雄の方が大きい。雄で甲幅80mm前後になる。ハサミ脚、歩脚に細かい毛が生えている。[写真は足や鉗脚が長い雄]
モクズガニの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
節足動物門甲殻上綱軟甲綱(エビ綱)真軟綱亜綱(エビ亜綱)エビ上目十脚目短尾下目モクズガニ科モクズガニ亜科モクズガニ属外国名
学名
Eriocheir japonicus De Haan,1835漢字・学名由来
漢字 藻屑蟹 Mokuzugani
由来・語源 はさみ脚に毛が密集していて「藻くず」に見えるため。De Haan
Wilhem de Haan (ウィレム・デ・ハーン 1801-1855 オランダ。ドゥ・ハーンとも)。ライデン王立自然史博物館。シーボルトが日本から持ち帰った標本、特に甲殻類を研究。『日本動物誌』(Fauna Japonica)をテミンク、シュレーゲルとともに編む。日本に生息する甲殻類の多くを記載している。地方名・市場名
生息域
淡水域で暮らし、産卵は海。
北海道から九州、琉球列島、小笠原諸島。ロシア沿海州、サハリン、朝鮮半島東岸、台湾。生態
成体(親)は河川、湖沼で暮らし、秋から冬に産卵のために海に下る。
汽水域で繁殖をし、小ガニとなって夏には河川を上る。
基本的には水中にある植物をエサとしているが、動物質のものも食べる。
しばしば腹部に袋状の不思議なものをつけている。これは同じく甲殻類の寄生虫、フクロムシというもの。
ウェステルマン肺吸虫の中間宿主となる。終宿主は人なので注意が必要。
全体が濃い灰色。甲長・甲幅ともに5センチ前後になる。背甲は扁平で平たく、円形に近い。河川では大型のカニだ。甲羅の割に脚が細い。基本情報
海で生まれて川で育つモクズガニ、チュウゴクモクズガニは非常に近縁。外見的にも味わい的にも似通っている。上海ガニとして世界的に有名なチュウゴクモクズガニは国内で近縁種がいるにも関わらず大量に輸入されているという不思議な構図となっている。
また国産のモクズガニは非常にローカルな存在でもあり対照的でもある。このためにモクズガニとの交雑の恐れがあって外来種法できびしく取り扱いが寄生されている。ともに秋の子持ちが喜ばれていて、ともに寄生虫などの危険を帯びている。
珍魚度 ローカルな食用ガニである。消費地のスーパーなどでは手に入れにくい。水産基本情報
市場での評価 関東には北海道から入荷してくる。量的には少ない。
漁法 カゴ漁
主な産地 北海道選び方
生きがよく持って重いもの。身の味は雄、内子は雌を選ぶ。味わい
旬は夏から初冬。
ゆでる、蒸すなどすると独特の風味がある。身の味わいもよく、カニ類ではもっとも美味。ただし身は少ない。秋の海に下る時期の雌には内子(卵巣)がある。これが非常に美味。
近縁種のチュウゴクモクズガニ(シャンハイガニ 上海ガニ)に負けない。
生食不可。栄養
ー危険性など
ウェステルマン肺吸虫の中間宿主となる。終宿主は人なので注意が必要。食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
好んで食べる地域・名物料理
日本各地。
ゆでモクズガニ 高知県、栃木県など。
汁 ツガニ汁、毛ガニ汁、ヒゲガニの汁。
ガネミソ 我が地方はモズクガニをよく食べていた。モズクガニの爪先と肺にあたる部分とフンドシ除き、生のまま糠と味噌と塩と一緒に餅つきするようにして、ペースト状になったものを小さな餅ぐらいのおきさにする。これを天日干しにすると、灰色の餅みたいなものが出来上がる。食べる時はそれをあぶってたべます。あぶると、カニを茹でたような色になる。「塩辛いので子供だった私は苦手でした」。この餅状に丸めたものをガネミソって呼んでいた。[山崎博司さんから。徳島県那賀郡那賀町和食郷田野]いもたき 愛媛県北宇和郡松野町で作られている郷土料理。町内を流れる広見川でとれた「川がに」をしょうゆ、砂糖、塩で調味して煮る。カニを取り出して里いも、練り製品、こんにゃく、などを煮る。[農家民宿 わらび 愛媛県北宇和郡松野町蕨生]クリックで閉じますモクズガニのいもたき
川がに煮 一般に塩ゆでにするものだが、しょうゆ、砂糖、塩などで調味して、冷たい内に生きているものを入れて煮上げたもの。ほどよい甘さが、カニの身の甘さと相乗効果を生み実に美味。[愛媛県北宇和郡松野町]クリックで閉じますモクズガニの川蟹煮
かにぞうすい 生米からモクズガニと煮る雑炊。甲羅を外し、ガニを取り、水から米とともに煮上げる。仕上げには麦みそで味つけする。青みはねぎとニラ。驚くほどの美味しさ。[愛媛県北宇和郡松野町]クリックで閉じますモクズガニのぞうすい
加工品・名産品
釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/永野昌枝・廣さん(土佐の廣丸 高知県高知市)、農家民宿 わらび(愛媛県北宇和郡松野町)
『大型甲殻類図鑑Ⅰ・Ⅱ』(三宅貞祥 保育社)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『図説人体寄生中学』(吉田幸雄 南山堂)