広島のカンカンが来ていたので、カキのどじょう鍋風
ブリキ缶にマガキの剥き身、旧字の廣島
10月になってもやって来ないマガキの剥き身の入荷の遅さにやはり異常気象のせいかな? なんて思っていた。
市場で荷を見ているだけで、様々なことがわかるが、温暖化の足音が急激に大きくなったのもそのひとつだ。市場で見えてくるものは、温暖化が水産生物とか野菜に及ぼす影響だけではなく、人間が受けるダメージも見えてくる。
今年は本来9月の後半にくるはずのパックの剥き身が10月の後半に来て、10月になって入荷が始まるはずのカンカンが11月になってやってきた。八王子という非常にローカルな地域とはいえ、今年のマガキは遅すぎる。
関東の市場人はカンカンといえば広島、広島と言えばカキの剥き身が思い浮かぶ。
考えてみると四国の人間であるボクなどは日常的にカンカンという言語を使うが、関東では、あまり聞かない。漢字にすると缶々かもしれないが、単純に缶ではない。ジュースなどを入れるのは缶で、煎餅や乾物を入れる大きいのがカンカンである。ジュースの缶は投げてもカンと音を立てるだけだけど、大きな缶はかんからかんと大きな音を立てる。その音を表しているのだと考えている。この本来西日本の言語が、関東でマガキの剥き身と同義語となっているのだ。
カンカンの蓋を開けると、やけに小粒である。カンカンにも上中下があって、上の部類ではないのかも知れない。ただ小粒にも関わらず左程安くはない。
剥き身には、少量を海水入りのパックにしたもの、透明の円盤条のプラスティックケースに入ったもの、そしてカンカン入りがある。個人的にはカンカンに惹かれてしまう。懐かしい感じがするからだ。
八王子総合卸売協同組合、舵丸水産に来ていたのは『米田海産(広島県中央区江波の)』のもの。この会社のある江波は広島市の繁華街から遠からぬところにある。広島市のすごいところは大都市なのにマガキの産地でもあるところだ。
考えてみると広島県のマガキが大阪市内に送られて、大阪の冬の風物詩、「かき船」が生まれている。広島のカキの歴史はやたらに面白そうである。
カンカンからできるだけ大振りのものを選んでいたときには、すでにどのように食べるのか、決めていた。
鍋は小さければ小さいほどいい
やや濃い目の割り下で、どじょう鍋(小さくて丸く浅い鉄鍋)で煮ながら食べるというもので、カキと大量のネギだけの鍋である。
十数個しか買わないというケチな買い方をする。
店のクマゴロウがやな笑い方をする。
お隣の八王子総合卸売センター、八百角で悩みに悩んで白ねぎを買う。温暖化は葉物野菜にも悪影響を及ぼしており、いいネギが枯渇している。
食べる直前に大根おろしの中で剥き身をこれでもか、とかき混ぜる。大根おろしが黒ずんできたら、塩水に放り込んで大根おろしを落とす。
水を徹底的にきる。
ネギを大量に刻む。
割り下はみりん・少量の酒・少量の水・味見しながら醤油を加え、一煮立ちしたもの。
これを今回は内径12cmほどのステンレス小鍋で煮ながら食べる。
あるはずのどじょう鍋が見つからないし、浅い鉄鍋も行方不明だ。それもこれも自分のせいなので、ステンレスで我慢する。
鍋は小さければ小さいほどいい。
カキの剥き身は煮すぎてはいけない
ネギとカキ、どっちが主役か?
煮えるほどに山が低くなる。
この割り下で軽く煮たカキほどうまいものはない。
明らかにドジョウのための関東風の鍋をマガキに代えただけだけど、どこかしらドジョウとマガキの味は似ている。違和感なく、マガキにとってこれ以上ない鍋だと思えるほどうまい。
マガキの剥き身(マガキの軟体)は、マガキの剥き身よりも塩分とアミノ酸も含めたエキス分の濃い液体で煮た方がうまい。
これで五勺の燗酒をやる。