コラム検索

検索条件
カテゴリ:
シリーズ:
関連する水産物等:
表示順:

該当するコラムが多い為ページを分割して表示します。
全1804コラム中 101番目~200番目までを表示中

コラム

高知県白木果樹園の柑橘類図鑑1 ベルガモット

高知県土佐市、白木果樹園からいろんな種類の柑橘類を送ってもらった。現在整理中だけど、非常に難航している。とりあえず、1種ずつ紹介していきたい。ベルガモットという言葉は知っていたが、それが何か?まったく知らなかった。あえて言えば、食べ物なのか? すら知らなかったと言っていい。主産地はイタリアという柑橘類で、鼻をすりつけただけでいい香りがするなんて、ことも。果汁と果皮の香りは、間違いなく柑橘類なのだけど、全体的に、冬の湿った枯れ葉が敷き詰められている森を思わせる。ボクの表現能力を超えている存在なのだけど、果汁には微かに苦みがあり、後味は苦み以上に僅かばかりの甘味がある。イソフエフキの刺身にかけたけど、ベルガモット自体の存在感が強く、わずかな苦みが邪魔な気がする。魚よりもそのまま切り口をなめたくなる。
コラム

高知県のさかな4 大月町道の駅で見つけたアカアジ

久しぶりに食べる、アカアジの塩焼きが滅法うまい。アカアジは水揚げ量がごく少なく、手に入れた個体数が少ないので、旬がよくわかっていない。このような種は地道に多固体食べて行くしかない。9月27日、高知県大月町道の駅で買ったアカアジは脂がのっていた。焼き始めると内側から脂が染み出してきて泡となる。焼きたてを食べると、強いうま味があり、身質がいいので口の中でのほぐれ感も上々である。これほどアカアジの塩焼きがうまいとは思わなかった。合わせた酢みかんは高知県産青柚子。
コラム

2025年9月 高知県の食材1 県全域で飲まれている、きし豆茶

カワラケツメイは、本州、四国、九州などの川原などに生えているマメ科の植物である。これを炒って飲む地域は国内に点々と散らばっているようだ。高知県は島根県とともに広い地域でカワラケツメイのお茶を飲んでいる。高知県で「きし豆茶」という。カワラケツメイが川原など、川岸に生えているために「岸豆」だ。これが和歌山県では「弘法茶」、岐阜県の一部では「びん茶」、島根県では「浜茶」という。カワラケツメイは便秘、利尿作用、むくみを取る薬効があるとされている。ただ島根県津和野などでは「茶は贅沢だから浜茶」を飲むとされている。ちなみに高知県の「土佐番茶」は、若芽だけではなく、枝ごと大雑把に切り取りお茶に、したいわゆる一般的な晩茶も言うが、この晩茶を焙じて「きし豆」を加えたものが普通だという。
コラム

高知県のさかな3 大月町木村定置のカマスはタイワンカマスだった

高知県宿毛市田ノ浦、すくも湾(漁協) 中央市場で、木村定置 株式会社木村水産 幡多郡大月町安満地松島)の水揚げを見ていた。明らかにアカカマスでもヤマトカマスでもない。なんだろうな? と思ったら木村さん(?)が1本分けてくれた。体長41cm・457g なのでカマスとして大きめである。帰宅して同定してタイワンカマスと判明する。やはりカマスは直感的に同定するのは難しい。大急ぎで三枚に下ろして、軽く振り塩をする。少し寝かせて皮目をあぶる。冷水に落として水分を切り、少し冷蔵庫で皮目を落ち着かせる。やはりカマス類は皮に味がある。独特の香りがあり、これが実にいい。これだけでも魚としては上等である。脇に添えたのは高知県土佐市、白木果樹園の青い小夏。香りはほどほどながら、ほんのり甘味のある優しい味である。
コラム

高知県のさかな2 まさかまさかのヒュウガカサゴ

高知県宿毛市、すくも湾(漁協) 中央市場で与力水産さんが競り落とした魚を見ていたら、気になるオニカサゴ属(フサカサゴ科)を発見した。明らかにオニカサゴではないが、持ち帰らないと同定できない。お願いして分けてもらった。驚くなかれ、我がデータベース2個体目のヒュウガカサゴであった。1個体目に出来なかった詳細撮影をして、食べてみた。
コラム

2025年秋、新潟旅日記11 新潟市竹野町、こまどりの味噌ラーメン

9月1日、早朝から鈴木重雄さんの刺し網漁に乗船させていただき、新川の猛者達と海岸線で生き物を探した。これにて詰め込みすぎの4日間がやっと終わった。途端に、異常に腹が減っていることに気がつく。午前中でもろもろが終わったので、越後新川の仲間達に教わった、超オススメの『味の八珍亭』を目指す。ちなみに二番手におすすめなのは『こまどり』だった。先行く車が右折したら、そこが『味の八珍亭』だったものの、なんと定休日だった。疲れと腹ヘリで体がふやけてきた。仕方なく、もうひと踏ん張り、もう一軒の『こまどり』へ。店は実に地味だが、駐車場はやたらに広い。しかも空きがない。困っていたらクラクションが鳴って、ここよ、ここよ、と知らない人が空いたばかりの空間を教えてくれた。駐車場の混み具合をみて、「混んでいそうなのでやめます」と言ったら、「待つかも知れませんが、きっとすぐ入れますよ」と教えてくれる。これから新しい店を探す気にもなれず。熱暑の、店前の空間で待つ。確かにたいして待つこともなく、店に入れたと思ったら、こんどは店内が非常に広いのに驚かされる。昼酒をしている人もいるけど、ほとんどが麺類を食べている。やって来た店員さんに言われた通りに味噌ラーメンにする。これが、信じられないくらいに腹ヘリだったためか、ウルトラ級においしい。スープの塩気で、ふやけた体がしゃきっとして、丼に残ったスープ一滴も残さず平らげた。とすると、噂の『味の八珍亭』はどれほどうまいんだろう?
コラム

高知県のさかな1 欠点のない、 おいし過ぎるクロヒラアジ

高知県幡多郡古満目、宿毛からいろんな魚を持ち帰ってきた。まずはクロヒラアジである。クロヒラアジは間違いなく増えている。温かい海域ではまとまって揚がることもあり、普通に食用とされている。ちなみにボクのもっとも好きな魚のひとつである。大月町古満目定置から分けていただいてきた。迷うことなく刺身にして食べた。水揚げの翌日はあまり味がいいとは言い難かった。むしろ焼霜造りにして正解であった。皮付きのまま氷水に落とし、水分を切って刺身状に切る。これまた高知県から持ち帰った「ぶっしゅかん(モチユ)」の皮を散らし、果汁を搾り、醤油をかけ回して食べた。こまったことに酒が欲しくなる。逢魔が時、少し早めだけど「ほろよいカップ 司牡丹」を飲む。
コラム

2025年秋、新潟旅日記10 新潟市西堀通、 ドスビーバーのおいしすぎるハンバーグ

居酒屋で半分討ち死にをし、ホテルまで戻ろうとしたとき見つけたのがステーキの店だった。まさかステーキはないだろう、と思ったらハンバーグがあった。『ドスビーバー』という店で、家族ずれが出て来たのを見て店内に入る。外観通り狭い店だけど、匂いからして正解だと思った。
コラム

2025年秋、新潟旅日記09 新潟市古町居酒屋探し

8月30日、ホテルにたどりついたら体がゆらゆらする。それでももったいない気がして外出する。非常に空腹なのは午前2時から動いているためで、腹にかなり詰め込んでも、詰め込んでも腹が減るのは、情報処理をしながら動いているからだ。ボクの頭部には大量のソケットが生えていて繋がるソケットを探している。歩きながら情報を整理して繋がるソケットを探す、と、とても疲れるし、腹が減るのだ。さて、古町を目指す。居酒屋的な、がさつだけどがさつすぎない店が好きなので、探し歩くが、歩くのが辛くなってきた。そのとき見つけた静かそうな居酒屋に入る。入ってすぐ、だめだ、と思ったけど、もう遅い。仕方ないのでビール、日本酒に刺身などをお願いする。刺身は地物のようだしぎりぎり合格点ではあるが、たぶんこの板前さん、プロではない。しかも注文して出てくるなどのタイミングが悪い。
コラム

2025年秋、新潟旅日記08 新潟市本町通6番町、古川鮮魚の昼ご飯

『古川鮮魚』、8月30日の昼の定食は、やたらに盛りだくさんであった。お客さんで立て込んでいた中、先ず出て来たものは新潟名産とも言えそうな茶豆だ。新潟県で食べる枝豆はいつ食べても最上級の味がする。アジの南蛮漬け(?)に「ばい(ツバイ)」の小鉢もいい。ツバイは日本海特産の小型のエゾバイ科の巻き貝で、煮る巻き貝の中でも味は最上級といえるものだ。古川鮮魚の大女将が煮ているのだろうが、煮加減もいい。
コラム

小型のハガツオは塩焼きがいちばんだった

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に下関市赤間町『下関勇次水産』から45cm・1.4kg のハガツオが来ていた。小振りだし、週明けなので鮮度は抜群とは言い難い。ただし触った感じがいいのである。以上は前にも述べた。1本全部余すところなく食べたが、今回だけは塩焼きがいちばんだった。三枚に下ろして切り身にして、切身3切れだけ振り塩をし、そのまま寝かす。水分が出て来たら袋に入れて密閉して3度に分けて食べた。づけ、塩焼き、みりん干し、煮つけ、ポシェ、フライにして、塩焼きがいちばんおいしかった。この場合のいちばんは今回限りのことで、ボクのいちばんはコロコロ替わる。ときどき食のエッセイなどで、普遍的な意味で、こうすべきだとか、この食べ方がいちばん、だとか、何々はこれに限る、とか書いているのを見るが、愚かしいとしかいいようがない。言語能力が低いのだと思う。一人で歩き出たばかりの幼稚園生のようだし、食べ物の本質がわかっていない。食は緩みのないハンドルのようではなく、ハンドルのない乗り物のようだ。好みも、味の評価も日日時々に変化する。ということで今回だけは塩焼きが滅法うまかった。ということで次回は違うかも知れない。こんな不安定さが食べ物のいいところなのだ。小振りだったし、それほど脂がのっていたわけでもないのに、焼いた香りに脳みそを直に触られるような快楽を感じた。皮にも豊かな味があり、身にも名状しがたい味があった。切り身の大方をみりん干しにしてしまったことを後悔した。ご飯の友と、お茶の友として、買った日の昼に、あっと言う間の3切れでした、という制御不能の自分を大いに反省した。今回だけは、ハガツオは塩焼きに限る。
コラム

2025年秋、新潟旅日記07 新潟市本町市場・本町下市場

2025年8月30日、午前2時に新潟市漁協の競り場・中央卸売市場を回り、8時過ぎにホテルにもどりメモを整理する。9時過ぎに本町を目指す。1980年前後に新潟市の本町通を歩いている。目的は朝市だった。新潟市の朝市は本町(本町通とその周辺)と白山が有名で観光名所でもあった。並んでいるものが多彩で、新潟を感じられるものだらけだった。何時間でもいて飽きないところだった。ただ、今、昔のにぎやかさはない。本町には浜焼きの店があり、農産物を売る露店も多かった。それが今や見る影もない。新潟市の新潟市らしさは朝市にあり、だと思うのだけど、これでは消滅してしまう。唯一の救いは、未だに元気のいい魚屋が何軒もあって繁盛していることかも。写真は本町下市場。
コラム

新潟市中央卸売市場『水産食堂』の定食

新潟市には地物の市場と中央市場がある。中央市場には食堂や麺類の店がある。基本的に市場で働く人が行かない、観光客相手の食堂、新しいタイプのラーメンの店には立ち入らないので、『水産食堂』一択となる。ここは素っ気ない造りだが、意外に味がいい。しかも市場人が食べている、市場人のための食堂であるのがいい。迷わず、定食をお願いする。AとBあったけど、どっちだった忘れた。トンカツにみそ汁という普通の取り合わせながら、やはりここは安定していておいしい。次もここしかないと思いけり。
コラム

山形県産バイを塩ゆでにする

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に連続してバイが来ている。活けの貝は産地不明であることが多い。産地を聞いてくれるなら買ってもいいけどな、というと問い合わせてくれて山形県産だということがわかる。これを産地でもある新潟県新潟市、新川漁港で聞いたやり方で、塩ゆでにしてみた。ザルなどに入れて流水で貝を洗う。水分を切り、鍋に塩水を入れた中に入れて火をつける。沸騰してきたら2、3分煮て火をとめる。そのまま鍋止めをして冷ます。5分、10分煮たものとは似ても似つかない味になった。醤油など発酵調味料を使っていないので、バイの味が直に感じられる。そして足の部分がしこっとしているのである。しかも足の甘味は、よく煮たもの以上にある。あまり煮ていないのにワタには火が通り、濃厚でいながら後味がいい。数え切れないほど食べているバイの本当の味に行き着いた気がする。バイは酒の肴でもあるがおやつでもある。文字の世界に疲れたら2個、3個食べて休む。その内、皿の中は空になる。
加工品

ときどき無性に食べたくなる、ウルメの丸干し

産みの苦しみの中、それでも外出せざる終えなくて駅前に出た。帰りにスーパーによって「ウルメのほお刺し」を買って帰ってくる。お昼ご飯に焼いたら、はずれだった。干しがあまく、好ましい風味に欠ける。丸干しはときどき無性に食べたくなるが、めったに当たりに出合えない。ここ数ヶ月での当たりは群馬県高崎魚市場『魚栄』で買った、やせっぽちの「うるめいわし」(小川商店 佐伯市米水津色利浦1533)だった。ウルメイワシは大きくても痩せていても、いいものはよく、ダメなものはダメで、『小川商店』のは痩せっているのに滅法うまかった。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑12 マハゼ

最初に漁港で遊ぶときは救命胴衣を着用してほしい。漁港内で落ちたらまず助からない。子供用など2000円以下のものもある。ついでにいうと私事ではあるが、ゴミ拾いセットを持っていく。最小限でもいいのでゴミを拾ってくる。釣りにはマナーが大切なのである。
コラム

小型のハガツオでいろいろ。まず茶漬け

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に下関市赤間町『下関勇次水産』から45cm・1.4kg のハガツオが来ていた。小振りだし、週明けなので鮮度は抜群とは言い難い。ただし触った感じがいいのである。帰宅して下ろしたらぎりぎり生でいけるといったもの。三枚に下ろし、切身にし、いろんな料理を作るために下処理をする。残った身を細かく切りつける。これを醤油・少量のみりん・しょうが、胡麻で漬けにする。
コラム

2025年秋、新潟旅日記06 ホテル飯を食べながら意識がなくなる

7時前に新潟市内のホテルにチェックイン。ぼろ切れのようだったので湯船につかる。つかりながら眠気の大波に襲われる。それにしても面白いと夢中になるのは、年を取っても同じである。お昼にカツ丼を食べたのに、夕方、お腹と背中がくっつきそうだったのは、走行距離500キロ以上、午前0時に出発してから面白すぎて興奮に次ぐ興奮、そしてテキスト化までして、街歩きまでしたせいだ。腹の虫をなだめるために、新潟県新潟市西区内野町、スーパー『ichiman』で買った「ふなべたの刺身(タマガンゾウビラメの刺身)」、「身欠きニシン煮」、「鶏の唐揚げ」と、『ブーランジェ・ヨネヤマ』のパンでビール。救いはスーパー『ichiman』の惣菜の味と、これまた『ブーランジェ・ヨネヤマ』のパンの味だ。惣菜の味つけがいいし、パンにも味がある。惣菜とパンを食べながら、内野町ってまだまだ生きている町なのだ、と思う。新川漁港の活性化を目指しているが、町を取り残しての活性化はないと思っている。漁業と商業を一つと考えないと真の意味での地域おこしはできない。心の中にまだざわざわ感が残っていたので、いつもバッグに放り込んでいる菊水の白缶を飲んでしまう。6時半過ぎまでは意識があったはず。
コラム

宮本輝「泥の河」。 食堂ではなくうどん屋と呼ぶのは大阪の文化かも

ボクの生まれた徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)には、何軒もの「食堂」があった。小学生だったボクが歩いて行ける範囲にも4軒あったのではないか?家族だけではなく町内の人で、「食堂」という人はほとんどいなかった、もっぱら「うどん屋」である。例えば「飯田食堂(写真の)」という名があっても、「飯田のうどん屋」だった。同級生の「食堂」の子供は「うどん屋の子」と呼ばれていが、これはボクが「からっちゃ(唐津屋)の子」と呼ばれてたのと同じだ。この「食堂」を「うどん屋」というのは大阪も同じだったようだ。宮本輝が1977年デビュー作「泥の河」で太宰治賞を受賞し、1978年「螢川」で芥川賞を受賞する。単行本『螢川・泥の河』が出たのは1978年で、東京都千代田区神保町、東京堂書店に積まれていたのを、すぐに手に入れた。当時は大阪というところが今以上にわからなかった。「泥の河」の舞台は淀川が毛馬水門から枝分かれして南流する。大川と名を変えるが、実はこちらの方が本来の淀川である。流れは堂島にぶつかり一度分かれる。北を流れるのが堂島川、南が土佐堀川だ。その両川が再び1つになり、安治川になる。このひとつになるところの南岸が「泥の河」の舞台である。ここは大阪に行くたびに寄る野田の大阪中央市場の南であり、過去に大阪中央市場から船津橋をタクシーで渡って、この舞台の近く、 江之子島の雑喉場魚市場跡碑まで行ったことがあるが、コンクリートだらけで灰色の世界がまさか「泥の河」の舞台だとは思わなかった。主人公、信雄が自分の家、「やなぎ食堂」を指差して、「僕の家、そこのうどん屋や」と言うのである。きんつばを焼き、うどんもあるし酒のつまみもある、多様であることが「食堂」の定義だとされているが、これは東京だけの話だ。大阪では今でも、中華そばがあってもオムライスがあっても、「食堂」ではなく「うどん屋」なのかも。「泥の河」で重要な、土佐堀川にかかる端建蔵橋(はたてくらばし)のたもとに行ってみたい気がしてきた。ただし、端建蔵橋は工事中らしい。
コラム

新潟市、越後新川、新川漁港で魚貝類を買える、よ

新潟県西区五十嵐新川漁港では朝、水揚げと同時に魚貝類が買える。まだシステムとして成り立っていないが、新川漁港周辺では評判となっている。国内各地で同様のことが行われているが、漁船から直接買うので鮮度はこれ以上望めないし、しかも安い。午前7時から8時過ぎくらいまで、新川漁港で船が帰ってくるのを待っている人たちがいるが、問題は時間と場所がまちまちであること。これを解決すれば、新川漁港最大の魅力となるだろう。
コラム

2025年秋、新潟旅日記05 新潟市内野町へ

2025年秋、新潟旅日記05 新潟市内野町へ昼過ぎ上越市を後にして、新潟市西区内野町に向かう。内野町に入って気がついた。1980年前後、おんぼろシビックで日本各地を走っていた頃、不幸に不幸が重なってたどり着いたのが内野駅だ。海岸線を、車を走らせていて砂浜にエゴノリ取りの人たちに会って話をしている内に、大間違いをやらかせていることに気がついた。地図を見て道を左折、にぎやかな街に入って、とそれが内野町だったことになる。にぎやかだった記憶しかないが、今や人影まばらとなっている。くるりと街を回って、『やしち酒店』で内野町の酒を買う。この店、酒屋らしく清潔で無駄な飾りがないのがいい。酒の扱いもていねいと見た。内野町には4軒酒蔵があったが、能登半島地震で2軒が廃業を余儀なくされている。新潟県でも新潟市周辺の街は潟(沼や湖)の上に出来ている。地震によわい地域なのである。ここで樋木酒造の鶴友、塩川酒造の越の関を買う。その土地に行ったらその土地の酒を買うのが、ボク流なのである。この2つの酒蔵の酒はともにボク好みでもあった。
料理法・レシピ

バライカで久しぶりに煮イカ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で東京都八王子市元八王子の鮨忠さん(鮨忠元八支店。念のため支店ではない)に会った。立ち話をしていたら煮イカが作りたくなる。「煮イカ」は八王子を中心に無数に散らばっていたすし屋、『鮨忠』の名物でもある。水と砂糖と醤油だけで煮るもので、味は素朴なものである。コツはつきっきりで煮ることかも。「煮イカ」は誰でも作れるけど、職人が作るものと、素人が作るものではどこかしら違う。八王子市横川町の鮨忠さんは「一度にたくさん煮るからうまい」と言っていたが、確かにそんなものかも。ただし、一般家庭で少ない量を煮ても結構うまいと思う。甘いのが勝った味で、スルメイカ本来の味を生かすなんて、まったく考えないで作る。ただスルメイカは濃厚な味つけにすると、余計にスルメイカの味が強くなる。なんだろうな? この蒸したサツマイモのような香りというか風味。これがないとスルメイカらしいとは感じられない風味。煮つけた時間が短く、煮汁は鍋止めしてから染みているので柔らかいのもいい。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑11 コタマガイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っている。新川漁協やその周辺には自然にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者と一緒に波打ち際で見つけた生物の6番目はコタマガイである。
コラム

2025年秋、新潟旅日記04 上越高田、 『食堂なかしま』のかつ丼

新潟県上越市公文書センターで古文書をコピーさせてもらう。センターに向かう道すがら左右に広がる田を見て、悲しくなる。それにしても上越市の田の状況は異常だと思う。高田城市公園にもどりしばしテキストを打つ。散歩中のご夫婦に一番近い食堂の名前を聞いて向かう。教わった『食堂なかしま』という店は見た目からして真新しい。少々不安に感じたが、中はいたって普通の食堂だった。お腹と背中がくっついた末の、朝昼兼用なので、かつ丼と冷や奴にする。客の前に必ずあったのを見て取った冷や奴は、びっくりするほど安かった。それにしても腹の中が空っぽになると、ついついかつ丼とは、我ながら平凡な男よな、……。
コラム

東京湾観音崎沖300gのマアジ刺身

考えてみると久方ぶりのマアジの刺身だ。釣ってすぐに首を折ってあるので、身はまだ堅堅である。脂はさほど乗っていないが、食感がこの上なくいい。しょうが醤油で食べて、おお、うまいじゃないかと思い、今度はへべす(宮崎県日向市の酢みかん)をじゃばじゃばかけて食べる。酢みかんと醤油まみれのマアジの刺身を、ご飯のせるうれしさよ、真夏日よ。なんて感じである。ものすごく酢みかんを欲するのは、暑いせいでもある。それにしても横須賀沖のマアジはいつ食べても、うまいねー。
コラム

202年秋、新潟旅日記03 高橋孫左衛門の笹飴

2025年8月29日、10時前に上越市南本町の『高橋孫左衛門商店』に立ち寄る。少しだけ歩いてみたかった南本町だが、時間がなかったので笹飴だけを買った。『高橋孫左衛門商店』は1624年創業という。となると徳川三代将軍家光の時代で、貨幣経済はまだ不完全な時代である。また、十返舎一九(明和2年〜天保2年/1765-1831)も立ち寄ったことがあるという。東海道中膝栗毛が売れに売れた後、生活のためもあって、死ぬまで道中記を書いていた。その一九が『越後紀行集』を書くにあたって立ち寄っていたらしい。そしていちばん有名なのは、夏目漱石の『坊ちゃん』(明治39/1906)に出てくる越後の笹飴である。小説の筋とは無関係に唐突に下女の清の好物として越後の笹飴が登場し、笹ごと飴を食べる清の姿が坊ちゃんの夢に出る。
コラム

煮ざかなの煮汁でおしぶとなすをたく

水産物に通じているとは、水産物を日々に生かせているということだ。ボクなどまだまだ修業が足りないが、日々水産物を生かすことに精進している。新潟県に行ったら、必ず買うのが麩だ。車麩は必ず買い、ときに新発田麩、そして「おしぶ」なども買う。今回買ってきたのは「おしぶ」だ。半分に切るとそのまま汁の実などになり、丸のまま使うときには10分くらい水につけると戻る。今回は我が家の魚の煮汁ストックで「おしぶ」となすをたく。いろどりが地味で、茶色で、華のない料理だけど、まあボクの脳みその大方に染みついている、おいしいの色が茶色では、こうなるのが当たり前だ。スルメイカ、コウイカ、カサゴ類など魚類他種、煮ハマなどの味が凝縮された煮汁で単純にたいただけ。魚貝類の味で煮染まった「おしぶ」くらいうまいものはない。このおいしさは豆腐にもなく、野菜にもない。麩にしかない麩のおいしさで、麩を知らなかった40年くらい前のボクはおいしいをひとつ知らなかったことになる。これがやけにご飯に合うし、ビールにも合う。ビタミンが足りない気がするけど、ボクにとっての完全無欠の味である。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑10 やけにキラキラしているヒイラギさん

最初に、漁港で遊ぶときは救命胴衣を着用してほしい。漁港内で落ちたらまず助からない。子供用など2000円以下のものもある。浮かんでいるだけで助かる可能性が高い。さて新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っているが、漁港内にもいろんな魚がいるのである。ヒイラギは隣で釣っていた高校生がダブルで揚げていたので、魚影が濃いのかも知れない。潮時と関係なく釣れるのもありがたい。浅場にいるので、防波堤釣り(波止釣り)をしていると結構釣れる魚ではあるが、マアジなどとは違い持ち帰らない人が多い。棘があるしヌメリがあるけれど、マアジよりもおいしいんだよ、と言いたい。島根県中海周辺では高級魚だし、高知県でも好んで食べる。持って帰ってねといいたい。しかもしかもこの魚、シイカシイカっと光るのである。食道にいる発光細菌の光りなのでそんなに強い光ではない。でもこのかそけき光が幻想的なのだ。浅場で見ていると、惹かれて魅了される。ついでにこの魚かなり愚痴っぽい。ぐちぐちは言わないけど、ギギギーと鳴く。そーっと観察して御覧、なのだ。
コラム

2025年秋、新潟旅日記02 上越市高田朝市

2025年8月29日、8時半過ぎに上越市高田の朝市に向かう。上越市は高田の朝市が3,4、7、9のつく日、直江津が3、8のつく日にある。新潟県の魅力のひとつが県内各地に散らばる朝市である。ボクなど朝市が好きで新潟に行く。ところが年々、新潟の朝市が寂しくなるが上越市もその例に漏れない。専業農家が少なくなり、兼業農家ばかりになり、現金収入があるために市に来なくなったのかも。主役となる農家の出店が消えている。しかも名物、「どらやき」がない。
コラム

連続入荷のトビウオでみそたたき

トビウオの季節は、三日にあげず皮付きの「たたきなます」を作り、「みそたたき(なめろう)」を作る。「みそたたき(なめろう)」は何十回作っても、たぶん何千回作っても飽きが来ないだろう。よく作るので、体調のバロメーターにもなる。最近、やけにみそ多めなのである。極端に長時間のディスクワークで汗をかくわけでもないのに、みその塩気が欲しい。今回は胸鰭を切り取り、腹鰭を抜いて三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、皮付きのまま細かく切る。大葉、みょうが、ねぎ、玉ねぎ、しょうが、にんにく、三重県尾鷲市の青く辛い唐辛子など多種類少しずつ刻む。この日は長崎県長崎市、『チョーコー』の長崎みそをたっぷり加えて、たたく。塩分取り過ぎで身体に悪そうなのに、爽快感を覚える。トビウオは強い味つけ、香りのある野菜と一緒でも、背の青い魚特有のうまみがあるので、塩気よりも魚のうま味が勝つ。合わせたのは冷蔵庫の隅に残っていたホッピーだけど、「みそたたき(なめろう)」には、このような下町居酒屋的なものが会う。
コラム

新潟県で伊勢ひじき、が新潟らしき

新潟県でよく見かけるのが「伊勢ひじき」である。赤い縁取りをした紙のパッケージに入っていて、昔ながらの文様が描かれている。山陰以北の日本海ではヒジキがとれないので、新潟県では古くより伊勢(三重県伊勢地方)からヒジキを取り寄せて流通させていたのかな? などと思ったりする。今回、「伊勢ひじき」を買った新潟県西区内野町『ichiman』は、新潟市の地スーパーといったところで、新潟を感じさせるものがたくさん売られていた。「伊勢ひじき」、『角平商会』(三重県多気郡明和町大淀乙655)は三重県伊勢地方のものだけど新潟らしいと感じて買ってしまう、ものでもあるのだ。
コラム

高崎市総合地方卸売市場『市場食堂』、生姜焼定食

旅の準備に追われている最中ですが、連休最後の日なのでしばし、おいしい話をば。高崎市総合地方卸売市場に行くと、『市場食堂』で必ず朝ご飯を食べる。普通の食堂であることがうれしいし、海鮮丼的なものがないのもいい。築地でも、移転後の豊洲でもそうだが、市場人というものは意外に魚飯を食べない。簡単な定食とか、牛丼などがいいのである。高崎市総合地方卸売市場、『市場食堂』は、今どき少なくなりすぎの市場人のための市場の食堂である。ここでもっぱら食べるのは「もつ煮込み定食」である。なんだかんだで群馬と言えばもつ煮込みとなる。
コラム

9月9日、もう「新」じゃない、コウイカ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産の店頭に、もうとても「新」のつかないコウイカが愛知県三河湾から来ていた。これを見た途端、今年は新イカを食べないで終わるのだな、と思った。別に新イカが好きなわけではないが、季節を感じられるものなので、一度くらいは食べて置きたかった。仕方がないので、外套長9cm前後を3ばい買って帰ってきた。帰宅するや間髪入れずに下処理をする。外套膜をていねいにペーパータオルにくるんで深夜を待つ。一日を3つに分けているので、ボクの深夜は丑三つ時である。湯に1秒弱くぐらせ、氷水に取り、水分をきって切りつけただけだ。まだまだコウイカらしい味がないものの、考えてみると5月の漁の最盛期以来食べていない。印象に残らない平凡な味ながら、嫌みもない。ゆっくり味わって食べないと、イカらしい味にも乏しい。まあこれはこれで、9月のコウイカの味として記憶に止めておこう。酒は新潟市西区内野町、「鶴の友 上白」が、やけにうまい、カネタタキの啼かない深夜なのであった。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑9 シマイサキの赤ちゃん

最初に漁港で遊ぶときは救命胴衣を着用してほしい。漁港内で落ちたらまず助からない。子供用など2000円以下のものもある。さて新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っている。新川漁港の漁港内は釣り初心者には一日遊べるところだし、横を流れる新川側などでは上級者にとっても大物が狙える場所である。また漁港内にもいろんな魚、ホヤ類、甲殻類などがいる。網ですくうといろんな生き物がとれる。
コラム

シマアジフライよりもクサヤモロフライの方がいい

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが銭州に行ったようで、ムロアジ属が小山になっている。ほぼクサヤモロかな、と思いながらも同定のために小振りのものを連れ帰ったら、全部クサヤモロだった。銭州では大物釣りのエサとなるので、クサヤモロはクサヤモロとは呼ばれず、エサと呼ばれている。ただ料理法によっては大物釣りの主役である「もろこ(クエやマハタかな)」やカンパチ、シマアジよりもうまい。特にフライにするとシマアジなどは目じゃないね、と言いたい。体長23cm・145g前後を三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。水分をよく拭き取って塩コショウする。小麦粉をまぶし。溶き卵にくぐらせ、パン粉をつけて揚げる。後は食べるだけだ。
コラム

てんやわんや コクテンアオハタの話

魚類学的愚痴というものをば。てんやわんややっさもっさで、昨日が土曜日で今日が日曜日で、明日が祝日だということを忘れていた。上越市から持ち帰った古文書の準備をしているし、旅があるし、事務処理もある。そんなとき、鹿児島県鹿児島市の久保和博さんから画像が送られてきた。赤いハタで同定不能だった。遠藤広光さんまでわずらわして、コクテンアオハタというところまでたどりつく。ただ、『日本産魚類大図鑑』(益田一、荒賀忠一、尼岡邦夫、上野輝弥彌、吉野哲夫 東海大学出版会 1984)とは似ても似つかない。「アオハタ」なのに赤い。蒲原稔治の1957年は遠い遠い昔なんだなと思う。そんなこんなで忙しい最中に忙しいが重なる。やはり標準和名というのは難しい。本種、ヤハズアオハタ、アオハタモドキ、スミツキアオハタに関しては標準和名の再検討を要すとは素人的な考えなのだろう。遠藤広光さんに感謝します。非常に貴重な魚を見つけてくれた久保和博さんにも感謝!
コラム

2025年秋、新潟旅日記01 上越市高田城址公園にて

2025年8月29日、早朝5時から上越市、一印上越魚市場で、挨拶もしないまま並んでいる水産生物を調べる。徹底的に産地と水産生物を撮影、気になるものは後々テキスト化できるようにメモを取る。横道世之介、ときどき視察という名目で背広組が市場を見学しているのに出くわすことがあるけれど、100%税金の無駄である。メモも取っているわけでもないし、何も見ていない。差別用語が含まれるが群盲象を評す以上に意味がない。市場で物事が見られるようになるためには熟練を要す。背広組の市場視察は背広組だけでは無理、やめなさいといいたい。背広組と違ってボクの市場は超過酷、かつ重労働なのだ。競りが終わったあと高田城址公園で暫しまどろむ、というか意識をなくす。目覚ましがなって堀まで歩いたら、曇り空の下そこは極楽浄土だった。夜を徹しての新潟行なので疲れはとれないが、極楽へのエレベ−ターに乗った気分になる。
コラム

羅臼の「きんき」は素直に煮つけに

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で「きんき(キチジ)」の荷を前にしてすし屋が、左の網走、右の羅臼と交互に見て立ち尽くしている。北海道網走は近年人気が高いので、値段は非常に高い。右の羅臼も負けず劣らず高いけど網走ほどではない。煮つけにするならサイズ的には小振りな網走で、羅臼は大きすぎる。横に並んで右左を見て、つられ買いする。1尾でいいので羅臼産のいちばん小さい22cm・306gを、量りに乗せて値段を聞いてから買う。さすがに「きんき(キチジ)」をキヨミズガイはできない。帰宅して、すぐに煮つけにする。水洗いして湯通しして冷水に落とす(この工程は必須ではない)。水分をよくきり、酒・みりん・砂糖・たまり醤油(必須ではない)・濃い口醤油で煮る。煮上がりで朝ご飯のおかずにしたが、そんなに多くは食べられない。脂が多すぎるし、うますぎるからだ。とろとろ口に含むと溶け出して消える。そのはかなさよ、といいたいところだけど非常に強い味だ。保冷剤を皿に敷いてラップをして置く。昼ご飯には室温になった煮つけをおかずにする。いただきもののニラをみそ汁にしたが、余計な気がした。純粋に「きんき(キチジ)」だけでご飯を食べたい。今回は肝心の肝に触らないように気をつける。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑8 クロダイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁港の漁港内は初心者には一日遊べるところだし、横を流れる新川側などでは上級者にとっても大物が狙える場所である。新川漁港内では小物が、横を流れる新川側では大物が釣れるのだが、地元の高校生が新川側に行ったり、漁港内に行ったりして次々に釣り上げていたのがクロダイである。新川側で釣り上げたのが20cmクラス、漁港内のサビキに来たのが9cmほどである。あまりにもきれいなので撮影させてもらった。要するにこれは高校生の釣果の横取りというやつだ。新川側では大物が来るようだが、さすがに日が昇り潮止まりとあってはそれは望むべくもない。それでも飽きない程度に釣れるのがいい。近所に新川釣具があって便利な釣り場でもある。釣りマナーを守れる人はぜひ、新川漁港へ。
コラム

新潟の旅土産 新発見! 新潟産ハマグリでいろいろ

まさか新潟の市場にハマグリがあるとは思わなかった。一時は絶滅危惧種であったほどなので、まさかまさか新潟で出合えるなんて。さっそく手に入れて持ち帰った。手に取ってみるとまさしくハマグリなので、大いに感激する。帰宅した日に吸物にした。料理以前の料理で、差し昆布(昆布の切れ端を入れる)をした水に洗ったハマグリを沈めて火をつける。殻が開いたら出来上がりだけど、火を通しながら身がふくらんできているのがわかる。ふっくらと柔らかくハマグリらしいうま味に満ちている。チョウセンハマグリとの微妙な差はわからないけど、この吸物は絶品である。
コラム

2025年9月12日、久しぶりのサンマの佃煮

4年振りかな? サンマの佃煮。佃煮の炊き上がりに合わせてご飯をたく。湯気の立っているご飯の上にサンマの佃煮をそのまま乗せて食べる。佃煮は骨が柔らかくどこにも抵抗を感じないまま、喉に消えていく。ご飯も、サンマの佃煮も駆け足で消えて行く。サンマの佃煮は脂がのっているのと、のっていないのでは別物の感がある。前回は痩せ細ったサンマで佃煮を作っているが、調味料で硬く締まった中に強いうま味があって、これはこれでおいしかった。今回の佃煮は非常に脂がのっているサンマで作ったので、ふわふわして柔らかく、調味料の甘さに、佃煮が口の中で脆弱につぶれるときに感じられる甘味がある。ただ、背の青い魚特有のうま味はさほど感じられない。要するに、脂があってもなくても、サンマの佃煮はうまい、としかいいようがない。
コラム

むつ市の「なみのこ」をオリーブオイルで蒸す

「なみのこ」と言う名でむつ市(青森県)からやってきたコタマガイは3cm前後と小さかった。二枚貝は特別な場合を除いて小さい方が扱いやすい。何時ものようにみそ汁にして、残りをオリーブオイルで蒸した。貝から出た汁と油だけの料理だが、そこにエリンギの風味を足してみた。アサリなどと比べると淡泊な味で物足りなさを感じることが多いが、濃厚なエリンギの風味と貝の味を取り込んだオリーブオイルで、味に奥行きが生まれた。塩を使っていないのにほどよい塩分濃度なのは、貝が水から持っている塩気による。
コラム

今季初トビウオは千葉県鴨川から

気象庁の夏は6月、7月、8月だが、9月も夏に加えた方がいい。9月も半ばになって、いまだに耐えがたい暑さが続き、どう考えても残暑などとは言っていられない状況である。残暑を見舞うのは10月になってからだ。時季時季に時季のものを購入して食べること、季節に抗わないとこをモットーとしている人間にはやけに切ない時代になったものよ、と思う。それでも9月になれば関東の海には秋の魚がやってくる。今季初トビウオは千葉県鴨川からやってきた。たぶん駿河湾でも、相模湾でも同じようにトビウオがやってきているはずだ。何尾か購入してあれこれ作る。最初は「たたきなます」だ。トビウオの味は皮にあり、身は皮の添え物でしかない。もちろん身の淡泊さを楽しんでもいいが、まずは三枚に下ろし腹骨、腹鰭の担鰭骨を取り、皮付き血合い骨そのままで薄く切りつける。それに刻んだみょうが、大葉、にんにくと和えるだけだ。天盛りにしたのは三重県尾鷲市の青い唐辛子「虎の尾」で、すだちを添えた。食べる直前に好みの量の「虎の尾」を混ぜ込み、すだちを搾り。醤油をたらして食べる。トビウオは明らかに背の青い魚である。回遊魚特有のうま味に満ちている。わずかだが酸味があるのも特徴だろう。おいしさの種類が豊富だとも言えるだろう。「虎の尾」がその味のアクセントになる。結構な「たたきなます」に、酒は新潟県新潟市内野町の「鶴の友」で、いい時間が過ごせた。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑7 ヒメバカガイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者と一緒に波打ち際で見つけた生物の5番目はヒメバカガイである。
コラム

秋めかない9月の、カドガワフエダイのカルパッチョ

9が月振りのカドガワフエダイは、刺身にして、カルパッチョにもしてみた。我が家のカルパッチョはオリーブオイル・塩・にんにくが基本で、好みの香辛野菜、香酸柑橘類などで絵を描くようにつくる。カルパッチョは描くようにつくるので、カルパッチョなのだ。皿にオリーブオイル・にんにく・塩を塗りつける。ここにできるだけ薄く切った身を貼り付けていく。全部貼り付けたらスプーンなどでたたき全体を馴染ませる。ここにスダチの果汁を点々と搾り。スダチ・ローゼル・オレンジミントを描くように散らす。カルパッチョは濃厚な味わいであるが、カドガワフエダイのうま味がそこにしっかり浮き上がってくる。逢魔が時にカルパッチョをつまみ、安いジンの水割りで口の中を洗う。久しぶりに素晴らしいカルパッチョができたという喜びがこみ上げてくる。
コラム

Rosso di Napoli Eggplant というナス

八王子総合卸売センター『八百角』の社長は、売れそうにないのに仕入れてくる野菜がとても多い。最近、店内はかなり東南アジアなので、東南アジア系も多くエスニックな感じが強くなっている。そこに殴り込みをかけているのがヨーロッパ系である。特に、最近、ナスはイタリアなのかも知れない。たぶん八百屋で「ナポリ」と呼ばれているカボチャ型のナスも、ナポリなんだからイタリア産なのだろう。正式には、Rosso di Napoli Eggplant らしくて、エチオピア原産のナスだという。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑6 アカシタビラメ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っている。今回は新川漁協で水揚げされる代表的な魚のひとつ「ねずり」と呼ばれている、アカシタビラメである。1尾だけだったので入念に同定して、水洗いする。アカシタビラメの定番料理と言えばムニエルである。皮が剥きやすいのが特徴で、ある意味、まな板を汚さない魚である。今回は産卵期なのか比較的大きな卵巣が入っていた。剥いて塩コショウする。小麦粉をつけて、じっくりとソテーし、仕上げにバターで風味づけする。鰭際の香ばしさが際立つ。不思議なもので中心部分よりも鰭と鰭筋にうま味がある。この鰭際だけでもゴージャスな味である。そこに真子の甘味が加わるのだから言うこと無し。少しだけ醤油を垂らして、ご飯を食べた。じっくりソテーしていて骨があまり気にならないので格好のおかずである。
コラム

今季初小ヤリは産地不明

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に小ヤリ(ヤリイカの若い個体)が来ていた。小ヤリは秋の季語にしたいくらい秋のものだ。大気は真夏だけれど、海は徐々に秋なのかもしれないと思った。でも産地がわからない。荷の造りからすると茨城県かなと思われる。小ヤリの最大の産地が茨城県なのもある。新イカ(コウイカのポンポン玉くらいのもの)を食べそびれ、小ヤリもか?というときの小ヤリである。帰宅したらとっととげそを抜き、開いて墨と内臓を洗い流す。これをペーパータオルにくるんで冷蔵しておく。深夜に皮を剥かず、1、2秒湯につけて氷水に落とす。水分をよくきり適当に切って三重県尾鷲市の辛い青唐辛子、「虎の尾」とスダチを添える。醤油をかけ、スダチを搾り、ざざああと和えて後は食らうのみ。これを小鉢ものといい深夜酒の友という。そんなに味のない時季だけど、柔らかくほの甘い。スダチの酸味と青唐辛子の辛みあってのおいしさだ。合わせたのは、新潟県新潟市西区内野町の「鶴の友」。いい時間をいただけた。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑5 キンセンガニ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者と一緒に波打ち際で見つけた生物の4番目はキンセンガニである。日本各地の浅い砂地にいる小型のカニで、漁の対象ではなく、子供の遊び相手といった存在である。丸っこくて見た目が可愛いので、海辺暮らしをしていればだれもが必ず出合う存在といったものだろう。
コラム

新潟県十日町の「はっか糖」

暑さのせいで体はぼろぼろだ。慢性的に疲れているし、体が変に熱っぽい。新潟県新潟市のスーパーで、「はっか糖」を買ったのは体が涼を欲していたからかも知れぬ。白いチョークを思わせる物体を口に入れると、あっと言う間に溶ける。溶けながらハッカの香と刺激(?)が口の中を満たす。冷や冷やとして、ただただ甘い後味がいい。「はっか糖」を子供の頃、実際に食べたかどうか記憶にないが、なぜかしら懐かしい。
コラム

珍魚とはなんだ! カドガワフエダイの話

ボクの珍魚度は学者的だということを述べたい。高級魚とか、そのへんに普通にいる魚に対して姿が面白いので騒いでいるのを見るのは嫌いである。「リュウグウノツカイはどれくらい珍しいんですか?」などという質問に、何年か前に魚類学者のSさんが困った顔で答えていた。リュウグウノツカイは、見た目が奇妙で珍魚といえなくはないが、それほどたいした珍魚ではなく、博物館などでの必要性はそんなに高くない。これに対して、今回、鹿児島県鹿児島市、大倉の久保さんが送って来てくれた画像のカドガワフエダイは、世界的に見て珍魚とは言えそうにないが、国内の魚類学者にとっては非常に貴重で、必要性も高い。だいたい国内での発見個体数が少なすぎて、生息域すらわかっていない。発見された個体の大きさを考えると、国内で再生産されているのか、どうかもわからない。カドガワフエダイの珍魚度は今のところ高いけど、温暖化でこれから国内においても増える可能性がある。先々ずーっと珍魚であり続けるかは微妙である。我がサイトの珍魚度は変化するのだ。確実にいえることは、今、大学、博物館にとってリュウグウノツカイはそれほど貴重ではないが、カドガワフエダイはとても貴重だ、ということである。一般の人は変わった形をしていないと、珍魚とは思わない。だから至って平凡な姿のカドガワフエダイは珍魚ではない。魚類学者と一般人にとっての珍魚・貴重な魚というの尺度はまったく違っている。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑4 クロウシノシタ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然界にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者とともに自然界、波打ち際で見つけた生物の3番目は砂浜にいるネズリの子だ。砂の上でぴたぴた跳ねているのを見るまで、まさか手づかみで波の中にいる魚をつかまえる人がいるとは思わなかった。全長70mmしかないので、ウシノシタ科の魚であることはわかったが、そこから先は見当がつかない。マクロ撮影して拡大してその正体がわかった。
コラム

新潟県佐渡のアラの兜焼きで暑気払い

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で買った新潟県佐渡石原水産からアラ、体長43cm・713g の兜(頭部)は塩焼きにした。あきらかに暑気がとれず、バテ気味の自分に野生を取り戻すための塩焼きである。頭部の塩焼きは食いにくい、が他のどこよりもうまい。うますぎて困っちゃうくらいうまいので、ついつい手づかみで食らう。マンモスの肉を食らうがごとき気迫でアラを食らってみる。野生を取り戻すのがいちばんの暑気払いである。うまいのは重々知っている。過去に何度もウマスギてこてんぱんにやられている。それなのにまたこてんぱんにやられた。まずは皮を引っぺがして食い、その下に隠れている身を指でほじくり出して食う。身はちょびっとなのにおいしいが大きい。最初はちょびっとずつ食らっていたら、頬肉を食べてからは一気呵成に食べ尽くす。なんとかカマの部分を残すことに成功する。さて、カマは炊き込みご飯かな?
コラム

夏に食べる長野県、おしぼりうどん

長野県には、そばやうどんを大根の搾り汁とみそで食べる文化がある。上田市や高遠ではそばを食べ、うどんはスーパーで「おしぼりうどん(古越製麺所 御代田町・滝沢食品 千曲市)」でしか知らない。農水省のサイトには長野県坂城町の郷土料理とあるので、「おしぼりうどん」の名を、御代田町と千曲市の会社がとったのかも知れないと、最初は思っていた。ただ農水省は郷土料理を深く掘り下げたりはしない。「おしぼり」というのは辛味大根を下ろして汁を搾ったもので、「おしぼり」で食べる「うどん」ということになる。あたりまえだけど、そばを食べると「おしぼりそば」である。長野県は、そばだけではなく、うどんもよく食べるところなので「おしぼり」でそばを食べるなら、当然、長野県の各地で、「おしぼり」でうどんも食べるはずという当然のことが、農水省には見えていない。だから農水省が坂城町を挙げると、まるで坂城町だけの郷土料理のように見えしまう。またゆで汁ごと出して熱いうどんを「おしぼり」で食べる、とするとそれが法律の如く一人歩きする。無意識でも無駄な法律を作り出すのは愚か者のやることである。本流などといういかがわしいことをいう人間が出てくる。松代町で買ったときなどは普通の冷やしうどんのように食べる、と聞いた。食べ方は家々で違う可能性がある。農水省のページには往々にして、このような他の地域に対する配慮に欠ける決めつけが見受けられる。農水省が郷土料理を大切に思うなら、この点、早急に改訂すべし。
コラム

新潟県はサケの国 秋ザケの塩焼きは滅法うまい

水産物とヒトとの関わりを調べた、その調べ始めの地が新潟県である。学生気分が抜けないときであったが、最初に新潟で感じたことはサケ比率が高いことだ。徳島から上京したとき、東京にはサケが多いと思ったものだが、新潟のサケ度は東京と比較できないほど高い。どこに行ってもサケがあり、マス(カラフトマス)があり、季節には本マス(サクラマス)がある。その頂点にあるのがサケで、庶民的なマス(カラフトマス)がある。季節限定の本マス(サクラマス)がある山形県よりも本マス(サクラマス)の地位が低いのも新潟県の特徴だろう。さて、北海道のサケ漁はトキシラズの初夏から始まるが、新潟県などでは9月中旬から始まり10月、11月が盛漁期である。今年、新潟市西区五十嵐新川にサケ漁を見に行きたいと思っているが、県内でのサケ漁の前、9月1日に、新潟市のスーパーでサケのブロックを買った。新潟中央市場、上越市一印にも北海道からたっぷりサケがやって来ていた。少なくなってはいるが、新潟県では今でもサケがとれている。でも、漁期前なのでスーパーのサケ売り場の主役は北海道産だ。これこそが産地間流通(産地はその産物をとるだけではなく、好む傾向があるので、ないときには別の産地からもってくる)というものだ。そして、新潟市のスーパーで買った北海道産サケが非常に上物であった。いいサケを見極める能力が新潟県人にはあり、それを流通のプロ達もよく知っているのだろう。
コラム

越後新川の生物・食物図鑑3 マクラガイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然界にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者とともに自然界で見つけた生物の2番目は砂浜にいるマクラガイだ。
コラム

産地不明、太平洋側のボタンエビ壊れがうまい

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に産地不明のボタンエビがきていた。小振りで見た目にはあまりいい状態ではないが、鮮度はいい。明らかに千葉県銚子以北の底曳き網で揚がったものである。タラバエビ科のタラバエビ属のエビは近年高騰している。完品はとても手が出ないことが多いので、思わず手が出た。一般に、「ぼたんえび」と呼ばれている標準和名トヤマエビはカゴ漁でとっていることが多いので、ときに生きているものが混ざるが、太平洋側の標準和名ボタンエビは底曳き網でとっているので品質にばらつきがある。トヤマエビは比較的流通量が多いが、ボタンエビの流通は少なく貴重でもある。今回のは壊れもあるものの、見つけると必ず買うのは流通量が少ないからだ。
郷土料理

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑2 コナガニシ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協に水揚げされる水産物は量的には多くないが、多彩である。うまいもん揃いだとも言えるだろう。その最たるものがコナガニシである。日本海に多い巻き貝であるが、唾液腺にテトラミンを持ち、内臓に苦みがあるなど、非常にやっかいな存在だ。日本海側では鳥取県、石川県では食べているが、他の地域では見向きもしない。ただし、刺身にするとこれ以上の美味は望めない、と思っている。歩留まりは最低である。食べる部分はふたのついた足の部分だけ、あとは洗い流す。ぬめりはほとんどないので、水分をきって適当に切るだけだ。
コラム

新潟県佐渡産アラの刺身

新潟に行ったはいいが、あまりにも慌ただしく、最低限の買い物しかできなかった。旅の疲れがとれた木曜日(2025年9月4日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に行くと新潟県佐渡石原水産からアラが来ていた。佐渡をはじめ新潟県を代表する魚のひとつがアラである。なんとなく縁を感じて買ってみた。体長43cm・713g なので関東でいう「小アラ」よりも大きく、「中アラ」というべきだろう。とりあえず刺身を造る。水洗いをして三枚に下ろし、皮を引き、腹骨を大きく取り、血合い骨を抜き、皮を引く。やや薄めに切りつける。それほど脂がのっているわけではないが、アラのよさはうま味と上品な舌触りにあり、なので気にならない。それにしてもうま味が長々と続き舌の上でだれない、その上、後味がいい。ついつい箸が伸びる、といった味である。だから年がら年中関東の市場に置かれ、いつも高値がついているのだ。端的に言うと、アラを食べることは贅沢をすることなのである。酒は新潟県新潟市内野町の「鶴の友」。地味だけどアラの刺身に合う。箸も止まらず、酒も止まらず、とあいなる。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑1 フジノハナガイ

新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協やその周辺には自然界にも、食べ物にも詳しい猛者がたくさんいる。この猛者とともに見つけた生物の1番目は砂浜にいるフジノハナガイである。大きさ1cm前後の小さな小さな二枚貝だけど、実に美しい。形はスヌーピーのようだし、名前の通り「藤の花」の花弁のようだ。やたらに美しく、しかも可憐である。昔々は子供達の格好の遊び相手だった。
コラム

2025年新潟旅日記1 宝暦6年『越後名寄』メモ

『越後名寄』は非常に重要な書であるが、水産生物もしくは地誌、歴史の豊富な知識を持たない人間には意味のないものである。ただし、本書を丹念に紐解くと、江戸時代の越後という土地柄がもちろんほんのわずかだが見えてくる。また本書に関してはネット上での閲覧が可能である。著者の丸山元純(天和2/1682-宝暦8/1758)は越後長岡藩(牧野家)内の医師の家に生まれ、越後寺泊で医師として暮らす。徳川綱吉から吉宗、家重と比較的安定した時代を生きる。『越後名寄』(宝暦6年 1756年)は越後の地誌である。江戸の文化史としては平賀源内以前であることも重要であるし、化政期以前になったことにも意味があると思われる。明らかに本草綱目の影響下にある『和漢三才図会』(正徳2年 1712)に習って、越後という地域の地誌を網羅したものと言えるだろう。全三〇巻の大著だが水産生物的には、巻二四、二五だけとみていい。また呼び名などでは、『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775)以上に重要である。■本コラムは、じょじょに改訂していく。本書の重要性を教えていただき、閲覧を許可していただいた、上越市公文書センターには大いに感謝。
料理法・レシピ

煮ざかなの煮汁のおからいり

普段のおかずは、ありきたりな何もない日に暇みつけて作るもので、ありふれたものでしかない。ただし、そんなものが日々の生活には大切だし、日々を豊かにしてくれるのである。さて、おかずの代表格といえば煮魚だろう。魚の身も皮も余すことなく食べられて、ご飯に合う。煮魚は煮汁を多めにして煮ると失敗しないが、この煮汁があまることがある。魚を湯通しするのは煮汁を濁らせないためだし、二度使いすることを見越してだ。そんなときは少しずつ冷凍保存しておく。魚でも貝でも、イカタコでもいろんな汁を継ぎ足し継ぎ足しすると、非常にうま味豊かな調味料が出来上がる。あまり味のない魚を煮つけるときにも使えるし、野菜や豆腐を煮てもおいしい。今回はこの保存して置いた煮汁でおからの炒り煮を作った。魚料理をよく作る家なら定番料理にすべきである。なんといってもおからは安くてうまい。おからは豆乳を絞った「から」なので「おから」だけど、ここには大豆のうま味がたくさん残っている。それが魚貝類から染み出てきたうま味と一緒になると、大層なごちそうになる。ご飯の友として作っているが、夜酒の友にもなる。おかずとしても肴としても一級品である。
コラム

はやり脂のある北海道根室産マイワシを焼いてしまう

昼に千葉県銚子産を塩焼きで食べて、夜に北海道根室産のマイワシを塩焼きで食べる。ともに100g前後だが、脂の量は根室産が銚子産を圧倒している。塩焼きは脂の多い方がうまいのか?残念ながら、脂がのった方がおいしい。気になるのは魚焼きグリルの中が火事になることだけ、やっぱりマイワシの塩焼きは脂ののったものがいい。根室産の方が値段は2倍もするので、値段通りの味だ、と言ってもいい。
コラム

家島諸島坊勢島の緑豆がゆ

瀬戸内海周辺は「茶かゆ」をよく食べる。家島諸島(兵庫県姫路市)坊勢島でも、「茶かゆ」を食べているのだとばかり思っていた。実際に坊勢島に水揚げや水産物の話を聞きに行って、ついでと言ってはなんだが、「茶がゆ」のことを聞くと、島では「茶がゆ」ではなく「緑豆がゆ」だという。坊勢漁業協同組合で教わって、「どんなものだろう、食べたいな」と言ったら、島のオカアサンが持って来てくれた。朝煮て、冷たくして昼に食べようと思っていたものらしい。それほど冷えてはいないが、喉ごしがいいので涼やかな味がする。程よい塩味で、緑豆のもつ、青臭み(?)が実に好ましい。気がついたら、オカアサンのお昼ご飯を全部平らげてしまっていた。お昼ご飯、大丈夫だったかな?「緑豆の入ったかゆは食べても、すぐ腹が空きます」と言われたが、本当にすぐ腹が空いてきた。坊勢島にはすしの名店があり、旅館のご飯も矢鱈においしかった。鱈腹食べた後なのに、また「緑豆がゆ」が食べたくなった。
コラム

群馬県は「もつ煮込み」だらけ

我がサイトの、テーマのひとつが季節と地域性である。群馬県といえば「もつ煮込み」が浮かぶが、なぜだろう? と思って過去の画像を渉猟する。群馬県のスーパー、直売所巡りは定期的にやっている。当然、朝ご飯もしくは昼ご飯を食べてくる。北は渋川市から南は館林市までの画像だが、朝ご飯、昼ご飯の画像整理していると、やたらに「もつ煮込み」が見つかるのである。太田市の食堂では、「群馬県は豚肉をよく食べるので、『豚もつ煮込み』もよく食べる」と教わった。肉には詳しくないが、この「もつ煮込み度」の高さは他の県には見られないのではないか。高崎市総合地方卸売市場の『市場食堂』には「もつ煮込み」の大盛りまである。群馬県内の「もつ煮込み」はどこで食べてもおいしいのもありがたい。
コラム

長野県北信地方の「やたら」

長野県中野市・飯綱町などで食べられている夏の料理に「やたら」がある。大根などのみそ漬け、ピーマン型の青い唐辛子・ぼたんごしょう(かぐらなんばん)、八町きゅうり、丸ナス、みょうがを、すべて細かく刻んで混ぜただけの料理である。みそ漬けの塩気があるので、混ぜ合わせてもの足りなかったら、塩を加える。みそ漬けの塩気が強く、また多めにみそ漬けを刻めば塩はいらない。とにかくすべてを刻んで刻んで刻む。一心に刻むのがコツである。みそ漬けだけの塩気で全体がしっとりとして、味が馴染んでくる。長野県飯綱町、滝澤農園の滝澤さんに教わって早10年になるが、ほぼ毎年作っている。ボクの場合、徹頭徹尾、ご飯に乗せて食べているが、飽きが来ない味で、毎日食べても結構毛だらけである。
コラム

2025年8月26日、今季最初で最後の塩イクラ

舵丸水産に北海道斜里から生筋子(サケの卵巣)が来ていた。サケの来遊が減っているので筋子が高くなるのは当然だけど、2020年から年に1度だけしか買えないし、買う量も減っている。できれば500gくらいでつくりたいのに、今年は200gで作っている。これじゃオママゴトではないか。温暖化が原因であることは明確だ。でも、猛暑でエアコンなしでは死んでしまうし、できるはずの省エネすら誰もしようとしないし、無駄なエネルギーそのものの戦争をする愚か者がいる、こんな世の中じゃあ温暖化はとまらないんだろうな。ままよと思いながら食べる塩イクラだけど、やはりうまいねー。サケの卵巣にしかない独特の風味がある。この時季はまだ卵粒の皮膜が柔らかいので、舌で潰せるのもいい。
料理法・レシピ

ゴマサバのニューライフな塩焼き

野菜と骨のない魚の塩焼き、市販のドレッシングを合わせた料理は作るのも楽ちん、食べるのも楽ちん。ご飯よりもパンとの相性がいい、など、今どきの生活にマッチしていると思う。今回は撮影のために最小限の野菜を添えたが、見た目など気にせずにたっぷり盛り合わせる方がいい。写真は半身だが、これでは多いと思ったら半身の半身にすればいい。意外にボリューミーなので人によっては糖質は抜きでも、食事として成立するかも。
コラム

2ヶ月ぶりに江戸前小笠原のハマダイ

今年は熱暑でしかも、盆の後先は、毎年のことながら魚が少ない。こんなとき、年間を通して状態を見ているハマダイを見つけてほっとする。小笠原産だというがパーチも箱もない。当日入荷ではないが、フエダイ科の魚なのでモチがいいので手が出た。旬というか脂のある時季は4月から6月くらいまでで、産卵が近づくと不安定になる。今回の個体は脂こそほどほどであるが、非常にうま味が豊かである。刺身は、非常に味わい深かった。そして深夜に、いただきもののークヮーサー、三重県尾鷲市の青い唐辛子、虎の尾で塩締めにしてみた。一気に夏らしくなる。刺身を食べても体の重さは取れないが、香酸柑橘類と青唐辛子の辛みが暑さのストレスから解き放ってくれる。合わせたのは安ジンのソーダ割りで、爽やかなド深夜、一人きり。
コラム

長野県北信地方の「かぐらなんばん」

ピーマンのような形をした辛い青唐辛子が、新潟県、群馬県、長野県、岐阜県にある。他県人だとわかると、長野県の直売所でも、群馬県の直売所でも「これ唐辛子で辛いんですけど、大丈夫ですか?」と聞かれることが多い。長野県の同じ地区で「かぐらなんばん」ともいい、「ぼたんごしょう」ともいい、呼び名がこんがらがってる。「かぐらなんばん」は「神楽南蛮(なんばん)」と書かれることが多く、「ぼたんごしょう」は「牡丹胡椒(ごしょう)」だ。「牡丹胡椒」は形からだと思うが、「神楽南蛮」の由来はわからない。「かぐらなんばん」という表示の多い長野県中野市で「『ぼたんごしょう』とも言うよ」と教わったので、呼び名が違うだけで、まったく同じ品種なのだと思われる。飛びっきり辛いのもあり、あまり辛くないものもありで辛さはまちまちである。今年は長野県中野市オランチェ(直売所)、飯綱町の直売所で買っているが、ふたつともあまり辛くない。年々辛みに弱くなっているのでちょうどいいかも。
料理法・レシピ

平々凡々なワラサの煮つけ

「スーパーのワラサ(3㎏から7㎏くらいのブリ)安いね」と山梨県のジイサマから声がかかる。なのに八王子の市場にはワラサがない。魚屋相手の仲卸が閉店してしまったからだ。「安くていいワラサがあるはずなのに残念だ」、というので近所のスーパーをまわると2店舗にあり、都心のスーパーにも並んでいた。安いし、ものがいい。今こそが一般家庭にとってのワラサの旬だ。「いや違う、今脂が抜けてまずいときだ」という通ぶった人もいるかも知れない。そんなヤカラは無視すべし。この時季のワラサは食べ方次第では非常にうまいのである。一般家庭人は上手に暮らすことが第一、通にはなってはいけない。念のために、通ぶる、やたらにこだわる人は箒で掃きすてるほどいるが、平凡な人、暮らし上手な人はめったにいない。人は平凡である方が難しいのだ。スーパーで買った切り身なので、お昼ご飯用にささっと煮て、忙しない日々にあるので、さささっと昼に食べることができる。砂糖多めで、こてこて甘辛く煮たワラサくらいうまいものはない。ブリのいいところは、大きくても小さくでも煮て硬く締まらないことだ。ふんわり柔らかいのをご飯にのせて、食べるうれしさよ、猛暑の夏よ。
骨抜き
コラム

骨抜きは持っておいた方がいい

打ち合わせをしていた女性が、いきなり道具自慢をおっぱじめた。たぶん彼女も、このFBを読むと思うので遅まきながら教えておきたい。包丁の選び方も変だし、6千円なんて法外な骨抜きは買わない方がいいよ。骨抜きも直しがきくのだ、と思うけど、直しに持っていくのは人生の時間の無駄遣いだと思う。さて、骨抜きは一般家庭でも持っておくべき道具だと思っている。でも、千円前後がいい。安物でも何十年も使えるし、だめになったら買い替えればいい。なくしやすいので2本ぐらい買ってもそんなに懐は痛まない。どんなにいいものでも、骨抜きはダメになるときがくる、ということも忘れてはならない。ボクが今、使っているのは新潟県燕三条の朝市で特売していた700円と、川崎北部市場で買った800円だけど、10年以上使っているが問題はない。
コラム

増毛産甘エビをづけにして丼にする

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で連続して北海道増毛産の甘エビ(ホッコクアカエビ)をたっぷり買った。お昼ご飯のためなので、づけにする。甘エビのづけはご飯にも合うし、ちょっとしたつまみにもなる。つけこんで約4時間後に「甘エビ丼」にする。といっても温めたご飯に柚子果汁を点々と振り、並べるだけ。づけは醤油の辛さが主で、少しだけみりんの甘さがある。これが甘エビをより甘くし、そして味わい深くする。そして甘味はご飯の味方である。今回はいただきものの柚子果汁と、三重県尾鷲市の青い唐辛子「虎の尾」で味にアクセントを加えた。青唐辛子のぴりッがやけに長く口中にとどまる。これが、夏丼にする。
サンマの塩焼き
コラム

今年の、サンマの塩焼きの作り方

八王子卸売協同組合、舵丸水産に根室・厚岸から13(13尾で2㎏)と11(11尾で2㎏)が来ていたということは書いた。近所のスーパーも魚売場はサンマでギラギラしている。当然、なんてたって塩焼き、な気分になる。何度か都心に出ているが、今年は、そば屋でもサンマ定食を食べた。
コラム

久しぶりにキメジ1本、まず刺身から

産地の撮影をし忘れたので、産地不明のキメジ(キハダマグロの幼魚)は、1.5kg ほどなので味はあるけど脂はない。年のせいか、この脂のない若いマグロ属(キハダマグロ、クロマグロmメバチマグロ、ビンナガマグロなど)が好きだ。ただ1本買いした半身ほどの量を食べると飽きる。
コラム

安楽島のイワガキでフライを作ったら目から鱗だった

三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中にイワガキが入っていて、大小あって、大を蒸し、小をカキフライにした。これが想像以上のおいしさだった。あまりにもおいしくて、今夏はイワガキのフライを何度も作った。イワガキとマガキは近縁種なのでそんなに違いはない、と思っていたのが大間違いだった。
棒だら煮
コラム

小林一茶、七番日記の「ゑぞ鱈」

七番日記(文化一二年/1815)ゑぞ鱈も御代の旭に逢にけり〈訳/蝦夷地で獲れた鱈もこのありがたい御代の旭に逢えたことよ。年/文化十二(1815)。解/蝦夷地の鱈も、ありがたい御代に会えたよ、と誇らしげ。……〉玉城司(国文学者。1953〜)現代語訳。小林一茶(宝暦13年/1763〜文政10年/1828)は信濃柏原(長野県上水内郡信濃町)に産まれる。安永六年(1555)、15歳で江戸へ奉公のために出る。文化十一年(1814)、52歳で生家の2分の1を相続する形で柏原に戻る。中農ということから自作農であり、田畑土地建物を所有したと考えていいだろう。「ゑぞ鱈」は蝦夷地で獲れた鱈なのでマダラだろう。当たり前だが乾物の棒だら、もしくは塩蔵ものとなる。北前船で松前、蝦夷地から送られて来た。なぜ、小林一茶はこれを「ゑぞ鱈」としたのだろう。柏原生まれなので、小林一茶にとって鱈といったら近い産地、越後で上がった介党鱈(スケトウダラ)のことだ。これは新潟県上越地方から現在の長野県北信地方までが、スケトウダラ食文化圏であることからも間違いないことだと思われる。
コラム

スーパーのゴマサバで、夏の魚すき

夏の鍋ものはいい。疲れていたり、忙しいときには特にいい。一口食べると意外にも、自分の胃袋が温かみを欲していることに気づくはずだ。ただし、暑い時期なので煮ながら食べると熱すぎる。テーブルに鍋を移して食べるといい。この時季の並のゴマサバは決して脂がのっているわけではないし、味があるわけでもない。それを甘辛いすき焼きの地でカバーする。一切れがあまり大きくなく、煮つけのように強く煮ていないので比較的柔らかい。煮えた夏野菜のおいしさとゴマサバから出ただしが一体となると、やけにうまい。そしてまた、やけにご飯がうまい。くどいようだが、エアコンの冷気を24時間浴びて、体が疲弊している、そんなときこそ夏の鍋だ。ちなみにスーパーの切り身なので包丁を使うのは最小限である。今回はすき焼きの地を自分で作ったが、市販のもので充分だ。夏野菜をたっぷり食べるためにも、作ってほしい夏の鍋だ。ついでにいうと、作り方といっても、材料を鍋に並べて、熱いすき焼き地をそそぐだけで、煮る時間もそんなにかからない。家族揃って食べることの少なくなった今、鍋に材料を並べておいて随時食べてもいいと思っている。
コラム

根室産マイワシ、ひとまわり大きくなって身に雪が積もる

皿を冷やした上に、底にも保冷剤を敷いている。そうしないと室温で表面がうるうるする。刺身を口に入れた途端に溶けるといったもので、これ刺身なんだろうか? と疑問に思えるほどだ。ただし脂がさらりとして軽く、きよらかな舌触りで、しっかり背の青い魚の味もある。濃厚で強い味なのに箸が伸びる。高値なのに飛ぶように売れていた、そのわけは食べるとわかる。群馬県中之条町の「貴娘」というイケル酒を用意したが、飲む間が見つけられなかった。酒の肴はおいしすぎてはいけないのだ。
コラム

クロダイの塩焼きの作り方

スズキ目タイ科の魚の塩焼きは上品でいながら、味わい深い。当然、クロダイの塩焼きは抜群にうまい。クロダイの問題点は生きている水域で味が違うことだ。神奈川県相模湾のもので臭みのあるものはないが、東京都墨田区の横か北かはわからないが十間川、また江戸川区新川の個体は釣り上げたときから臭ったという。クロダイはほぼ淡水でも生きていけるし、汚染にも強い。育ちで味の違う魚だが、海で揚がったものはほぼ大丈夫である。今回の大分県佐伯産、クロダイの塩焼きは絶品だった。脂がのっていたので、焼いた香りがよく、表面に脂から産まれる香ばしさがある。あまりにも皮がうまいので、身を食べ忘れてしまいそうだった。しょうが、柚子果汁、大根おろしを用意したけど、無用だった。
キハダの心臓の干物
コラム

北村商店のキハダのハツであれこれ。まずは干もの

マグロの心臓を干したのは初めて。おいしいではないか。あまり魚の内臓は好きではないが、もともと血抜きをしていたのもあるが、再度血抜きをしたのがよかったかも。いただきもののシークヮーサーをじゃぶじゃぶかけながら食べる。非常に食べやすい。少し硬めだけど、マグロの血液の風味があり、うま味がある。後味に甘さが来るのもいい。100%酒のつまみだけど、このようなものが一品あるといい。
コラム

2025年8月18日、今季初サンマは上々吉

八王子卸売協同組合、舵丸水産に根室・厚岸から13(13尾で2㎏)と11(11尾で2㎏)が来ていた。迷うことなく根室市杉山水産の11を買う。昨年は18から始めているので、今年は滑り出しから上々である。値段は500円なのでワンコインである。ここ数年でいちばんいいものだし、安いと思う。さすがに室温で表面が潤むというほどではないが、身が脂のせいで非常に柔らかい。当然、脂から来る甘味がある。サンマには特有の渋甘い味わいがあるが、久々に魅了される。非常に酒をやりたくなったが、お昼なのでご飯で我慢する。ご飯だってすすみすぎて、困った。今年の初サンマは上々吉。これ以上はいらぬ。
コラム

高崎市総合地方卸売市場『魚栄』で惣菜を買う

市場に来てみませんか? という話をしたい。関東を見回しても、一般客を受け入れない市場はなくなったと言っていいだろう。むしろ、一般客大歓迎といった市場ばかりである。市場では高級料理店でしか食べられない魚が、手に入る。もちろんお買い得なものもたっぷりある。野菜なども同じである。
ゆでサザエ
コラム

安楽島のサザエはゆでるだけでうまし!

サザエでもっとも簡単な料理法は、塩ゆでである。今回は、三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中にサザエがたっぷり入っていた。撮影していろんな料理にしたが、たっぷり入っていたので、何個かをそのまま水洗いして水を張り、塩を加えた鍋に入れて火をつけた。たぶん約8分くらいゆでてそのまま鍋止め(鍋のまま冷ます)する。ゆで汁は吸物程度の塩分濃度である。このやり方は昔々、防波堤釣りで川奈港(静岡県伊東市)に通っていたことがあり、そこでお昼ご飯を一緒に食べていた(引退した)漁師さんに習ったもの。島根県隠岐では少量の水分で蒸すという話を聞いたが、要はゆでるだけなので、さほど深く考える必要はない。最近までやや濃い目の塩水で煮ていたが、最近薄味でもいいと思うようになっている。ふたの隙間に貝剥き(貝棒)を入れて軟体部分を取りだし、砂を噛んでいたらゆで汁で洗う。あとは酢みそでもいいし、意外にそのまま食べてもおいしい。ルール無用なので好きなように食べるといい。ちなみに知り合いの居酒屋オヤジのおすすめはタバスコ&マヨ(ネーズ)だ。醤油で食べてもいい。ちょっと変だけど、ウスターソースで食べてみた。これが変だけどうまい。ときどきサザエは苦みだなんて通っぽいことを言う人がいるが、そんな人にはワタだけ食べてもらってもいい。ボクは通などになりたくもなし(一応一茶風に)、なのでワタの苦みはちょっぴりでいい。このどうにでもしてね、というのがサザエのよさだ。
コラム

さかな料理の入門7箇条。素直がいちばん

さかな上手とは、水産物(食用水産生物)を上手に、日々活用できる人間のことである。人間は生きていること自体が自然破壊、自然に対する悪影響を極力抑えなければならないが、生き物を無駄なく使うことも重要である。そのためには、さかな料理を習得しなければならないが、そのとき守るべきことをいくつか挙げる。さかな料理の入門八箇条(第一考)一、料理などで知ったかぶりはしない。知らないを武器にする。二、最初、向上心はいらない。もっとおいしくとか、正しい料理法とかは考えなくてもいい。向上心はおいおい勝手に自分の中に生まれてくる。三、道具は買わない。包丁くらいは家にあると思う。あればいい。さかな用に買うなんてやってはけない。だいたい包丁にこだわっている人に限って包丁を知らない。包丁を買うべき時は、自然にやってくると思うし、買うべきときが来なければ、切れない包丁を一生使い続けてもまったく問題はない。四、できるだけ下ごしらえは他人任せにする。スーパーとか魚屋でやってもらう。あとは焼くだけ、とか煮るだけ、とかがいい。五、惣菜を買って来ても勉強にはなる。外食も大いにするといい。コンビニにもさかな料理はある。刺身でも塩焼きでも煮物でも、まずは買って食べてみるべし。六、好奇心こそ料理上手を作る。さかな料理を楽しむべし。花から花へ飛んでいくモンシロチョウになれ。七、自分が作ったものは、おいしくない、と思いがちである。自分が作った料理はうまい、と思え。八、通の話は無視すべし。世に本物の通はいない。世間で通と言われる人はやけに説得力はあるが、正しいことを言っていない。自分本位である。他人のことは考えないし、排他的な考え方をする。できるだけ、通ではない素直な自分を探し出せ。入門編で終わっても、それでいいのだ。もっと詳しくなりたいと思ってから、もっと勉強すべし。さかな上手になるために、入門編は非常に大切である。この段階を経ないと「さかな上手」になるのがとても難しくなる。■写真は東京都八王子市、『舵丸水産』。
サンマ丸干し
コラム

矢野誠一の、さんまは、目黒にかぎる

〈目黒不動尊の参拝をかねて、鷹狩りに出かけた松平出羽守(出雲松江藩藩主)。「下総の下人どもが食(しょく)いたします俗に下魚(げうお)と唱えまするものゆえ、高位の君があがるものではございません」という進言を無視して、近所の百姓家でさんまを食べたのだが、さあその美味さが忘れられない。翌日、殿中の溜の間で諸侯を前にこのはなし。これをきいた黒田筑前守(筑前国福岡藩主)が早速に家来に申しつけ、房州の網元からさんまを取り寄せたのだが、御膳奉行が「塩の強い、油のはなはだしきものをあがりつけないお上ゆえ」と、塩と油気をすっかり抜いてさし出したから美味いわけがない。あくる日、出羽守をつかまえると、「まるで木をゆで、かんでいるようなもの」「まずいとおっしゃるが、ご貴殿さまはいずれから……」「家来に申しつけ、房州の網元から」「黒田候、それは房州だからまずい。さんまは目黒にかぎる」〉『目黒のさんま』矢野誠一の『落語長屋の四季の味』(文春文庫)に出てくる。先月なくなった矢野誠一のエッセイや評論はすべて我が家にある。落語はそんなに好きではないというか、時間がないのでじっくり聞いていられないのだけど、矢野誠一の文章は好きでならない。矢野誠一の死で「東京やなぎ句会」は全員が冥土に旅立ったことになる。ひとつの時代が終わったのだ。■銚子産の丸干し。少し黄ばんでいるが、江戸時代、明治時代にはもっとくすんだものだったはず
郷土料理

福井県越前の「甘エビの塩いり」

〈小魚の塩いり 《材料》ババガレイ(ムシガレイとあるがヒレグロの間違いだと思われる)、アカラ(イトヨリとあるがハツメの間違い)、ハタハタ、甘エビ、塩、酒その日とれた小魚類を塩味だけでいり煮した、いたって素朴なお惣菜である。一部略〉『味のふるさと 福井の味』(角川書店 1978)このシリーズの本はプロの割り付けがなされ、しっかり監修もされていて、大きな間違いがないなどとても優秀である。「越前・海の幸」とあるので、福井県三国(坂井市)から越前町あたりの料理と言うことになる。今回の作り方は、書籍の記述だけではなく、三国同様「塩いり」を作る石川県加賀市塩屋での話も参考にした。といっても料理法などというような複雑なものではない。少量の水にやや多めの塩とほんの少しの酒を加える。煮立った中に、ざっと水洗いした「甘エビ(ホッコクアカエビ)」をいれて箸で動かしながらいり煮する。ほんの1分かからず火が通る。火を通しすぎると身が痩せる。酒を加えたのと加えていないのを両方作ったが酒は必ずしも誓う必要はないとみた。
コラム

静岡県浜松市「炭焼きレストランさわやか」

ナウなことには興味がないし、テレビもザッピングでしか見ないので、世の評判などとはまったく無縁である。あらゆる情報から離れたところにいる、といってもいいだろう。国内各地に行くと、店の位置まではネットを見るが、できる限り、その土地に根づいているものを探す。お昼ご飯を食べるときは、できれば個人経営の店を目指す。余談になるが、ボクは明らかに知名度ゼロの人間である。どこからどう見ても目立たない薄汚いデブオヤジだ。たまたまだろうが、浜松市で3組の方達から声をかけられた。希に、ごく希に「ですよね」と話しかけられることがあるが、複数の方に声をかけられたのは初めてだ。昼を過ぎていたので、その中のご夫婦の方に、「このあたりに昔ながらのものが食べられるところありますか?」と聞いたら、ついてきなさいと言ったので、ついて行った。ムムム、そこは思いもしなかったところ、ボクが絶対に足を踏み入れないところ、チェーン店だったのだ。仕方なく店内に入って席に着くやいなや、目撃したその光景にビックリ仰天した。出て来た料理と店員さんとで写真をとっている家族がいたのだ。とすると、これはこれで「昔ながらのもの」なのか?あとあとウィキで調べると、なんだかんだあって今の形の創業は1989年のようだ。どう考えても老舗とは言えないと思うが、悪意で教えてくれたわけでもないだろう。
コラム

8月の大分県産クロダイはうますぎて困った

8月になって、神奈川県小田原市、小田原魚市場で揚がっていたクロダイは触った限りだけど、身に張りがあり、脂を感じるものだった。落とせなかったのもあって、魚屋さんをつかまえて、聞いてみると、みな「最高だよ」という。比較的保守的な、と思われる人までいいと言うことは、旬だと断定してもいいようだ。さて、それでは大分県佐伯産のクロダイはどうなのか?脂ののりこそ驚くほどではなかったが、うま味が充実して、多様なアミノ酸が生み出す、甘味が感じられる。醤油をつけないで口に入れているのに生臭みを感じない。結構な味としかいいようがない。違う産地でみてもクロダイは6、7月は不安定で、8月になると回復する。ほぼ一年を通して安定している。これだけうまいクロダイの刺身を前に、やることが立て込んでいるので、深夜一人で凍頂ウーロン茶とは情けない。
コラム

静岡県焼津市『かねじょう食品製造』、金山寺みそ

ボクが調べているのは水産生物でもあるし、地域性でもあるし、季節でもある。47都道府県のいろんな地域に行っているが、特色のあるものを、もちろん食品に限るが買って帰ってきている。静岡県に行くと必ず買ってくるのが、「金山寺みそ」である。意外に「金山寺みそ」とか、「醤油のみ(ひしお)」が好きなのだけど、静岡県に行くとどこのスーパーに寄っても「金山寺みそ」である。これほど「金山寺みそ」の多い県も少ない気がする。
コラム

神奈川県小田原「ごっそり」を徹底的に料理する

神奈川県小田原市、小田原魚市場、二宮定置にまた「ごっそり」がまとまって入り出した。「ごっそり」は平均して1尾90g以下のイサキのことである。今回のものは小は60g、大は110gで大きさにばらつきがある。大きさが微妙に違っているし、量的に多すぎるので出荷できない。最近ではこれを買い受ける人(買える店)があるにはあるが、ほぼダンベ(大型容器)行きである。「ごっそり」は非常においしい、しかも安いので飛ぶように売れてもいいはず。なのに売れないのは消費者が無知だからだ。米の価格を騒ぐよりも、安くてうまいものを買うべし、なのだ。さて、「ごっそり」といえばまずは刺身である。イサキの特長は小さくても脂があること。「ごっそり」の刺身には脂の口溶け感からくる甘味があり、しかもうま味が豊か。これでご飯を食べると一升飯といったものだ。ちなみに刺身はごっそり作り、そのまま食べるだけ食べて、あとは醤油・みりんに漬け込んで置く。
コラム

千葉県船橋産、ぎりぎり新子の酢じめ

八王子卸売協同組合、舵丸水産に江戸前、船橋(千葉県船橋市)から新子なのか、「こはだ」なのか微妙なのがやって来ていた。7月とは違い、10cm・15g前後なので開きやすいのもありがたい。開いてみたら1枚漬け(1尾で1かんの握り)には小さすぎるので、ぎりぎり新子ということにする。最近、豊洲でもそうだが、多少大きくても新子で通っていることが多い。個人的には1枚漬けになるサイズは「こはだ」である。ボクの最大のテーマは季節と地域性なのであるが、コノシロには未だに季節が感じられる。コノシロはこのサイズから味わい深くなる。新子は季節を味わうものだが、成長するに従いコノシロの味を楽しむものに代わる。このサイズはうま味が豊かで、柔らかいのであっけなく喉に消えていく。いくらでも食べられるし、箸が伸びて困る。非常に軽い味なので、夜の酒に合う。最近、夜酒が多く、PCを終了させてからの時間を楽しむことが多い。そんなときにもこのサイズは好ましい。群馬県前橋市、「桂川」を正一合。
コラム

愛知県産大アサリは今や貴重だ

初めて食べたのは愛知県師崎(愛知県知多郡南知多町師)の旅館である。非常においしくなかった。以後長いこと避けていた。おいしさを知ったのは20年くらい前、ドラム缶たき火で焼いて食べたときだ。大アサリ(ウチムラサキ)焼きたてをあつつ、といいながら食べないとダメなのだ。もしくは、せめて温かい内、冷める前に口に放り込む。これほど焼きたてと、焼いて冷めたものとの味の落差のある食材はない気がしている。焼きすぎると硬くなるが、温かい内ならば、これがいいのである。無闇に噛むしかないのだけど、じわじわとおいしいがにじみ出てくる。個人的には酒と醤油少々と、貝からでてきたおいしさを、軟体にまぶしつけて食べる。終いに貝殻の内側をしゃぶるのが好きだ。
コラム

矢野誠一、「猫久」の鰯のぬた

〈鰯こしらいとくれ、鰯を。南風が吹いてるんだよ、ぽかときているんだよ、腐っちまうよ、い、わ、しッ〉五代目、柳家小さんが得意としていた、『猫久』という話の一説である。ここに出てくるのが、「鰯のぬた」だ。矢野誠一の『落語長屋の四季の味』に出てくる。先月なくなった矢野誠一のエッセイや評論はすべて我が家にある。落語はそんなに好きではないというか、時間がないのでじっくり聞いていられないのだけど、矢野誠一の文章は好きでならない。矢野誠一の死で「東京やなぎ句会」は全員が冥土に旅立ったことになる。ひとつの時代が終わったのだ。さて、時代は不明だが、「猫久」には髪結床が出てくるくらいなので、江戸時代を設定としているのだろう。昼飯のおかずに、亭主の熊さんが鰯をおろして、女房がみそをすり鉢ですり、酢みそを作るのが「鰯のぬた」だ。髪結床から帰って来たばかりの熊さんに女房が早く鰯をおろせとせっつく。言われた熊さんが、髪結床で聞いた話を話している隙に、猫がやって来て鰯をくわえていく。落ちはわかりにくいが長屋の風景が浮かんでくるようである。せっかくなので鰯(マイワシ)を買って来て、手開きにする。振り塩をして少し寝かせ、酢で一度洗ってそのまま少し置く。水分をきり、酢みそをかけてご飯ではなく、酒を一合。鰯のぬたで酒を飲みながら矢野誠一のエッセイを読む。
コラム

初めてのピンクペッパーでクロダイのカルパッチョ

ピンクペッパーは懐かしい味がした。子供の頃は草木の実を見ると、「食えるか? 食えないか?」とよく話したものだ。1960年前後まではそんな時代だったとも言える。食べられる実を教わると、食べてみるのが当たり前だった。その無数に食べた実のどれかに似ている。同じような赤い実だったけどなんだったのだろう?辛みはあまり強くなく、ちょっとだけ酸味があり、口の中に爽やかさ、いい香りが広がる。酸味もある。ピンクペッパーは薄く切りつけて塩・オリーブオイル・にんにくで味つけしたクロダイにぴったりはまる。今回のクロダイは明らかに旬を迎えていた。とても脂がのっていて、おいしかったのもあるが、このぴったり感はまるで寸法を計ったようだ。ボクが作るカルパッチョのテーマは「野に咲く花の名前は知らない」だけど、ピンクペッパーは野に咲く花のようでもある。合わせたのは安いジンの水割りだけど、滅法合う。
コラム

小田原の朝ご飯は夏らしくカマスのフライ

2025年8月8日の港のおっかさんのところでの朝ご飯は、カマス(ヤマトカマス)のフライであった。カマスのフライはある意味、小田原夏の風物詩と言ってもいいだろう。アカカマスと比べておいしくないなんて言う人のいるヤマトカマスであるが、そんなことはありませぬ、と声を大にしていいたい。小田原魚市場にあがったばかりの「青かます」は、皮目に独特の風味があって、身に強いうま味がある。揚げたてなのでふわっふわっである。市場を歩くのは重労働なので、大盛りご飯にしたいのはやまやまである。それをぐっと堪えて小盛りご飯なのは残念でならないが、これも人生なんだと諦める。
コラム

鳥羽市安楽島の「がんこーじ」は、うまいんだけど♬

三重県鳥羽市安楽島、出間リカさんに送って頂いた貝類の中に「がんこーじ(オニサザエ)」が入っていたというのは前回も書いた。「がんこーじ」の刺身は嫌みがなく、しかもシコシコッっとした食感が心地よいので、非常に魅力的である。噛んでいると身(足)から甘味が出てくるので、最後までうまい。今回は高知県土佐山の柚子果汁と塩で食べたけど、柑橘類との相性が抜群にいい。ちなみにボクだけの個人的な考えだけど、貝の刺身と柑橘類のときにはジンとかウオッカが合う。ころころと切りつけた刺身を口に放り込んで、ウオッカで流す。ヴァランダーの深みにはまっているので飲んでいる、アブソルートととても合うのがうれしい。
コラム

クロダイのみそ汁は夏なので濃い目

神奈川県小田原から持ち帰った魚で処理済みのもの(塩をしたり、ゆでて干したり)がまだかなり残っている。そんな魚の在庫を見てから八王子総合卸売センター・八王子卸売協同組合に行ったが、それほど欲しいものはない。八王子総合卸売センター、福泉でなんとなくクロダイを買う。小田原で話題に上ったからでもあるし、この日いちばん上等だったからだ。帰宅してクロダイを下ろしながら、一般家庭にもっとも取り入れてほしい魚料理、みそ汁を作る。中骨をとんとんと食べやすい大きさに切る。ボクは魚の臭みに敏感なので湯通しして霜降りに、冷水に落とし鰭際のぬるを流し、水分をよくきる。ちなみに沖縄本島泡瀬であったトビイカ漁師は、毎日飲むみそ汁、「いまいゆの魚汁(いうしる)」を作るときにはこんな面倒なことはやらない。適当に切って、水で煮るだけだという。考えてみると魚のみそ汁はいい加減に作るべきなのかも。家庭料理に向上心はいらないと思っているが、魚が苦手だった過去は捨てられない。差し昆布をした水に放り込み。昆布はあくまでもボク流であるのでやらなくてもいい。なににでも差し昆布をするのはボクのくせだ。煮立てて、あくをすくって多めのみそ(長崎みそ)を溶く。あとは、しょうがの搾り汁を数滴垂らし、ねぎを散らすだけ。みそは多すぎるくらいのみそ汁だけど、やけに体に効くのである。8月の大分県のクロダイは脂がのっていて、みそ汁の表面がギラついているし、強いうま味がある。市場から帰り着いて、なかなか去らなかった熱気がとれる。ちなみに先に述べたトビイカ漁師は、毎日飲むみそ汁、「いまいゆの魚汁(いうしる)」には、味の素的なものを入れるというし、チューブのにんにくも入れるという。チューブのにんにくは恐くてまだ試していないが、家庭料理にはルール無用(ルールというのは害があるけど益はない)なのでやってみたい。
ツバイの塩ゆで
コラム

和名が消えるかもわからない、ツバイ

ツバイは小型の巻き貝なので主に煮つけや塩ゆでで食べられている。身(軟体)は取りだし安く、煮ても軟らかく、甘味が強い。ワタに苦みがなく味わい深いので子供にも人気がある。安い上に、甘味があるので日本海側ではおやつとして食べたという人も少なくない。
コラム

小田原魚市場で、ヒラソウダ、久しぶり!

ヒラソウダは産卵期の7、8、9月は不安定な時季だと思っている。9月下旬から安定する。海水温が下がるとともに脂がのってくる。それでは真夏(気象庁が定義する)はおいしくないか、というとおいしいのである。ヒラソウダは脂がのったものもうまいが、脂があまりない時季もうまい。8月8日、小田原魚市場に見事なヒラソウダが並んでいたので、買受人の『さんの水産』さんにお願いして1尾確保してもらう。今回のヒラソウダは体長44cm・1.492kgで大きい。丸々と太っていて触ると非常に硬い。三枚に下ろすと、身が赤く、脂はほどんとない。これが実にうまいのである。すいすいと箸が伸びてすいすいと胃袋に消えて行く。明らかに酸味があるが、うま味100とすると5くらいの比率である。とにかく舌がよろこんでねじれるくらいにうまい。今回は三重県尾鷲市の青唐辛子、「虎の尾」と酢と醤油で食べたら相性がよく、結局半身全部食べてしまう。プーアール茶で我慢しようとしたが無理だった。群馬県吉岡町、「船尾瀧 本醸造」をば冷やして小一合。

該当するコラムが多い為ページを分割して表示します。
全1804コラム中 101番目~200番目までを表示中


関連コンテンツ

サイト内検索 (Google)

その他コンテンツ