秋いちばんの鍋はオキアジの煮食い
ほぼ裸で食らう猛暑の日の鍋もまたよし、オキアジよし
島根県西部、石見地方で「煮食い」という、同じく出雲地方では「へか焼き」である。
もとは大阪の「割り下鍋」が基本で、「すき焼き」ともいい、要は伝播したものだと思っている。
滋賀県の「じゅんじゅん」、兵庫県の「じゃう」、三重県尾鷲市の「じふ」など、名は違うが、ほぼ同じ物である。
「煮食い」とが最後の猛暑日の鍋となる。
熱波と相次ぐ災害で9月後半になっても葉物野菜が揃わない。せめて、ベかな(矮性山東菜)でもあるとありがたいのだけど、今回冷蔵庫で見つけたのは神奈川県秦野市、「じばさんず」で買った水前寺菜(沖縄ではんだま、石川県で金時草)だけだ。
いきなり煮え立てのオキアジから食べ始める。
このサイズはやや水分が多いが、身質がきめ細やかで煮ると縮まずふんわりと柔らかくなる。
アジ科ならではの豊かなうま味もある。
オキアジの小型は熱を通すと、非常に上等の魚に大変身するのである。
半身ずつ鍋に投入して、食べ尽くすのがボクのやり方である。
割り下で煮ると、最後まで味が落ちない。
ボク個人としては、最後にうどんが食べられなくなって久しいが、おすすめである。
なんとこの日の夜の外気温は36度であった。
最後までとっておいた煮染まったこんにゃくを食らいながら、パンツ一丁で食う熱々の鍋も、今年はこれにて終いであろう、なんて、独りごちる。
薄黒く、見た目は鈍だが食べたら鋭、という落差が魅力
9月20日、小田原魚市場、二宮定置はやや低調であった。
そんなときに限ってボクが好きなものが揚がる、というアンバランスな状況となる。
その中で、比較的まとまった水揚げをみたのが、オキアジである。
小田原では「もくあじ」という。
ちなみに相模湾北部で揚がるのは、手の平に収まる小さな個体が主だった。
それが今や大きくなり体長25cm以上は活魚での水揚げもある。
今回のは体長23.5cm・396gなので、残念ながら引く手数多とまではいかない。
不思議なことにこのサイズまでは、やや水分が多く、体長25cm以上になるとぐっと身が締まる。
いずれにしても、小田原は水揚げがていねいなので、魅力的である。