モクズガニ

Scientific Name / Eriocheir japonicus De Haan,1835

モクズガニの形態写真

雄の方が大きい。雄で甲幅80mm前後になる。ハサミ脚、歩脚に細かい毛が生えている。[写真は足や鉗脚が長い雄]
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雄の方が大きい。雄で甲幅80mm前後になる。ハサミ脚、歩脚に細かい毛が生えている。[写真は足や鉗脚が長い雄]雄の方が大きい。雄で甲幅80mm前後になる。ハサミ脚、歩脚に細かい毛が生えている。[写真は足や鉗脚が細くて短い雌]雌の裏側
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    節足動物門甲殻上綱軟甲綱(エビ綱)真軟綱亜綱(エビ亜綱)エビ上目十脚目短尾下目モクズガニ科モクズガニ亜科モクズガニ属

    外国名

    学名

    Eriocheir japonicus De Haan,1835

    漢字・学名由来

    漢字 藻屑蟹
    由来・語源 はさみ脚に毛が密集していて「藻くず」に見えるため。

    地方名・市場名

    生息域

    淡水域で暮らし、産卵は海。
    北海道から九州、琉球列島、小笠原諸島。ロシア沿海州、サハリン、朝鮮半島東岸、台湾。

    生態

    成体(親)は河川、湖沼で暮らし、秋から冬に産卵のために海に下る。
    汽水域で繁殖をし、小ガニとなって夏には河川を上る。
    基本的には水中にある植物をエサとしているが、動物質のものも食べる。
    しばしば腹部に袋状の不思議なものをつけている。これは同じく甲殻類の寄生虫、フクロムシというもの。
    ウェステルマン肺吸虫の中間宿主となる。終宿主は人なので注意が必要。
    全体が濃い灰色。甲長・甲幅ともに5センチ前後になる。背甲は扁平で平たく、円形に近い。河川では大型のカニだ。甲羅の割に脚が細い。

    基本情報

    海で生まれて川で育つモクズガニ、チュウゴクモクズガニは非常に近縁。外見的にも味わい的にも似通っている。上海ガニとして世界的に有名なチュウゴクモクズガニは国内で近縁種がいるにも関わらず大量に輸入されているという不思議な構図となっている。
    また国産のモクズガニは非常にローカルな存在でもあり対照的でもある。このためにモクズガニとの交雑の恐れがあって外来種法できびしく取り扱いが寄生されている。ともに秋の子持ちが喜ばれていて、ともに寄生虫などの危険を帯びている。

    川ガニ漁 日本中の河川でとれる中型のカニ。河川の乱開発、農薬などのために激減。ローカルではあるが身近な存在でもあったのが、なかなか手に入りがたいものとなっている。写真は愛媛県北宇和郡松野町でのモクズガニ漁。当地ではこのカゴのことを「かにじんど」と呼ぶ。[農家民宿 わらび 愛媛県北宇和郡松野町蕨生]

    水産基本情報

    市場での評価 関東には北海道から入荷してくる。量的には少ない。
    漁法 カゴ漁
    主な産地 北海道

    選び方

    生きがよく持って重いもの。身の味は雄、内子は雌を選ぶ。

    味わい

    旬は夏から初冬。
    ゆでる、蒸すなどすると独特の風味がある。身の味わいもよく、カニ類ではもっとも美味。ただし身は少ない。秋の海に下る時期の雌には内子(卵巣)がある。これが非常に美味。
    近縁種のチュウゴクモクズガニ(シャンハイガニ 上海ガニ)に負けない。

    栄養

    危険性など

    ウェステルマン肺吸虫の中間宿主となる。終宿主は人なので注意が必要。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ゆでる(蒸す)、汁(つがに汁、みそ汁)、炊き込みご飯
    蒸しモクズガニ
    ゆでる(蒸す) 簡単にゆでて、内子とともに甲羅下の身をしゃぶるように食べるのがいちばんうまい。モクズガニならではの独特の風味があって非常にうまい。

    好んで食べる地域・名物料理

    日本各地。
    ゆでモクズガニ 高知県、栃木県など。
    ツガニ汁、毛ガニ汁、ヒゲガニの汁。
    モクズガニのいもたきいもたき 愛媛県北宇和郡松野町で作られている郷土料理。町内を流れる広見川でとれた「川がに」をしょうゆ、砂糖、塩で調味して煮る。カニを取り出して里いも、練り製品、こんにゃく、などを煮る。[農家民宿 わらび 愛媛県北宇和郡松野町蕨生]
    モクズガニの川蟹煮川がに煮 一般に塩ゆでにするものだが、しょうゆ、砂糖、塩などで調味して、冷たい内に生きているものを入れて煮上げたもの。ほどよい甘さが、カニの身の甘さと相乗効果を生み実に美味。[愛媛県北宇和郡松野町]
    モクズガニのぞうすいかにぞうすい 生米からモクズガニと煮る雑炊。甲羅を外し、ガニを取り、水から米とともに煮上げる。仕上げには麦みそで味つけする。青みはねぎとニラ。驚くほどの美味しさ。[愛媛県北宇和郡松野町]
    炊き込みご飯(つがに飯) 佐賀県唐津市周辺。ぶんどし、鰓などを取り去った「つがに」をご飯に炊き込んだものモクズガニの甘味を含んだ風味が強く感じられて、しかも上品な味わい。いくらでも食べられる逸品。
    つがに汁 写真は高知市の「つがに汁」。カニ汁。日本各地で作られるのが汁。殻ごとつぶして、水に入れて、これを漉した液体を温めると、身が凝固してくる。このふわふわしたものにカニの旨味があり、しかも汁自体にも旨味が強く出ている。

    加工品・名産品


    カニ味噌カニ味噌 カニの内子を加減みそ(酒、砂糖、卵)と練り上げたもの。やや甘めだが、「かにみそ」の風味がしておいしい。酒に合う。[きくちや 秋田県横手市大森町]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/永野昌枝・廣さん(土佐の廣丸 高知県高知市)、農家民宿 わらび(愛媛県北宇和郡松野町)
    『大型甲殻類図鑑Ⅰ・Ⅱ』(三宅貞祥 保育社)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『図説人体寄生中学』(吉田幸雄 南山堂)

    地方名・市場名

    ベトルンアンパヤヤプ
    場所アイヌ語 
    ズガニ
    場所和歌山県周参見 
    モガニ
    場所岐阜県郡上市大和町、兵庫県西脇市 参考黒岩さん2021年12月29日81歳、廣田眞智子さん(多可町生84歳2022) 
    ズンガニ ヅンガニ
    場所徳島県海部郡海陽町宍喰 参考長尾桂一郎さん 
    ガネ
    場所徳島県那賀町相生 参考相生町の方言(徳島方言学会) 
    ムクゾウガニ
    場所東京都 参考『河岸の魚』(町山清 国際商業出版 1979 著者は明治38/1905年生まれ) 
    モクタガニ
    場所神奈川県平塚市 
    カワガニ[川がに]
    場所北海道、秋田県南秋田郡羽後町、福井県永平寺町、鳥取県、岡山県、愛媛県北宇和郡松野町 
    ガンチ
    場所徳島県阿南市(阿南市のタカさんより)・那賀町相生 
    ケガニ
    場所北海道、福井県永平寺町、広島県江田島市大柿町、徳島県阿南市 
    ツガニ
    場所神奈川県小田原市、徳島県三好市白地、高知県高知市、福岡県福岡市、佐賀県唐津市 参考長浜鮮魚市場20181120 
    ヒゲガニ
    場所徳島県つるぎ町(旧貞光町) 
    モクズガニ
    場所愛知県一色 
    ヤマガネ
    場所福岡県久留米市田主丸 
    ヤマタロウガニ
    場所鹿児島、宮崎 
  • 主食材として「モクズガニ」を使用したレシピ一覧

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