5cm SL前後になる。貝殻は楕円形で丸く非常に薄い。ビロード上の殻皮をかぶっている。軟体の足は非常に大きく、貝殻に収まらない。蓋はない。
モスソガイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)




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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
軟体動物門腹足綱前鰓亜綱真腹足目エゾバイ科モスソガイ属(Volutharpa)外国名
学名
Volutharpa ampullacea perryi (Jay, 1856)漢字・学名由来
漢字 裳裾貝 Mosusogai
由来・語源 大きすぎる足(軟体)が着物の裾(裳裾)を引きずっている女性を思わせるため。もしくは裳裾に足の形が似ているため。『六百介品』(1804-1829)から。貝の名を貝殻ではなく軟体の足も含めてつけた珍しい例だ。
ペルリボラ 岩川友太郎は、「ペルリボラ」を提唱した。マシュー・ペリーひきいる黒船来航時(嘉永6年/1853)にアメリカ合衆国海軍東インド艦隊が持ち帰ってJ.Jayが記載したことを鑑みてのこと。perryi
Matthew Calbraith Perry(マシュー・ペリー 1794-1858)。黒船来航時(嘉永6年/1853)にアメリカ合衆国海軍東インド艦隊が、東京湾、函館湾から持ち帰った標本で記載。
岩川友太郎
安政1〜昭和8年 1855-1933、青森県生まれ。モースに師事して近代的な分類学を学ぶ。多くの標準和名をつけるなど貝類の世界での業績が目立つ。『生物学語彙〈ゴキブリは本来、御器かぶり(ごきかぶり)と言ったが本書のルビの振り間違いから「ごきぶり」になる〉』、『日本産蛤類目録』など。地方名・市場名
生息域
海水生。水深10メートル前後の砂泥地。
瀬戸内海以北、北海道まで。生態
体から大量にぬめりを出す。このぬめりが魚の鰓にまとわりついて呼吸困難にする。宮城県などの漁師は魚と一緒の水槽に入れてはいけないという。基本情報
瀬戸内海以北の浅場にいて生息域は広いが、主な産地は東北太平洋側や北海道である。東北地方・北海道でベロツブ、ナンコツブ、アワビツブと呼ばれ比較的安くて日常的な食用貝だ。
宮城県のアワビツブは生で食べるとほどよい食感があり、うま味豊かであるため。青森県では寒い時季になるとおでんの種となるので「おでんつぶ」などと呼ばれることもある。
産地では安くてクセがなく万人向きに味わいで、おでんなどの具材として人気がある。
珍魚度 珍しいものではないが消費地では一般的にほとんど流通しない。比較的東北地方に行くと手に入れやすい。水産基本情報
市場での評価/いちばんよく見かけるのは青森県。青森県では陸奥湾産が非常に高価。三陸産はあまり高価ではない。
関東では入荷量が少ないのもあり馴染みがないものの見た目が悪くないことからときにやや高値となる。
漁法/カゴ漁
産地/青森県、岩手県、宮城県、福島県選び方
原則的に生きているもの。身(足)に張りがあり、粘液などが出ていないもの。味わい
栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
モスソガイの料理・レシピ・作り方/生食(刺身)、煮る(塩ゆで、煮つけ、おでん)クリックで閉じます
モスソガイの刺身 宮城県で「あわびつぶ」と呼ばれるのは、刺身で食べてアワビに優るという意味合いがあるのだろう。食感のよさはアワビにひけを取るが身の甘味と貝らしい風味では決して負けていない。
表面のぬめりなどを洗い、貝殻を割り、内臓を取り去る。縦に切れ目を入れてボウルなどに入れてひたすらぬめりをもみ出す。仕上げに塩を加えて揉み、水洗いする。水分をよくきり、薄く切りつける。
仕上げの塩で適度に味がつく。醤油は不要で柑橘類だけで食べると非常に美味。
好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
おでんつぶ 1987年、青森の駅前市場が今のように整備される前。ほの暗い裸電球に殻つきのままに串刺しにされたものが、どの店にも必ず置かれていた。青森県ではゆでたものを串に刺し、おでん用に売っている。市場のおばさんが言うには「おでんに入れるので“おでんつぶ”だという。
ぺるりつぶ 黒船騒動のペリー提督が採取して持ち帰り、種を登録したので別名「ぺるりつぶ(ペルリツブ)」ともいう。マシュー・ペリー(Matthew Calbraith Perry)の来航は1853、1854年(嘉永6年、7年)の2度。参考文献・協力
『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『日本及び周辺地域産軟体動物総目録』(肥後俊一、後藤芳央 エル貝類出版局)