コラム検索

検索条件
カテゴリ:
シリーズ:
関連する水産物等:
表示順:

該当するコラムが多い為ページを分割して表示します。
全1526コラム中 101番目~200番目までを表示中

コラム

ホウライヒメジのムニエルはゴージャスな味

ヒメジ科の魚をフランスでは、ルジェー(ルージェ、ルジェとも。Rouget)という。ルジェーは赤い魚という意味である。ルジェーのムニエルやポワレは珍しいものではなくなっているが、昔はめったに巡り合えないものだった。初めてルジェーのムニエル、もしくはポワレを食べたのは、まだ若造で、ただの便利な運転手のようにこき使われていたときだ。フランス直送の素材を使っているという青山の店だった。魚の写真を見た限りルジェーは、ヒメジ科アカヒメジ属まではたどることができた。アカヒメジ属の魚はヒメジ科でもあまり大きくならない。メニューの脇に「ヒメジのムニエル」とあったが、もちろん日本にいる標準和名のヒメジ属ヒメジとは属段階で違う。最近、ヒメジ科のムニエル、ポワレは輸入素材が増え、国産のヒメジ科アカヒメジ属・ウミヒゴイ属の流通が増えたので珍しいものではなくなっている。「ヒメジのムニエル」は「ヒメジ科の魚」と考えるとあながち間違いではないが、店での魚の紹介で、切り身にしてムニエルにならない小魚のヒメジの写真を添えていることが多い、これがなんとなく滑稽である。見当違いですよ、と言いたくなる。そのときの、ルジェーが実にまずかった。冷凍輸入したものだろうし、飾りが多すぎるしで、フランス料理の名店などくそくらえ、と思ったものだ。実は、自分で作ると非常においしいのである。今回のホウライヒメジはウミヒゴイ属で大型になるタイプ。大きくなるとソテーにしにくいが、このサイズはソテーに向いている。三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を取る。表面の水分をていねいに取る。塩コショウして、小麦粉をまぶし、少し置く。これを最初弱火でじっくりソテー、中火に上げて、仕上げる。仕上げにタイムの枝とバターでモンテ(強火にして泡立てて塩コショウで味を調える)する。皮は香ばしく、身は豊潤である。最大の魅力は皮の風味と、身よりも遙かに強い甘味だ。甘味がすぐに消えないのもいい。身は端正な味である。柔らかな筋繊維が束になっていて、口の中でほどよくほどける。いけないと思いながら山梨県の一升瓶赤をロックでやってしまう。Vin rouge なので、赤 et 赤だ。
コラム

小田原江之浦沖のやや大アジの刺身

神奈川県小田原市、小田原魚市場で年間を通じて水揚げをみると、必ず年間での魚の味の変化がわかるだろうと思っていた。たしかに個々の魚の味の、大きな波の上下はわかってきたが、いちばんわからないのがマアジとは思いもしなかった。日渉丸、江の安漁場のワタルさんが選んだ個体とか、二宮定置の山崎さんなどの若い衆が選んでくれた固体は時季に関わらずおいしい。結果、大きさによる味の違いがわからなくなってきた。結果、時期はずれ期間がはっきりしなくなっている。5月、6月は当たり外れがない時季ではある。でも、この時季が相模湾西部の旬だとも言い切れない。漁場によるずれがあるのである。小田原随一の目利き、仕立てのプロである、江の安漁場のワタルさんが選んだ固体、江之浦漁港前のマアジなので、食べる前から結果はみえている。脂のいちばんのる時季は少し後だけど、水揚げ15時間後の刺身は室温に置くと、表面が脂で滲み始める。うま味はこの時点ではイマイチだけど、この時点だからこその強い食感がある。
コラム

黄金の穴子は凄い! 天ぷら編

最近、舵丸水産は穴子(マアナゴ)に力を入れている。大量仕入れなのでいろんなマアナゴがくるが、この金色の固体は初めてらしい。そんなに期待していなかったのだけど、がしっと二つ割りにすると液化した脂がキラリキラキラだった。香ばしい衣の下に、皮のうまさがあって、その下に半液化した脂がある。身の甘さがあって、強いうま味がある。なによりも香りが素晴らしい。マアナゴは小骨がある。この小骨が柔らかいので気にならない。だから非常に高価なのだ。ただ、固体によっては小骨の気になる5P(200g)もあるけ、この金色の固体の小骨はまったく気にならない。マアナゴは金色を探せ! なのかも知れない。春菊の天ぷらと合わせて、朝ご飯を食べたら、「今日も頑張れるぞ!」なんて思った。やはり、「ありがとう」くらい言うべきだったかも。
コラム

春の小田原、ムツ子の唐揚げ

今回はカタクチイワシと、ムツ子、ゴマサバ子を2日にわたって唐揚げにして食べた。小魚の唐揚げはいうなれば定番的な料理である。突き出しに小皿に2、3尾とうこともある。ちなみに唐揚げの料理店の料理としての地位は、西日本で高く、東日本で低い。西日本では御馳走で、東日本ではなんとなく注文するものでしかない。西日本の料理人は積極的に作るが、東日本では嫌う料理人が多い。さて、今回唐揚げ3品の第一弾がムツ子である。まだ温もりのある内に口に放り込んだ。非常に上品な味わいで、身にも味がある。冷めたら香ばしさが増して、スナック菓子のような感じになる。味わい深く、上等すぎるスナック菓子である。唐揚げとしては特徴がないのが残念であるが、ついつい箸が伸びる。今回は揚げて塩味(しおあじ)だけだが、これが正解だった。ムツの唐揚げはたいへん軽い味なので、コショウもなにもいらない。こんなにさくっと軽いとは思わなかった。ひとつかみではなく、もっと持ち帰ってきてもよかった。飲み物は、まだ逢魔が時なので凍頂烏龍茶。
コラム

クロダイのカルパッチョは一枚の絵なのだ

初めて魚のカルパッチョを食べたのは、昔々その昔である。サッカー人気が話題になっていたときなので、ほんまに昔だろう。そのときのものは魚の生の切り身を皿に並べて、上に彩りよく香りのある野菜やハーブを並べてお絵かきをするといったもの。ものすごくにんにくがきいていて、テーブルの上で追いオリーブオイルをかけてくれた。以来、そのときに何軒か回った店のスタイルに従っている。ボクの作るカルパッチョは、クロダイの身を皿に馴染ませた状態など、絵描きがカンバスを張るようなものかも。その上に神奈川県秦野市で買った種なし赤ピーマンと、フルーツトマト、タイムを散らしてみた。あるだけの材料なので、とてもシンプルなものとなる。締めて3日目のクロダイの、端切れを集めて薄く切ったのでエレガントではない。今回は夏泳いだ後のような、疲れの波を受けていたのでどっさりとにんにくを使った。仕上げに追いオリーブオイルではなくライムを搾る。ちょっとだけ味は野性的である。甘い素材は今回はなし、あるときはキウイ、季節によってはラズベリーなどを使う。ただ塩とオリーブオイルとにんにくと、白コショウだけの味つけで、うま味たっぷりの3日目の、クロダイの味をそのまま堪能出来てあまりある。ちょっと濃い味だなというところを、ライムの酸味とタイムの香りが救ってくれる。おざなりに作ってもカルパッチョはうまいのだ、ということがわかる。ついつい、皿に並べてチャンチキおけさ♪ なんて唄っている自分がいる。午後2時なのに、山梨で買った一升瓶の赤ワインをロックで一杯。昼酒できないのに、浮かれ飲みして1時間だけダウンする。
コラム

カイワリの刺身、ウマスギてこまっちゃうな

とれて11時間後のカイワリの刺身は、ボクの目の前で脂という名の汗をかいていた。出てくる汗をなめたいと思うのは、魚の脂汗だけだ。カイワリのすごいところはとったその日から味があることだ。このあたりが背の青い魚である、アジ科の魚らしさだ。個人的には味の点ではアジ科の頂点に立つと思う。
コラム

一色産ヒゲソリダイの割り下鍋

ボクは年がら年中鍋を食べる。鍋は時間を楽しむものだ。いつもは早食いなのに、鍋の時にはゆったり時間をかけて食べることが出来るので、精神的にもよい気がする。今回の鍋は割り下で煮ながら食べるだけなので、わざもコツも不要である。まずは魚の切り身と野菜を食べる。ヒゲソリダイの身の味わい深さに恐れおののく。奇妙なくらい、煮れば煮るほどうまい。皮の部分がぶよーーーんと柔らかく、とろっとなる。甘いし、筋繊維がやけに簡単にほどける感じがいい。ちなみにつゆは時間がたつほどおいしくなる。煮汁に染まった野菜はいくら食べても嵩を感じない。こんなに野菜をたっぷり食べても、もっと食べたい気分になる。小鍋仕立てなのに野菜は山盛り盛り盛りである。終いに醤油色に染まった清洲の「かくふ」を食べて、本当に終いにする。時間をかけて食べてもいただきものの菊正宗樽酒正一合とは、我偉し。
コラム

ムレハタタテダイ・ハタタテダイめも

ムレハタタテダイとハタタテダイは混乱期が長かった。まず最初に田中茂穂以前、石川千代松などが神奈川県江ノ島などで採取した個体を、Heniochus acuminatus (Linnaeus,1758) とする。ジョーダンの、Heniochus diphreutes (Jordan,1903) のムレハタタテダイの新記載は、標準和名決定の後である。ハタタテダイ/Heniochus acuminatus (Linnaeus,1758)ムレハタタテダイ/Heniochus diphreutes (Jordan,1903)日本列島で見る限り、ムレハタタテダイの方が一般的で、ハタタテダイの方が珍しい。本州などではハタタテダイの方がより南方系である。標準和名、ハタタテダイの方がムレハタタテダイより早いが、1903年に日本列島で普通のHeniochus diphreutes (Jordan,1903) とむしろ珍しい、Heniochus acuminatus (Linnaeus,1758) とで標準和名の再検討をすべきだった。標本としてのムレハタタテダイは東京大学総合研究博物館動物部門所蔵魚類標本リストで見る限り1909年~、だが当然ハタタテダイと混同。ハタタテダイも同様である。基本的に稚魚が多い。両種ともに1950年代まで日本列島での成魚は非常に少なかった可能性がある。ハタタテダイは我がデータベースのデジタル画像では2005年の三重県尾鷲市の成魚があるが少ない。日本列島で見る限り、ムレハタタテダイが普通でハタタテダイの方が珍しいと思われる。呼び名もハタタテダイとムレハタタテダイは共通させる。今現在、相模湾でムレハタタテダイの成魚は普通である。個人的には相模湾ではハタタテダイの成魚は見ていない。我がデータベースのデジタル画像では2002年に三重県尾鷲市の成魚。近々2025年5月09日、神奈川県二宮沖二宮定置 130mm 二宮定置。ムレハタタテダイが一般的な専門書に登場するのは1984年で、井田齊の解説による。『魚類大図鑑 南日本の沿岸魚』(益田一、荒賀忠一、吉野哲夫 東海大学出版会 1975/11/25)にムレハタタテダイは掲載されておらず、明らかにハタタテダイの中にムレハタタテダイの記述がが含まれている。ハタタテダイ/本州南岸では夏から秋に幼魚が内湾の浅所でよく見受けられる。それらは晩秋に港口部に集まり、深みに移動する。成魚は奄美以南に普通。時に数十匹の群れをつくる。『日本産魚類大図鑑』(益田一、荒賀忠一、尼岡邦夫、上野輝弥彌、吉野哲夫 東海大学出版会 1984)分布域が南北(北緯)20度より高緯度であること。生息水深がやや深い(3~180m)ことなどで区別される。井田齊(さとし)
コラム

じゃみはまぐりの醤油煮で二合半

酒を飲みたい時もある。酒が主役で肴は脇役ということもある。そんなとき魚屋の店頭で「じゃみ(チョウセンハマグリの幼貝)」を一握り買って来る。ど深夜にざざっと料理して、酒を用意して。こんなざざっと料理が、デスクワークの末の夜酒にもっとも相応しい。面白いもので酒蒸しにして、酒だけでの味つけですらチョウセンハマグリの身は甘味が強いが、醤油・みりんが加わるともっと甘味が増す。わたの濃厚な味、足の食感がくるとたまらない。箸もなにも使わないで、1個手に取っては貝殻ごとしゃぶり、酒で流す。神奈川県の「松みどり」はとてもソフトな飲み口だけど、やけに合う。疲れ果てた、末の夜酒に、二合半。
コラム

刺身のうまさに、クロダイはまだいけるとぞ思う

5月9日の神奈川県小田原魚市場はアジであふれていた。名物といってもいいカイワリもたくさん揚がっていて、活況を呈していた。箱にも、活魚槽にも、この時季多いのがクロダイ(西日本のチヌ)である。活魚槽をのぞくと、手頃なのがいたので、さんの水産さんにお願いして買って頂く。体長37cm・1.5kgの雌で卵巣は非常に大きく膨らんでいたが、ばらけ感はなかった。ちなみに刺身にするなら活魚。加熱するなら活け締め、野締めでも可、だと思っている。いずれにしろ高い魚ではないので、そんなにガタガタ言いたくはない。近年魚価が全般に上がっているが、白身魚はおしなべておいてけぼりになっている。これは白身魚(昔の白身魚で、キチジや目抜け類、アカムツは含まない)全種の価値の下落だし、白身魚に対する国内の料理人、消費者の間違った認識による。その点からしても「クロダイは安い」と、他の白身魚と比べないで無闇に言う人がいることに驚く。ちなみに活魚は決して安くはない。午前、6時過ぎを小田原魚市場で締めてもらい、血抜きしたものを昼過ぎに刺身にすると、身に張りがあり、食感が心地よくてうまいとは思ったが、歯が立たない。一度、仮眠をとって、午後8時して食べたら、俄然おいしくなっていた。そして午後10時に夜酒のともに刺身して味が◎となる。そして翌日の、今はもっとうまくて、ご飯の友としたので、飯がすすんで危険だと思ったほどだ。うま味濃厚で、しかも食感が心地よい。うまいクロダイの刺身で、飯を食う時間はいい時間だ。これなら5月中に、もう一度買ってみよう!
コラム

小田原の朝ご飯、土曜日はカレー

2025年5月3日、土曜日なので、港のおっかさんのところはカレー。連休中なので店は混んでいた。ちなみにボクたちが行くのは8時前だ。この時間、当日の魚はまだ来ていない。市場人以外は、少し後の方がいいのだよ。おっかさんのカレーはちょっと辛口だ。期待でわくわく。でもボクのお腹を見て、小森和子が出て来た。あとで涙がぽろぽろぽろりんこ。黙っていても大盛りが出てくる、お腹になりたい。
コラム

5月、北海道噴火湾からオオズワイ雌

当たり前だけど、魚介類は年間を通して食べないと、その魚介類の味はわからない。特に甲殻類十脚目短尾亜目ケセンガニ科オオズワイガニは、食べている量も少ないのでがんばるしかない。ただ往々にしてうまいので、苦ではない。今回の北海道産(たぶん北海道日高周辺)雌は気になって致し方ないので、買ってみた。
コラム

ヒゲソリダイの塩焼きで思い出す

愛知県知多郡阿久比町『項明水産』、鈴木項太さんにいろいろ送って頂いた。中にヒゲソリダイがあった。1キロ上でしっかりと締めている。以上は以前にも書いた。腹の部分の塩焼きを作っていて、『かもめ食堂』(2006年)という映画のことを思い出す。待つのが仕事のような仕事だったので、この映画を見てしまったのだ。面白い映画だなと思ったけど、それ以上に気になる点があった。仕事で見ている女子にお願いして、その箇所をもう一度見た。「やはり間違いない」。たぶん養殖されたタイセイヨウサケ(サーモン)だと思われる切身に振り塩をして、すぐに焼き始めている。絶対に間違いとは言えないが、尺からしてこうなったのやも知れぬが、料理監修の面からしてどうかな。以上はかれこれ20年も前のことなので、不確かかも。海水面養殖なので、タイセイヨウサケの体内塩分濃度は高いはず。振り塩をしても馴染むのに時間がかかる。塩がきかないまま焼いたら、表面だけ塩からいだけでしかない。塩と魚の本体とが味の点からしてばらばらじゃないかな?淡水魚は体内の塩分濃度が低いのですぐに塩が馴染む、のとは違う。なんて考えながらヒゲソリダイの腹の身に振り塩をして、待つ間、保存画像にテキストを加えて保存するなどして、ちょうど1時間で焼き始める。一般家庭なのでガス台のグリルで焼き上げる。愛知県一色産のヒゲソリダイは今まさに脂が乗っていて、旬なのである。皮目のうまさは、過去には、イサキ科だったことがあるので、イサキのように独特の好ましい風味があり、皮だけでも御馳走である。ほどよく繊維質の身の甘さよ、強いうま味よ、と思わずつぶやいてしまう。これにて頂き物の、菊正宗樽酒を正一合。項明水産、鈴木項太さんに感謝致します。項明水産https://komeisuisan.com/
コラム

旬に突入したホウライヒメジの刺身・皮霜造り

愛知県知多郡阿久比町『項明水産』、鈴木項太さんにいろいろ送って頂いた。中に比較的小振りのホウライヒメジが入っていた。小さいのに触っただけで上々であることがわかる。非常に硬いのである。5月から夏にかけてはホウライヒメジの時季だ。早速、刺身にして皮霜造りにして楽しんだ。いかにも5月だな! という刺身の色だ。小型なので曇りガラスとまではいかないが、身色が薄濁りになっている。濁りの原因が脂なのだ。ホウライヒメジの味の特徴は甘味が強いことだが、事ほど左様に甘い。しかもうまい!こんなにウマスギだと困っちゃうという味である。
コラム

倉橋島の魚、目の下1尺半、マダイの炊き込みご飯

4月24日、広島県呉市倉橋島、『日美丸』、平本勝美さんにいろいろ送って頂いた。当然、中には倉橋島名物の鯛(マダイ)が入っていた。全長50cm・2㎏上は目の下一尺半である。桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季だ。これを骨を残して総て料理し尽くす。4月29日に炊き込みご飯を作った。4月後半から狂乱の魚祭、貝祭だったので、炊き込みご飯のようにあっと言う間のご飯がよかったのもある。
コラム

ヒゲソリダイの、旬はこれから、だ

愛知県知多郡阿久比町『項明水産』、鈴木項太さんにいろいろ送って頂いた。中にヒゲソリダイがあった。1キロ上でしっかりと締めている。まずは刺身で食べてみる。わさびもしょうがもなし、醤油すらつけずの刺身一切れで思ったのは、ヒゲダイの仲間(ヒゲダイ属でセトダイ、ヒゲダイなど)が旬を迎えつつあることだ。一切れなのにぎょうさんうまい、と言うしかない。いきなり脂を感じるとまではいかないが、ねっとりとして、ほどよい脂が舌にへばりつく。ほんの少しだけ磯臭みがあるが、これが本種の持ち味である。この磯臭みは脂がのっていくると完全に消えるが、それはそれでもの足りなく感じる。だいたい醤油とわさび、しょうがで完全に消えるといったもので、味に膨らみをつける素でもある。ご飯の友としたが、身の甘味がご飯と合う。
コラム

三浦半島東京湾のマアジの刺身に時季到来を感ず

今年に入って最高のマアジだと思う。予想していたことだけど、最初の一切れを食べて、予想以上だった。正確に言えることは、東京湾だけではなく、日本全国、マアジの季節到来である。鮮度が非常にいいのに切りつけた身が柔らかいのは、当たり前だけど脂が身に混在しているからだ。ちなみにマアジでも脂べっとりといったものがあるが、個人的には身にほどよく混在するのが好きだ。今回はしょうが醤油で素直に食べたが、困ったおいしさだった。これにて、頂きものの、菊正宗樽酒を正一合。こなから、は遠し。
郷土料理

故郷の味、きゅうりとじゃこ、ワカメの酢のもん

個人的に料理はできるだけ簡単に、時間は短く、こだわりを捨てて作りたい。料理の距離は1ミクロンでも短く、だ。意外にそのような、どうでもいい感じの料理の方がうまい。遙か昔の昔、親戚のおばちゃんが作った、竹の子のたいたんが、いまだに心に残っているが、作っているところなんざー、見ていられませんといったいい加減なものなのである。だけど、竹の子1本食い切るくらいにうまい。これが家庭料理の神髄なのだ。さて、酢のもん(酢のもの)の話だ。ボクの故郷は徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)だが、親戚の多くは、吉野川の対岸にある美馬町(現美馬市美馬町)に住んでいた。だから再三再四、美馬町に、赤い美馬橋を渡って行ったいたものである。さて、そんな美馬町も我が貞光町でも、日常的にも冠婚葬祭のときにも作っていたのが、じゃこ(ちりめんじゃこ/カタクチイワシの稚魚をゆでて干したもの)と鳴門ワカメと、きゅうりの酢のもんである。作り置きすると10日間くらい食べ続けられる。食卓にあるとありがたいもので、要するに保存食だ。
コラム

愛知県新城市『さかえや』の桜餅など

オヤジでもジジイでもだれでも気軽に入れる、昔ながらの甘いもん屋を探して東奔西走。急激に減少している個人商店を大切にしたいのもある。愛知県一色への旅の帰り道、新城市で和菓子店を見つけた。新城市、『さかえや』という小さな店である。新城市は長篠のある町というくらいの認識しかない。信濃から東海、尾張地方への道筋に当たるなど、こんどじっくり歩いてみたい町である。小さくて素朴な店だが、入ったら品揃えがいい。正面には落雁がきれいに並んでいる。あんこ族なのでできるだけあんこものを選び、話を聞くと、やはり飾ってある落雁などで有名だったらしい。買い求めたのは、田舎ういろう、桜並木、桜餅(道明寺)、柏餅、酒饅頭、野田城巻。
コラム

サラガイのチャーハンとそばつゆで作ったワカメ汁

マルスダレガイ目マルスダレガイ科スダレガイ属の二枚貝を同定中なので、机の上が図鑑、専門書10冊と貝殻でいっぱいいっぱいになっていた。要するに、悪戦苦闘していたのである。猛烈に頭が忙しい最中なのに腹が減る。お腹と背中がくっつくぞ、となり、冷凍庫を漁る。見つけたのは正体不明のこれまた二枚貝の剥き身だ。これを解凍する。ご飯をチンして、ねぎを刻む。卵を割ってかき混ぜる。鉄のフライパンを熱して、卵を入れて、片面が焦げたら剥き身とご飯を同時に入れる。炒めたら加減をみて(貝に塩気があるので)塩コショウ。さらに炒めてねぎを散らして、またまた炒めて出来上がり。同時にそばのつけつゆを水で割って温めて、わかめの汁を作る。
コラム

5月のブリはまだまだうまいし、安いし

神奈川県小田原市、小田原魚市場、定置網の水揚げを見ながら考えた。5月の今こそ、ブリ(関東でいうワラサ5キロから8キロ以上)を食べよう!昔の冬の定義は旧暦の10月〜12月で、だいたいだが新暦の11月後半から2月1日前後だ。気象庁の、冬の定義は新暦の12月から2月いっぱい。ブリの旬は旧暦・新暦も考えないまま、ばくぜんと冬だと思っていないだろうか?実は旧暦にしろ、新暦にしろ、冬には、それほどブリが揚がるわけではない。ちなみに定置網で、ブリがたくさん揚がりおいしい時季は北海道では、新暦(今のカレンダーで)8月後半から10月くらいまで。本州でも比較的北では冬の、新暦(今のカレンダーで)1月半ばから3月、南に下がると新暦(今のカレンダーで)3月から5月くらいまでなのだ。
コラム

倉橋島の魚、イネゴチの潮煮

4月24日、広島県呉市倉橋島、『日美丸』、平本勝美さんにいろいろ送って頂いた。中にイネゴチが入っていた。倉橋島では「蛇鯒(ジャゴチ)」という。体長40cm・567gなので、やや大きめだ。これを刺身にして味のよさにびっくり。潮煮にして、またビックリ仰天する。おいしいのである。潮煮は濃く取った昆布だしと酒・塩だけで煮るのだけど、イネゴチから出るうま味と合体して生まれた汁のうまさを堪能する。皮は無残にも溶けてしまうものの、身がほろほろ脆弱で甘い。イネゴチの身に、こんなに味があるとは思わなかった。きっと倉橋島周りのエサがいいのだろう。また島の多いところで潮の流れが強いからかも知れぬ。
コラム

三重県熊野産皿丈のトマト煮込み

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産の隅っこにイカ(スルメイカ)の箱があった。1ぱい30g前後で、市場ではバライカというサイズよりも小さなサイズで、昔はよくみかけたものだが、最近はめったに見かけることがない。「いくらじゃ?」ときいたら、「エサに買ったヤツだから。少し持っていっていいよ。全部はだめだかんな」と返された。くれるということらしい。せっかくくれるというので、たっぷりもらって来た。銭州のシマアジの上前をはねるとはこのことだ。これで朝ご飯に作ったのがトマト煮込みだ。東京都山手線、目白駅構内に浅野屋を見つけて、買ったバタールと合わせて、とてもおいしい朝ご飯となる。それにしても駅構内に四谷、『浅野屋』の支店があるなんて、さすがに超高級住宅街だな、と思う。ルビーポートで少し甘めに作ってみたが、実に味わい深く、滋味豊かだ。トマトのグルタミンとイカの風味・うま味が一緒になると、最強かも知れない。イカを丸ごと使ったので、見た目は薄汚れた感じだけど、その汚れた分、味はいい。パンに乗せて食らうと、お腹にすーっと消えて行くので朝ご飯にぴったりである。パセリ代わりに使ったギョウジャニンニクの葉が、これまたとてもいい香りを放つ。
高梁市,魚屋
コラム

倉橋島の魚、ヒラの塩焼きとつけ焼き

広島県倉橋島のヒラを目の前にして、岡山県の話をするのはおかしいかも知れぬが……。昔、岡山県高梁市を縦に横に歩いた。家並みがきれいで、「どこから行っても遠い町」な、ところだった。知らない町なのに人恋しくなる、町だ。富山県の城端とともに、もう一度歩きたい街角・曲がり角のあるところでもある。逢魔が時に、ボクと同い年のオバチャンに会って、ヒラの話を聞いた。近くでヒラの骨を切る音が聞こえたので、話しかけやすかった。「ヒラは焼いた方が好き」だという。どうやら1970年という食文化の大変動以前の人間にとって、ヒラは刺身などでも食べるけど、基本的に焼くか煮るか、どちらかの魚のようだ。■写真は岡山県高梁市の魚屋の店頭。
コラム

まだまだいけそう、石川県産マイワシの刺身

関東の人間は海の幸では太平洋側に気が向きがちである。だから入梅鰯などという言語を、さも全国的な言語と誤解する。4月、5月は川崎北部市場の荷受け(大卸のことで世界中から魚を集めてきて競り、相対取引を主催する)だけの話ではあるが、石川県七尾からのマイワシの入荷が盛りを迎えている。この分では七尾だけではなく、日本海全域でマイワシがとれている、気がしてきた。さて、4月30日の石川県産マイワシは、卵巣・精巣がまだまだ未熟で、肋骨に張りついた身は真っ白である。薄くそぎ切りにした刺身に醤油をかけて、しょうがとからめて、昼、ご飯の友とする。切りつけてすぐ、刺身の表面が滲み始める。口溶け感の心地よさに、よしこのが聞こえてくるようだ。温めたご飯の減りが早い。脂から感じられる甘味とご飯の甘味が口の中で結婚する。そこに醤油の味がきて喉に消える。5月1日の舵丸水産にも来ていて、料理人が争うように買っていく。日本海のマイワシの旬は春なのだが、春の過ぎ去るのが寂しい。
郷土料理

小さいけど非常に美味、ミクリガイ

ミクリガイの仲間(エゾバイ科ミクリガイ属)は、主に煮て食べる巻き貝である。煮て食べる巻き貝には、同じエゾバイ科の「磯つぶ(エゾバイ)」、「白ばい(エッチュウバイ)」、バイ科のバイなどがあるが、味の点ではこれらを凌ぐと思っている。比較的通好みの、知る人ぞ知る、といった巻き貝だが、この小さな巻き貝のことも知って置いて損はないだろう。ミクリガイの仲間の巻き貝はみな小さいく、模様が様々でとても美しい。本州、四国、九州の比較的暖かい浅い海域で至って普通に見られる。食用となるミクリガイ属はミクリガイ、九州東シナ海側のクロスジミクリ(ミクリガイとされることが多い)、ミオツクシ、シマアラレミクリ、トウイトガイ、マユツクリガイなどだ。ときどき市場流通もするが、産地周辺で消費されることが多い。このわずかに市場流通していたものが、ここ十年来、より希なものとなっている。明らかに生息数が減少しているのだと思うし、浅場のカゴ漁など貝をとる漁が衰退しているのもある。そして最大の、減少の原因は、日本列島の海岸線の乱開発だと思っている。沿岸域の浅場では、今、巻き貝など軟体類だけではなく、魚類も減少傾向にある。ミクリガイの仲間で比較的見かける機会が多いのはミクリガイだ。ときどき全国流通もするが、同種内での色・模様や形の変化が大きい上に、非常に地方名が多いため、貝専門の仲卸(市場の魚屋)にすら認知度が低い。また、近年、プロの料理人の水産物への関心が、ますます薄れている気がする。今やプロといえども、目立つものには強い関心を示すのに、地味なものには無関心なのである。流通が不安定なものは儲からないので、ミクリガイの仲間には興味がわかないというのもあるだろう。■写真は愛知県西尾市一色産ミクリガイ。
コラム

倉橋島の魚、目の下1尺半、鯛の潮煮

4月24日、広島県呉市倉橋島、『日美丸』、平本勝美さんにいろいろ送って頂いた。当然、中には倉橋島名物の鯛(マダイ)が入っていた。全長50cm・2㎏上は目の下一尺半である。桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季だ。これを骨を残して総て料理し尽くす。刺身は先にも書いた。それはともかく、久しぶりに潮煮を作る。かまの潮煮の、出来上がりにすだち丸々1個搾り込んで、後は食らうだけだ。昆布だしでことことじっくり炊き上げたもので、表面の皮から、身からして、とろりと柔らかい。器に盛り付けるときは国宝を輸送するが如し、の気持ちでなければならない身から飛び出した肩帯(胸鰭周辺)の骨をつまむとひょいっと抜ける。マダイの肩帯と腰帯周り、すなわちかまの部分の骨が大きく小骨が少ないのも魅力だろう。抜けた骨周りの身をすすり込んだら、もうそこにあるのは別世界である。皮と身は、濃厚な昆布だしとマダイのうま味が凝縮されて液体のように舌を這う。潮煮は日本料理の基本ともいうべき料理であるが、要するに昆布の味と魚の味を仲睦まじくさせるといいのだ。皮や身、煮汁をすすり込む時間が永遠続くといい、とも思う。ちなみに潮煮はご飯の友というよりも、酒と相思相愛である。できれば燗酒を用意したい。煮汁は別の器に半分入れて、ときどきぬる燗と半割にして飲む。煮汁で酒がのめるのもうれしいねー。汁も身も皮もなく、器に残ってるのは鰭と骨だけになったら、残念ながら終いである。
コラム

愛知県豊橋市『御菓子所 絹与』の小豆羊かん

新潟県上越市で「寿羊羹」を買って食べてから、まさかの羊羹好きになってしまった。これなら赤坂某店の「夜の梅」だって、今食べたらうまいと思うかも知れない。ちなみに「あんこ」が好きで和菓子が好きなボクにとって、せっかくの「あんこ」のもとである小豆などの豆類の「あんこ」感を取り去った羊羹がどうにも許せなかった。ボクの「あんこ」ちゃんを返してくれ! と思ったほどだ。滋賀県周辺の蒸し羊羹である、「丁稚羊羹」は好きだけど、「練り羊羹」ときたら、「あんこ」様の「あんこ」であることのよさが感じられなかったのだ。でも、今、ボクは「あんこ」と同じくらい「練り羊羹」も好きだ。好みがころころ変わるのがボクのボクらしさで、ころころ変わるのが進化という名の変化である。だから食通という進化を止めた存在が嫌いなのだ。さて、『御菓子所 絹与』は豊橋市市街地のど真ん中にある。前の通りが旧東海道である。京に向かって東海道宮宿(熱田宿)手前では最大の宿、吉田宿で、吉田藩の城下町でもある。愛知県でも屈指の人口を誇り、歴史のある町だともいえるだろう。この店から西に豊橋市の老舗が多く、これが江戸時代の吉田宿の中心地なのかも知れない。そんな豊橋で見つけた『御菓子所 絹与』は享保年間創業とあるので、300年の歴史を持つ老舗中の老舗だ。昔、和菓子屋を見つけて、入って、羊羹中心の店だったら、がっかりして回れ右していたものである。でも今回は羊羹好きの新参者として、一棹(さお)買ってきた。店のお姉さんも美人でよかった。これを5日間にわたっておめざに食べる。落語家の羊羹食べのような、ヤな感じの舌触りではない。ちゃんと小豆の粒子が感じられて、歯にもつかない。小豆の渋の残り方も絶妙だと思う。小豆にはうるさいつもりだが、非常に上等なものを使い、その上等な小豆を生かせていることも明白。羊羹は高いものだが、5日で割れば安いものだ。豊橋に行ったら、必ず『御菓子所 絹与』に寄りそうである。
コラム

一色のイタヤガイ、ツキヒガイの食べ比べ

鈴木項太さんに送って頂いた愛知県西尾市一色の、イタヤガイ科イタヤガイ、同科ツキヒガイを刺身にして食べ比べてみた。今回はちょっとだけツキヒガイの方が甘味が豊かで、貝らしい風味が優っていた気がする。でも気のせいかも知れない。それにしてもイタヤガイとツキヒガイはうまい。もちろんイタヤガイ科の食用貝は総てうまいけど、この2種はうまさのラインが刺身にして他の二枚貝より上だ。次いでヒオウギかな?といいながら、ヒオウギを食べるとまた違ってくるのが、ボクが通ではない証拠である。結論、イタヤガイ、ツキヒガイ、ヒオウギガイは同じくらいうまい。一色のすごいところは、このイタヤガイ科3種が全部揚がることだろう。
コラム

倉橋島の魚、目の下1尺半、鯛白子天ぷら

4月24日、広島県呉市倉橋島、『日美丸』、平本勝美さんにいろいろ送って頂いた。当然、中には倉橋島名物の鯛(マダイ)が入っていた。桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季。雄で体が黒ずんではいるものの、精巣(白子)はまだ硬く成熟度は低い。白子は明らかに食べ頃である。白子は天ぷらにした。鯛白子天ぷらは東京都内、天ぷら屋では春の定番種だと思っている。白子を揚げるとき、衣を改めて作り直してから揚げているのが記憶にある。たぶんクルマエビや「めごち(ネズミゴチ)」のための、薄めの衣をつけて高温で揚げると、火が通り過ぎる、もしくは中の白子が散るのだと思う。天ぷら屋では職人さんのなすがままに食べたことはあるが、めったに追加したことはない。その「めったに」の種が白子だった。白子はていねいに取りだし、中の筋などを取り去る。軽く振り塩をして小麦粉をまんべんなくまぶして、厚めの衣をつけて高温で揚げる。使っているのは市販の天ぷら粉(これだと技いらずだ)に氷で冷やした水で厚めの衣を作る。一般家庭なのでわざわざ神経を使って衣を作る気になれない。最近の天ぷら粉はとてもヨイヨイよいやサ、だ。揚げたてを食べる。白子の衣は厚めの方がうまい。さくっと音が聞こえるくらいでなければならない。当然、中から一瞬だけ熱々の半液化した白子がとろりとくる。舌触りは生クリームのようだけど、ちゃんと魚らしい味わいがある。残念なのは、5分以内に食べないとおいしくないことかな。鯛の白子天ぷらに敬意を表して、本物ビールの晴れ風500mlを開ける。ボクに好みのビールが出来るなんて、思わなかった。日美丸さんに感謝!
コラム

倉橋島の魚、目の下1尺半、マダイの刺身

広島県呉市倉橋島、『日美丸』、平本勝美さんにいろいろ送って頂いた。当然、中には倉橋島名物のマダイが入っていた。倉橋島は広島市の南にある。広島側からは江田島があり、倉橋島と大きな島が連なる。呉市に統合されてしまっているが、もともとの呉との間には音戸の瀬戸という海峡がある。たぶん広島県の最南端に当たるのではないか。このあたりは、広島湾から南に島と島が重なり合い、多様な貝類、エビなどが豊富で豊かな海域である。そんな海域で、多彩な貝類やエビなどを食べて育ったのが倉橋島のマダイだ。全長50cm・2㎏上で、吻から目の下、尾の先までが1尺半。マダイは目の下2尺までがいちばんうまいと思っているが、まさにそのサイズである。桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季。雄で体が黒ずんではいるものの、精巣(白子)はまだ硬く成熟度は低い。『日美丸』のタイ釣りは伝統的なフカセという釣法で、いわゆる一本釣りである。マダイはエサ(食べているもの)、漁法、扱う人によって大きな差が出る。そのどれ一つが欠けても、うまいマダイは生まれない。
コラム

宮城県産目光の天ぷらで昼ご飯

市場で「目光」と呼ばれている魚は、昔は千葉県銚子以北で揚がったらマルアオメエソ、南で揚がったらアオメエソなんて摩訶不思議な話がまかり通っていた。例えば、茨城県のマルアオメエソと駿河湾のアオメエソを並べてもまったく違いがわからない。個人的には同種だとしか思えない。それで産地によって種を分けるしかなかった。この銚子以北のマルアオメエソが消滅してくれた(シノニムとなる)ことは、まことに目出度い。ただし、このアオメエソ属の画像は膨大なので、データの合体になかなか手をつけられないでいる。しかもバケがいる。この手頃なアオメエソ(目光)を一つかみ買って、八王子総合卸売センター、八百角でノビルを買って天ぷらにして、乾麺のそばをゆでて……。これがボクのお昼となりぬ。そばつゆは、めじか節厚削り節(マルソウダ)を煮だし、砂糖・醤油でつゆにして、追い鰹(かつお節削り節)をしたものだ。
コラム

倉橋島の魚、ヒラの刺身

広島県呉市倉橋島、『日美丸』、平本勝美さんにいろいろ送って頂いた。うまいに決まっているセットだけど、本命はさておき、最強クラスの脇役から。ニシン目ヒラ科のヒラである。体長49cm・1.384kg はこの魚としては小振りである。魚類に興味のない人にとっては巨大なニシンのような魚で、北海道でも見つかっているが、あえて言うと瀬戸内海周辺、有明海周辺の魚といいたい。この魚、広い内湾域がないと産卵できないのではないか、と思っている。この点からも、自然破壊だけしかやらない、企業や行政や政治家達は、ヒラだけではなく、地球にとっても敵である。
コラム

増毛産「ぼたんえび」に満足満足!

八王子卸売協同組合、舵丸水産に北海道増毛から特上の「牡丹海老(ぼたんえび)」が来ていたので、味見用に1尾買う。一般的に「ぼたんえび」というのはトヤマエビのことだ。日本海と北海道以北の深場にいる大型の美しいエビである。標準和名(図鑑などにのるときの)ボタンエビは近縁だが別種なので要注意。もちろん標準和名のボタンエビだってやたらにうまい。
コラム

石川県産マイワシの刺身ではなく、なめろう

生の魚とみそとたたいたものは、「みそたたき」ともいい、「なめろう」ともいう。どっちでもいいのだけど、今回は酢で食べたので、千葉県南房での料理名、「なめろう」としたい。千葉県千倉の漁師さん、食堂のオカミサンに教わった食べ方だからだ。最初は酢をつけないで食べてみる。口に入れると、まことにあっけない。噛み応えがなく舌の上で溶ける。脂のりすぎ、といった感じである。疲れから大量投入したにんにくの存在が感じられない。感じられるのはみょうがだけだけど、それだけマイワシの存在感が大きい。荷の作りから石川県七尾産とみたが、富山湾ではなく、七尾湾に入り込んだ群れやも知れぬ。このように思いを馳せるのも楽しい限りなのだ。さて、食べてはやや控えめに酒をあおり、あおりして食べ進んでいったら、皿の上がきれいになってしまっていた。明日の「さんが焼き」はなし、となる。
コラム

煮干しは絶品。ネンブツダイとクロホシイシモチ

未利用魚、未利用魚と騒がしいが、未利用魚がわかっている人はいない。未利用魚は奥が深く、まだまだ定見がない。ここに未利用魚の基礎知識を始めていきたい。最大の問題点は未利用魚の定義が曖昧なことだ。未利用魚問題は、巨大なデータを見て初めてわかるが、国内を見渡す限り、どこにもそんなものはなく、あえて言えば我がサイトが一番大きい。また、魚価を知らなければ、未利用魚はわからない、が、そのためには、日常的に魚を買わないとダメだが、そんな人間見た事がない。当然国内各地で聞取をする必要があるが、例えば漁業者に聞いてもいいが、加工品業者、買受人(大卸・仲卸)、小売業の話も重要であり、消費者も重要だということを忘れている。いちばん未利用魚がわからないのは行政、そして漁業者かも知れないと言う事実を知るべきだ。最近、未利用魚にマイナー魚を加えるなど、驚くほど愚かな人間すらいる。今現在のところ未利用魚とは、比較的水揚げが多く、お金にならない魚のことである。高知県や徳島県で、「赤じゃこ」とか「はりめ」と呼ばれている煮干しが作られている。原材料はスズキ目テンジクダイ科のネンブツダイとクロホシイシモチである。
コラム

愛知県西尾市『すずみそ』の「豆つぶ」

愛知県は県全域が食材の迷路、迷宮である。スーパーに入ると必ず面白くて、使える食材に行き当たる。この独自性こそは愛知県だと思う。ちなみに愛知県といっても広すぎるし、人口もすごく多いので、地方ごとに分けた方がいいとも考えるが、その分け方がわからない。さて、『すずみそ』の西尾市は西三河になるが、ここには豊田市も含まれるのである。西尾市と豊田市はまったく色合いが違う。また西尾市でも矢作川近くと、幡豆町(はずちょう)では違う。『すずみそ』は西尾市というよりも幡豆町にある、と言った方がわかりやすい。三河湾に面しており、愛知県なので当然の如く、味噌は大豆麹大豆味噌で、大豆と塩だけで作る味噌の食文化圏である。
コラム

竹の子とウスメバルで、「竹の子眼張」

東京では、たぶん江戸時代くらいから、千葉県外房以北の沖合いでとれるウスメバル(スズキ目カサゴ亜目メバル科メバル属)のことを、「たけのこ」とか、「たけのこめばる」といいった。たぶん竹の子がとれ始める頃に旬を迎え、たくさん入荷してくるからだろう。浅い場所にいるメバルは、「黒めばる」と呼ばれていた。こちらは分類的にはクロメバル、アカメバル、シロメバルの3種のことだ。こちらも竹の子との相性がよく、竹の子の時季に旬を迎えるので、「竹の子目張」といってもいいかも知れない。ただ、1980年代後半に築地場内で、「竹の子と煮る」というと黙ってウスメバルが出て来た。1984年、『土井勝 魚のおかず』の「メバルの煮つけ」で竹の子と合わせているのもウスメバルだ。東京では竹の子と合わせるのはウスメバルが主であったと考えている。昔は浅場にいるメバルと比べると、沖合いにいるウスメバルは味的に落ちるなんていう人がいたが、今、そんなことを言う人はほとんどいない。こんなことを言って通ぶる人は嫌いである。ボクは、みな同じようにうまい、としておきたい。話をややこしくしそうだが、念のために標準和名タケノコメバルという魚がいる。メバルにもウスメバルにも似ても似つかぬ魚で、見た目はあんまり美しいとは言いがたい。魚類学の父、田中茂穂は「竹の子のとれるときに旬を迎えるので、タケノコメバルなのだろう」とあるが、明らかにこれは間違いだと思う。ちなみに他にも同じ事を言う魚類学関係の人がいるが、ちゃんと食べていないのだと思っている。タケノコメバルは、体の模様が孟宗竹の竹の子の皮に似ているからタケノコメバルだ。
コラム

「めばる学」01 江戸時代の眼張

「めばる」と呼ばれた魚は多種であり、時代とともに変わっている。『本草綱目』(1596年、明の李時珍の作った人に有益な動植物鉱石などの百科事典)が、江戸時代初めに国内に持ち込まれる以前に生き物を詳しく述べた書はない、と考えているので、「めばる学」は江戸時代から始めたい。江戸時代にはこの『本草綱目』に習って様々な書が作られる。これを本草書とする。〈目張魚 正字は未詳 △思うに、目張魚の状は赤魚に類していて、大へんみ張った目をしている。それでこういう。……播州赤石(明石のこと)の赤目張は江戸の緋魚(たぶんアコウダイ)とともに有名である。……黒目張魚 形は同じで色は赤くない。微黒である。大きなもので一尺あまり。赤黒の二種ともに蟾蜍(ひきがえる)の化したものである。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)〈めはる 状あかを(緋魚)に似て、目大にはり(張)いだし、闊口(おおぐち)ならず、味わいほぼ同じ、赤黒の二種あり諸州に多し〉『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831) この2書が江戸時代の本草書の中でも「めばる」にはいちばん詳しい。『和漢三才図会』は江戸時代の絵の入った百科事典と考えるべきで、『魚鑑』は魚に特化した辞典的なものだ。『本草綱目』に「めばる」はないので、「眼張(めばる)」は俗である。「めばる」の体色は赤であること、口はそんなに大きくないことから、現在のカサゴとウッカリカサゴ(メバル科カサゴ属カサゴ)に当たる。「黒目張魚」が現在のメバル3種(クロメバル、アカメバル、シロメバル)だろう。この4種の特徴は目がまん丸で大きく、口はそんなに大きくない。大きくなっても一尺あまり(全長30cmほど)にも当てはまる。■写真はカサゴ。
コラム

安乗のマアジはやたらにおいし

三重県志摩市へは何度か行っているが、安乗漁港のある安乗崎には行ったことがない。魚を食べるということは、知らぬ町を旅する如きである。また、志摩市内ではマアジを買ったことがあるし、食べたこともあるけど流通してきたものを手にするのは初めてだと思う。刺身にすると、思った以上に脂がのっていることがわかる。皮下に脂の層が見えるし、舌に乗せたときの脂の口溶け感があり、ねっとりと舌にからみつく。鮮度がいいので食感もいい。水氷(氷入りの塩水の中に魚を入れてある)に見えたので、値段は並かも知れないけど、味は上といえそうである。小さな真子を持っていたので産卵はまだまだ先で、志摩のマアジは旬を迎えているようだ。
コラム

一色のイタヤガイであっと言う間のグラタン

愛知県西尾市一色から持ち帰ったイタヤガイ科イタヤガイでグラタンを作る。ホタテガイと似ているイタヤガイはホタテガイよりも一回り小さい。ホタテガイはどこでも手に入るがイタヤガイを手に入れるのは大変である。でも、手に入れるためにどんなに苦労しても後悔しない、うまし二枚貝である。同じくイタヤガイ科のホタテガイと比べてると貝柱の大きさでは負けているが、味は上。この豊かなうま味と適度な食感を備え持つ、イタヤガイのグラタンは大御馳走である。だれが作っても簡単に作れるし、食べても矢鱈にうまい。一度食べたら、何度でも、ときどき,無性に食べたくなるはずだ。とろっとろのホワイトソースにからんでも、やたらにうまいエリンギと一緒になっても、イタヤガイの存在感は大きい。ホワイトソースとソテーしたイタヤガイの層との境目が、グラタンを混ぜ込みながら食べることで融和する。この混ざり込み具合を見ながら、加減しながら食べる。クロワッサンでもあるといいお昼になる。
コラム

気温25度を超えても、まだ春なのでアジの天ぷら

ビールを買いに近所のスーパーまで歩く。夕暮れ時なのに腰に付けた温度計は27度。念のためにもう一度見直しても27度だ。「晴れ風」という、不思議な名の新しいビールを飲むために、天ぷらを揚げて、揚げたてに、「晴れ風」。贅沢で飲む、といったもので、ハレの日のビールと言ってもいいだろう。「鯵の天ぷら」は中村武志(国鉄職員で小説家。1909-1992)の「目白三平」にも出てくるので、東京では至って普通の料理のようだ。ところが、アジフライはどこでも食べられるが、天ぷらを出してくれる店は少ない。当然、自分で作ることの方が多い。アジの天ぷらは高温以上の高温で短時間揚げるに限る。かぶりつくと表面の衣が音を立てるくらいがいい。その分、中がしっとりと柔らかく、マアジの背の青い魚特有の濃厚なうまい汁が舌に広がる。こごみの天ぷらも春の味。竹の子の天ぷらも春の味。るらんるらん、な気分で「晴れ風」500ml2本とは贅沢だな〜。
コラム

「磯つぶ」とはエゾバイのことである

巻き貝は、一般的な生活をしていると食用として遠い存在でしかない。唯一身近な存在がサザエだと思うが、他になにか、というと出てこない人が多いはずだ。そんな食用巻き貝の代表的なもののひとつがエゾバイである。エゾバイはエゾバイ科エゾバイ属エゾバイ(Buccinum middendorffi、市場では「磯つぶ」)なので、「蝦夷=北」の「蛽=巻き貝」を代表するものと言っていいだろう。貝殻の巻き始めを上にして立てたときの長さは5cmほどなので、とても小さい。小石のようにごつごつして貝殻が硬い。『日本近海産貝類図鑑 第二版』(奥谷喬司編著 東海大学出版局 20170130)に東北以北の潮間帯(潮の満ち干で海水に使ったり干上がったりする浅場)に生息しているとあるが、東北に本種がいるとは思えない。探せば見つかる程度にはいるのだろうか? 主な産地は北海道太平洋側である。北海道日本海側にはいないはずだし、内浦湾(噴火湾)からの流通も見ていない。ちなみに日本の貝類図鑑は主に貝の収集を行っている人達のために作られている。貝殻偏重で、その貝自体に興味のある人のためではない。北の貝は収集の対象ではないので、かなり長いこと北の貝に関しての、生息域などなどの進歩が見られないのが残念でならない。
コラム

関東の上アジの主役、沼島産

関東には大きな荷主(大卸で日本各地水産物を集めてくる)がいくつもある。それぞれ荷受けで得意とする地域があるが、兵庫県淡路島だけは全荷受けが仕入れてきている。特にマアジは他の追随を許さない。マアジにも並(味が悪いというわけではない。むしろ味的に上だったりする)と上がある。上アジは産地が限られている。並は島根県以西、九州が主産地である。東京などでのすし職人は、片身2かん(体長20cm)くらいを好んで使う。料理人もこのサイズが好きな人が多い。だから淡路の釣りアジがスポットライトを浴びる。ただ、4月はまだ早い。沼島(淡路島の真南にある島)のマアジが本格化するのはこれからである。切りつけたものを口に入れても脂は少ないので、口溶け感はない。脂がない分、マアジらしい味がある。舌の上にのせても味的にだれを感じない。「沼島はいいな」と思う瞬間である。今季初めて買ったみょうがをくるりと巻いて、ご飯に乗せると実に味わい深い。近年、季節を感じると悲しくなるが、このマアジなどまさに悲しみの種である。季節を感じる食べ物しか食べないつもりだけど、うれしいような悲しいような。これからは島根県の巻き網もの、定置もの。山口県の瀬つき、佐賀県・長崎県、鹿児島県など、マアジに困らない時季を迎える。
料理法・レシピ

「ほらがい」、ボウシュウボラ・ナンカイボラの下ろし方

ホラガイ科ホラガイ属の巻き貝は国内に2種。琉球列島にいるホラガイと、ボウシュウボラである。ボウシュウボラには深場にいるタイプがあってナンカイボラとされている。この2タイプは味が微妙に違うが、日本各地で区別しないで「ホラガイ」と呼ばれている。ともに貝らしい強い食感があり、貝らしい風味が強い。巻き貝を食べている、という感じが強くする。ボウシュウボラの方が食感が強く、貝らしい風味も強いが、どちらもとてもおいしい。写真はナンカイボラタイプだ。
コラム

S&B味付料理用カレーは素敵

家庭料理はこだわりのない人が作った方がうまい、と思っている。調味料はこれじゃなければならない、とか、●●がなければいけないとか、うるさい人に限ってまずい料理を作る。昔、古い料理本をくれる人がいて、こだわりの料理を散々食べたが、どれもおいしいとは思わなかった。最高の食材、高い調味料、新鮮な野菜とバブル期そのものの料理だった。古い『専門料理』を大量に頂いたので、こんなことを言ったらバチが当たると思うけど、極楽までは届くまい。だいたい、そのような頑張りが見える料理を食べると味がわからなくなり、肩が凝る。日本中を回っているので、いろんなところで手作りの料理を食べているが、意外にもチャチャチャっと作った料理の方がうまい。料理はなんとなーく♪ 作るものだ。こだわりよりも、手抜きこそ、家庭料理の本道だと思う。このカレー粉も発見したときはやたらにうれしかった、ものだ。群馬県吾妻郡の農家の老人(ボクはそのときの、この方の年齢を超えている)が使っていたもので、すぐ真似をして買った。もう何年使っているのか忘れたが、必ず、常に、あるといったものだ。缶入りのカレー粉は使いにくかった。一振りするだけで使えるし、おいしいし、S&B味付料理用カレーは素敵だ。
コラム

新物に喜びも半分の、ヒジキかな

一色漁港(愛知県西尾市)の競り場に、新物のヒジキ(蒸しただけのもの)が並んでいた。それを前に、買い悩んでいた買受人が少なくなかった。高すぎるのである。新物のヒジキが欲しくて街中でスーパーをめぐったが探せど見つからない。豊橋市のスーパーでやっと三河湾産を手に入れた。今じゃ、ヒジキはとても庶民的とは言いがたい。旅先でなければ買わない値段である。温暖化のせいかも知れないが、海藻類の高騰がとまらない。海藻の減少は過度な治水、自然海岸の減少と正比例する気がするのはボクだけかな。毎年新物は買うことにしているが、たぶん2005年の2倍位している気がする。今回のものは海辺で蒸し上げただけのもので、乾燥工程は経ていない。この三河湾産の新物は非常に太く、柔らかくて、このまま食べてもおいしい。今回は久しぶりに、油揚げ(辻豆腐店 豊橋市)と煮た。「そうだ節削り節」のだしに、醤油と砂糖の味つけで、酒・みりんは使わなかった。柔らかくたいて、優しい味わいに仕立てた。ご飯の友になるぎりぎりの味の濃さである。新物のヒジキは、毎年思う事だけど、うまいとしかいいようがない。蒸し上げたり、煮たりして冷凍したもの、乾燥させたものにはない味がある。これをどっさりご飯に乗せる。春よ、ご飯と一緒に胃袋まで届け、なのだ。
コラム

岸和田産トドの刺身に大阪湾を感じた

刺身は口に入れてしばらくは、野締めなのに臭味はほとんど感じられない。ただ、終いの方の臭味はどうしても気になる。岸和田産というと巻き網のものだろう。野締めで来ても大阪湾のボラにほとんど臭味がないことが大発見である。2005年に泉佐野市で買った活けはおいしかったけど、野締めはダメだったことが思い出される。わさび醤油で食べてみると、どうしても臭味が残るが、野締めなのでボラだからということではない。あれこれ考えて、韓国風に胡麻油と塩で食べる。辛味が欲しかったら一味唐辛子などを振るといい。この韓国風の食べ方をすると臭味はまったく感じられない。ボラらしい濃厚なうま味が感じられる。念のために酢みそをつけてみたが、これもイケてる。大阪湾のボラは食べ方次第で実にうまいもんだ、なんて独りごちる。もともと魚があまり好きではなかったボクなので、かなり臭味には敏感であるが、大阪湾のボラはうまいが勝つ。ボラのおいしさの表現は難しいが上等のコイの刺身にも煮ているし、スズキの刺身にも似ている。でもやはりボラの味だなと思う。また見つけたら買わねばならぬ、大阪湾のボラだ。合わせた酒は、愛知県設楽町『関谷酒造』の蓬莱泉秀撰で、いい時間が過ごせた。
コラム

貝類の同定は大変であーる、一色の貝類

愛知県西尾市一色から連れて帰ってきた貝殻に埋もれて、時間を忘れるし、食事は金ちゃんヌードルだし、で大変だった。過去の写真データ在庫まで遡る必要があるので、計4日間も要した。
コラム

愛知に行ったので、そうだ節でかき揚げを作り、きしめんに乗せる

愛知県は三河地方と尾張地方に分かれている、とするのがいちばん単純だと思う。でも行く度にその区分ではとても納まりきらないものがある、ことに気づく。両地域に比較的共通するのが豆麹豆味噌かも知れない。溜まり醤油もあると思う。そして、もっとも気になるのが、愛知県の節文化、取り分け「そうだ節(マルソウダの節)」である。外食に限って言えば、東京の「さば節(ゴマサバ)」、愛知の「そうだ節」と言えそうである。今回は豊橋市を中心とする東三河地方のスーパーめぐりをしたが、どこにでも「そうだ節厚削り節」とか「あじ節削り節(ムロアジ類)」、「かつお節削り節」があった。しかもどこのものも上質である。愛知に行くたびに脳みそがパンクするのは、愛知県の地域別特性を調べるには、人生が2回あっても足りないと思うからだ。余談になるが、高知県土佐清水市で聞取した限りでも、「そうだ節」の最大のお得意さんは、愛知県だという。名物の「きしめん」、豊橋市の「にかけ」のつゆのベースも、混合節だけど、「そうだ節」の存在感が強い。
コラム

マイワシの蒲焼き丼に素麺入りのみそ汁

フライパンで魚などをソテーし、一度取りだし、フライパンに酒・砂糖・醤油などを加えてたれにする、というのは、1970年前後に書籍にのった料理だと思う。いまじゃ、家庭料理の定番だろう。これ誰でも考えられそうな料理だけど、最初に作った人はとても偉い。
コラム

塩釜産本マ、筋多きところの魚すき

鍋に季節感のないボクなので、材料があるときが鍋どきである。サラダはあまり作らないが、鍋はよく作るといった感じかも。要するに野菜を食べたいから鍋を作る。ちなみに魚すきにはコンニャクが欲しかったけど、なかったので諦めた。魚すきにもっとも必要なのは玉ねぎと、コンニャクだと、もちろんボクだけの話だけど、思う。煮えたブツの何がうまいかというと、筋が滅法うまい。煮えて柔らかくなったブツの芯の部分に筋が残るが、これだって柔らかく、濃厚な味を放出する。本当は筋だけで鍋にしたいがそうもならぬ。これがちょっと甘めの割り下に絡むと、得も言われぬといった感じになる。この時間が楽しいし、時間の流れていくのが惜しい。ちなみに玉ねぎは最初の生っぽいのもうまいが、醤油色に染まったのは、もっとボク好みである。七味唐辛子を用意したが、ついついふり忘れる。今回の魚すきは東京都青梅市の「澤ノ井純米酒」と合わせた。ただ、本当の友はご飯である。終いの方に玉ねぎを多めに入れて、そのまま鍋止めにする。これが翌朝のご飯のおかずになる。
コラム

マイワシの塩焼きでバゲット半分

4月になってずーっと、手っ取り早いので、塩をして保存して置いたマイワシを飯どきに焼いては食べている。逢魔が時などにビール(偽)を飲むときにも、焼く。毎日毎日、焼かれてはボクのお腹に入る、マイワシってすごいやつだ、なんてヒトは勝手に思うものでもある。4月15日の段階でまだまだイケているということは、山陰産は4月いっぱいは楽しめるかも。この季節によって、産地を変えながら楽しめるのは、東京ならではだろう。本日は事務処理で駅前に出た。パン屋で平凡なバゲットをかって、これまたマイワシを焼き上げる。スプーンでほぐしてレモンを大量にたらし、焼きたての温かいバゲットに乗せて食べる。バターなど加えていないのに、脂がバターのように液化してバゲットを湿らせる。なんだかマルチェロな気分なのは、愛川欽也の影響かも。ドロンだよな、なんて深夜の電波の世界を懐かしむ。このマイワシの塩焼きにバゲットはデブにはとても危険である。ついつい食べすぎる。今回は凍頂烏龍茶だったから、よかったものの、冷やした一升瓶の赤ワインだったら、焼いてはバゲット、焼いてはバゲットで止まらなくなる。午後の仕事はなし、となる。注/バゲットに乗せた塩焼きの写真を撮り忘れたのは、おいしすぎたから、だ。
コラム

4月になればマアジ時季到来となる

マアジに関しては大小にかかわらず、良し悪しがあり、小さいからいいとも、大きいからいいとも限らない。大分県産は比較的大形が多く、下氷(氷を敷いて魚を並べる)が基本である。この仕立てを見ただけで産地がわかる、というのも大分らしいところだろう。ちなみに並アジと今回の上アジで、買ったその日だと味は互角である。並上の違いは翌日になって初めてわかる。大分ものは年間を通じて、ていねいな仕立てであるが、さすがに寒い時季のものは脂が少ない。そして4月も半ばの今、箱に並んでいる活け締めもの総てに脂を感じられる。料理屋さんと荷をのぞき込んで、仲良く迷ってしまったほどだ。ふたりして、どれにしようかな? といちばん大型を1尾ずつ袋にしまう。帰宅して、鱗を引き始めると皮の表面に脂が感じられる。三枚に下ろすと身が脂で白濁して柔らかい。この脂で柔らかいのが旬のマアジの特徴である。刺身を口に放り込むと、すぐ舌の上でとろっと脂の口溶け感がする。その後、しっかりアジ科らしい豊かなうま味が残る。脂の多い時季は、うま味も多いのである。こんなに脂が豊かなのに後口がいいのもマアジならではだ。くどくど文字を並べても仕方がない。ここから数ヶ月、大分県産に限らず、日本各地からうまいマアジが届き始める。今年も時季のマアジは大分県佐伯市産から始まった。
コラム

ハチジョウアカムツの兜焼きは酒で食べきる、酒煮

昔、酒飲みだったときよく作ったものに、塩焼きの酒煮がある。塩焼きを適当にばらして、酒と煮るだけの簡単な料理だ。塩焼きと酒、ともに主役といったもので、若い頃は酒をうんとたくさん入れて煮た。吟醸酒などでもいいのかも知れないが、いつも普通酒(本醸造もしくは純米酒)を使う。
コラム

秋田県男鹿の、ワカメのみそ汁はうまかった

徳島県民で山間部に育ったので、ワカメといえば、基本的に「灰わかめ(今はもうない)」と干しワカメだった。生ワカメは上京するまで存在すら知らなかった。東京都内では今でもちゃんと寒い時季になると、生ワカメが売られているし、料理屋さんでも使われる。山国育ちのボクも、いつの間にか寒くなると「生ワカメ」な気持ちになるようになった。東京は産地に隣接しているので、寒くなるに従い「生ワカメ」が食べたくなるのが自然なのかも知れない。ヒトは季節に争わないで生きる方が地球に優しいし、地球上の生き物にも優しい。だから、生ワカメにも季節を感じとることができる自分が喜ばしい。4月半ばになって思うのは、今年、冬から春にかけて、まことにたくさんの生ワカメを食べたこと。初生ワカメは神奈川県江ノ島でとれたもの。秋田県男鹿市船川の漁師、近藤亮さんにワカメをいただいたのが4月1日で、これがボクにとって今季、最後の生ワカメだ。先々、書くかもしれないが、4月10日に故郷から鳴門の糸ワカメ(干しワカメ)が届いた。これからは生ワカメに代わり当分の間、干しワカメとなる。今季の生ワカメのメモの再整理を行っているが、やはり印象的だったのは、くどいようだが男鹿のワカメである。男鹿市では過去にもワカメを買っているけど、心に残らないまま今年に至っている。男鹿のワカメ、福島県只見町『目黒麹店』のさっぱり辛口のみそで作ったみそ汁は最高だった。さて、さっそく糸ワカメで「酢のもん」を作ろう!
コラム

今年も初トゲクリガニは雄

青森県のトゲクリガニは春に外海から産卵のために陸奥湾に入ってくる。その入り口にあたるのが下北・津軽の両半島なのだろう。このとき陸奥湾のトゲクリガニの盛漁期が始まる。5月の連休過ぎまで、陸奥湾で盛んにとれる、それで青森市では「湾内ガニ」という。昔、この時季に青森市に行ったことがある。1988年、青森市内各所にあった市場に入ると真っ先に目に飛び込んできたのが、逃げ出したカニだった。逃げ出したのを追いかけて店から出たオバサンに、「つかまえたら持って帰れ(意訳)」と言われたり、あっちでもこっちでも試食試食でとても楽しかった。これがボクの「湾内ガニ」の初食いである。クリガニ科なので同じクリガニ科のケガニに味が似ているが、脚の身が締まっており、なによりも内子がうまい。ただしこの内子持ちの雌は高い。
コラム

ナンヨウカイワリは平凡なところが取り得

以下は魚類学に興味のある方だけに。ときどきアジ科の魚に標準和名「カイワリ」が多すぎると思われないだろうか? これには歴史的な背景がある。ナンヨウカイワリ、ヒシカイワリなどカイワリとつく魚は昔、Caranx 属であった。今、Caranxの和名はギンガメアジ属(種の上の階級)だが、昔はカイワリ属であった。Caranx にはたくさんのアジ科の魚が含まれていた。基本的に魚の魚類学的な名は「特徴+属名」なので、「●●カイワリ」が多くなったという経緯があるのだ。そして今現在、ナンヨウカイワリはCaranx(ギンガメアジ属)ではなくFerdauia (ナンヨウカイワリ属)である。ついでにこのように学名はめくるめく変わる。伊豆半島の遙か南の海域にある岩礁群、銭州通いしている人に聞くと、「シマアジを狙っていて、こいつが来るとがっかりする」そうである。シマアジと比べると引きが弱く、見た目がシマアジに似てはいるが、どこかしらどんくさいかららしい。ボク、即ち、食べる側としては、確かにシマアジのように味的にスターとは言えないが、比べなければかなり上の部類だと思っている。いただけるならこんなに結構な魚はない。余談になるが、関東海域では、アカハタなど伊豆諸島以南に生息していた魚の多くが相模湾北部、小田原などでも普通にとれるようになってきている。ところが本種はいまだに伊豆半島南部までの魚である。小田原でシマアジは比較的見かける機会が多いのに対して、本種にはいまだに出合っていないことが、とても気になる。関東海域以南でもう少し水揚げが増えると、比較的安くて使える魚として人気が出るに違いない。若い個体なので、単純な刺身には向かないと思ったが、念のために造ってみる。相変わらず、体高のあるアジ科らしいうまさは感じられるが、脂は乗っていない。味に奥行きがない。過去のデータからすると脂ののるのは5月になってからだ。今はうま味と食感を楽しむものと考えるべきだろう。
コラム

塩釜産本マ、昨日のぶつ、今日ののり包み

本マの「ぶつ」を「づけ」にしたものなので、最近の小学生曰く鉄板のうまさ、である。本マの比較的控えめな酸味が醤油で引き出されているし、うま味だって調味料と一緒になって強くなっている。そこにマグロの筋のほどよい噛み応えが来る。これを明石海峡の焼きのり(スサビノリ)とご飯で包むだけの手抜き料理だけど、あっと言う間の大御馳走とあいなる。ちなみに焼きのりは一昨年頂いた明石の初摘み。一昨年から去年、今年にかけて焼きのりを、いただきすぎて、やっと底が見えてきた。明石浦漁協の焼きのりはとてもおいしかったと言っておきたい。ついでにボクは故郷、徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)でいちばん不器用ものと言われた男なので、のり巻きが作れない。なので、のり包みとなる。
コラム

Neptuneaは苦痛の種

ちょっとだけ面倒な貝の話なので、わかる人だけに。八王子卸売協同組合、舵丸水産にきていた「真ツブ・赤ツブ」を同定する。北海道根室産だが、当然、太平洋側だろう。Neptunea(エゾバイ科エゾボラ属)の巻き貝はいたって普通の食用貝だけど、同定しようとすると、とてもやっかいである。今回の、Neptuneaは非常に小型で殻長(貝殻を立てたときの高さ)は90〜110mmしかない。比較的同定しやすいものばかりだけど、エゾボラモドキは北海道道東らしい形態である。クリイロエゾボラも幼貝だけど、疑問の余地がない。真ツブ(エゾボラ)も貝殻の形態は安定している。フジイロエゾボラは同じようなものにウネエゾボラ、ウスムラサキエゾボラ、ドウナガエゾボラがいるが、このあたりの検索項目に関しては、北海道まで行き、専門家と議論してみたいところだ。写真は上3つがフジイロエゾボラ、下左端がエゾボラモドキ、左から2番目がクリイロエゾボラ、下の右2つがエゾボラ(真ツブ)。
コラム

茨城県産(?)ケンサキイカで「イカじゃが」

茨城県産だと思われるケンサキイカは、底曳き網ものなのでとても安い。このような「そうざい種」を探すのが最近、とても、難しくなっている。作り始めて約20分ほどで出来上がるので、これがこの日の朝ご飯のおかず、となる。それにしても、我ながら醤油人間だと思う。醤油がないと朝ご飯が始まらない。起き抜けの「おめざ(甘いもの)」の甘さを、9時前の朝ご飯の醤油で洗うといった感じだ。自宅で肉を食べないので、今回のものは「肉じゃが」ではなく、「イカじゃが」である。魚でも同じようなものを作るが、魚や軟体類、希に甲殻類などで味の方向性が変わってくるのも楽しい。ケンサキイカは思った以上に煮汁に水分を放出して縮むけど、おかずに見た目は関係ないと思っているので、これで、いいのだ!そんなことを度外視しても、イカのイカらしい風味とうま味で煮染まったじゃがいものうまいことよ。穀物めいたじゃがいもがなぜ、おかずになるのか、ときどき考えても仕方ないことを考える。個人的には醤油と、動物性のうま味を吸収したじゃがいもは、最強のご飯の友である。もちろんイカだって、主役は「わたしよ」と、その甘味・うま味をちゃんと口の中に残す。これに秋田県男鹿市、船川のワカメのみそ汁、うどの酢漬けで、ほぼ一汁一菜である。これで朝・昼ご飯の友となり、夜はちょっとお値段の高い、「晴れ風」というビールの友とする。貧乏暮らしなので、贅沢はビールだけだ。
コラム

ハチジョウアカムツの兜煮

煮つけにするなら、魚の体のなかでも複雑に骨が入り組んだ部分の方がおいしい。いちばん複雑なのが、頭部とかま(胸鰭・腹鰭まわり)で、この部分を兜という。骨が多くて食べにくいが、その労力に値倍するほどうまい。料理とは時間を食べるものだ、と思っている。骨と骨の間の身をほじくりほじくり、じっくり長々と、ちまちま食べると、ゆったりしたときが過ごせる。その点からしても兜の煮つけは優れている。赤いハチジョウアカムツの兜煮は、絢爛にして、見た目、雄壮でもある。皮と皮直下には脂の層があるので、煮つけるととろとろになる。身は繊維質で、箸でつまむとほぐれながら剥がれて、口の中に入れると脆弱に崩れる。身に脂が混在しているので一度液化しているのである。口に入れると体内温度でふたたび液化する。固体から半液体化するときに感じる甘さ、うま味の豊かさ、調味料の味と、食べながら自分の周りにおいしさの空間が生まれた気がしてくる。まずはこれにて5勺のご飯を食べて、昼を済ませる。午後は、机の上にそのまま置いて、おやつとして、お茶の友としてつまむつもりだった。夕方までもつな、と思ったら仕事でデータを受け取りに来た若い男子が、「欲しい」というので、残りを泣く泣くタッパーに入れてあげた。お楽しみはこれからだ、と思っていたんだけど……。「終いには骨湯(医者殺し)にするんだよ」。お礼にはまんじゅうがいいからね。
コラム

臭味を抜けば高級魚、イスズミ

さて、未利用魚、未利用魚と騒がしいが、未利用魚がわかっている人はいない。未利用魚は奥が深く、まだまだ定見がない。ここに未利用魚の基礎知識を始めていきたい。未利用魚問題は、魚をたくさん集めて、たくさん料理するなどして作りあげた巨大なデータを見て初めてわかるが、国内を見渡す限り、どこにもそんなものはなく、あえて言えば我がサイトが一番大きい。また、魚価を知らなければ、未利用魚はわからない、が、そのためには、日常的に魚を買っていないとダメだが、そんな人間見た事がない。当然国内各地で聞取をする必要があるが、例えば漁業者に聞いてもいいが、加工品業者、買受人(大卸・仲卸)、小売業の話も重要であり、消費者も重要だということを忘れている人がいる。むしろいちばん未利用魚がわからないのは行政、そして漁業者かも知れないと言う事実を知るべきでもある。最近、未利用魚にマイナー魚を加えるなど、驚くほどのバカ丸出しなことをいうヤカラまでいる。今現在のところ未利用魚とは、比較的水揚げが多く、お金にならない魚のことである。未利用魚の中で「問題のある魚」の「問題」は臭いだろう。雑食性の魚は多かれ少なかれ臭味がある。腸管が長いのも共通点だと思う。臭味のある魚としてはイスズミ科、アイゴ科、ニザダイ科、タカノハダイ科、マンジュウダイ科(ツバメウオ類)などが揚げられるが、イスズミ科、アイゴ科が量的にいってもいちばん深刻だと思っている。中でも臭い問題でもっとも難易度が高いのがイスズミ科の魚だ。国内にいるイスズミ科にはコシナガイスズミ属とイスズミ属の2属があるが、問題なのはイスズミ、ノトイスズミ、ミナミイスズミ、テンジクイサキの4種がいるイスズミ属である。もともとは関東海域までの魚だったが、今や東北でも見られるようになっている。種としては圧倒的にノトイスズミが多いものの、この4種の総称としてイスズミを使いたい。もちろん臭味のない個体もいるが、この4種は、かなり高い確率でとても臭くて食べるに耐えられない個体がいる。また海藻を食べる魚なので磯焼け(海藻類が消滅すること)の原因である可能性もある。磯焼けは温暖化とも相まってこれからますます深刻になるだろう。海藻自体の消滅も問題だが、海藻がなくなると生物の再生産の障害ともなる。原因を取り除くという意味では、本種の利用を考えずにはいられないと思う。ときどき冬のイスズミ(イスズミ属)は臭くないという人がいるが、それは産地での話、とってすぐに食べるからだ。翌日、翌々日に食べ手に渡る消費地の話ではない。昔、東京都八丈島で釣りました、「今(12月)なら食べられるから」と、送ってもらったものも、取り出してみると臭味が出ていたことがある。臭味がない固体もいるが、例えば50固体に1固体臭いだけでも流通は難しいと思う。
コラム

境港のマイワシで刺身定食

鳥取県・島根県のマイワシは昨年は4月いっぱいいい状態だった。マイワシだけは旬がわからない。同じ産地でも個体によっててんでんばらばら。おたんこなすのボクには、地域ごとの旬の整理は不可能である。でも今回、確実に言えることは、4月上旬の境港産はそこそこ脂が乗っているし、巻き網ものだとは思うが鮮度もよかった。ちなみに境港水揚げは鳥取県産とは限らない。水揚げの多くが「JFしまね」だからだ。遙か昔、境港で食事をしたとき、すし店のオヤジサン曰く、「イワシはもらうものか、拾うものだった」だったらしい。それくらい境港はイワシで賑わっていた。当然、境港だけではなく、日本海のマイワシの水揚げ量は膨大という時代は長かった。このまま山陰での豊漁が続き、昔の値段にもどってくれることを願いたいものである。さて、境港産のマイワシは抜群にうまかった。刺身全体が真っ白とまではいかないが、名残雪程度には白い。しかも身が締まっているのがいい。考えてみると、前回の島根県浜田産といい、3月、4月の山陰のマイワシは外れなし、に思えてきた。だいたい、八王子卸売協同組合、舵丸水産のクマゴロウが本音で「売りたい魚だ」と言うことはめったにない。
コラム

ハチジョウアカムツの醤油洗い

日本料理の基本の基本なので、日本料理の料理人の誰もが知っているのが、醤油の風味と塩気を微かにつける「醤油洗い」だ。同じように魚の臭味などを、さっと取るための「酢洗い」というのもある。味つけするのではなく、生々しさを取るといったものだ。さて、学生時代、刺身定食がだめだったときに、板前さんに教わったもので、「醤油洗い」をするととてもご飯との相性がよくなる。生魚を食べるという感じが薄まる。根っからの魚好きではないボク向きの料理法だと思っている。ちなみに江戸時代後期、江戸の町などでの「刺身」はマグロが主だったが、「醤油洗い」、「酢洗い」するのが基本だったはずである。
コラム

塩釜産本マのぶつブツぶつブツ

ときどき無性に本マが食べたくなる。ただ今のボクには、本マ(クロマグロ)は赤身ならなんとかなるが、脂の多い部分は最近重すぎる。これは明らかにデスクワークが長すぎるせいで、歳のせいではないと思っている。古今亭志ん生など死ぬまで毎日でも中トロだったらしいし、独特の茶漬けにするのも中トロだった。息子の馬生もそうだ。おでん屋で、中トロを食べておでんを食べないで帰ったことも多かったようだ。志ん生のように早く中トロがおいしいと思う体にもどりたいけど、フル回転の4月いっぱいはむりだ。さて、本マ(クロマグロの成魚)の尾に近い部分が安いのは赤身だし、筋が多いからだ。ただ本マの筋の際には味があるのである。初日はなんとか平造りに近い形になったが、決して感心できるような見た目にはならなかった。でも脂が思った以上に乗っていて、半中トロ的な味がした。いちばん下(尾に近い部分)だって本マは本マだ。高清水本醸造、燗酒うまし、春の宵。
コラム

男鹿のワカメの天ぷらそば

秋田県男鹿市船川の漁師、近藤亮さんにワカメをいただいた。男鹿のワカメは、鮮度がいいことはもちろん、葉先・茎は柔らかく、めかぶはよくねばり、でとてもいいワカメだ。以上は前にも書いた。たくさんいただいたので、いろんな料理を作った。東京風のそばつゆがあったので、お昼は温かいそばにしようと思った。そこで作ったのが、ワカメの天ぷらである。惣菜として売られているのを見た事もあるが、我が家のものはちょっとだけ違っている。衣がぼってり厚いものが多いが、できるだけ薄い衣で口に入れると非常にもろいのである。ちょっと儚い感じだけど、さくさく、さくりと崩れて香ばしい。後からワカメの香りがふわーんと来る。
コラム

ハチジョウアカムツの塩焼き、たぶんフランス風

獅子文六(岩田豊雄 1893-1969)名義の『飲み・食い・書く』は学生の頃、単行本を古書店で買い、文庫本をこれまた古書店で買った。「食べ物本」は作家によっては資料として読める人と、読めない人がいるが、獅子文六は前者の代表格だ。慶應出身なのに文章に久保田万太郎のような慶應臭さがない。そこに、マルセイユではサバの塩焼きにレモンをかけて食べるというのがある。これとそっくりそのままを、1980年代に米軍住宅で見ている。フランス生まれの、米軍の事務官(?)の母親は、ひとりだけ魚を夕食に食べていた。たぶんメカジキの塩焼き(グリルパンで焼いたもの)で、カイエンヌペッパーとレモンを1個丸々かけて食べていた。ボクはデジタルカメラ以前にこの塩焼きにレモン、白コショウもしくはカイエンヌペッパーをかける、という写真を何種類もの魚で撮影していた。ただ、2、3日かけてデジタルデータを見直しても、この塩焼きレモンの画像が見つからない。なので撮り直している。今回はハチジョウアカムツの塩焼きにレモンである。個人的感想だけど、この国では「塩焼きには大根おろしとかしょうが」だけど、改めてレモンの方がおいしいと思った。3切れを2日間かけて食べ比べてみたが、レモン・カイエンヌペッパーよりもレモン・白コショウの方がいい。あまりにもおいしいので、当分、魚の塩焼きはこのフランス風の食べ方でやろうと決めた。
コラム

コタマガイの話

北海道から九州の外洋に面した砂浜に生息している。ハマグリと同じマルスダレガイ科の二枚貝で、少しだけハマグリに似ているが、一回り小さい。貝殻が正三角形に近く厚みが薄い。独特の模様があるが、とてもバラエティに富んでいる。標準和名(図鑑に掲載されるときの名)コタマガイは、正しくは「こだまがい」で東京周辺で使われていた呼び名である。漢字にすると「小玉貝」だが、由来はいろんな説があるがはっきりしない。成長すると貝殻の大きさが7㎝超える。なんだ7㎝かと思われるかも知れないが、二枚貝としては大きい方だ。国内ではいたって平凡な食用貝で、たぶん水揚げ量もそれほど少なくない。不思議な二枚貝で、ある日突然、砂浜に大量発生することがあり、ニュースになったりする。我が家に初めて来たのは何十年も前のことで、知人のまた知人というか見知らぬ人から大量に送られてきた。たぶん鳥取県の方からで、こちらもニュースになっていたようで、浜辺は本種を探す人だらけだという。渚を裸足で歩いていると、足の裏に貝が当たり、それこそごろごろと見つかる。ただし、そんな騒ぎも貝と一緒にあっと言う間に消えてしまう。秋田県の方にももらったことがあるし、宮城県からも送られてきたこともある。ちなみに、送られて来た理由は共通して、「貝の名を教えて?」というものだ。突然とれるけど、突然いなくなって何年もとれない。また突然とれる、というのを繰り返す、だから名前を忘れてしまうようなのだ。一端とれ始めると、渚を歩くだけで、ごっそりとれ、見た目がきれいなので印象に残るのだ。
コラム

超手抜きヤナギダコの酢のもの

沖縄のウミンチュの食事に、ときどき登場するのがミツカンすし酢である。すぐ真似をするボクは、すぐにスーパーに行き、買った。ちょうど同じ頃、迷子になった画像を大捜索していて面白い画像を発見した。群馬県中之条町のバアチャンに、コイの話(もちろん恋の話ではない)を聞いたときのものだ。台所で「酢のものも、すしも全部これじゃ」と見せてもらったのが、1升瓶入りのすし酢(ミツカンではない)だったのだ。そのとき「漬物(作り)にも使うよ」と言われたはず。戦前生まれは、とても合理的なのだ。ちなみに本来酢のものは保存食で、1週間くらいにわたって食べるものだ。ボクの故郷である徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)の隣町美馬町の、親戚の家で、何度も酢のものを食べているが、やはり作り置いたものだった。きゅうりとワカメ、ちりめんじゃこの酢のものが多かったが、ワカメなど茶色に変色していたが、子供のボクがいつもお代わりするくらいのおいしさだった。ボクは、魚料理にグルメとか通とか、こだわりは無用で邪魔なものだと思っている。こつこつ地道にちゃんと、いちいち加減酢を作ってもいいが、この便利なすし酢などもっと活用すべき、料理は最短を目指せ、なのだ。ということで、ヤナギダコの酢のものを作るのにミツカンすし酢を使ってみた。ゆでたてのヤナギダコをミツカンすし酢に漬け込んで、4日後(いつもは翌日)から数日かけて食べた。仕上げにゆでたワカメと和えるだけだけど、ワカメは秋田県男鹿市船川の漁師、近藤亮さんにいただいたものだ。いつもはそのときどきに三杯酢を作っているが、ミツカンすし酢で十分かもと、深夜酒用の小鉢にしてみて考えた。なにしろ3月、4月はやたらにあわただしい。手抜きは、とてもいいことだ。さすがに大きな会社が作るもので、ミツカンすし酢の味は万人向けである。嫌みはなく、ヤナギダコを差し置いて出しゃばることもない。実にいい小鉢ものとなって、夜酒のいい友となる。この量で3日間楽しめた。酒は、いただきものの「剣菱」で体が冷え冷えなので熱燗にする。
郷土料理

男鹿のワカメはいいワカメ、男鹿名物とろとろわかめ

秋田県男鹿市船川の漁師、近藤亮さんにワカメをいただいた。男鹿のワカメは、鮮度がいいことはもちろん、葉先・茎は柔らかく、めかぶはよくねばり、でとてもいいワカメだ。荷物の中に出来上がった「とろとろわかめ(とろとろワカメ)」が入っていた。秋田県男鹿半島だけのもので、男鹿名物といってもいいだろう。「めかぶ」のようなねばりけではなく、名前のように「とろとろ」としている。ボクにはまったく新しい味覚である。朝ご飯にあると実にありがたい。
コラム

転ばぬ先の三陸産生サバ缶

2023年10月に眩暈で救急車を呼んで入院。昨年4月に過呼吸(?)で動けなくなる。ともにやることが多すぎて、デスクワークと撮影で室内にこもりっきりになっていたときだ。魚料理以外はお菓子で凌いでいたのがダメだった。以後、3食、ちゃんと摂るようになった。これがなかなか難しい。この日はいただきものの「生サバ缶」(タイムズ缶詰 岩手県陸前高田市)を使った。プラス野菜だらけの昼ご飯である。この缶詰は三陸で揚がったマサバらしいが、ロウソク(細く小さな個体)とまではいかないが、売るには小さすぎる個体が使われている。鮮魚で出してもお金にならない、どころか輸送費を考えると、損益が出る。たぶん飼料にしかならないもとの考えてもいいだろう。今、この国の水産が一番目指すべきものは、このような魚を人が食べることなのだ。この缶詰には、今、この国が目指すべきものが感じられる。
コラム

鉄板の味、ハチジョウアカムツの刺身

小笠原は今や21世紀の江戸前といっても間違いではない。その父島からきたので、江戸前のハチジョウアカムツだ。ちょっとくどくなるけど、ハチジョウアカムツは東京を代表する高級魚でもある。刺身は、近所の小学生の言葉を借りると、鉄板の味である。絶対にハズレがない。小笠原の魚は船便なので鮮度的にはやや落ちる。ただし、小笠原の魚には白身が多いので、仲卸に並んで、買っても数日は刺身になる。同じ江戸前でも伊豆諸島のものは鮮度がいいものの、値段も当然、非常に高く、清水の舞台から飛び降りるつもりで買わなければならない。個人的には高いことは高いけれど、小笠原で十分だ。さて、まずは尾の部分の刺身である。細長い魚は尾がおいしい。おいしい部分から食べるのがボクの仕儀なので、本能の赴くままに尾から食らう。もちろんいちばん脂のない部分なので口溶け感はない。でも口に入れた途端にどばーっとうま味が、口の容積の3倍くらいに膨らむ。そして筋っぽいのだけど、この筋の歯触りが素晴らしい。筋と言っても硬いわけではない。噛んでいると味が出てくる。刺身一切れで、味の交響曲を聴き終わった感じがする。
コラム

忘れた挙げ句の鯛塩焼き

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に神奈川県横浜市、小柴から小振りのマダイがきていた。中にチダイが混ざっていたので、比較のために買った。魚は日常的に計測して撮影しているので、そのためでもある。チダイはあれこれ作ったが、マダイのことを忘れていた。ちなみに今回のマダイは体長25cm・436gと小振り、産卵郡ではないようで、非常によいものであった。放置すること5日間、皮霜造りにしよう、などと考えていたことが思い出される。水洗いしてはいたので、後は簡単である。大急ぎで多めの振り塩をする。半日ほど冷蔵庫で寝かせる。表面に出て来た水分を拭き取り、あとはじっくりと時間をかけて焼き上げる、だけだ。
コラム

専門家すらしらない未利用魚、ミギガレイ

さて、未利用魚、未利用魚と騒がしいが、未利用魚がわかっている人はいない。未利用魚は奥が深く、まだまだ定見がない。ここに未利用魚の基礎知識を始めていきたい。未利用魚問題は、魚をたくさん集めて、たくさん料理するなどして作りあげた巨大なデータを見て初めてわかるが、国内を見渡す限り、どこにもそんなものはなく、あえて言えば我がサイトが一番大きい。また、魚価を知らなければ、未利用魚はわからない、が、そのためには、日常的に魚を買っていないとダメだが、そんな人間見た事がない。当然国内各地で聞取をする必要があるが、例えば漁業者に聞いてもいいが、加工品業者、買受人(大卸・仲卸)、小売業の話も重要であり、消費者も重要だということを忘れている人がいる。むしろいちばん未利用魚がわからないのは行政、そして漁業者かも知れないと言う事実を知るべきでもある。最近、未利用魚にマイナー魚を加えるなど、驚くほどのバカ丸出しなことをいうヤカラまでいる。今現在のところ未利用魚とはお金にならない魚のことである。ミギガレイはカレイ科の小型の魚だ。北海道南部から九州までの日本海と、これまた北海道南部から千葉県銚子市あたりの、やや深場に生息している。韓国沿岸にもいるが、ほとんど日本固有種といっても間違いではない。カレイ科の中でもっとも小さく、育っても全長25cmくらいにしかならない。高級カレイのマコガレイが全長50cm以上になることからも小ささがわかると思う。ミギガレイという標準和名はどうにも馴染めないでいる。カレイの仲間(カレイ目カレイ科)は、海底に体の左側つけて暮らしている内に、海底についている方の目が、つけていない右側に移動してきた。目が右にしかないという不思議な生き物である。遙か昔々は普通の魚の姿をしていたのが、なぜこんな姿に変身してしまったのか? は神のみぞ知る、だ。ミギガレイは漢字にすると「右鰈」であるが、姿形に「右」を探しても、どこにも「右」に思える部分はない。カレイ科の魚全種が基本的に2つ目がとも右にあるのが特徴なので、目が右にあるから本種の標準和名の意味が「右」なのだ、としてら、これもまた変なのだ。記載は、20世紀の初め頃、国内の魚をたくさん記載したことで有名な、アメリカの魚類学者、デイビッド・スター・ジョーダンとエドウィン・チャピン・スタークスである。学名(基本的にラテン語)には属名と小種名がある。属名が人の苗字だとしたら、小種名は名前である。このカレイの属名(苗字)のラテン語の意味が「右」なので、苗字、Dexistes は「右」さん、なのである。ついでに小種名(名前)、rikuzenius、は「陸前」で、宮城県陸前にあたる松島で揚がったもので記載さたための名前だ。この属名の「右」からミギガレイになった。標準和名を決めたのは、ジョーダンらと関わりの深い、田中茂穂である可能性が高いが、本種の特徴をまったく鑑みない標準和名はいただけない。福島県相馬市で「にくもちがれい」、岩手県では「目玉がれい」という。ミギガレイの仲間、ミギガレイ属にはミギガレイ1種しかいない。ミギガレイは天涯孤独なカレイなのである。
コラム

白貝は今のところ2種類の総称

以下は少し抽象的だし、専門的なので、読みたくない人は読まないで欲しい。貝の同定は、ときに貝屋にならないとダメだ。貝屋は1種類、もしくは近似種をできるだけたくさん並べて比較する。ちなみに、同じ屋のつく虫屋も同様のことをやっている。同じ仲間(属)、もしくは同じ種を並べて変化を楽しんでいる。ちなみにボクは変化に苦しんでいる。貝屋とは非常に粘り強く、自分なりに種の形態の特徴付けができないとならない。ボクたちはアナログの世界にいるが、科学というのはこの世界を、仮にデジタル化することであるかも知れない。特に貝類の巻き貝など姿形が限りなくアナログで、種と種の段差が見つからないことが多い。千葉県立博物館で貝類学者の照屋清之介さんと、遺伝子に関する雑談をしているとき、巻き貝などは同属で交雑が激しく、種と種の間がはっきりしない、などという話が出た。しかも貝類の形態学の対象のひとつが貝殻だという特徴がある。多くの貝類の種のタイプ標本(種の名/学名をつけるときに基本となる標本)は貝殻だけではないのだろうか。さて、今回の、一般に白貝とされるものに話を移す。昔、白貝はサラガイ、アラスジサラガイ、ベニザラガイの3種だと思っていた。ただ、ベニザラガイが混ざる可能性はとても低いという話を聞いて、自分なりに調べてなおしてみると、「ベニザラガイは流通しない可能性が高い」という自分なりの結論に達した。となると白貝は、サラガイ、アラスジサラガイの2種という事になる。この2種にもアナログ的な部分、種と種の不明確な領域がある。だから白貝とはなんだ? と考えると、かなり手こずることがある。ちなみに3月3日の道東産(北海道東部太平洋側)の白貝は、サラガイ(内側が黄土色)とアラスジサラガイ(内側が赤紫)が半々であった。もちろんベニザラガイはいなかった。
コラム

男鹿のワカメはいいワカメ、ワカメ飯

秋田県男鹿市船川の漁師、近藤亮さんにワカメをいただいた。男鹿のワカメは、鮮度がいいことはもちろん、葉先・茎は柔らかく、めかぶはよくねばり、でとてもいいワカメだ。東京で住んでいて、ワカメというと三陸ものが頭に浮かぶ。スーパーの売り場の基本も三陸である。男鹿のワカメを久しぶりに食べて、日本海もワカメの産地なのだだ、という感覚がいつの間にかなくなってしまっていることに気づかされた。さて、最近のボクはおいしそうな水産物が目の前にあると、まずはご飯用に料理することが多い。朝ご飯どきだったので、もっとも素早く出来る、ワカメ飯を作る。まずは水飯の用意。2合の米に対して混ぜご飯なので2合1勺の水加減。炊き上がりまで52分である。
コラム

男鹿のワカメと千葉のカイワリと、のらぼうと

千葉県鴨川産のカイワリは1尾焼き、1尾天ぷらにし、2尾刺身にした。そして最後の2尾はなんにしようかな? と思っていたときに、秋田県男鹿市船川の漁師、近藤亮さんからワカメが届いた。ワカメを見たら頭に「料理の絵」が浮かんできた。ありがとうございますとしか言いようがない。ワカメでもいろいろ作るつもりだけど、まずは炊き合わせに使う。カイワリのおいしさを吸収してもらうのである。煮つけるとカイワリから「おいしい」が出る。ワカメを食べると、ワカメの「おいしい」よりも、カイワリの「おいしい」が感じられたりする。ほんの数分、一緒にたいただけでワカメからも「おいしい」が出るが、カイワリはガンコで意固地である。カイワリはどこまでもカイワリの味だけで、煮汁をからめるとやっとワカメのうまさがからまる。スーパースターなので仕方がないやも知れない。カイワリ、ワカメは炊き合わせても、合わさらない部分があるから「炊き合わせ」という料理なのである。融合しないことで料理の存在感が一回り大きくなる。それじゃー、私は、と、のらぼうの蕾が言いそうである。このほどよい苦味と甘味、植物持つ清涼感で、意外に存在感が強い。こう言った存在をたき合わせの「合いの手」、という。不思議なもので、魚介類の炊き合わせは、一般家庭では、どちらかというと春のものである。蛇足だけど、ブリ大根やスルメイカと里芋のように、煮込んで融合しているものを炊き合わせとは言わない。独立性が希薄だからだ。
コラム

新島沖のユメカサゴ1尾の煮つけ

千八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウに新島沖の小さなユメカサゴをもらう。ありがとう。たな(水深)は500mだというが、キンメダイ釣りの胴付き仕掛けなのでもう少し上だろう。ユメカサゴは150mあたりでも釣れるので、生息水深の幅があることがわかる。
コラム

北海道道東産白貝の野菜炒め

今、白貝問題にのめり込んでいる。何度挑戦してもよくわからない。なにしろ、この白貝(マルスダレガイ目ニッコウガイ科サラガイ属)の同定の検索項目(種に行き着くための項目)をなんとかしないと、永遠に謎で終わりそうである。今年になって、そろそろ撮影画像が1000を超えるが、やっと形態的な特徴がわかってきた。考えてみると、この白貝問題とは、すでに30年も取っ組み合いのケンカをしている。それだけに我が家にはいつも白貝がある。さて、二枚貝と野菜を合わせて、炒めると非常においしい。取り分け白貝(今回のものはほぼアラスジサラガイ)はアサリなどと比べると軟体(貝殻以外の部分)が大きいので野菜炒めにとても向いている。二枚貝と炒めた野菜はすこぶるつきにうまい。野菜の味が白貝のうま味を吸って激変する。もちろん炒めた白貝だっておいしいのだけど、野菜を食べるための料理だと思うべきだろう。この日の昼定食は、白貝の野菜炒め、若布汁(ソウダ・さば節だしの醤油汁)、奈良漬け、ヨーグルト、そしてご飯なのでデブに優しい献立である。
コラム

悩んだ末のエゾボラモドキの刺身

一般的に北海道産「つぶ」とされる巻き貝は、エゾボラ属の巻き貝達である。日本列島周辺に生息しているが、水揚げ量は北海道がいちばん多い。このエゾボラ属の同定は難しく、自分なりに検索項目を作るしかない。念のためにエゾボラモドキに関して、貝類学者とボクの間には、あくまでも貝殻の形態のでの話だが、考え方が異なる。この肩に板状の盛り上がりがある個体は、典型的なエゾボラモドキだと思っている。このエゾボラ属の刺身はここ数年高くなりすぎて食べられなかった。やっと値が落ち着いての刺身である。それにしてもエゾボラモドキの刺身は食感が強く、甘味や貝らしい風味が豊かである。サザエとは違って、磯の香りというものではなく、ただただ軟体類の持つうま味が堪能出来る。残念なことに、つぶの刺身には日本酒しかない。致し方なく、酒をやるが、辛口がいいと思っている。といっても東京都内では至って普通に売られている、長野県諏訪市、真澄 銀撰である。
コラム

3月末日、千葉県鴨川産カイワリの刺身

千葉県鴨川市を説明するのは意外に難しい。例えば関東以外の、東海地方以西の人に「鴨川市」と言っても誰もわからないと思う。「京都の話」などとなりかねない。素晴らしい海があり、観光施設もあるので、関東での知名度はそれほど低くないが、魚と結びつくのは水産関係者くらいかも知れない。ただ、関東に住んでいるなら、鴨川市は新鮮な魚の供給地であり、そこでとれる魚は関東にとっての地物だ、という認識があってもいいと思っている。月曜日の魚なので、鮮度抜群とは言えないが、真っ先に刺身が頭に浮かぶくらいには、いい。市場で買って、帰宅後すぐに水洗い。三枚に下ろし、保存して置く。これを昼に刺身にして、刺身定食にする。カイワリは市場で買っているので、比較的手頃な値段である。定食などといいながら、懐に優しい値段のカイワリ刺身と、野菜サラダと赤だしのみそ汁の、ごくつましい昼ご飯である。3月末のカイワリはそんなに脂が豊かではない。なので、口溶け感からくる甘味こそ少ないものの、口に入れた瞬間にうま味が口中にぱーっと広がる。おいしさの口の中での滞在時間の長いことと、うま味の豊かさは、大小で表すしかないが、間違いなく大の味である。ご飯の友は塩分もそうだが、味わいが豊かで強くないと務まらないが、カイワリ140gほどが2尾で、二杯飯が食べられるくらいうまい。そんなにいい時季でもないのにこんなにおいしくてもいいの、と問いたくなる。きっと4月も半ばになると、カイワリ1尾で二杯飯になるだろう。
コラム

真子も食腕もなんでもかんでも煮つけるスルメイカ

値段が気になるのでスルメイカは大小交えて買っている。基本的に大きいのは雌、小さいのは雄だ。スルメイカの真子(卵巣)はヤリイカと比べると落ちるが、比べなければ非常においしい。産地がわかりにくいのが難点だが、だんだん真子が膨らんでくる。スルメイカの足のつけ根が頭だ。この頭と足(げそ)と、真子、触腕(他の腕よりも長く、小魚などを捕らえるためのもの)、鰓などなどいろんな部分が混ざり合った煮つけの味からして楽しい。刺身などにした残り全部をただ煮つけただけの、雑雑しいおいしさだ。ちなみに今ボクは甘い誘惑に弱いときを迎えている。ひょっとしたら秋田県人よりもあまいもん好きかも知れない。でもこの甘っ辛いしょうゆ味こそが日本列島の味だという気がしてきた。ちなみに合わせたのは、ご飯で、次ぎもご飯。こんどは日本酒の友にするつもりだ。
コラム

三陸産、イワシ水煮缶のスパゲッティ

朝と言っても、夜明け前に起きたら、なのもなかった。お茶をいれて、胃袋にお茶の刺激を感じながら、そうだ昨夜もらったシュークリーム、大福があったことを想い出す。結局朝は好きなものだけで済ます。ボクにシュークリームくれた人にありがとう!昨日は終日、都心で話したり騒いだりしたので、我が家の食糧事情などまったく頭になかった。冷蔵庫から冷凍庫まで空っぽである、昼になって困った困った、困った。しかも丸一日なにも進めていないので、サイト上の課題が山積みである。サイト運営が一段落つくまでなんとか腹の虫をなだめたい。そうだ、昨日は缶詰もいくつかいただいている。缶詰を並べてみたら、全部昼ご飯の材料になりそうなものばかり。どれにしようかな? で選んだものが「生イワシ缶」(タイムズ缶詰 岩手県陸前高田市)だ。さて、缶詰の原材料は三陸産イワシ(マイワシ)と食塩だけだ。缶詰をあけたら汁を飲んでみる、のが基本である。くどいようだけど、特に水煮缶は個体(魚の身)以上に汁が大切なのだ。身も一切れ食べてみたら、柔らかくて脆弱で、こちらも想像以上においしい。マイワシの缶詰は、そんなに多く食べているわけではないが、これはウマスギだと思う。ただし、これだけを食べても昼ご飯にならない、おいしい時間を数分しかもてない。
コラム

去る3月、小田原の朝ご飯

2024年3月24日も、神奈川県小田原市、小田原魚市場そば、港のおっかさんのところで市場人のための市場飯を食べる。この日はアジフライとイカ大根である。3月は忙しいわけでもないのにあわただしい。小田原で食べる朝ご飯の時間がボクの癒し飯でもある。久しぶりの揚げ物に元気はつらつ、気分は最高である。ところがアジフライがうまいのは当たり前だけど、イカ大根がいかにもうますぎる。食らう内にアジフライの存在感が薄れてくる。
コラム

岩手県宮古産ヤナギダコで鮹飯

タコの桜煮を作るのは、そのまま食べておいしいからでもあるが、鮹飯が食べたいからでもある。桜煮を作った日に、つまみに食べる桜煮だって滅法うまい。柔らかく、しかも味わい深い味が酒に合う。余談だけど、調理用語辞典などを見ると、「桜煮」は桜の花びらに煮つけたときの色が似ているから、としている。でもどう見ても梅の花の方が近い。なぜ桜煮なんだろう。
コラム

久しぶりに来た八戸産アラスジサラガイの刺身

関東では「白貝(しろがい)」と呼ばれていて、近縁種のサラガイと区別しない。ホッキガイ漁などでの混獲物である。ちなみに漁獲されているサラガイの仲間はサラガイ、アラスジサラガイ、ベニザラガイの3種とされているが、ベニザラガイは流通上みていない。この3種の検索項目は混乱している。個人的には早く北海道の専門家と話し合い、この検索項目の混乱を整理したい。さて、ちなみにサラガイとアラスジサラガイの味は同じである。アラスジサラガイの方が大きいので刺身などにしやすい。ちなみに刺身といってもすし種の青柳(バカガイ)同様に軽く火を通している。さて、非常にくせのない、甘味がちな味で、食感は弱い。これをもの足りないと感じるか、食べやすいと感じるかは個人個人の領域である。若いとき、青柳と比べて鈍い味わいに、どうにも食指が動かなかった。本種をとても好きな友人がいて、昔、みつけると刺身にして届けていたことがあるが、一緒に食べている内に本種のおだやかなおいしさが好ましく思えてきた。これは今も変わらない。だから本種を見つけると、真っ先に刺身を作る。これで酒をやると、とてもいい時間が過ごせる。ついでに、意外に本種で食べる、ご飯がおいしいこともつけ加えておく。
コラム

春色の、かき揚げうまし、スルメイカ

タイトルからいきなり俳句は変だけど、日々、スルメイカを買っては量り、値段を記録していると頭が春色に染まって浮かれてくる。だからいろんな料理を作るのだけど、天ぷらのおいしさを、ここ半年で改めて知った気がする。イカ類の天ぷらというと、厚みが必要なので、取り分け都内の高級天ぷら店などでは、アオリイカか「墨いか(コウイカ)」になる。たぶん、庶民的な店でもスルメイカは避けて、冷凍のコウイカ類(一般的にはモンゴウイカという)を使うのだと思う。スルメイカの天ぷらを出すのは居酒屋くらいだろう。そんな主流じゃないスルメイカの天ぷらが、こんなにおいしいとは思わなかった。ちゃんと軟体類らしい甘みがあるし、夏を通すことでぷんとスルメイカの持ち味である風味が生きてくる。
コラム

初ヒガンは厚く切りすぎたけど、ウマスギ

活ジメを甘くみすぎていたかも知れない。1日半寝かしたので、そんなに硬くないと思って、やや薄め程度に切りつけたが、明らかに薄造りにすべきだった。寝かしが足りなかった気もする。フグの刺身は寝かしが、重要だと改めて思った。この見極めの悪さは初ものだからである。これからさんざんヒガンフグを食べることになる。どんどん食べ巧者になるはずだ。それにしても厚めに切って、少々硬いものの、ヒガンフグには味がある。噛めば噛むほどうま味がじわりじわりとくる。せっかく用意した酒が邪魔になるうまさで、2枚、3枚をじっくり噛みしめて、口中のうま味を流さないで楽しんだ。春が漁の盛期で、旬と考えてもいい、ヒガンフグは、春は盛の恵みでもある。余談になるが、我が家には4合瓶に移し替えた、かなりお高い福島県南会津町、「花泉 瑞鮮」と、長野県諏訪の「真澄 銀撰」という普通酒がある。なぜか普通酒の方がきゅんと辛口でヒガンフグには合う。ちなみにボクは酒グルメでもないし、いい舌を持っているだけでもない、ことだけは言ったおきたいけれど。ちなみにフグ科で高級魚なのはトラフグだけだ。ほかのフグは丸のままの状態はそんなに高くないし、みがき(毒の除去)の手間賃を出しても、懐が寒くなるようなことはない。もっと気軽に、日常的に、食べようぜ、フグ。
コラム

青森県津軽、木村守克2、カドザメカレー

著者の木村守克は昭和11年(1936)弘前市生まれだ。「カドザメ(ネズミザメ)」は〈1853年(幕末)になると次第においしさが知られるようになり、多くの人々が賞味するようになりました〉とある。また、〈カレーライスにも肉の代わりに入れて、よく食べられていました〉ともある。よくよく考えてみると、津軽地方に限らず、カレーの材料としてネズミザメは普通に使われていた可能性が高い。さて、木村守克の子供時代というと第二次世界大戦の戦前戦後と考えるべきだろう。カレーは明治維新と同時に国内に来た。これが北海道でじゃがいも、西洋ニンジン、玉ねぎが作られ始めるに従い普及する。東京など大都市では、外食として、農村地帯では主婦の労働軽減のために国が政策として広めたとされている。大都市部と農村地帯の時差がない料理だったといえる。肉の代わりにネズミザメの身を使っただけの、昔ながらのカレー粉を使ったカレーにしてみた。じゃがいもや玉ねぎ、にんじんなどの野菜と適当に切ったネズミザメの身を炒めて、カレーと小麦粉を油で炒めて合わせたものを加える。ネズミザメの身は炒めて煮ても硬くならず、確かに食感は肉に近い。だまって出すと、鶏のささみのようである。ただカレー粉を使ったカレーはどことなくもの足りない。昔のカレーはこんな味だったのかもわからないが、現在の肉などで作ったカレーと比較できない。
コラム

未利用魚とはなにか? 1

多くの人(一般人)が、未利用魚とは、とっても焼却処分にしてしまうとか、埋め立てに使うとかする魚だろうと思っているはずだ。そんなものあるんだろうか?ほとんどないはずである。今問題になっている魚は、未利用魚としながら、未利用ではない、魚たちだ。水産庁のホームページを見てみる。〈水産物の流通過程においては、魚体のサイズが不揃いであったり、漁獲量が少なくロットがまとまらないなどの理由から、非食用に回されたり、低い価格でしか評価されない、いわゆる「未利用魚」が発生しています。しかしながら、近年、この未利用魚を有効活用しようとする動きが広がっています。未利用魚の活用は、食べ物を粗末にしない、資源を無駄なく利用していこうという点で、「MOTTAINAI」の精神につながるものです。また、これまでは採算が合わないということで有効利用されていなかった未利用魚を、関係者の創意工夫や加工技術により商品化することで新たなビジネスチャンスにつなげている事例もみられます。産地の手取りの向上、魚介類の消費拡大を通じた食料自給率の向上のためにも、水産物の生産から流通、消費に至る各段階の関係者の積極的な取組が重要です。〉抜粋すると。1、魚体のサイズが不揃いである。2,漁獲量が少なくロットがまとまらない。3、非食用に回されたり。となると、未利用魚とは、利用魚そのものだとなる。魚食普及センターとはいったいどのような団体なのかわからないが、ホームページを見ると。1、価値がない・価値が低いので「低利用魚」2、目的の魚に混じるので「混獲魚(コンカクギョ)」3、雑多に獲れるので雑魚(ざこ・じゃこ)4、メジャーでないので「インディーズフィッシュ」。「MOTTAINAI」とはなんだろう? 「インディーズフィッシュ」とはなんだろう? 初めて聞く言語だ。このような低級な流行り言葉や、低級な言語は作らない方がいい。言語を勝手に作り出すのは世の中にとってマイナスである。ちなみに水産庁の「1、魚体のサイズが不揃いである。」・「2,漁獲量が少なくロットがまとまらない。」と、魚食普及センター「2、目的の魚に混じるので『混獲魚(コンカクギョ)』」・「3、雑多に獲れるので雑魚(ざこ・じゃこ)」は同じかも知れない。でもこれは20年くらいまえから、水産荷受け(大卸)で入合(何種類かの魚を混ぜて流通させる)を増やすなどで、やっていることで、目新しくない。また水揚げ港でもいろんな努力が行われている。水産庁と魚食普及センターはこの分野では新参者である。この流通上に行われている努力を無視しているかのようだ。個人的には長年取り組んでいる多くの産地や水産流通を無視して、今更なにを言っているんだろうと思う。水産庁の「3、非食用に回されたり。」は魚粉になるということで、家畜の餌になることだろう。これなどむしろ、利用されている魚といえそうである。ただ、ここでわかることは未利用魚は廃棄する魚ではないということだ。未利用魚とは、水産庁・魚食普及センターによると、安い魚、売れ残りやすい魚、クセのある(臭味がある)のでで売れない魚、直接人間の口に入らない魚、ということになる。お金にならないと言い換えてもいい。未利用(廃棄する)の魚ではなく、お金にならない魚と言い換えた方がわかりやすい。なぜならより多様な魚をお金になるようにする、ということは、漁獲物の無駄がなくなるということだからだ。未利用魚ということを考えるなら日本全国の魚の嗜好や価値観、古い食文化、新しい食文化を考えないといけないけど、そんなことはどこにも出てこない。このあたりも実に残念でなならない。続く!
コラム

4月になるともっと、マアジはうまくなる

神奈川県小田原魚市場、二宮定置にわけていただいたマアジは、あまりにもてんやわんやだったので、煮つけ、塩焼きにした。いつもながらに、まことまことに、ありがとう。持ち帰ってすぐに頭部を落として腹を出し、尾鰭をちょんと落とす。振り塩をして1時間程度置き、表面に出た水分を拭き取り、ビニール袋に入れて冷蔵庫と冷凍庫に1尾ずつ保存する。振り塩さえしておけば冷凍保存しても大丈夫な出あることは、おぼえておくと便利だ。これをご飯時にじっくり焼き上げる。3月22日に冷蔵庫保存のを食べて、冷凍庫で1週間以上保存したマアジを焼いて、残念ではあるがこれにておしまい。余談になるがマアジの頭を落とすと、もったいないとか、クレームをよこす人がいるが、はっきりいって愚か者である。そのときどきの状況でいちばんいいやり方、楽なやり方で仕込むべし。ついでに魚の置き方は、左右手前向逆でもボク的にはどうでもいいと思っている。古事記などを引き合いに出す人がいるが、大和王権がそんなバカなことを残すはずがない。「海背川腹」の原則は、伊勢参りが一部地域で人気が出た江戸時代中期以降のこと。あくまでも料理店だけでの原則を一般家庭に持ち込むのはだめだ。特に頭を落としたときなど、いちばん普及している安いガスコンロのグリルで焼いているので、きれいに焼き上がった方が上でいいのである。料理に「で、なければいけない」ということはない。一般人は料理に「で、なければいけない」などという専門家は排除すべし。一般人の料理は自由自在がいい。
コラム

大きな大きなスルメイカは、げその刺身のために

イカ類の「げその刺身」で、いちばんおいしいのはコウイカで柔らかくうま味がある。ヤリイカ科の中で唯一げそが大きいアオリイカは、少し硬めだがうま味はいちばん強い。その他のヤリイカ科はげそが小さいのが難点だが、味はいい。いちばん「げその刺身」に向いていないのがアカイカ科で、その代表格がスルメイカだ。スルメイカの「げその刺身」を作る人は少ないのではないか?なぜなら硬いからである。個人的にはこの硬さがいい。噛み砕くのに時間がかかるけど、その間、延々と味が楽しめる。げそは胴以上に味がある、ということに気づくはずだ。ちなみに硬いけど、消化が悪いわけではないと思っている。深夜酒をやるときには、この「げその刺身」はとても合う。深夜に我を忘れてニチャニチャ噛み、噛みする。正一合の酒をちびりちびりとやる。ひとりぼっちも悪くないなー。
コラム

トラフグにかじられたアンコウで、潮汁

神奈川県小田原魚市場、二宮定置の水揚げの中に小さなアンコウがいた。トラフグにがぶりとやられた痕が、実に痛々しい。がぶりとやられると、競りに出せないという意味での未利用魚だが、この傷み具合なら漁師さんなどが自宅で食べられる、という意味では利用魚である。ちなみにボクはアンコウ類(キアンコウ、アンコウ)を見ると唾液腺が開く。
コラム

和歌山県メカジキを大根と煮る

おさかな365以上日記 和歌山県メカジキを大根と煮る近所のスーパーで和歌山県産生メカジキの「あら」を見つけて買った。「あら」というよりも「切り落とし」だ。やや高値だけど、捨てるところがなく、500g弱も入っているのはドテラくお買い得である。話は変わるが、30代に食べ物の好みが変わった。変わったと言うよりも、奇なもの、上等そうなもの、世間でうまいとされているものの裏側がすけて見えるようになり、好みがの幅が極端に広くなったと言った方がいい。たぶんその当時のことだ。徳島県美馬郡美馬町(現美馬市)の従姉妹の家で昼ご飯を食べた。父方の従兄弟・従姉妹の中で二番目に下なので、例えば従兄弟・従姉妹といっても上は団塊の世代とか、たぶん戦前生まれもいる。特に最年長の従姉妹は、年齢からして阿波西部っ子そのものである。「こんなもん食べんじゃろな」と、大根とじゃこ(煮干し)の煮つけを出してくれた。これがあまりにもおいしくて、大鉢いっぱい全部食べてしまったのだ。こんなことなどなどが、きっかけで美味は平凡(日常)にこそあり、平凡にうまいものは作りやすいものだが、それだけに得がたいものだと気づく。以後、従姉妹の料理の味に惚れているけど、故郷に帰れない。
コラム

小田原の磯ボラは野締めだったので、湯洗いにする

今回も神奈川県小田原魚市場、二宮定置の水揚げを見ていたら、ボラが揚がっていた。2、3箱(発泡の箱にボラだけを詰め込んだ状態)作れそうだが、首折れ(首を折って活け締め)にできそうなのと、野締めがあった。選別台にボラを見つけて野締めかなと触ったら、まだ生きていそうなものを見つけて、Kai くんに首を、といったら怪訝そうな顔をした。やはりお亡くなりになっていたようだ。体長41cm・972gなので大きさ的には手頃である。やはりボクには魚を見極める才がない。このあたりどうしても二宮定置の若い衆とかKai くんと嫌でも比べてしまう、われぞ悲しき。ただし、当たり前だけど、鮮度抜群。二宮沖の浅場のものだろうから磯ボラとしてもいいだろう。小田原では磯(岩礁域)にいるボラの方がおいしい、とされている。
コラム

春のもの、ブリ白子は素直な気持ちで煮つける

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産のジュニアが、「これいりませんか?」と和歌山県新宮市三輪崎港産ブリの白子をくれた。横目で見た、ブリの片身に脂がありありと見える。白子自体がまだ未成熟である。和歌山県のブリはまだまだいけそうである。ちなみに今どきの無闇矢鱈の金持ちにとってのブリの旬は12月、1月だけど、庶民のブリの旬は気象庁の春である3月、4月、5月と秋の9月、10月、11月だ。要するにボクにとってのブリの旬は、まだまだこれから、だ。
コラム

ときどき作る昆布の佃煮

だしは3日に1回くらいとる。そんなに頻繁にとらないのは、一人暮らしだからだ。それでも1年間に100回以上はとっているので、だしがらがぎょうさん出る。節類だと、ときどきふりかけにするし、煎ってお好み焼きの友にする。昆布は素揚げでパリパリにして、ぱりぱり食べたり、佃煮にする。さてだしの後の昆布は捨てることもあるものの、できるだけ冷凍保存して置くが、これも今、それなりにたまっているついでに言えば、ただいま、部屋の隅っこなどからなぜか出てくる黒糖の、消費月間なのである。紅茶にも黒糖だし、例えばトビウオ類の煮つけにも黒糖を使うが、それでも使い切れない。このところ不如意につき、使い続けている日高昆布(ミツイシコンブ)のだしがらと黒糖で、佃煮を作る。昆布はまだ凍っている状態でヒモ状に切る。切っている間に解凍する。だしを取るときに半日水に漬け少し煮出すことと、冷凍することで柔らかくなっている。それでも硬いので、最初に酒と多めの水で煮る。ほとんど水がなくなったら、酒・黒糖、濃口醤油(普通の砂糖のときは、たまり醤油と濃口醤油を半々)、しょうがのせん切りを入れて煮上げる。仕上げにみりんを加えて出来上がり。
コラム

ド深夜に千葉県産トリガイのアヒージョとシェリー

ふとなんとなく深夜に酔っ払いたくなるときがある。こんなとき日本酒だとやたら飲み過ぎるので、常には飲まなぬ種類の酒を探す。冷蔵庫の隅っこに「Croft」の瓶が2本もあった。都心に出たときスーパーで特売していた酒で、名前買いしたのだ。封を切ってみて、シェリーだと気がついたくらいなので、アンダルシア地方だとかなんとかは、この時点では知らなかった。甘いもん好きなので、シェリーだけは必ず備蓄していた、その頃の名残かも知れぬ。冷凍庫に開いたトリガイを見つける。千葉県産トリガイで、18個もあったため、一度に食べきれず冷凍したのだ。トリガイで、シェリーで深夜酒というと、スペインのちょいつま、アヒージョかな。室温でもどしたトリガイに塩コショウする。これを小型の鉄のパン(カスエラなんてものは使わない)に入れる。大量のにんにく、三重県尾鷲市の辛い青唐辛子、虎の尾をちょぼっとだけ。多めのオリーブオイルを加えて火をつけて強火で作りあげる。ディルを散らして、出来上がり、だ。ド深夜、PCは寝ているし、ボクの頭はぼーっとしているし。うんと久しぶりにサッシ窓のレールに座布団を敷き、夜風にあたりながら、始める。アヒージョは、主役のトリガイとは関係なく、にんにくの香りが素晴らしい。シェリーは小さなグラスで飲むのが正しいとは知りながら、大グラスに満たして飲む。アヒージョの香りが、たぶんこれまた邪道のよく冷えたシェリーとよく合う。トリガイをつまむ、シェリーを飲む、の合間にトリガイの甘さと、弾力と、弾力の末の軟体動物のうま味とがくる。これを冷たいシェリーが流し去る。あっと言う間にトリガイが消えたら、これからが本番。これまた冷凍保存しておいた、食パンを軽くトーストしたもので、鉄のパンに残ったオリーブオイルを拭き、にんにくをパンに乗せて食べる。大グラスのシェリーをもういっぱい飲む。アヒージョの、主役は、オリーブオイルかも、なんて何も見えない夜空にぽつり。
郷土料理

魚の煮つけは勝手にしやがれ、でマアジ

今回も神奈川県小田原魚市場、二宮定置のみなさんに体長21cm〜22cmのマアジをいただいてきた。まことに感謝感激、とてもありがとう。まだ脂の乗りはイマイチだけど、うま味は豊かである。帰宅後に昼ご飯のおかず、煮つけを作った。たまり醤油・濃口醤油と砂糖・酒のこってこってのご飯用煮つけだ。

該当するコラムが多い為ページを分割して表示します。
全1526コラム中 101番目~200番目までを表示中


関連コンテンツ

サイト内検索

その他コンテンツ