福島県産活け締めスズキで半田素麺

煮つけでスズキを買うの「はちばらき」でおぼえたこと


8月7日に買った福島県産スズキ1.89kgは、料理法を考えながら下ろした。
スズキと決める以前に、そろそろ残り少なくなった我が故郷の名品、半田素麺を一気に消費してしまおうと考えていたこともあり、煮つけにしてうまい魚を探していたのもある。魚の煮つけで素麺を食べるというのは、日本各地で行われている。
例えば愛媛県松山市に「鯛素麺」があるが、あれは家庭料理を豪華にしてやたらに宣伝しただけで、本来の形ではない。だいたい松山市でも魚市場のある三津では、むしろ「ちぬ(クロダイ)」で作ることの方が多いという。同様の料理は徳島にもあるし、大阪市にもある。
ちなみにボクの魚の調べ始めは淡水魚で、海の魚は上京してからだ。
スズキの煮つけは、塩焼きほど知名度はない。生まれて初めてスズキを食べたのは東京都江戸川区小岩の食堂だが、塩焼きだった。当時、やっと魚が身近な存在になってきていたので、このような初物食いはうれしい限り、とてもおいしかった。
今思えば、当時(1970年代末)、スズキを食べる人は都内にはあまりいなかった。たぶんスズキにとってはどん底時代といってもいいだろう。いかに葛飾小岩とはいえ、スズキを食べることができたのはラッキーだったと考えている。これに関しては江戸時代の高速道路をたどっているので、そのときに述べたい。
スズキの煮つけをやたらに食べたのは俗に「ちばらき」とされる霞ヶ浦、利根川方面に通っていたときだ。漁師の魚料理の基本は煮つけなのである。漁師さんがスズキをくれるときも「煮つけにしなよ」だった。
余談だが、千葉県、茨城県の水郷地帯は国内屈指の醤油どころだ。本当か嘘かわからないが、醤油に亀甲は、土浦藩(茨城県土浦市)、土屋家の城が通称、亀城と呼ばれるのに由来するという。このあたりの漁師の煮つけがそんなに甘くないのは、醤油がいいからだという人もいる。
スズキを見て、煮つけが浮かんでしまうのは、大小様々なスズキをあっさり味で散々食べているからだ。スズキには淡水魚を思わせる風味がある。これが好き嫌いが出るところだが、ていねいに湯引きして臭味をとって煮つけると実に味わい深いのである。

見た目たっぷりだけど、食べ始めると少なく感じる鱸素麺


今回の話にもどる。
スズキは水洗いして頭部など使う用途によって切り分ける。煮つけには二枚下ろしの骨つきの部分の真ん中あたりを切り身にして使う。
鰭などの先は調理バサミで切り取ってしまう。切れ目を入れて湯通しする。冷水に落として残った鱗名表面のぬめりを流す。
水分をきって酒・みりん・砂糖少々・醤油・水を合わせ沸騰した中で刻んだしょうがとともに煮つける。煮汁は多めである。
これを鍋ごと氷水につけて冷やす。
半田素麺(徳島県美馬郡つるぎ町半田、杉本製麺のもの)をゆでる。二回ほどびっくり水をしてゆであげ。流水のなかで徹底的に揉み洗いする。
水分をよくきり、大皿に盛る。
冷えた煮つけをそこに盛り付けて、生しょうがとみょうがを添える。
素麺を煮汁、しょうが、みょうがと和える。

煮つけと素麺別々に食べるもよし、ぐちゃぐちゃして食べるもよし


ほぐした身と素麺を小皿に取り、最近、もっぱら一味唐辛子を振って食べている。
写真は約2人前だが、1人前になってしまう人が多いのではないかと思う。
この煮つけの煮汁でくらう半田素麺のうまさは食べてもらわないとわからないと思う。


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