2025年秋 高知旅日記8 宿毛の夜は、『酒と肴 直』

知らないと通り過ぎてしまう、町中の店だ


今夜の予定を聞かれて、結局、与力水産さんに市内の店に案内して頂くことになる。
有田専務が連れて行ってくれたのは、『酒と肴 直』という真新しい店であった。
中に入ると明るくて清潔、店の方も凄く親切である。

さりげなく技を見せてくれた最初の一皿


板前さんの名前が「直」らしい。
有田さんもまじえて、まずは生ビールをいただく。
出て来たのは「なすの煮浸し」であるが、だしのうま味が控えめなのがいい。
味つけも上々。
これだけで期待してしまう、のはボクだけではないと思う。

なんと10年振りのめじかの新子


次いで出て来たのは「めじかの新子」である。
マルソウダの1年魚で、久礼での新子漁に乗船して以来なので10年ぶりだ。
ぶしゅかん(モチユ)あってこその新子だが、食感が強く鮮度抜群なのは地元で仕入れたものだからだろう。
「めじかの新子」はやはりうまい!

赤、赤、白身で土佐らしい調和が取れている


比較的小振りの皿で出てくるのだが、適量なのがいい。
カツオ刺身・すまあぶり(ヒラソウダ)・オオモンハタの刺身が2切れずつ。
すべてこれ以上ない鮮度だが、すま(ヒラソウダ)が素晴らしい。
脂はほどほどだが、ヒラソウダのおいしさは脂にはあらず、というのが如実にわかる。

焼き物にも一工夫してあるのがいい


次の皿にはタチウオの塩焼きが乗っていた。
ていねいな仕事で酒の肴として骨を取っているのがうれしい。
酒飲みにはこんなところがよろしい、なー。
その上、大根おろしがなんだか面白い食感だと思ったら、鬼下ろしを使っている。

高知に来ると必ず食べる塩たたき


続いてはカツオの塩たたきだ。
厚みがちょうどよく塩かげんも絶妙だと思う。
土佐の荒々しさに、割烹の端正な部分を併せ持つ。
疲れが遠のく味である。

里芋は愛媛から、も食べると納得できる


さて、魚続きすぎだなと思ったら、里芋の天ぷらが来た。
素晴らしい里芋で、品種を聞いたら愛媛の「伊予美人(不確かです)」らしい。
ここで芋を持ってくるなんざ、憎いね、と立川談志をまねて、ぼうずコンニャクは申し上げます。

鶏肉もただの鶏肉ではないのだろうな


次にたぶん鶏手羽先だと思うが、こんがり炙ったような、揚げたもののような。
鶏肉もただの鶏肉ではない気がするが、うまいので何も考えずに皿の上から風とともに消し去る。

牛肉はまったく不案内だけど、土佐の赤牛かな?


鶏とくると牛とくる。
これも表面をあぶっているようだ。
久方ぶりに牛にうなる。
きっと銘柄牛なのだろう。

ほどよく繊細でほどよく鄙の、鄙は最後に来た


もういいだろう、と思ったら最後に豚汁が出て来た。
なんと、トン死しそうなくらいにすいすいと消えてなくなる。
ええ味ですし、いい仕舞い方です。

飲んだ酒は総て土佐の酒


飲んだ酒は数知れず。
土佐市、亀泉酒造の「純米吟醸原酒」。
中土佐町、西岡酒造店の「久礼」は土佐の一本釣り、だ。
佐川町、司牡丹酒造の「自由は土佐の山間より」。
社長さんには先日会ったが、面白い名のおいしい酒を造るんだな。
安田町、南酒造の「南 純米吟醸」。
ボクの徳島県宍喰での定番酒だ。
少しは遠慮しなはれと言われそうだが、遠慮できない味だった。
与力水産さん(■https://yorikisuisan.co.jp/)
にはお世話になりました。





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