ボクはアジじゃないかも? マルアジ

顔だけを見ているとマアジにそっくり


【学者にとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」とを知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】
ぜんぜん変な魚ではない。でも意外にやっかいな存在ではある。
本種は「あじ(マアジ)」にそっくりなのである。普通、「あじ」といえばマアジなのだけど、マルアジも「あじ」の内といえば、「あじ」の内で、あながち間違っているわけではない。
だいたい流通のプロや魚類に関心があれば一瞬で「あじ(マアジ)」ではないことがわかる。でも普通の人に区別が出来るとは思えない。普通の人も「あじ」はマアジだけじゃない、ことを知って置くといいだろう。
ときどき雑誌やテレビの写真で、「あじ(マアジ)」に化けていることがある。そんなときは「これはマルアジです」と教えてあげよう。スーパーで「あじ(マアジ)」に化けていることもあるので要注意。違いがわかると自慢できるという意味での「隣の珍魚」だ。
また魚類には非常に似たもの同士で、ちょっとだけ生息域が違っている。産卵期が異なるということもある。例えば「さば(マサバ)」とゴマサバ、ムロアジとクサヤモロなどである。
本種と「あじ(マアジ)」は生息域が重なっているが、本種の方がちょっとだけ南に生息域がずれている。そんなところも蘊蓄話の押さえどころだ。
本種は普通の食用魚だ。一般的な「あじ」であるマアジと比べるととれる量はすくないが、水揚げ量は魚の中では多いほうだろう。なのにスーパーなどに並ぶ確率は「あじ(マアジ)」の数十分の一程度でしかないのが不思議。もっと普通にスーパーなどに登場してもいいはず。このせいで消費地ではいざ探すと、手に入れるのが難しいという意味での「隣の珍魚」だ。
なぜスーパーで見つからないのだろう? 「あじ(マアジ)」と比べるとまずいとされているからだ。そんなに違いがあるわけではない、時季によってはとてもおいしいのに、とても安いのだ。この評価のせいで漁師さんは困ってもいる。

体に丸味があるので丸あじ


学名は基本的に2つの言語で出来ている。
本種の、Decapterus maruadsi の最初の Decapterus は属名といい、例えば所属するグループ名と思えばいい。たとえば学校だとクラス分けの1組の、とか。
maruadsi は種小名という特徴を表す言葉だが、名前だと思えばいい。例えば真理ちゃんとか、だ。
本種は19世紀に長崎に来て、この国の西欧化に多大な貢献をしたシーボルト(フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト)がオランダに持ち帰った標本のひとつだ。
長崎にいたシーボルトは標本を採取したとき、長崎でのこの魚の名前も採取した。maruadsi (まるあぢ) は図鑑などにのるときの名前、マルアジと同じなのだということを知っていても、とてもとても自慢できる。
マルアジは長崎県での名前だということがわかっただろう。実は本種はむしろ「青あじ」と呼ばれることが多い。標準和名=正式な名前ではない。できれば「青あじ」と呼ばれることがとても多いということもおぼえておくといい。
逸話(話題)がやたらに多い魚なので、「隣の珍魚」ともいえそうである。


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