蒸し暑さに初すすき

スズキは活魚がいい


八王子総合卸売協同組合、マル幸に宮城県産スズキが来ていた。基本的にスズキは活魚しか買わないのだけれど、その活魚3.1㎏が目の前にある。でも大きすぎて丸では手が出ない。
この日は車の窓を全開にして走り、市場に着いた途端半袖になってもいいくらいの温度と湿度を感じた。まさかとは思うが、爽やかな5月を吹っ飛ばして4月なのに初夏なのか、と思ったら無性にスズキな気分になってきた。
「半分にしてくれよ」とお願いしたらしぶしぶ真半分にしてくれたので、宮城県産活スズキが今季初ものとなる。
同じスズキ類(スズキ属)でも、ヒラスズキの年間の味の変化がわからなくなってきている。寒い時季の魚だと思ったら、真夏に脂ののった個体に出くわしたりしている。豊洲で買った鹿児島産は4月初旬なのに脂があったり……。
そこへいくとスズキは律儀である。蒸し暑さに車の窓を開けて走りたくなる、そんな時候になると脂が乗り始める。体感を信じて買った宮城県産は、旧暦3月は明らかに春なので安い。のにも関わらず脂がのっていたのである。
いまだにスズキが高級魚だと思っている人がいる。確かに高級魚というか上等の魚であった歴史が長い。
室町時代、茶道は堺(大阪府堺市)で進化する。このとき茶道の主役は商人であり、職人である。堺や大坂で行われた茶事に欠かせなかったのがスズキであり、鯛(マダイ)だった。茶道の本場が京都に移るとフナやコイなど淡水魚が主役となるが、これは海の魚を刺身(現在の向付)に使うには京の街が海から離れすぎていたからだ。
この歴史ある高級魚が高度成長期の内湾の汚染で急激に評価を落とす。内湾の汚染が解消し、鮮度管理が向上しても、いまだに年間を通してみると安い魚でしかない。夏ならばそれなりの値をつけるが、4月のスズキなど目もくれないという人も多い。
温暖化が進み、スズキの旬も海水温に歩調を合わせるように早まっている。だから4月のスズキは狙い目なのだ。

今季初スズキの刺身


さて、まずは刺身から。
腹骨をすくと胸鰭の後ろから臀鰭にかけての身がやたらに分厚い。できるだけ薄く切りつけようとして切りつけることが出来ないのは、三枚に下ろしてもまだ身が生きているからだ。
刺身としては2日目(昨日)の方が上だったが、山梨県のあまりにもド直球に辛口の酒、榊正宗には好相性だった。


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