科ススキ亞科ススキ屬ススキ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)。同じく松原喜代松が関わっている『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)にはスズキ。
■ 〈進(すす)くノ活用ノ、進きノ義カ〉、〈筋雪ノ転、すじゆきハ、古名ナリ〉『大言海』(大槻文彦 冨山房)
■〈「煤けたる魚」の意〉『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)
■ 「“すすい”だように身が白いから」。
■ 「すす」は小の意味で口の大きいのに比べ尾鰭の小さすぎることから。
■ 古名「スギユキ」、「スヂユキ」、「ススキ」と転じて、純白、雪白の意を表したもの。Cuvier
バロン・ジョルジュ・レオポルド・クレティアン・フレデリック・ダゴベール・キュヴィエ(Baron Georges Léopold Chrétien Frédéric Dagobert Cuvier 1769-1832)。フランスの分類学者。キュビエとされることが多い。スエーデンのリンネ、フランスのビュフォンの分類体系に解剖学や古生物学などを加味して現在の形の礎を作った巨人のひとり。地方名・市場名
生息域
海水魚。内湾・岩礁域。若魚は汽水域から淡水域に侵入する。
北海道全域・[紋別]、青森〜九州西岸・鹿児島県南さつま市笠沙の日本海・東シナ海、青森〜日向灘の太平洋沿岸、瀬戸内海。
朝鮮半島南岸・西岸。生態
10月から3月、外洋に面した岩礁地帯で産卵する。1尾の産卵数は20万粒前後。
松島湾では12月中旬〜1月上旬。
東京湾周辺では10月下旬〜2月下旬。
三河湾、伊勢湾では1月〜3月。
瀬戸内海では10月〜1月。
豊後水道では12月〜2月下旬。
若狭湾では12月下旬〜1月中旬。
土佐湾、九州では11月〜3月。
1歳で20センチ前後、2歳で30センチ前後、3歳で40センチ前後になる。
小さな時は甲殻類、大きくなると甲殻類、魚を餌にするようになる。
稚魚期、若魚期には汽水域、汽水湖などに入る。
夏には浅場で、寒い時期は深場に移動する。基本情報
琉球列島を除く国内の内湾に多い。出世魚で、縁起がよく、奈良時代の古事記(712年)、平安時代の延喜式(927年)にもあり、歴史的な高級魚のひとつ。昔は身近な淡水域、内湾でとれ、味がいいので人気が高かった。それが河川、内湾の汚染で高級魚ではなくなり、むしろ安い魚の代表的なものとなってしまっていた。きれいな水域でとれたものは小さくても味がよく、また国内での資源も豊かである。今や内湾の汚染も解消されて、もう一度価値が見直されてきている。
大型のスズキサイズだけではなく、小型でも味がいいことなど、もっと広く知らしめたい。
特に東京湾内房での高鮮度化による夏の固体の高級化は目を見張るものとなっている。もういちどこの上質の白身を味わい直すべきだと考えている。
珍魚度 東京湾が一大産地であるためか、首都圏では在り来たりな魚となっている。これは伊勢湾の名古屋、大阪湾の大阪、豊前海の福岡などでも同じ。安いので買いやすいのもある。水産基本情報
市場での評価
野締め(漁のときに死んだもの)は安い。ときに非常に安い。また大きさによっても値段の違う。
夏期の活けもの、活け締めなどは高値をつけ、神奈川県、兵庫県明石などの活け締めは安定的に高い。過去の高級魚というイメージは現在はないが、徐々にまたスズキのよさが知られているようだ。
漁法 釣り、巻き網、定置網
主な産地 千葉県、兵庫県、福岡県、愛知県、大阪府選び方
できれば活けを選ぶ。野締めは身がしっかり硬いもの。鰓が鮮紅色のもの。体表の銀色が輝いているものを選ぶ。味わい
成魚の旬は5月〜10月くらいまで。産地によって違う。季節だけではなく産地によって質の違いが出やすい魚だと感じる。秋、産卵直前の深場に移動する大型の腹太も美味。
幼魚、若魚、成魚、成熟した大型魚(腹太)では味わいが大きく異なるが、小さくてもおいしいのが特徴だ。
鱗は小さく取りやすい。骨はあまり硬くない。皮は厚くて強い。
透明感のある白身。淡白ななかに独特の風味がある。刺身でも、塩焼きでも、微かに川魚を思わせる香りが感じられる。鮮度がよければ、これがまことにいい。骨などからいいだしが出る。
注/生息場所によっては臭みのある個体がある。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
スズキの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、洗い、セビチェ、昆布締め、カルパッチョ)、焼く(塩焼き、つけ焼き、奉書焼き)、煮る、ソテー(ムニエル)、揚げる(フライ、唐揚げ)クリックで閉じます
梅雨入り前のスズキの刺身 神奈川県小田原市、小田原魚市場で得た、野締めのスズキを刺身にしたもの。当日なので、野締めにも関わらず、身が生きていて強い食感がある。血合いが美しく、透明感のある身に強いうま味と脂の存在を感じる。うまさ無類である。
腹太スズキの刺身 秋に東京湾の、やや深場であがった産卵に向かう5kgを超える腹太スズキを刺身にしたもの。背側、腹側と食べたが、どちらも申し分のない味。抱卵して脂が少ないかと思いきや意外に脂がのっていてうま味も強い。クリックで閉じます腹太スズキの刺身
フッコの刺身 体長40cm、重さ0.8kgの東京湾内房産フッコである。釣りではあるが野締めだ。釣ってから3日目ながらまことに美味。強い呈味成分からくる甘味があり、味わいが殷々と続く。クリックで閉じますスズキの洗い 活けが手に入ったら、死後硬直しない内に三枚に下ろして皮を引き、薄くへぎ造りにして、流水で洗い、最後に氷水でしめる。水は硬水の方がいい。うま味成分を洗い流してしまっているはずなのに甘味が感じられて、清涼感を感じさせてくれる味。クリックで閉じますスズキの洗い
スズキのセビチェ風 スズキを薄く切り、紫玉ねぎを敷いた上に乗せる。上から青唐辛子を散らしてライムを添える。食卓で振り塩をしてライムをしぼり、混ぜ合わせて少し置いて食べる。スピリッツがやけに合う。クリックで閉じますスズキのセビチェ
スズキの塩焼き 5月下旬、切身で買った京都府産。身がふくらみ脂が感じられた。塩をして1時間以上置きじっくり焼き上げる。焼き上げて柔らかく、皮目の香が高く、非常においしい。ご飯のおかずとしても絶品である。クリックで閉じますスズキのムニエル スズキは皮に独特の風味がある。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、皮付きのまま塩コショウして、小麦粉をまぶしてソテーしたもの。皮目はじっくりそてーしたことでかりっとする。シラチャソースなど好みのソースで食べるとうまい。クリックで閉じますスズキのムニエル
スズキと八つ頭の子の煮つけ 秋も深まる頃の切り身を使ったもの。非常に大振りなので落ちスズキである可能性が高い。切り身は湯通しする。冷水に落としてヌメリと残った鱗を流す。水分をよく切る。八つ頭の子は皮を剥き、水にさらし、できれば白水で下ゆでする。自家用なら下ゆでは不要。これを酒・醤油・砂糖・水で甘辛く煮つける。おかずだきではあるが、酒にも合う。クリックで閉じます腹太スズキの腹身の煮つけ 秋に取れた5kgものの腹太スズキの腹の部分をおかず風に煮つけたもの。腹もは湯通しして冷水に落としてぬめりと残った鱗を取る。これを濃い口醤油・たまり醤油・ザラメ砂糖・酒・水・しょうがで煮る。短時間でこってりした味わいにした割りに身は柔らかく、ご飯がすすみ味に。クリックで閉じますスズキのフライ 本種の定番的な料理だ。大形のスズキの皮を引き、やや細長く切り、塩コショウ。パン粉をつけて揚げたもの。スズキの身は揚げても硬く締まりすぎず、筋肉が層をなして食べやすい。クリックで閉じますスズキのフライ
関連コラム(料理法・レシピ)
スズキの湯がけは夏の味
長崎県の漁師さんたちに教わった料理に「湯がけ」がある。様々な魚を使うが、水洗いして皮付きのまま刺身状に切る。これをまな板に並べて湯をかけまわす。 同じような料理・・・ 続きを開く好んで食べる地域・名物料理
奉書焼き 島根県宍道湖、中海周辺でスズキに塩をして、奉書に包んで焼いたもの。
はくらの唐揚げ 3枚に下ろして皮を引いた「はくら(40〜50cm)」を唐揚げにしたもの。[千菜市 佐賀県鹿島市]クリックで閉じます
ノンオジョリム(농어조림) タチウオのジョリムは済州島(제주도/チェジュド)の名物料理。これをスズキに代えて韓国で食べたものを再現してみた。だしを作る。ここではヤンニョンジャン、りんご、にんにく、韓国産粉唐辛子、煮干しだしを合わせて置く。鍋に大根のスライスを並べ、スズキの切り身を乗せる。ここにだしを注いで白菜を加えて火をつけて煮る。終始強火で煮て、煮えばなにネギと芹を加える。
スズキの煮なます 島根県、鳥取県の中海周辺などで作られているのが「煮なます」。スズキの内臓を大根のけん、酢と砂糖、しょうゆで煮上げたもの。あっさりしてしかも内臓そのものの甘味が楽しめる。島根半島ではブリの内臓でも同様のものが作られている。『味のふるさと 17 島根の味』(角川書店 1978)などクリックで閉じます関連コラム(郷土料理)
福島県産活け締めスズキで半田素麺
8月7日に買った福島県産スズキ1.89kgは、料理法を考えながら下ろした。 スズキと決める以前に、そろそろ残り少なくなった我が故郷の名品、半田素麺を一気に消費し・・・ 続きを開く島根県宍道湖・中海、島根半島の煮なます
なます」は本膳料理(室町時代に生まれた武家の形式立てた料理の提供法)での小鉢などにもって提供するもので、火を通した素材を酢などで和えたもの。野菜だけのものを「・・・ 続きを開く加工品・名産品
釣り情報
東京湾ではエビを使った船からの釣りが行われている。
また近年ではルアー釣りが盛んとなっている。
スズキの鰓洗いといってハリにかかると大きく口を開け、鰓蓋(えらぶた)を広げて首を振り、ときにジャンプする。このとき鰓蓋骨後縁が尖り、のこぎり状になっているのでしばしば釣り糸が切れる。これを「鰓洗い(えらあらい)」」という。歴史・ことわざ・雑学など
出世魚
歳時記 俳句季語では「秋」。
故事 平清盛が伊勢から熊野に向かう海路、大きなスズキが船に飛び込んできた。吉事だというので自らも食い、家来にも食べさせて、その後出世した。
文献にみるスズキ
吸物わた吸物 婚礼の膳や引き出物に「すずきのわた吸物」。『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
養殖 〈本種は淡水を好む習性がある爲春季河口を遡上する幼魚を漁獲して之の池中養殖を行っている所がある。〉。現在も養殖されているが、その始まりは古いのかも知れない。『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)参考文献・協力
協力/渡辺岳人さん(北海道紋別市 まるとみ渡辺水産)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『歳時記語源辞典』(橋本文三郎 文芸社)、『水産統計』(農林水産省)、『あいちの水産物 ハンドブック100』(愛知県農林水産課)、佐賀県有明海漁業協同組合地方名・市場名 ?