鍋らしい鍋がおいしい時季の鍋終いはヒガンフグ
今回のヒガンフグは活け締めであるが、太りすぎ
八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウはフグ調理師である。時季にはいつもフグを在庫として持っている。
4月になれば、フグも終い、終いのフグと言えばヒガンフグである。
関東で庶民的なフグの代表格はショウサイフグで、例えば松尾芭蕉が魚河岸の弟子達に分けてもらい(想像です)、「ふぐと汁」にしたのも、ショウサイフグである。
ヒガンフグはショウサイフグよりも少しだけ上等なもの、と考えるとわかりやすい。
余談になるがフグ科で高級といえるのはトラフグだけで、丸のままだと比較的安い。もちろん誰でも下ろせないということもあるが、安いけど安くないのは以下を読んでもらうしかない。未成熟な個体がお買い得で、成熟が進むと割高になる。
ちなみに典型的なフグといえば、フグ科トラフグ属(の仲間)のフグである。トラフグは皮が無毒だが、ほとんどのトラフグ属のフグの皮は有毒だというのもおぼえておくといい。取り分け、トラフグ属のヒガンフグは毒が強く、可食部分は筋肉だけだ。
また、関東でヒガンフグを「赤目フグ(あかめふぐ)」と呼び、同じトラフグ属のアカメフグと混同しやすいのも要注意だ。
定期的にヒガンフグを買うのは歩留まりを見るためだ。丸のままのフグの多くの値段は平凡だが、可食部分からすると明らかに高級魚である。
今回の個体は雌1.4kgで可食部分は680gなので、歩留まり50パーセント弱だ。
一気に気温が下がったときの鍋のありがたさよ
三枚に下ろして、半身は塩蔵する。
半身とあらは鍋で食べた。
フグ類の鍋は融通無碍で煮ながら好きなように食べるといい。
市場仲間の食料品店のオヤジ曰く、「最近の鍋のスープ(別の呼び名があるのかも)はうまい」らしいので、それを使ってもいいと思う。
今回は韓国風に煮干しだしを使いたいと思ったら、作り置きがなかったので、単純にちり鍋(水炊き)にする。
あらと身は食べやすい大きさに切る。
湯通しして冷水に落として表面の汚れ、ぬめりを流す。
水分をよくきり、昆布だし、酒・塩味で煮ながら食べる。
野菜などはお好みで。
ヒガンフグからは非常に豊かな味わいのだしが出る。
このだしで野菜や豆腐もおいしくなる。
身(筋肉)は適度に引き締まり、噛むほどに味が浮かんでくるのもいい。
今年最後の「鍋時季」の鍋で、これからは温い日バージョンの鍋になる。