島根県産メジを半身買い、まずは刺身

まるで真冬のような脂ののりであった


江戸時代、天保三年(1832)春に「まぐろ(クロマグロ)」の水揚げが多く、しわいやで狷介な滝沢馬琴も二尺ほどの半身八十文で買って食べている。
ちょうど今回の「めじ(めじか)」くらいの大きさで、江戸時代の春(2月から5月)なら刺身でも食べたはずである。
江戸時代、この天保時代に大量に揚がったサイズのクロマグロは決して安くはなかった。
安かったのは四尺以上の個体で、二尺サイズは本来は高級、なのに安かったので馬琴は手に入れたのだ。

さて、2025年の今も、「めじ」は決して安くはない。
1尾はとても買えないので、舵丸水産、クマゴロウにお願いして「半身でもいいかい」、「いいよ」ということでやっとこさ買った。
我ながら馬琴の気持ちがよくわかる。
「めじ」が島根県で揚がり始めたと言うことは、水温が下がった証拠だろう。
これから順調に揚がってほしいものである。

まだまだ走りなのに、今回の個体はとても脂が乗っていた。
この脂が舌をコーティングする。
ねっとりとして甘味があり、酸味は少ない。
大物なら中トロといった感じかも知れない。
たいそうおいしいので、久しぶりに刺身の大量食いをする。
こんなボクを馬琴はなんと言うのやら。
■参考文献/『馬琴の食卓 日本たべもの史譚』(鈴木晋一 平凡社新書)

見た目からして島根県のめじはいい感じである


八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に島根県大田市から「めじ(クロマグロの若い個体)」3㎏前後が来ていた。
このサイズは今年の4月以来だ。
毎年、11月くらいから「めじ」の入荷が多くなる。
20㎏以下が「めじ」だけれど、大きい方が高いので5㎏以下が買い頃である。

半身買いが普通のご時世となりにけり


昔、市場で3㎏サイズは原則1尾買いで、半身買いはできなかった。
半身でも売るようになったのは不況のせいだろう。
半身してもらっていたら料理屋、すし屋が脇からのぞき見。
いいのがわかってあっと言う間に片方も売れた。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。


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