春は名残のイシダイの魚すき

冬がもどりて作るイシダイの魚すき


神奈川県小田原魚市場、二宮定置にイシダイをわけていただく。ありがとう!
イシダイは時季になると食べ頃サイズ、1.5kgから2㎏の同級生が大きな群れを作って定置網に入ってくる。イシダイは漁の盛期を迎える。
春はイシダイの食い頃、かつ旬なのである。
とまでは何度も述べている。3月半ばのイシダイ料理の続きだ。
さて、三月後半になっても寒暖差が激しく、寒さが温かさに勝る日々、あたりの桜は蕾を一層硬くしている。とても寒くて、深夜などエアコンをつけてしまうことすらある。
この寒さ故に作る鍋もそろそろ最後かなと思う頃となった。

鍋材料はあるものだけでやるから、いいのだ


イシダイを使った鍋、「魚すき」は、産地ならどこでもやっていそうである。
「魚のすき焼き」は、専門店の牛肉のすき焼きのように、ソテーするのと煮るの中間的なものではなく、純粋に煮て作るものである。
大阪は泉佐野でも大阪市内でも、兵庫県淡路島でも、島根県でも、高知県室戸でも、福岡など九州でも、甘辛い煮汁で煮ながら食べるという話を聞いているので、「魚のすき焼き」は全国的な料理だと思っている。
イシダイは死んでしまうと(野締め)は価値が極端に下がるので、漁師さんなどの家では格好のおかずになっているはずだ。本来はこの売れない魚で作るものだが、今回は小田原の飛びきりのイシダイで作ってみた。
イシダイ半身は腹骨をすき、背と腹に分けて血合い骨を取る。
これを湯通しする。
氷水に落として表面のぬめり、残った鱗を流し、水分をよくタオルなどでとる。
食べやすい大きさに切る。
野菜などは適当なものを冷蔵庫から発掘すべし。
我が家の冷蔵庫には春菊、わけぎ、にんじん、だけしかなかった。
でも、肝心要のコンニャクがあったではないか?
コンニャクは島根県石見地方大田で作られている「煮食い」に、なくてはならぬものだと言われたが、まさにその通りだと思っている。豆腐もいいけどコンニャクの方がもっといい。両方あるともっともっといいけど……。
割り下を作る。みりん・酒・醤油・水を合わせて一煮立ちする。砂糖を使うもよし。甘い方がご飯に合う。

イシダイの、鍋で部屋も身体も心も温かい


この割り下で材料を煮ながら食べる。
脂ののったイシダイは熱が通ると、ぐっと柔らかくババロアのようになる。
口の中に入れるとトロっとほぐれて甘いのである。
イシダイのすき焼きが日本各地で食べられているのは、端的にうまいからだ、ということがわかる。
ちなみに、関東でサンバソウと呼ばれている若魚で作ってもうまい。
イシダイと限らず、「魚のすき焼き」は、ぜひ家庭料理に取り入れていただきたいものである。
あまりのうまさに、新潟県十日町市、「松乃井 特別純米」を正二合も飲んでしまった。たぶん初のみだと思われる、この酒、ボク好みである。


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