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コラム

5月17日、主菜はカンパチの粕漬け

体のプロに「食べたものをメモしろ」と言われて、やっている内になんだか楽しくなってきた。もちろん自分が食べたものを振り返ると意外な発見があり、反省点も少なからずある。さてもうかなり前の朝ご飯の主菜は八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが銭州で釣り上げてきたでかいカンパチの粕漬け。大型魚のいいところは保存食などにして長々と食い繋ぐことができることだ。特に粕漬けは保存性が高い。みそ漬け、祐庵漬けなどは漬けすぎると硬くなるが、粕漬けは1週間くらいは平気で保つ。この日は小売業、定期的な仕事、サイト運営などの実に平凡な日だった。あまりにも起伏のない生活に逆に疲れ果てる。ご飯、ぶなしめじ・ワカメのみそ汁、サラダ小松菜とトマト、奈良漬け、熱海市の宇田勝さんにいただいたところてん。カンパチの粕漬け。福島県南会津町『ハローショップ みどりや』でいただいた練り粕とみりん、同町山内麹店の梁取みそ、みりんで漬け地を作る。カンパチの切り身に振り塩をする。水分が出て来たら拭き取り、漬け地につける。写真は食べ頃の3日目で、粕の甘味と香りが豊かで、結局1枚追加する。クサヤモロのさんが焼き。これも銭州でクマゴロウが釣り上げてきたもの。今回は刺身にして、みそたたき(なめろう)にした。残ったものをガスグリルで焼き上げた。旬で脂が乗っているので焼いても硬くならず実に豊潤。まことに和そのものの朝ご飯で、おかずが多いので、糖質をかなり控えることができた。それにしても粕漬けは飯に合う。
コラム

水揚げ当日限りの小ウルメの刺身

神奈川県小田原市、小田原魚市場、二宮定置でダンベ(大水槽で飼料などになる魚を入れる)行きの小魚を分けてもらってきた。この時季は小魚が多くて定置網漁師は大変なのである。とにかく一刻も早く売れる魚を選別しなければならない。
コラム

いろいろ使える、小サバの釜揚げ

神奈川県小田原市、小田原魚市場、二宮定置でダンベ(大型水槽)行きの小魚を分けてもらってきた。これを“このまま食べる”ことが未来を明るくする。もちろん絶対ではないが目の前に魚不足というか食糧不足が待ち構えていると思っている。養殖魚の魚粉以外の餌の開発が急務となっているのはその証拠である。すでに魚を大量消費する時代は終わり、とった魚を大切に食べる時代が来ているのだ。
コラム

奈良の番茶が生んだ茶がゆ

奈良県十津川村平谷、『ふくおか』から「番茶」を取り寄せた。取り寄せは、よほどのことがないとやらないので異例だ。同村の松寶純子さんがチャノキの葉をやや野性的につみ、よくよく揉んで作ったものだ。十津川を縦断したのはサンマのことを調べるためだ。国内でもっとも早くからサンマを流通させたのは熊野(三重県・和歌山県)と奈良県、後に畿内、美濃である。サンマの歴史にとってもっとも重要な地域と言えるだろう。そんな旅の途中、小さなスーパーというかコンビニのような店、『ふくおか』で見つけたのがこのお茶である。
コラム

今季初瓶ウニは青森県大間産

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に青森県産瓶入りの生ウニがきていた。岩手県などの牛乳瓶入りが有名だけど、瓶の形なんてボクにはどうでもええことなので、この広島県のふりかけが入っているような瓶でも瓶は瓶なのよと思っている。ときどき生ウニは「牛乳瓶入りが好き」と言う人に出会うことがあるが、牛乳瓶に惹かれて買うのは止めようよ、といいたい。ようするに瓶に密閉するのでミョウバンがいらないわけで、苦味のない剥き立ての味が楽しめるウニが好き、と言って欲しい。とりたててウニ好きというわけではないが、ときどき無性にウニが食べたくなるときがある。だいたい初夏というか最高気温が25度超えの、夏日が増えると食べたくなる。瓶入り仲卸価格でだいたい3000円前後でその年の好不漁で値が上下する。1瓶で180gも入っているので、高級すし店の1かんの値段だと思うと安いものだ。最近、そのまま生でとか、ご飯に乗せてというのも好きだけど、ちょっと変わった食べ方に執着している。
コラム

5月14日、都心に出る日のカンパチ茶漬け

いちばん近い都心である新宿まで出なくてはならない日だった。面白いもので八王子の市場人は新宿に出るとき、東京に行くという。最近、数えるほどしか都心に出ないので、ボクもときどき東京に行くというようになった。毎日、激混みの列車に揺られていたボクが、遙か昔のボクになっているのだ。近いんだから慌てる必要はないだろうと思われるかも知れないが、普通の日でも忙しい午前中が2倍忙しくなる。それでも、自宅では原則魚飯なので一瞬で食べられる魚飯を考える。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが銭州で前日に釣り上げたカンパチがあるので冷蔵庫から取り出し、中落ちをかき出し、食べやすい大きさに切る。少しだけみりんを落としたしょうが醤油に漬け込む。しょうがは近所でもらった試供品のチューブだ。刻みねぎを加え、ごまを振り、かき混ぜる。
コラム

ハチクと生利節は相思相愛

八王子綜合卸売センター、『八百角』にハチク(淡竹/はちく)が出ていた。たぶん長野県とか群馬県のものだと思う。比較的寒冷な土地に育つもので、東京都多摩地方や千葉県ではマダケが一般的でハチクはほとんどない。長野県、新潟県や山形県では今、市場や直売所はハチクだらけだと想像する。ハチクを見つけたら練り製品とか生利節(生節)が欲しくなる。市場中を探したが生利節がない。市場帰りに近所のスーパーにはなく、打ち合わせで出掛けた駅前の、スーパーをのぞくと今切れているところだと言われた。諦めていたところが、電気屋さんの隣のスーパーで発見する。竹輪以上に基本的な食材だと思っているのに、こんなにあっちこっち探さなくてはならぬとは、ヤな世の中になったものヨ。
コラム

6月初っぱなのイサキは銭州産

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウの銭州行は、最近、本命ばかりでつまらぬ。シマアジなんてものはいりまへん、食っても食えぬ魚がええんだす。石なんて最高だす、と言ったものの、とりあえず見事なイサキがあったので連れ帰ってくる。32cm・675gはそこそこ大きい。イサキは外洋性の魚である。生息海域による違いはあまりないと思っていたが、大量に食べていると比較的岸近くにいる個体の方がよい気がしてきている。ボクの地元、小田原周辺のイサキの脂ののりは、例えば銭州や駿河湾金洲よりも上ではないか。まだ結論は出ていないが、市場で選ぶときはどちらかというとあからさまに外洋のイサキではなく、半外洋のイサキを選んでしまう。例えばリアス式海岸的な地形周辺でとれるイサキは味があると思っているが、いかがだろう。
コラム

産地不明マサバのサバマヨ

アニサキス探しで大量に分解しているマサバを、全部捨てるのは飢餓の危機迫る(大げさではなく間違いなくやってくる危機)、今、許されないことだろう。この少々潰れ潰れした筋肉を集める。これでサバマヨを作り、撮影用に買ったバタールで遅い昼ご飯を作る。
コラム

5月8日、主菜は高知県産シログチ

自分の食べているものを記録しなさいよと、その道のプロに言われて、食べたものを全部撮影することにした。取り分け、朝ご飯はちゃんと食え、と言われたので、撮影したもの以外にも、例えばみそ汁などいろいろ作る。市場に行かない水曜日なので、一日中、文字打ちの日である。水産生物を調べるという事は、記録するという事だし、生きていくためにはたつき仕事もしなくてはならぬ。卵がダメになりそうだったので東京風卵焼きを作る。初めて上京して江戸川区で食べたとき、ビックリ仰天するほど醤油と砂糖の濃厚味だった。今や醤油も砂糖もちょっとだけよ、となっている。水菜はゆでて市販のドレッシング。昨日の厚揚げ煮は、ときどき作るものでだし以外は精進。普通の家庭の普通の味。だしは混合節で養殖の日高昆布。フクロフノリのみそ汁。フクロフノリは伊豆半島産で小田原のおっかさんにもらったもの。みそは福島県南会津町の梁取みそ。シログチの塩焼き。東京では「いしもち(シログチ)」は塩焼きと決まっているかのごとくだけど、事ほど左様にうまい。
コラム

ときどき食べたくなるヒラツメガニのみそ汁

勝手にデ・ハーンものと呼んでいる。19世紀前半にシーボルトとその後継者たちが日本で集めオランダに持ち帰った標本を研究したもの。『日本動物誌』に記載されているものだ。ウィレム・デ・ハーンは甲殻類、シュレーゲルやテミンクは脊椎動物を担当している。明治時代になり、いざ、国内の動物を調べようと思ったら、すでに非常に多くの動物が研究され記載済みだった、とわかったときの驚きは大きかっただろうと思う。これを、これまたボクは、勝手にシーボルトショックと呼んでいる。このカニの標準和名のヒラツメガニの出所や理由がまったくわからない。どこが平たいのだろう。酒井恒というカニの大家もそれに触れていない。学名のpunctatus は斑紋があるということだけど、これもどうなんだろうな?ゆでて食べるというよりも、みそ汁にされることの方が多い。昔、九十九里のはぐら瓜農家さんで買ったことがある。売っていたのが農家の方なのかどうかは不明だけど、みそ汁の試食つきだった。そこでの名前が「ほんだがに」で自動車会社のホンダのマークのHからだ。そのものすばり、「Hがに」とも「すけべがに」とも呼ぶ。
歴史

ウナギの旅 貨幣について

江戸時代の飲食店の出現は貨幣の歴史でわかる。特に高級な食べ物であったウナギが一般人にとって馴染み深いものとなるには貨幣の創銭・改鋳があってこそなのだ。先日から寛永通宝を探して骨董市を歩いた。寛永通宝は江戸入り後、特に徳川家光時代、渡来銭(当時銭は中国から輸入していた。12世紀の最初の輸入銭である宋銭と平家の関係は重要。明銭は江戸時代初期の小額通貨だった)からの脱却を目指して作られる。寛永通宝は後に幕府だけではなく各藩で鋳造されてより経済が発展する。ただし100文の買い物をするためにはこの重さ4gの1文銭を100枚(400g)持ち歩かなくてはならない。銭緡(ぜにさし)といって100文の銭を1まとめにする仕事があり、賃金が4文(銭緡をした人の取り分はこの何割か)だったので、実は1緡96文だった。割れ銭などを選別しながら数えて100文を緡(さす)のは以外に大変だったかがわかる。
コラム

5月7日、主菜は淡路産マサバの塩焼き

自分の食べているものを記録しなさいよと、その道のプロに言われて、食べたものを全部撮影することにした。取り分け、朝ご飯はちゃんと食え、と言われたので、撮影したもの以外にも、例えばみそ汁などいろいろ作る。もちろん撮影後にあれこれ取りそろえるのは、体力的には苦しいのだが。さて、アニサキスのためにマサバ、ゴマサバを買っては買ってはバラして、アニサキス探しをしている。さすがに全部、身から何からつぶしていることにも気が引けて、塩サバにしたり、ゆでたりして保存することになる。ご飯、主菜は兵庫県淡路産マサバの塩焼き。兵庫県明石市明石浦漁協の味つけ海苔、ダメになりそうなにらで、ニラ玉、ニラ・若布のみそ汁。ピーマンごま油炒め(白ごま)。撮影したばかりのアイナメたたきを焼いたもの(さんが焼き)を添える。淡路島産マサバは分解するのが忍びないほどの上物だった。さほどではないが、脂がのっていたのだ。こんな時季にこれほどの脂ののりは経験したことがない。今回のものは、これを切り身にして振り塩、少し寝かせて冷凍保存しておいた。アイナメたたきを焼いたものは、マアジなどと比べると淡泊すぎるが、これもおかずの1品としては十二分にうまい。
コラム

北海道産アカホヤの色は限りなくマゼンタ

田中小実昌(1925-2000)の文章が味わえるようになったとき、自分の文章読力が上がったな、と思ったものだ。文字を真面目に追っていくと、非常に稚拙であったり、どこにも修辞を感じられなかったり。無造作にほうり投げた文章の中にいろんな事象が散らばっていたりする。とりとめがなく、結句がない。山口瞳とは両極端にある。中学生にとっても面白くて仕方がなかった山口瞳的脳みそで田中小実昌を読むとは大変なことになる。今、枕周りに四五十冊の本が散らばっているが、昨日手に取った田中小実昌に、〈ホヤは北のほうにいくほど、ピンクに近い色だ。それが西(南)に下るにつれて色がうすれ、仙台湾あたりでは、ほとんど砂色だ。〉『ほろよい味の旅』(田中小実昌 中公文庫 単行本1988)という文章がある。
料理法・レシピ

医者いらずのナスとカツオの血合いで惣菜

書籍の整理をしていて、坪内祐三の1冊に足を取られてはかが行かない。神保町の人生劇場の前で一度だけすれ違っている。あっと思ったのはボクの方だけで、それだけのことだけど、この若き文芸評論家の死が返す返すも残念でならない。ページをめくっている内に、脳みそが慶応3年生まれの正岡子規の世界に持って行かれている。子規のまざまざとした表現力は天成の明るさから来るものなか、とか、明治27年からのこととか、いろいろ思っている内に疲れてきた。我が家にあるはずの子規の書籍を探したら、どうしても見つからない。書籍を処分するつもりが岩波文庫を大量に買うはめになる。子規が脳みそにへばりついて離れないので、故人を偲び、大好きだった堅魚の刺身を作り、残りは医者いらずのナスと合わせてご飯の友を作った。最近、惣菜作りが非常に楽しい。その日、八王子綜合卸売センター、八百角のバアチャンに、「なすの医者いらず」という諺を教わる。あんなへなへなした味の野菜に薬効があると思えないけど、90近くのバアチャンの言うことなので説得力がある。カツオを買うと、血合いは「みそたたき(なめろう)」とか煮つけにしてしまうが、たまには思いつき料理を作ってみることにした。血合いは骨ごと細かくたたく。少量のみそとしょうが、水溶きの小麦粉を合わせて、ふたたび徹底的にたたく。ナスは適当に切り、水に放っておく。ナスの水分を切り、油通しをする。血合いをたたいたものは香ばしく揚げる。鍋に酒・みりん・水を合わせて煮立て、アルコールを煮切る。醤油、化学調味料、下ろしにんにく、八角3分の1くらいを合わせて、甘辛味をみて味加減する。少し煮つめた中にナスと、血合いたたきを加えてからめ、火を止めて、粗挽き黒コショウを振る。あっと言う間の一品なのだけど文字にすると面倒くさそうなのはなぜだろう。これを常備菜として保存。折々にご飯の友とする。この甘辛醤油味、八角風味にカツオとナスという組み合わせは、ご飯にとって最良の夫かも知れない。どことなく新婚家庭のように、忙しいうまさである。岐阜の三千盛の肴としてが、やはり酒とは縁がない。
トルコ風サンドの材料
コラム

本日の朝ご飯はスルメイカのトルコ風サンド

予め断っておくが写真は遙か昔のものだ。本日、午前11時半に作ったトルコ風サンドではない。突然の停電でパニックに陥る。こんなときに限ってケータイのバッテリーが切れている。なすすべがないので止まった冷蔵庫の冷凍庫をあさってスルメイカのげそを出して、サンドイッチを作った。腹が減っては戦はできぬ。作っても停電中なので撮影できるはずもなく、ただただ食べたけど、せっかくなので前回に撮影した同じ物を登場させる。作り方はボクにも作れます、で簡単。げそはすぐに解凍するのでレタスを始め野菜などの材料を並べる。今回のスルメイカげそ以外の材料は、クレシオーネ コントルノというイタリア野菜、エリンギ、にんにくにトマトだ。前回の写真と違うのはマシュルームの代わりにエリンギと、レタスに代わってクレシオーネ コントルノであること。
コラム

ナンヨウカイワリはデキスギ魚

いまだにプロの間でもマイナーな魚である。入荷が少ないわけでもないのに名前(標準和名)をおぼえてもらえない。その唯一の問題点は欠点がないことだろう。ナンヨウカイワリはできすぎるが故に目立たないのである。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウの銭州通いは続いているが、釣果の中でウメイロとともに数が多いのがナンヨウカイワリである。昔は伊豆諸島に多くて船釣りよりも磯釣りの魚だった気がする。浅瀬にいると思ったら、船釣りでぼんぼん釣れる(釣り師曰く)のには驚かされた。最近では相模湾北部でも増えている。見た目はカイワリよりもシマアジに似ていて、非常に美しい。アジ科の分類は細分化されたので説明しても無意味だけど、もちろんカイワリとは同じアジ科というだけでそれほど縁はない。比較的安いのでときどき買ってみる。たぶん旬は初夏ではないかと思うのだけれど、同属のクロヒラアジと比べても取り立てて脂が乗るということがない。並んでいると当然のごとく、クロヒラアジに手が伸びる。ただし、脂の極端なのりはないものの味がある魚なのである。アジ科ならではのうま味成分がたっぷりで、微かに酸味があるので後味がいい。今回の個体は体長31cm・531gなので、やや小振りだ。これを素直に刺身にする。
コラム

5月、アサリのみそ汁かけ飯

今、「深川飯」というのがあるが、あれはそんなに古い言語ではない。今、深川飯には炊き込みご飯と、ぶっかけ飯があるが、ともに剥き身を使う。殻付きよりも少し高くつくし、料理店で剥き身にするにも手間がかかる。あれは明らかに家庭料理ではなく、料理店の料理だろう。ちなみに深川とは現在の江東区佐賀町と深川不動周辺、“江戸の高速道路”小名木川大川(隅田川)より、のこと。このあたりは明暦の大火(1657)までは純粋な猟師町だったが、じょじょに宅地化や御家人の住居が作られる。江戸時代の初めには佐賀町から新荒川近くの大島までの海岸線でとれていたアサリも、徐々に東へ東へと産地が遠くなる。江戸時代江戸の町にきていた貝の行商はアサリ、シジミが基本で、まれにハマグリを売ることもあっただろう。アサリは生きたもの(貝殻のついたもの)だけではなく、剥き身もあった。もともと貝の行商は今現在の江東区の人達が産地直送していたのが、船橋など下総に移る。その内、上総、木更津、富津が本場になる。なぜか? 自然の海岸線を無闇にコンクリートで固め始めたからだ。明治、大正生まれの聞き書きを読むと、明治時代末から昭和の高度成長期まで、貝類は小名木川の舟運で現千葉県市川・船橋などから運んでいたらしい。その運河沿いに点々と飯を食べられる屋台があった。その基本がアサリのみそ汁と飯だ。アサリでご飯を食べる、この基本は炊き込みご飯やぶっかけ飯ではなく、殻付きアサリのみそ汁のかけ飯、もしくはみそ汁をおかずにご飯を食べるものだったことは明白である。要するに手っ取り早い忙しい飯だ。
コラム

イワガキの丸かじりは御免こうむる

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に愛知県産のイワガキが来ていた。愛知県としか書いていないが伊良湖半島と知多半島の先端を線で繋げる、その線上にある愛知県の離島、篠島あたりでとれたものだろう。イワガキを昔々から食べていたのは秋田県、山形県、新潟県、鳥取県と千葉県・茨城県をはじめとする関東周辺だと思っている。その限定的な食文化が、今や全国区となっているのは、まことに喜ばしいものである。豊洲などで知らない産地のイワガキを見つけるとうれしくてたまらない。食いたくなったらむいて食えばいいだけなので、料理というよりも味見である。厳密には産地での味の違いは感じているけれど、ボクには順位がつけられない。
コラム

このところハズレなしのアイナメ

八王子綜合卸売センター八百角に、たぶん地物(関東周辺)だと思われる山椒の葉が入荷してきている。栽培ものよりも遙かに葉が大きく、料理店では飾りには使いにくい。我が家ではこれを平気で飾りにも使い、木ノ芽味噌や木の芽焼きなど本来の使い方でも使う。同時に、このところ八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に見事なアイナメがやってきている。アイナメを買うなら活魚だと思っているので、少々贅沢だけど魚屋で血まみれのアイナメをためつすがめつする日々の到来である。
漢字・学名由来

イボダイは東京の呼び名の東京訛りを取り去ったものだ

つれづれなるままに。ほんの数年前までボクは、水産業とも動物学・植物学ともまったく関わりのない世界、非常に流行りとかトレンドとかを扱う世界の片隅にもいたのだ。学校を卒業して、そこで仕事を始めたとき、同時に水産生物をなんとなくではなく基礎から調べ始めた。そのとき神保町大学の先人から絶対に専門家になってはいけないと教わる。技術的な分野なら専門家になってもいいが、いわゆる文化をやるなら、「専門家=死」とも言われている。ということで、専門分野は死にものぐるいでやりながらも、まったく違う角度、素人・遠目の自分を存在させている、つもりだ。さてそこで、今回のイボダイの話に移る。標準和名イボダイは明治時代半ばには〈エボダイ〉が標準和名だった。田中茂穂はイボダイを標準和名としながらも、〈東京では訛ってエボダイということが多い〉とある。ちなみに「疣鯛」は体表から粘液を出すための名で、詳しくは述べない。ちなみにこの時代の標準和名が東京と神奈川なのは、動物学の本拠地でもある東京帝国大学理科大学が東京都本郷にあり、研究所が神奈川県江の島・三崎にあった。その周辺で呼び名を採取したからである。それにしても内村鑑三が魚類学者であったときの「エボダイ」を、東京の訛りだとしてイボダイにした犯人がわからない。【話の寄り道】 標準和名は国内での動物学の土台を作りあげた、箕作佳吉(安政4〜明治42/1858〜1909 14歳で大学南校からアメリカに渡米。日本人最初の動物学者)や石川千代松が、Standard Japanese name (標準和名)を決めることから始める。念のために、Standard Japanese name はあくまでも科学の分野での名前である。正しい名前などというものではない。これはモースと、動物学の教師ではないがヒルゲンドルフの時代から始まっていたはずだが、やはり本格的になるのは箕作佳吉以後だろう。
コラム

5月6日の朝ご飯の主役はシログチ

自分の食べているものをちゃんとメモしておきな、と言ったのは、まさかこんなところで会いたくないなと思った顔見知りのさる職業の人だ。まあ人間の体のプロが言うことだし、せっかく生まれて初めての健康診断なのだから、やってみんべ、と思った次第である。1日の内で食事らしい食事は朝ご飯だけだ。他はものすごい量の魚介類料理を作っているので、ダラダラ食いとなる。早朝からだって魚料理を作っているので、やはり朝ご飯も魚介類が主役なのは悲しいけど、これが現実だ。この日の主役は高知県産シログチである。刺身にしてもっともおいしい魚だが、食文化的な理由で扱いが悪い。だいたい全国的に見ても、本種を生では食べない。昔、日生(岡山県備前市)でヒラ刺網を見ていたとき、見事な「ぐち(シログチ)」を見つけて、物欲しそうに見ていたら「ほらよ」といただいたことがある。「刺身にしたらこっち(ヒラ)より上ですよね」と言ったら、「バカ言うでない(意訳)」と言われた。あれだけ魚食いに長けた岡山でも、シログチの刺身はそんなに普通ではない、ようなのだ。ご飯、福島県相馬市タマゴヤの朝鮮漬、キウイ、ワカメの味噌汁以外をば。シログチの焼霜造り・刺身/実に脂が豊か、身に張りがありうま味も豊かで、ご飯の甘味と一緒になって無茶苦茶でござりまする、と言うくらいうまい。マサバのみそ煮/アニサキス探しのために大量にさばいたマサバの一部を、山内麹店(福島県南会津町只見)の梁取みそで煮たもの。塩分濃度の高いみそを少量使いにして作ったものだが、このみそ実に風味がいい。平凡な料理の方が飯に合う、と食べたものを振り返るたびに感じる。
コラム

熱海市杉本鰹節店のそうだかつお削り節

静岡県熱海市熱海魚市場から『ぶーちゃんのたまご焼き』、そこから商店街をことこと歩いて最初にたどり着いたのが杉本鰹節店だ。店内に入るやいなやの削り節の香りがんともいえずいい。鰹節にさば節の削り節があり、そのとなりに目的のものを発見する。偶然にも「そうだ削り節」がなくなっていたのだ。削り節を量り売りしてくれる店は、今や東京都内にもほとんど見かけない。削り節はできれば200gずつ買いたいので、これは由々しきことなのだ。その上、スーパーで買えるメーカーものの袋入りは高すぎるのである。熱海市のすごいところは、商店街の一角に庶民的な削り節の店が残っていることかも知れない。我が家からいちばん近い削り節の店は川崎北部なので渋滞を考えると往復2時間以上、場合によっては3時間かかる。久しぶりの削り節店での買い物に少々舞い上がって300gも買ってしまった。しかも乾物屋の長居くらい好きなものはないのに数軒先のパン屋に気をとられて、じっくり店内を見ていない。店内に微かに引っかかる事があったのに、軽く流してしまったことが大失敗だったことに後で気がついた。さて、今回の「そうだ削り節薄削り」はとてもよいものだった。良識的な話になるが一般家庭では薄削りの方が使いやすい。今回は昆布だしに「そうだ削り節薄削り」中心でだしをとる。
歴史

正岡子規の「堅魚の刺身、薩摩芋の味噌汁」

明治三十三年(1900)十月十五、正岡子規は死の2年前であり、寝返りはおろか仰臥するか体を左に向けておくのが精一杯になる。そんな状態にあっても日光が窓に差し込んでくると、〈午時(正午)は近づきたり〉と飯を待つ気持ちが募るのが子規らしいところだ。ほどなく母、八重が長方形の膳に飯、一汁一菜をのせて来る。〈あたたかきやはらかき飯、堅魚の刺肉(さしみ)、薩摩芋の味噌汁の三種なり。皆好物なるが上に配合殊に善ければうまき事おびただし。飯二碗半、汁二椀、刺肉食ひ尽くす〉地獄のような苦しみを感じながら綴られる、正岡子規の文章の簡明さに恐れ入るしかない。さて、薩摩芋の味噌汁は学生時代に正岡子規の文章で知っていたことを、フロッピーを変換して判明した。記憶力が悪いのでいつもお初だと思ってしまう。ちなみに堅魚(カツオ)の刺肉と薩摩芋の味噌汁はとても合う。確かにこの組み合わせで食う飯はうまい。カツオは1900年にはまだ魚介類を氷で冷やしていなかったことからして、千葉県銚子産で舟運を使って一晩で日本橋の魚河岸に持ち込んだものだろう。このときすでに利根運河は完成しており、江戸時代以来の大動脈は関宿町まで北上しなくてよくなっている。ちなみに当時、新暦の10月は比較的涼しかった。群馬県や東京都多摩地区で初霜の降りる時季だ。相模湾からでも千葉県からでも、カツオを生の状態で運べる期間は春と秋に限られていたのである。秋のカツオを正岡子規が食べられるのは明治34年を残すのみ。『飯待つ間』(岩波文庫)
コラム

努力の末の小肌開きで作る天丼

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産は若い衆ががんばっている。日々こつこつと地道な努力を重ねているのが頼もしい。それが証拠に彼らが作るマアジや小肌(コノシロの若い個体)の開きがだんだん上等になってきているのだ。せっかくなのでお昼ご飯に開きを買って来る。本当は酢じめにすべきものだが、今回は天ぷらを作るつもりだ。もちろん文字の世界ではあるが、この日のボクは脳みそが江戸の町に飛んでしまっている。川端の安い天ぷら屋台の情景を描きながら、大きさを揃えて袋に放り込む。文字の世界のよいところは、前日まで1220年代、後鳥羽上皇の傍若無人から、その翌日には江戸時代後期の物価のこと、庶民の世界に迷い込むことができる、ことだ。そのときボクは四文銭二、三枚を懐に、じゃらじゃらさせて歩く江戸の町民そのものになりきっていたのだ。
コラム

網代漁港のばらばらな魚でごった煮

静岡県熱海市、網代漁業、網代魚市場で分けていただいた、いろいろな魚を一緒に煮つけにする。ダメになりそうな大根も一緒に煮たので、我が家の経済にもよろしいかも。このいろんなものを一緒に煮ることを「ごった煮」といい、庶民の経済だけではなく地球に優しいのだという話をしたい。若い世代で温暖化に関して危機感があるとかの報道があるのに、かたや膨大な天然飼料を膨大なエネルギーを使って消費し、温暖化を急激に進める養殖サーモンのブームだとか、遠く南氷洋まで膨大なエネルギーを使っての捕鯨の復活だとかを、まるで喜ばしいかのごとき報道がなされている。核の脅威に終末時計があるなら、生の無駄使い、エネルギーの使いすぎにも終末時計があってしかるべきだ。人間は、生をほとんど総てを地球の生き物から得ているのに、その生き物を追い込んでもいいのか? をまったく報じない。漁師さんなどの「ごった煮」は野菜は少しだけで様々な魚介類をごったに煮たものをいう。卑小なことのように思われるかも知れないが、ここに生物の生存確率を上げ、水産業の未来を明るくする可能性を感じる。兵庫姫路市の沖合いに坊勢島がある。ここで御馳走になった「ごった煮」は、底曳き網の水揚げの情景が見えるようなものだった。いろんな魚が混じることで生まれる味の相乗効果があるし、底曳き網の魚を無駄なく食べる知恵もある。富山県氷見市の「かぶす汁」にもそれがいえる。消費者も、野菜でも刺身の残りでも、スーパーで特売しているあらでもなんでもかんでも放り込んで「ごった煮」を作ろうよ、といいたい。
コラム

熱海魚市場、市場飯代わりの『ぶーちゃんのたまご焼き』

静岡県熱海市、熱海魚市場に飲食店はない。市場に数時間立って右往左往していると矢鱈に腹が減るので、非常に残念、だ。話は変わる、ボクはFBでほぼ友達申請をしない。危険な方だけやっている。危険と言っても相手から申請されると失礼に当たるという危険である。いつの頃からか、FBで、たびたびおいしそーうな、卵焼きの画像が登場するようになった。これが熱海市にある、『ぶーちゃんのたまご焼き』だと気づいたのは最近のことである。卵焼きなら申請したかもわからないけど、この謎の店の卵焼きがFBに登場するのが謎であった。ちなみにFBで個人的な情報はいっさい見ないので、よほど卵焼きに惹かれたのだと思う。さて、話を5月10日にもどすと、案内して頂いた宇田水産の宇田勝さんに教わった、鰹節店を目指していたのである。信号でとまって、ひょいっと左を見るとなんと「ぶーちゃん」があったのである。この辺なのかなとは思ったものの、思わず違法駐車して訪ねたら朝ご飯が食べられるという。やれやれうれし、とカウンターに座ったら、とっても店の雰囲気がいい、じゃあーりませんか。たぶんぶーちゃんの奥さんが明るいし、お子様がお子様らしくていいからだろう。ちなみにボクは魚の子供よりも、人間のお子様が好きなのである。特に特に大騒ぎして、びゅんびゅん飛び回るような新鮮なお子様が好き。ぎゃーぎゃー泣いているのなんぞ見ると心が穏やかになる。(注/もちろん食べ物としてではなく、一緒に大騒ぎするのが好きなのよ)奥から本物のぶーちゃんが出て来たのに驚いた。ボクもぶーちゃん、彼もぶーちゃん、なのだ。
コラム

静岡県熱海市、熱海魚市場

まさか熱海に魚市場があるなんて、と思っている人も少なくないだろう。国内屈指の観光地で熱海市で、泊まることも、街歩きすることも、観光地なので観光することもできる。日本列島の京都にも負けないネームバリューと言えそうな気もする。ついでに長年関西に住んでいた谷崎潤一郎はやがて熱海に移り住む。名著、台所太平記の舞台でもある。両地の魅力拮抗するに、京都、熱海とのどっちつかずの自分に悩んでいたほどである。
コラム

熟成深まる塩マグロのお握り

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で分けてもらったマグロの血合いぎしで作った塩マグロの出来上がりは5月5日だった。漬け上がってそろそろ二十日、今がいちばんうまいときかも知れない。お握りの作り方など書いても仕方がないが、ご飯に塩味をつけないのが自宅で食べるお握りのコツだと思っている。ご飯に味がない方が具の味が引き立つ。お握りの材料といってご飯と漬物くらい。大好きな甘い東京たくわんと、海苔はいただきもので、佐賀県有明海漁業協同組合のものだ。口溶け感がよく、香りがよく、味わいがしごく深い。干ものは熟成しないが塩蔵したものは熟成する。明らかに発酵ではない、塩と素材だけで生み出した味がする。お握りの具としては頂上の部類だと思う。
ウメイロ
コラム

今季初、銭州のウメイロ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウは釣り名人の域に達しつつある。恐るべき釣果をこれでもかと見せびらかせて、ワハッハと笑っているが、笑いたくなるのも当然といった釣果である。というのは何度も書いた。銭州の主要な釣り物はなにか? 意外にウメイロとアオダイではないかと思っている。シマアジ狙いや大物専門の方もいるが、基本はこの2種でいいと思う。2種は同じアオダイ属(同属と考えるとわかりやすい)の魚で、見た目も、下ろしても同じようにきれいである。面白いものであまりにもおいしい魚を食べると、どちらが上かとか下かではなく、種の違いさえもなくなる。ときどきどっちでもよくなるときがある。2種は釣れてうれしい魚そのものだと思うが、昨年から銭州でまとまって釣れているのがウメイロの方である。関東の人間にしかわからない話(関西なら紀伊半島になるのかな?)だが、知り合いの釣り人曰く、「外房へイサキを釣りに行くように釣れる」らしい。今季最初の銭州のウメイロは少し小振り体長29cm・769gを選んだ。ウメイロのよいところは、小さいものと大きいものとの、脂ののりの差がないことだ。
文化

正岡子規、水戸紀行の「鮫の煮たると」

明治22年(1889)4月はじめに正岡子規(正岡常規・昇)は水戸に向けて歩行にて旅に出る。江戸川を渡って松戸駅(鉄道の駅ではなく宿と同じ)にいたり、そのまま足を伸ばして小金駅をこえる。12時近くになり草の屋で昼食をとる。〈我等を迎へしは身のたけ五尺五、六寸、体重は十七貫をはづれまじと覚ゆる大女なり。「菜は焼豆腐とひじきと鮫の煮たると也、いづれにやせんと問う。……」、さらば鮫にせんと……。一きれ食へば藁をくふが心地に吐き出したるに……〉場所は現、常磐線北小金駅あたり。サメの食べ方は東京都以北で煮つけ。三重県以南太平洋・瀬戸内海・九州で湯引き(ゆでる)だ。サメの種類も北はツノザメ科のアブラツノザメ、ネズミザメ科のネズミザメなど。南は主にドチザメ科のホシザメ・シロザメ・ドチザメ、カスザメ科のカスザメ・コロザメ、オオセ科のオオセ、エイになるがサカタザメ科のサカタザメ・コモンサカタザメなど多彩である。(日本海側や中国地方山間部のサメの食文化にはここでは触れない。)今現在も南北でサメの食文化が異なっている。常磐線開通前の水戸街道小金駅あたりで正岡子規が食べたサメは沖合いにいるネズミザメではなく、より岸近くにいるアブラツノザメと考えるべきだと思っている。
コラム

焼きうどんはイカがいい

5月4日の遅い朝ご飯は「イカ焼きうどん」だった。東日本で、お昼にお好み焼きはあまりない。西日本に行くと、お昼ご飯がお好み焼きということが多々ある。最近、西の旅に出ていないので、昼前後になると、やけにこのお好み焼きのソースの香りが恋しい。昔、山口県岩国市で聞取していたまったく未知の人が連れて行ってくれたのも、お好み焼き屋だった。期待していただけに、岩国でなにもお好み焼きを食べることもない、とは思ったが、西日本で、お昼ご飯にお好み焼きの方が、むしろ自然なのだ。しかもミックスお好み焼きがとてもおいしかった。このときほど東日本と西日本の、お好み焼きの食べ物としての位置が違っていることを強く感じたことはない。ちょっと前のことだけど、徳島県徳島市のお好み焼き屋で、イカの焼きうどんを食べようと思ったとき、「豆玉」の文字が目に飛び込んできた。知り合いのDに甘い豆が入ったお好み焼き食べたことがありますか? と質問されたからだ。ちなみにこれ以前にも、このときもボクは「豆玉」をまったく、ほとんど食べていない。連れがほぼ全部食べてしまったからだ。イカ焼きうどんも食べていない。2人で3つ注文したときに、麺ものはそば(中華そば)がいいと連れが言ったからだ。できるだけ早く徳島県東部の「豆玉」を食べてみたいと思ったがすぐ忘れてしまっている。お好み焼き屋のイカうどんも食べたい。もちろんここ数年のことだけど、ボクのお好み焼きの麺の基本にあるのはうどんである。焼きうどんが好きだったときに、子供返りしているのだ。具の基本はイカで、特にスルメイカがいい。話が逸れ逸れになったが、連休中のボクに戻る。近所でスルメイカのげその特売をやっていた。買いました。それでは何を作りましょうとなり、いの一番にカゴに放り込んだのが蒸しうどんだったのである。焼きうどん作りは簡単である。材料を集める。キャベツ、この日はデルモンテのウスターソース(徳島では加賀屋のお好み焼きソースを使う)、蒸しうどん、板東粉(あおさ粉とも。アナアオサを特種な加工をほどこしてふりかけ状にしたもの)、鰹節粉だ。まずは蒸しうどんを流水でほぐす。水分をよくきる。げそ、キャベツは適当に切る。キャベツとげそを炒めて、うどんを加える。比較的ちゃんと炒めてウスターソースをかけてまた炒める。コショウを振る。これで出来上がり。なぜか、用意していたはずの板東粉がなかった。出したはずなのにないので、カツオ節粉だけかける。炒めたイカとソースはベスト相性だと思っている。ヒデとロザンナを聴くようである。うどんはむしろその愛を包み込むマントのようなものだ。蒸しうどん、もう一玉買えばよかったと思ったけどもう遅い。
あじのたたき
文化

文学の中の「あじのたたき」

1970年前後、マアジの価値を上げたとされているのが、「あじのたたき」である。神奈川県小田原市周辺の料理で、「あじのたたきなます」ともいう。マアジを三枚に下ろし腹骨・血合い骨を取り皮を聞く。これを細かく切ったものである。「みそたたき」、「なめろう」との違いは、サイコロ状の形が残った状態であること、味つけしていないところだ。しょうが、ねぎやみょうがなどの香辛野菜を使うなど徐々に変化しているが、もともとは漁師が船の上で作っていたものだ。一説に釣りのとき、コマセ(寄せエサ)がなくなり、釣れたアジ(マアジ)を細かく叩いてコマセに使ったとき、つまんでみたら美味であったので、作るようになったとも。小田原と東京との繋がりは深く、この「あじのたたき」が東京でも作られるようになり、あっと言う間に都内全域に広がる。■写真はもっとも基本的な「あじのたたき」。
コラム

カツオ腹も一夜干しのお握り

福島県相馬市のスーパーで、カツオの腹の部分だけのパックを見つけて買い占めてきた。焼く、煮るなどしていちばんうまいところである。一夜干しにして半分は冷凍保存して置いた。これを折々に使っている。
コラム

5月2日はクロダイのムニエルとパンとコーヒー

愛知県産クロダイを1尾かったら、いくつもの料理を撮影のために作ることになる。魚料理を作ったら、=それで食事となる。クロダイは中途半端な魚だと思っている。今、魚価が上昇傾向にある中、その上昇傾向に乗り遅れているのである。かなりの上物を買ってもお買い得感がある。高級魚だったのに大衆魚に成り下がっていると考えるとわかりやすいだろう。だから、日々気軽におかずにすればいいのだ。撮影のために作ったムニエルは、だれでも簡単に作れる普段着の料理だ。つけあわせの新じゃがの小じゃが、スナップエンドウは一緒に軽く塩ゆでして陸揚げに。にんじんも適当に切っておく。水洗いして三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を取り、食べやすい大きさに切る。塩コショウして小麦粉まぶして、多めの油でじっくりソテーし、仕上げにマーガリン(バター)で風味づけする。このとき軽くゆでた小じゃが、にんじんも一緒にソテーする。あとは温めたパン、彩りのトマトと一緒にワンプレートに盛り付ける。クロダイ以外はあるものなんでもかまうことはない。料理にルールは無用である。これが遅すぎて、ぎりぎり午前中の、朝ご飯となる。ソテーしたクロダイの意外なほどの味のよさに感激するはずだ。強めにソテーした香ばしさと、身の豊潤さとに、味の大きな段差があるのがいい。自宅では、1ヶ月に1度しか飲まないコーヒーは、インスタントなのに上手に作れなかった。次の自宅コーヒーは来月だけど上手に作りたい。
コラム

ホッキガイの中に住むヒモビル

ウバガイの中にいる寄生虫で、人にはまったく害のない、貝にも迷惑かどうかわからない寄生虫である。ヒモムシともいう。ヒモビルは紐形動物門(ひもがたどうぶつもん)有針綱ヒモビル目ヒモビル科のヒモビルである。ウバガイ(ホッキガイ)を開き、外套膜周辺に比較的よく見かける生き物である。2cm〜3cmくらいあるので簡単に見つけることができる。
料理法・レシピ

ヨリトフグの煮凝りで飯の食いすぎ

静岡県熱海市、網代漁業、網代魚市場で分けていただいた魚の中に大きな「水フグ(ヨリトフグ)」が混ざっていた。大好きな魚で、こいつだけはどうしても食べたかったために分けていただいた。とは以前にも書いた。さて、湯引きと同じようなものだけど煮つけにしても絶品である。ついでに言うと、煮つけよりも冷やして煮凝りにしたほうがうまい。煮つけ=煮凝り、と思っても差し支えない。本種は無毒である。ただし原則的にフグ科の肝臓、卵巣は食用不可なので、ここでは素直に皮と筋肉だけを使う。
コラム

5月1日の朝ご飯は相馬市産「にくもちがれい」尽くし

自分の食事を振り返って考える、という変なことを始めたから1月半以上がたつ。意外に面白いので続けていく。水産生物とヒトとの関わりを調べているので、スーパーの魚売り場はとても重要なのである。相馬市にはいくつかの魅力的なスーパーがあり、それぞれに特徴がある。魚が豊富な店で「にくもちがれい(ミギガレイ)」をたっぷり買って来た。非常に生息域の狭い魚で、漁業的には本州青森県から福島県までの太平洋沿岸の魚だと思っている。問題なのはおいしいのに、値が安いことだ。これは煮つけの地位低下と関係がある。煮つけのおいしさは食べればわかるものだが、作る人がいなくなっているのだ。さて、大きめの「にくもちがれい」のフライに、真子を集めて煮つけを主菜とした。この和食なのに洋食とされているフライと、江戸時代以来のしょうゆ味の煮つけがまったく別種の味わいで、それぞれご飯に合う。副菜は東京たくわんに、汁はトマト中心のみそ汁と非常にシンプルなやたらに遅い朝ご飯となったのは、この日、あまりにも整理しなければならない情報が多すぎたからだ。
味わい

銭州のカンパチ、刺身で食べて最高!

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウは釣り名人の域に達しつつある。恐るべき釣果をこれでもかと見せびらかせて、ワハッハと笑っているが、笑いたくなるのも当然といった釣果である。銭州で釣ってくるのは、主にウメイロ、ナンヨウカイワリ、シマアジなどだ。この釣果を獺のごときにおっぴろげた中に見事なカンパチがあった。ほんの数年前に、元デルモのオネエサンに腹を引っ張られて、「こりゃだめだ、あんたも貴景勝のような固太りになりなさい」と言われたことがあるが、今回のカンパチなど貴景勝以上じゃないか、と思う。銭州は伊豆諸島神津島の南西にある。古く、春から初夏、大型のカンパチはこの海域で水揚げされていた。今、大型がじょじょに北上している。シオッコと呼ばれるサイズなど、北海道紋別でもとれる。相模湾北部でこのサイズが周年揚がるようになり、秋に北海道オホーツク海で成魚がとれる、のも時間の問題かも。
加工品

『魚善』さんに教わった塩マグロを作る

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で魚を買っていたら、ボクの発泡に買っていないものが入っていた。「?」。 クマゴロウの妻に聞くと、「アレだそうです……」。そうだ、アレだ。お願いしたら、ちゃんとやってくれるところが、クマゴロウのすごいところである。このところ銭州で大釣りしているのも、日頃の行いがいいからだ。頼んでいたのは、売り物にならないマグロである。ただしよく見ると、今回の本マの切り身はそんなに悪くない。問題は少しだけ血合いがかぶっているくらいか。血合いぎしで売れそうでもある。ときは4月の始めに遡る。八王子の魚屋をかたっぱしからつかまえては、塩カツオのことを聞取していたのだ。中に西八王子の善さん(魚善)がいる。「カツオは作らないけどマグロで作るな」というのだ。以前、メジマグロ(クロマグロの若魚)で塩ガツオ的なものを作っているが、今回の場合は、魚屋がコロ(大物のマグロを三枚に下ろし、数等分した塊。ただし今現在、魚屋がコロを買うことはなくなりつつある)を買い、その切りつけた余りを使ったものである。だからマグロ屋でもある舵丸水産に問題ありのマグロを頼んでいたのだ。さて、ありがたく頂いて、少し成形する。切り落としたところは佃煮にする。これなど、誰が食べてもおいしいやろう! 的な味である。
コラム

4月30日はクロダイの刺身とカツオ、ツマリカスベが主菜

自分の食事を振り返って考える、という変なことを始めたから1月半がたつ。意外に面白いので続けていく。ボクの場合、早朝に前日撮影準備した水産生物を撮影→画像の選択・保存、そのとき感じたことや、わかったことをテキスト化してサイトに反映する。過去の値段との比較もするので、早朝まんじゅう1個とお茶のみで、朝ご飯は早くても10時過ぎ、ときに11時近くになる。この日は、朝作って撮影した魚料理を中心に並べ終わったのが12時半なので、ほんまに朝ご飯なんかいな? と疑問に思ったりした。以下は作りましたるもの。【カツオの腹身の一夜干し】 福島県相馬市のスーパーで買い求めた腹身を立て塩に10分つけてほぼ1日干したもの。【クロダイの刺身】 一色産のクロダイはこの時点で脂が乗っていてうま味豊かであった。ご飯の時は濃口醤油ではなく、刺身醤油で食べる。【かすべの煮つけ】 福島県相馬市のスーパーで買ったツマリカスベの切り身を煮つけたもの。前日食べたものをそのまま冷蔵保存したら、見事に煮凝る。【フクロフノリの中華スープ】 福島県相馬市原釜で採取していたバアチャンに撮影用にいただいたもの。やはりフノリのみそ汁はおいしい。小皿に、大好きなスナップエンドウ(スナックエンドウと同じ物。ともに商品名の著作権が切れているので使い放題だと思う)と南相馬市タマゴヤの朝鮮漬。八王子綜合卸売センター八百角の社長がくれた謎のみかん。ちょっとだけ野菜が足らん気もする。
コラム

熱海のおいしいところてん

静岡県熱海市の宇田水産、宇田勝さんに心太(ところてん)をいただく。ボクは太っていてデブな割りに「ところてん」が大好き。いただいていきなりうれしすぎて、ちゃんとお礼を言ったかどうか心配になる。主に紅藻類のマクサを採取して、お日様にさらしたものが、「天草」である。この「天草」を煮て、冷やして出来上がるのが「ところてん」だ。古代からの食品で古くは凝海藻(こもるは)と呼ばれていた。心太という漢字が出来て、「ところてん」と呼ばれるようになったのは江戸時代か、せいぜい室町時代だとされている。多種類の紅藻類テングサの仲間を使った寒天類は主に、長野県や岐阜県で作られていて、全国的だが、原藻を使って作る「ところてん」などが作られているのは海に近い地域である。紅藻類と言えば、東北日本海側の「えご」、「おきゅうと」もほぼ変わりがないものと考えた方がいいだろう。さっそく持ち帰って、天つきで突き出して、お昼ご飯の添える。作り方と言うよりも食べる準備と行った方がいいけれど。まず、湯で辛子を錬る。ガラスの器に氷を放り込んでおき、二杯酢を作る。その間にシャワーを浴びて、漁港で水揚げを見た後の塩気を体中から洗い流す。天つきでついて、冷やした器に放り込んだら出来上がりである。
郷土料理

福島県相馬市の郷土料理「アイナメのたたき」を作る

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で宮城県産、活け締めのアイナメ(37cm ・963g)を買う。そろそろいい時季だというのもあるし、福島県相馬市の旅に出たついでに、この相双地区の郷土料理を作りたかったからだ。この絶品のアイナメで何を作るかというと、「たたき」である。岩手県、宮城県、福島県で「たたき」は細かく切った魚の身をねぎ、みそとたたいたものだ。宮城県では「みそたたき」という人もいる。ちなみに、震災前の原釜漁港で「アイナメのたたき、作りますか?」と聞いたことがある。ウミタナゴやホッケで作るが、アイナメでは作ったことがないという人が多かった。もちろん少人数に聞いただけで、『聞き書 福島の食』(農文協)には、しっかり相馬の郷土料理として登場している。「聞き書シリーズ」は1970年という急激な地域文化破壊年以前の、日常の食事に関する聞取であるため非常に重要な資料なのだ。
コラム

硬骨魚類のアニサキス・マサバ

アニサキス症の責任は飲食店や魚屋が取るらしい。これは料理を提供する側に対して、あまりにも酷な話である。だいたい、それではアレルギー性のアニサキス症はだれが責任を取るのだろう。現在のアニサキス症の責任の所在に関しては、明らかに間違っていると思っている。さて、毎日毎日、アニサキス探しを続けている。寄生虫としてはアニサキスの線虫類と、扁形動物類に分けられるが、線虫類は断面が円形で細長いことで扁形動物と区別できる。さて、幼虫に関しては、硬骨魚類や軟体類内のアニサキスでもまずは内臓内で探す、筋肉に関してはつぶして水で濾して探せばなんとなかると思う。しかし幼虫でも小さな個体を探すのは容易ではないだろう。また、冷凍したら危険ではないというがアレルギーに関して、死んだ幼虫に抗体反応は起きないのか? 卵を取り込んだ場合にどうなるんだろう? などなど個人的に勉強しなければならぬことが多すぎる。
コラム

フグ科の最高峰の味のひとつ、水フグの湯引き

静岡県熱海市、網代漁業、網代魚市場で分けていただいた魚の中に大きな「水フグ(ヨリトフグ)」が混ざっていた。大好きな魚で、こいつだけはどうしても食べたかったために分けていただいた。非常に昔の話になるが電動リールと言ったら深海のものしかなく、水深200mくらいなら手巻きであった。中深場釣りになると錘が重いので手巻きだと重労働なのだ。その重い仕掛けに白い風船、「水フグ」が2尾もついてくると、寒い時季でも汗が噴き出すくらいたいへんだった。この「水フグ」が3連発、すべてのハリについていようものなら、重いし、ハリス切れはするしでどうにもやりようがなかった。釣り師は捨てるが、これを船頭は拾って帰っていた。当時、下田の船宿で出してくれていたのが「水フグ」のみそ汁である、皮も肝も全部入ったみそ汁は想像を絶するうまさだった。こんなにうまい魚なのに、残念なことに今や相模湾では深刻な未利用魚なのだ。売れない魚の代表格で、売れなくしている犯人は厚生労働省である。フグをフグ調理師(県によって名称が違う)以外に出来なくしているためだ。完全に無毒のシロサバフグや本種などさえ、資格のない料理人に扱えなくしているのは非科学的である。フグは種の同定が出来、毒の部分を分けられるだけでいいはずだ。なのに技術面での制約がある。ついでに言わせてもらうと皮に毒のないトラフグの、皮の処理は安全とは何ら関わりがない。厚生労働省と各都道府県に、あの「水フグのみそ汁」を返せ! といいたい。
料理法・レシピ

最後の小田原のタチウオは中華煮込みに

4月19日、小田原魚市場には発泡に入りきらないタチウオの尾っぽが、あっちでひらひら、こっちでひらひらしている。と書いた。このとき二宮定置にいただいたタチウオを昨日やっと全部食べ尽くせた。日々慌ただしいので、忙しいときの救世主になった。いろいろ保存食にしたが、昨日のものは三枚に下ろして一口大に切り、塩コショウし、小麦粉をまぶした状態で冷凍したものだ。冷凍保存する場合はできるだけ、味つけしてからの方が劣化しない。
料理法・レシピ

福島県相馬市産「にくもちがれい」の天丼

福島県相馬市のスーパーで「にくもちがれい(ミギガレイ)」を2パック買って来た。この魚、まあまあたくさん揚がるのに産地周辺のみで流通している。低評価魚の代表格である。未利用魚を日本全国を見渡して話ができる人には会ったことがない。未利用の定義も曖昧だが、この魚のようにときにまとまって揚がりながら、売れないという魚を知っている人がいないのが残念でならない。未利用魚・低利用魚などもっとしっかり定義した方がいいと思うな。さて、この魚は水分が多いものの、料理法によっては非常にうまいのである。
コラム

硬骨魚類のアニサキス、カンパチ

カンパチはこのページにまとめることにした。まずは銭州産のカンパチでアニサキス探し。アニサキスは線虫動物門なので、同じように寄生する扁形動物門とは形態的に違うのだと思っている。なんと系統分類学の教科書までさかのぼって形態を頭に入れて探す。4㎏のカンパチを下ろしながら内臓を分けて最後には水に浮かせて探す。肝は半分つぶしてアニサキス科の線虫を探してみる。筋肉は腹部を半身分つぶしす。
バカガイの漬け
コラム

バカヒモ漬けお握りってウマスギ!

朝っぱらから画像と個体を見続け同定していたら、右目がぼってり腫れてきた。目がつむれないので、ちょっとだけ息抜きにお握り図鑑を書く。ボクはバカにバカが好きだ。ついついバカの剥き身があると買ってしまう。といっても何が何だかわからないと思うが、バカガイ(青柳)の剥き身のことで活け(殻付き)よりも市場では普通である。舌のように見えるのが足でこの部分を刺身にする。あとに残るのはヒモ(外套膜)と水管だけど、今春はいきなり漬けにしている。バカヒモ漬けお握りが食べたいからだ。といっても簡単至極、ヒモと水管はきれいに薄い塩水の中で洗い、皮膜を取り除く。水分をよくきり、みりん・醤油の中につけ込む。漬け揚がったら(1時間くらいで漬け揚がる。漬けすぎても大丈夫)、お握りの具にするのだが、なんどやってもうまく出来ない。お握り型が小さすぎるのだと思っている。型なんて使うな、という市場人がいるが、不器用に輪を2つかけたようなボクはお握りが握れないのだ。
小魚
コラム

ボクにはお宝以上、ゼロ円のみそ汁種

網代漁業、網代魚市場で分けていただいた水産生物たちは、ボクにとっては至極面白すぎる魚たちだ。漁師さんにとっては迷惑な存在だが、料理好きならウッハウッハするものばかりでもある。選別していると、大量のウルメイワシがかなり痛んだ状態で出て来た。そこにキビナゴとカタクチイワシ、小さなヒメジ、マアジもある。半つぶれで、見た目は最悪だけど、別の見方をするとウマスギだしの素に見えてくる。ものすごく昔のことにになるが、千葉県勝浦市青灯(墨名)で会った定年退職釣り師のオヤジサンから、小サバやトウゴロウイワシのみそ汁のおいしさを教わっている。下ごしらえした小サバ(マサバ)をビニールに入れて持ち帰り作ったみそ汁の味は最高だった。以後、小サバの猛攻大歓迎となる。小魚をみたら、みそ汁だ、と思うようにもなった。今回、この小魚にユウレイイカを足してみそ汁を作る。
ハダカイワシ
料理法・レシピ

相模湾、ハダカイワシの塩焼き

網代漁業、網代魚市場で分けていただいた魚の中にハダカイワシが2個体混ざっていた。別に珍しい魚ではないが、久しぶりに味わえるであろう、珍味に舌が鳴る。ちなみに愛知県、三重県、高知県では干ものが名物となっている。ぜひこの珍味お試しあれ。たぶん、魚類中もっとも端的に味がいい魚のひとつである。味が濃いと言ってもいいし、味の量が多いと言ってもいいだろう。グリセリドなどの脂から来る濃厚さでもあるのだろう。あまりたくさんは食べられない。久しぶりなのでしっかりと検索する。検索すると種にたどり着けないという、不思議な迷路がハダカイワシ科にはある。結局、適当なところで断念してハダカイワシということにする。
コラム

東京都、東久留米卸売市場『大丸食堂』で市場飯

くどいようだが、四国の人間にとってもっとも浮かんで来ない東京の地名が、小平市、西東京市、東久留米市、東村山市、武蔵村山市、東大和市だ。そんな東久留米市の市場で朝飯を食べた。市場内にはラーメン店、海鮮丼の店、食堂の3店舗がある。海鮮丼は水産物を調べている人間には鬼門である。つらつら思うに面白いことは面白いけど、丼上は今や迷宮のごときであって、食い物とは思えない。ラーメン店でラーメンという腹でもない。ちなみに通常の市場人(買い物が目的のという意味)にとって、市場飯は空腹を満たすためにある。あの店で●●食べなきゃ、なんてことは夢にも思わない。そんな欲求を満たすための市場飯は食堂がいちばんいい。市場内を2周回って『大丸食堂』に決めた。豊洲でも食堂飯が食いたいが、今やまったく食堂的な食堂がない。この市場のこの食堂も整然ときれいすぎるのが残念だが、品書きは魅力的である。できればトンカツ定食にしたかったが、この早朝のサイト運営がきつすぎて、胃の腑が受け付けそうにない。写真を見て、控えめな気持ちでミックスフライにする。女性二人だけの店ではないかと思うが、とてもテキパキとして、それほど待たされることもなく、アジフライ主役の定食がやってきた。あまりにも小ぎれいで市場らしくないよくできた定食だけど、それぞれに味はいい。アジフライの揚げ加減もいいし、マグロ類の肉を串に刺して揚げたのかな、と思うものもおいしい。もう少し市場らしい、ワイルドな感じが欲しい気がするものの、東久留米での市場飯はここかな。ほどほどに満たされた気分で、やたらに複雑な、幹線道路のない東京都西部地区の南北あみだくじ道路をくねくねと、くねらせて帰宅した。
コラム

初夏の陽気に作る、さばのみそ煮はウマスギ

アニサキスが気になってマサバを連日、小売店でも市場でも買って解体していた。その中で、料理して食べたのはなんと半身だけとは、欠食している方もいるこのご時世に申し訳ない。ただアニサキスの寄生率とまではいかないが、自分なりに何固体からアニサキスが出てくるか? 調べてみないわけにはいかない。中に冷凍マサバもありではあったが、主に太平洋側のもの5固体中1固体だけからアニサキスが出て来た。ちなみに筋肉からは出てこなかった。アニサキスライトを使ってすりつぶすようにして見たので間違いないだろう。廃棄、廃棄の連続であまりにも殺伐とした気分になったので、千葉県鴨川産の1固体だけ筋肉をつぶさないで作ったのが、「みそ煮」である。ちなみに「秋鯖」という言葉はおかしい。季語歳時記を最初にまとめたのは滝沢馬琴(1867-1848)だと思っている。この場合の季節は江戸のもので、例えば日本海側、ましてや九州には当てはまらない。もちろん温暖化で現東京の四季にも当てはまらないだろう。いまだに季語歳時記といっている俳諧師などが愚か者に思えてくる。日本海のマサバの旬はもともと新春以降であるが、太平洋のマサバも秋が旬なんて単純には言い切れないのである。実際、今回の太平洋マサバも卵巣が膨らんでいたのに脂が乗っていた。
コラム

4月29日は「あおめがれい」の煮つけが主菜

最近、そのときどきそれぞれに何を食べたかを撮影している。画像を見ながら考えることも多く、また魚だけでは食事は成立しない、という当たり前のことがわかってくる。だいたい、自分が作ったもの以外も食べたいということがある。さて、相馬行から帰った翌日、4月29日なので、食材はほぼすべてが相馬で買ったものだ。相馬にはうまいものがたんとある。朝、おまんじゅう1個なのでたっぷりあれこれ食べたい。そんな遅すぎる昼兼用の朝ご飯である。原釜産「あおめがれい(マコガレイ)」の煮つけ。やはりカレイ科の中でも上位に君臨するおいしさだと改めて感じた。マコガレイが真子鰈たる所以の真子(卵巣)のおいしさ。これだけ真子が大きくなっていながら身の締まっているところなど申し分のない味である。松川浦産アサリのみそ汁。非常に粒が大きい。どことなく北海道産を思わせる。市内で買ったブロッコリーのわき芽とレタスのサラダ。市内中島ストアのみそ豆、タマゴヤの朝鮮漬け。この相馬ならではの惣菜、漬物が非常にうれしい。
料理法・レシピ

スルメイカげそで簡単昼ご飯、サラダ飯

連休中に水産生物(水産物)が切れた。ちょっと慌ただしいこともあり、連休明けにも1度しか市場に行けていない。ホームセンターに消耗品を買いに言ったついでに、鮮魚売場でお買い得品のスルメイカのげそを買って来た。長崎県産で成イカというよりもバラ(若い個体)である。それでもたっぷり入って500円ほどは安いと思う。これで3食をまかなう。最初のスルメイカのご飯は世にも簡単なアドリブ料理、だ。帰宅してから残り物を全部並べてみる。じゃがいも1個、にんじん半分、スナップエンドウ一握り、マシュルームだ。+ローリエ、にんにくにビネガー・オイル・スパイス・塩。
コラム

久しぶりにガナッチョのこと

徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町貞光)の同級生から、「ガナッチョが戻ってきたかも知れんぞ」と連絡がきた。「夏にウスバカゲロウが消えて、気温が安定する秋と春に発生しとる」とも。
コラム

シログチの時季到来!

連休明けの市場は不安定極まりない。止め(数日前に到着したもの)や微妙な荷(発泡の箱に入った魚介類などのこと)が多い。そんな不安定な市場で鮮度抜群、見事な高知県産シログチ(体長30.5cm・538g)を大発見した。まさに奇跡である。八王子綜合卸売センター、福泉のあんちゃんに聞くと入合(いくつかの魚を混ぜて1箱にしたもの)で来たらしい。しかも、5月の大振りのシログチの素晴らしさを知っている人は少ない、ので安い。この時季、上物のシマアジと並んでいたらボクは迷わずシログチに手を出す。味で勝負してシマアジを木っ端みじんに負かす、それほどおいしいからだ。関東ではイシモチと呼び、不安定ながら長年標準和名であった。これをときに併記されていたシログチに、標準和名を固定したことはとてもいい判断である。イシモチでは系統的に意味を持たない。
コラム

4月25日はヒラスズキの兜焼きが主菜

日々、少ないときでも、3、多いときには10の魚料理を作っているので、食事も大方水産生物のものとなる。それにしてもヒラスズキの旬はわかりにくい。白ご飯は福井県の「いちほまれ」高知県産ヒラスズキ兜焼き。なんど作っても骨まで愛せると思う。おおばらごま油炒め(ハリギリの芽をゆでて、水にはなち、ごま油と醤油で炒め黒ごまを大量投入)。塩若布(ワカメ。茅場町木村海草店で頂いた試供品。水で洗っただけ)。間引き蕪の漬け物。本物の小蕪だと思って買ったらF!の間引きだった。本物の小蕪が食べたい。糸こん炒め煮(糸こんと子持ちヤリイカ真子とゲソ・ぎょうじゃにんにくを炒め煮にしたもので味つけは少量の酒と醤油)。間引き蕪と油揚げのみそ汁(福島県南会津町梁取みそ)。
コラム

東京都、東久留米卸売市場

前にも述べたことだが、四国の人間にとってもっとも浮かんで来ない東京の地名が、小平市、西東京市、東久留米市、東村山市、武蔵村山市、東大和市だ。小平市には同じクラスの友人がいたので、行ったことがあるが、それっきりこの中央線以北、西武沿線には縁がない。東久留米市はそんな東京都民にすら影の薄い市のひとつである。ただし、それでも東久留米市の人口は11万人以上もいるので、周りの無名の市と合わせると商圏としては大きい。つい先日の別の分野の勉強会で言われたことだけど、四国の人口は全部合わせても400万弱、徳島県など70万人ほどしかいない。この5市で徳島県全域と同等の商圏ということになる。ここにこれほど新しくて、魅力的な市場があることを知らなかったことは不覚である。建物が新しいだけではない。市場フラットであり、歩きやすいのも魅力的だろう。
コラム

福島県相馬市で買ったカツオの腹身で一夜干し

福島県は国内随一のカツオ県である。宮城県が近いのもあるし、産地でもある。郡山市郡山魚市場にはカツオ競りなるカツオだけの競りがあるくらいだ。県内どこのスーパーに行ってもカツオの量が多い。カツオコーナーを設けているところもある。カツオも都内のスーパーと比べて格段にいい。福島に来たらカツオを買う、という考えは実に正しいのである。さて、相馬市内のスーパーで腹も(砂ずりとも言う可能性がある)ばっかり入ったパックがあった。これがスーパーに並ぶのもカツオ県だからだ。とりあえず1パック買ったものの、もう1パック探しても見つからない。たぶん並んでいた大方が売れてしまった後だろう。
コラム

福島県相馬市『川合屋セトモノ店』でいろいろ

食器に限りなく惹かれるのは、ボクが「からっちゃ(唐津屋)」に生まれたからだ。食器店のことを東日本で瀬戸物屋、西日本で唐津屋と呼んだ言語の地方性が失われて久しいのは残念でならない。相馬市内を歩いていて、「相馬焼」の文字に惹かれて食器店に吸い込まれた。
加工品

しらすの北限は福島相馬だと思っていた

福島県相馬市で水産物を探していて、忘れていたことを思い出す。しらす漁の北限である。「そうだ。相馬はしらす漁の(太平洋側の)北限だった」と思って調べたら、いつのまにか宮城県仙南の閖上、亘理が北限に変わっていた。とすると日本海側は、と調べたら富山県氷見だ。カタクチイワシの産卵場が北上しているのだ。これなど明らかに温暖化が原因である。相馬市で「しらす干し」を買うと言うことは、こんなきっかけをくれるということでもある。だから水産生物の加工品を買うということにも重要な意味がある。ちなみに相馬市では「ちりめん」も作っているようだ。これはまったく知らなかった。
コラム

福島相馬の「かすべ」はツマリカスベでいいのだ

【まずいきなり話の寄り道】最近の風潮、「見た目で食べる」の愚かしさである。牛肉・豚肉など丸のままの見た目で食べたらとても食えたものではない。ただ、この場合の見た目は肉になった状態のことなのだ。見た目を気にする人は、魚はまず丸のままで見ることになるが、魚も平等に肉になった状態で評価すべきだ。水産生物を丸のままの美醜で判断するから、エイやサメなどおいしいのに消費が減少する。基本肉の状態で売られるマグロやサーモン、アカムツ・キンメダイ・「きんき(キチジ)」など赤い魚ばかりが売れる。でも、でも見た目の悪い魚も味では決して負けてない!
歴史

谷崎潤一郎の馬鹿貝の附け焼

谷崎潤一郎(1886-1965)の短編、「東京をおもう」(1934)に、「(東京から)遠く離れているときには、馬鹿貝の附け焼が恋しくなったり柱の山葵醤油が無上にたべてみたくなっったりする」というのが出てくる。蛎殻町(現人形町)に生まれ、明治時代に幼少時代を送る。父親は生粋のとまではいかないが江戸っ子で、江戸前の魚を食卓に上げていたようだ。当然、「馬鹿貝の附け焼」も柱(バカガイの貝柱)も、江戸時代からの家庭の味である。東京の下町で食べられていたという「馬鹿貝の附け焼」とはいかなるものだろう? 作ってみれば谷崎潤一郎の、東京の味への思いがわかるかも知れない。【話の寄り道。東京でバカガイのことを「青柳(あおやぎ)」と呼ぶようになったのは、そんなに古い話ではないのかも知れないと考えている。もしくは呼び名として主流ではなかった。築地場内(現豊洲)においても貝屋では「バカゲェ」という言葉が生きていて、青柳は小物屋が使う言葉であった可能性がある】作り方といっても複雑なものではない。たて(剥き身)を買って来る。もちろん活け(殻付き)があればいいに越したことはない。薄い塩水のなかで砂などをていねいに落とす。水分をよく切っておく。これを強火で焼き、酒・醤油のたれを塗りながら仕上げる。
歴史

クロダイの真子食べる? 食べない?

昔、千葉県勝浦市へスルメイカ乗り合いに乗ったとき、荒天でなんと客はボク一人だった。今ではケータイがあるからドタキャンできるけど、海が荒れていると宿泊して翌日に出るということがあった。泊まっていろんな魚話を聞いたとき、ボクがクロダイ釣りで勝浦に通っていることを聞いて、「漁師はクロダイは食べない」と言われたことがある。千葉県保田で「ちんちん(クロダイの当歳魚)」を釣っていた人も「親は食べない」と話していたはず。当然、千葉県の広い地域で真子(卵巣)・白子(精巣)も食べないのではないかと考えている。
コラム

ディディモゾーン寄生虫

人体に影響はない。扁形動物門吸虫綱二生亜綱斜睾吸虫目ディディモゾーン(ディディモゾイド)科(Didymozoidae Monticelli, 1888)ゴナポダスミウス属の種。ゴナポダスミウスなど多種類が存在する。扁形動物はまだ未開発な分野ではないか、と思うぐらい種の情報がない。マダイ、コショウダイ、マグロ類、ブリ、マサバ、トビウオなど多種類の魚類に寄生している。筋肉、鰓、内臓などにみられる。黄色みがかった袋状に見え、包丁などが当たると黄色い汁が出る。また黄褐色の染みのように見えることもある。非常に細長い体を折り曲げてこの袋状の中に入っている。雌は非常に長く6m前後になり、雄は小さく長さ10cm前後にしかならない。参考文献/『魚介類に寄生する生物』(長澤和也 成山堂書店) ■情報が集まり次第改訂していきます
コラム

まだ間に合うぞ、クロダイちゃん

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で愛知県一色産のクロダイを買った。1.3kgはサイズ的にも申し分がない。当然、時季的にお腹はでっぷりとして出産間近だということがわかる。普段なら買わないのだが、連休の狭間で他にめぼしい魚がない。しかもクロダイは年間を通して買っているが、5月始めのクロダイはたまたまではあるが買っていない。一色産のクロダイは明らかに活け締めである。昔ながらの粗野な締め方だけど死後硬直以前だ。うまく締めてある。さて、帰宅して真っ先に下ろすと卵巣が膨らみに膨らんでいる。やがてこの卵巣がほぐれ始めて産卵開始となる。三枚に下ろすと身に張りがあり、触った限りでも脂がのっているのがわかる。値段からすると大当たりだ。
コラム

硬骨魚類のアニサキス・スケトウダラ

アニサキスはときとして人体に害を及ぼし、アレルギーを引きおこし重症となる。一般にアニサキスと呼ばれているが、アニサキスとは、アニサキス科の何種類かの回虫である。正確には線形動物門双腺綱回虫目回虫上科アニサキス亜科アニサキス属(Anisakis )とシュードテラノーバ属(Pseudoterranova)の回虫をさす。最終宿主は鯨類(イルカなど)で、この体内で成虫になり、産卵する。海獣類、鯨類の排泄物と一緒に卵が体外に出て、孵化して孵化仔虫になる。それをオキアミなど動物プランクトンが摂取、動物プランクトンを魚類が食べることで今度は魚の内臓内に寄生する。その魚を鯨類が食べると、体内で成虫となり成熟、産卵する。この寄生された魚を生でヒトが食べることでアニサキス症になる。ただしヒトは最終宿主(成虫になって産卵できる環境を持つ生物)ではないので、取り込んでもアニサキスは長く生きていけない。
コラム

カツオ・マグロのテンタクラリア

カツオを下ろしていると、ときどき筋肉内(腹部)に白いものが散らばっていることがある。これが条虫(扁形動物門条虫綱)のテンタクラリアである。マグロ類にも寄生していることがある。今のところ内臓の中では見ていない。魚の腹部で見つかるものは幼虫で、最終宿主であるヨシキリザメなどの体内に入ると、成虫となる。
コラム

ちょっとアニキなトリガイと相馬せりでぬた作り

トリガイの画像が足りないと思っていたら、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に殻トリ(貝殻つきで生きている状態)があった。値段を聞くと、ちょっとアニキ(すし屋用語で市場でも使う。数日前に仕入れたもの)らしく非常に安かった。信頼のおける仲買とのやりとりは、市場ではとても重要なことなのだ。ちなみに「水産物は鮮度が命」なんてほざく愚かな人間がいるととても助かる。このヤカラ達のお陰で、ちょっと古いくらいの水産物がすぐに安くなるからだ。売れ残った水産物にも意味があるし、実は料理法によっては古くても大丈夫というものがいっぱいあるのだよ。ボクなど古くなるのを待っていたりする。【話の寄り道。もちろん東京とか消費地限定の話だが。高級料理店は勝手に高い料理を作ればいいし、高ければ高いほど喜ぶ客もいるだろう。でもボクが好きなのは、この鮮度的なものでも、魚の種類でも自由な考え方ができ、客の懐のことを考えてくれる料理人・料理店店主である。】徹底的に貝殻の撮影をして、すぐにゆでる。貝殻ごと多めの塩を入れ、ゆでると軟体がぷくぷく浮き上がってくる。鮮度がいいとこんなに簡単には浮き上がらないけど、それでもトリガイはもっとも軟体部分を外しやすい二枚貝なのである。外れた軟体を氷を入れた塩水に落とし、軟体(足)の中のわたを押し出す。新たに氷を入れた塩水を作り、泥を完全に落とす。元気のいいトリガイはここまではしなくていい。水分をよくきり、食べやすい大きさに切る。合わせる野菜は「相馬せり」だ。本場宮城県産に比べて知名度は低いがとても香り高く、味がいい。これをゆでて冷水に落として水分をきり、食べやすい大きさに切っておく。酢みそは、塩分強めだけどとても味のいい福島県南会津町、山内麹店「梁取みそ」・米酢・少量の砂糖。塩分の強いみそなので、基本的に酢とみそだけで味を作りあげ、砂糖はマイルドにする程度加えるだけ。後はトリガイ、せり、酢みそを和えるだけ。
コラム

4月26日はヒラスズキの若狭焼きが主菜

一様水産生物を研究しているつもりなので、日々努力を重ねているつもりでもある。個人経営のスーパーのオッチャンに「暇でええよな」と笑われたことがあるけど、寸暇もないといってもいい。日々、専門書に取っ組まないといけないし、水産生物と組んずほぐれつだし、いつの間にか専門分野の問題点に行き当たってその分野の専門家と同次元で苦しんだりしているので、ボンヤリコンとしているわけではない。なので食事もいつの間にか、仕事になっちまったぜ。この週はヒラスズキを1本買って作った料理は7つなので、主菜ヒラスズキが続いたりする。この日の朝ご飯は、ヒラスズキ若狭焼き、子持ちヤリイカげそ&真子・ギョウジャニンニク・糸こんにゃく炒め、三つ葉の黒ごま炒め、あおさ佃煮、山椒の卵焼き、しゃくし菜だった。ヒラスズキ若狭焼き/切り身を若狭地(酒・醤油)を塗りながら焼き上げたもの。子持ちヤリイカげそ&真子・ギョウジャニンニク・糸こんにゃく炒め/八王子綜合卸売センター、『八百角』でもらったダメになりそうなギョウジャニンニクと子持ちヤリイカのげそ、糸こんを炒めたもの。そう言えば水戸の市場で糸こんとしらたきの違いを聞いたけど忘れた。三つ葉の黒ごま炒め/八王子綜合卸売センター、『八百角』で3束100円だったのでついつい買ってしまった三つ葉を使う。あおさ佃煮/茅場町『木村海草店』で買った。三重県志摩市英虞湾で養殖したヒロハノヒトエグサの佃煮。製造したのは愛知県。山椒の卵焼き/山椒の葉がダメになりそうだったので煎り卵にぶっ込んじまったぜ。しゃくし菜/埼玉県秩父地方特産しゃくし菜の漬物。
郷土料理

腹ヘリなので生ホタルのペンネを作る

今年はホタルイカが安い上に、まだ魚屋に並んでいる。スーパーにもあるので、ついつい手が出る。これをイタリアンな料理に使ってみた。といっても面倒な料理ではない。袋に中途半端に残っていたペンネを消費するためのイタリアーンでもある。ペンネのゆで時間は10分。ゆではじめたらフライパンにたっぷりのオリーブオイルとにんにく、鷹の爪をいれて熱する。香りが立ってきたら玉ねぎを加えて、トマトを刻んだものを放り込む。ここに生ホタルイカを加えて、徹底的にどつく。体がばらばらになるくらいどつくが、ぬるニョロとしているのでなかなかパンチがきかない。トマトは煮過ぎると甘さが飛び、長時間煮込んでいる内にふたたび甘くなる。ここで注意しなければならないのは煮すぎないことである。パスタとのゆで時間を考えて甘味がいちばん強いときに火を止める。あとは味見をして塩コショウする。ソースがどろっとし過ぎていたらゆで汁で加減する。この場合、塩は不要。あとはペンネと和えるだけ。
郷土料理

福島県相馬産「あおめがれい」の煮つけを作る

福島県相馬市では主に旧城下の中村でスーパーを回ってみた。休日にも開いているスーパーは旅人にはまことにありがたい。【話の寄り道、旅の土産はスーパーで買うべし。同じ土産品が値が安い上に、地元でしか買えないものが発見できる。】相馬市は藩政時代から城のある中村と、漁港がある原釜に分かれていた。古くから、原釜でとれた魚を城下で消費する、という形が出来上がっていたのだと思う。スーパーに並ぶ、魚のラベルに「原釜水揚げ」がとても多いことにも、そんな歴史が偲ばれる。今回の相馬行で改めて感じたのはこの地のカレイ類が豊富であることだ。見つけた原釜産カレイ類は、「あおめがれい(マコガレイ)」、「にくもちがれい(ミギガレイ)」、「なめた(ババガレイ)」、「石がれい(イシガレイ)」「黒やなぎ(ヒレグロ)」、「柳かれい(ヤナギムシガレイ)」、「水がれい(ムシガレイ)」、「真がれい(マガレイ)」だ。江戸(東京)の前海江戸湾(東京湾)は昔からカレイ類の宝庫であった。江戸時代の江戸っ子はカレイ類をよく食べていたはずだ。明治期になって東北本線、常磐線ができるとそこに茨城県、福島県、宮城県からどっと新顔のカレイ類がおしよせてくる。後に北海道が加わる。国内でももっとも多種のカレイを食べていたのが東京なのだ。カレイ類は昔、もっとも人気の高い魚だったが、最近人気低落気味である。この最大の原因が煮つけを作らなくなったためで、その根本には米を食べなくなったことが挙げられる。ちなみに関東の市場人で、「原釜」を知らないという人は震災後に市場人となったのだと思う。原釜は関東にとって最大級の供給地だったし、関東の市場人ならおしなべて元の状態に復して欲しいと思っているはずである。さて、「あおめがれい」の切り身を市内『中島ストア』で買った。この小さなスーパーは実に楽しかったという話は後々に述べる。宮城県、福島県での呼び名、「あおめがれい」の漢字、意味がわからないので困っている。単純に考えると「青目鰈」だけど、目は青くないのだ。「あおめがれい」、すなわちマコガレイの面白いところは寒い時季は大衆魚で、気温が上昇すると高級魚に変身することだ。この高級魚の時季が温暖化で長くなっている気がする。4月の末、まだ、「あおめがれい」が活魚槽の主役になるのはもう少し後のことになる。今はまだ生殖巣が膨らんでいるので、庶民的な魚でしかない。
料理法・レシピ

ヒラスズキはいつもは塩焼きだけど、気分をかえて若狭焼き

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で高知県須崎産ヒラスズキ36cm・868gを買った。最近、高知県からの荷が多いのは、産地としての高知県ががんばっているためかも知れぬ。さて、ヒラスズキとスズキは系統的に近い種で、非常に似ている。実際、片山正夫が1957年に記載するまでスズキ属はスズキ1種だけだと考えられていた。分類はともかく、両種、味はまったく違っている。ヒラスズキは外洋に面した岩礁域にいる魚なのに対して、スズキは淡水の影響を受ける水域にいることが多い。ヒラスズキは白身のマダイなどに似た身質で、スズキはどことなく淡水魚的な風味がある。これが生息環境の違いと、エサとなる魚や甲殻類もまったく違うためではないかと思っている。産卵期は秋から春にかけてと長く、旬は秋から春で最旬は冬だと思っている。4月末の今回の個体は、生殖巣はほとんど痕跡的で産卵後の個体だ。産卵のダメージからの立ち直りが早いようで、脂がほどほどあった。刺身にすると非常に味わい深い。改めてヒラスズキの旬は非常にわかりにくい、と感じさせられた。
料理法・レシピ

ブリを食べ尽くすためのフィッシュ&ティップス

2024年4月19日、二宮定置に、「ほぼブリサイズなので、ブリとしておきたい個体」を1尾いただいた。卑しい話が、だれかにいただける可能性が高いと思って行った小田原で、本当にいただいて、素直に嬉しいボクなのであった。アハハのハだ。ありがとうございました。しかも名人、Kai君に血抜きまでやっていただく。これ以上ない、ブリである。余談になるが、19日早朝、顔見知りの買受人と、「どこからブリにしていいのか?」という話をした。このところ6㎏サイズでもブリだという人がいるらしい。ボクとしては8㎏前後からブリだと思っているけど、脂があって上物で、それなりに大きければブリでいい、と考えている。
コラム

なぜか、アジフライ三昧の日々

前回の小田原魚市場行で、二宮定置にアジ(マアジ)を分けてもらった。昨日、打ち合わせで駅前に出たら、打ち合わせの後、またアジをいただいたのだ。連休は休めないので、休みをとって、父親と船釣りに行き、生まれて初めて釣ったものだという。アジの在庫がまだあるとはいえ、もらわないわけにもいかない。初めて釣り上げたアジはどこで釣ったのか? を聞き忘れた。実家がたしか静岡県なので、駿河湾としておこう。まず最初に、二宮定置にありがとう。たった3尾だけども仕事熱心な若い衆にもありがとう、なのだ。二宮定置でいただいたマアジ9尾はアジフライ用に仕込み保存して、1週間で食べきり、また今日、3尾揚げたので計12枚のアジフライを食べたことになる。それにしてもアジフライはいくら食べても食べ飽きない。昔話になるが、仕事を始めたばかりの頃、お昼ご飯はいつも、アジフライと決めている方がいて、一緒に出版社の地下で御馳走して頂いていた時期があった。本当はロースカツが食べたかったのに、毎回アジフライを2人前(4尾)、ご飯を1人前食べていたっけな。アジフライの作り方を書くのは無意味かも知れないが。マアジは開いて、腹骨・血合い骨を取る。背鰭を切り取り、腹側の縁に小骨が残っていることがあるので切り取る。水分をよくきり、塩コショウして、小麦粉をまぶす。溶き卵にくぐらせパン粉をつけて高温で一気に揚げる。それだけだ。自分好みにウスターソースをたっぷりかけて食らうとたまらない。1週間で12枚も食べているのに、食べ足りない。マアジをフライにした人は天才である。さて、今読んでいる、1950年前後の世相を映す中村武志の目白三平シリーズに、「あじの天ぷら」は出てくるのに、アジフライは出てこない。今、アジフライは普通だが、「あじの天ぷら」は珍しいと思う。いったいいつ頃からアジフライは日常的な料理になったのだろう?
料理法・レシピ

タチウオで作る蒲焼き重(風)とは珍しや?

小田原で見事なタチウオをいっぱいいただいて、ほぼ食べ終わったと思ったら、また来た、来ましたよ東の方の海から、相模原在住だという謎の釣り師が3本ばかり持って来た。こんなにタチウオ尽くめではやってられまへん。けど、ありがとう!さて、その日ボクは我が家にある、うな重の重箱を整理していたのだ。長さを量って、ご飯の量をみるために実際に詰めてみようなんて地味なことをやっていた。ただ、考えてみたら上に乗せるものがない。それで考えたのが「フライパン照焼」だけど、確かこの料理名は雑誌『四季の味』か、『暮らしの手帖』にあったもので、「フライパン蒲焼き」としても間違っていないはずだ。作り方はウルトラC級に簡単である。余談になるが、この2雑誌は昔はすごく優れていたのだ。当時、へんにかっこつけてまったく使えない料理は皆無で、読んだだけで、だいたいのコンセプトがわかり、すぐに作れるものばかりだった。最近買っていないけど、どうなってるんだろうな?
コラム

千葉市地方卸売市場、モーニングのオムライス

市場旅につきものなのが市場めし、これがないと市場旅の楽しさ半減。市場の魅力も半減する。千葉県千葉市、千葉市地方卸売市場の関連棟は肉屋あり、大きな八百屋ありで、多彩、中でも面白かったのは向かい合った2軒の昆布や乾物を売る店だ。さて、長い長い関連棟を歩き回った後に向かうのが、2階にある食堂街であるが、2階にあることはおぼえているが、どこから上がるのか見当がつかない。長すぎる関連棟の、見つけにくい入り口の階段を上がらないと食堂街にたどり着けないのは、よそ者だけではなく、市場人にも不便ではないか。市場を設計した人間は、明らかに働く人のことをまったく考えていない。豊洲もそうだけど、行政や施工者はなぜ働く人のことに無関心なのだろう。中央部分が吹き抜けになっていて、左右に食堂が2軒、中華が1軒、レストラン(喫茶)が1軒の計4軒がまばらに散らばっている。明らかに閉店した店が多いのだろう。関連棟の大きさを考えると、寂しい限りである。その中の1軒は客がいないので却下。食堂は海鮮丼の写真を見てやめた。中華は前回食べているので避けた。市場飯に魚介類を選ばないのは、外食くらいは魚を避けて通りたいのもあるけど、その料理に仕入れの苦労が見えてしまうためだ。特に海鮮丼は値段を考えると仕方がないとは思うけど、いじましくていやだ。希に本物の地物の海鮮丼があると、嬉しくなるが、それは奇跡というものである。ついでに冷凍マグロや冷凍輸入エビ・イクラなどがダメだとは思わないけど、お里が知れているものは食べない主義なので悪しからず。
加工品

日常的な塩蔵品の塩かつおは矢鱈にうまい

静岡県西伊豆で年越しに食べられていた「塩かつお」は、「潮かつお」とも書かれ、11月になると丸のままの姿で塩漬けにし、干し上げたもの。単なる塩蔵品ではなく、干すという工程が入る。もうひとつの、より一般的な「塩かつお」がある。こちらはカツオの半身、もしくは切り身の塩漬け(塩蔵品)である。静岡・関東・東北だけではなく全国で作られていた可能性が高い。聞取をすると関東では日常的なおかずだったようだ。関東、静岡県では「塩かつお(塩がつお)」、宮城県石巻で「かつおのだぶ漬け」、気仙沼で「かつおの塩引き」という。カツオの産地での「塩かつお」の呼び名はもっとたくさんあると考えているので、ご存じの方がいらしたら教えて頂きたい。静岡県西伊豆で年末に作られていた「塩かつお」がハレの加工品だとしたら、カツオの産地で長年作られていた「塩かつお」はケの加工品である。
コラム

マグロのあらをもらった翌朝の朝ご飯

日常的に陸上生物の筋肉・脂はとらないので、水産生物をのぞくと菜食主義者のようだ。それでも太ってしまうのは、想念を整理し始めると時間が無限大にかかり、座っている時間が長すぎるせいに違いない。小田原から持ち帰った魚をせっせと消費するといった日々である。そんなときに限って八王子綜合卸売共同市場、舵丸水産のクマゴロウが本マ(クロマグロ)のあらをくれたりする。魚がたっぷりあるときに限って魚がやってくるのは、いうなればボクのジンクスでもある。野菜もたっぷりあるし、作り置きの総菜類もある。ただ単純に料理を並べて、午前6時の朝ご飯は始まる。ご飯は今日から福井県の「いちほまれ」。サラダはサニーレタス、ブロッコリーの芽、トマト、レモネード(静岡県沼津市の食用柑橘類)、ブリマヨ(神奈川県小田原市産ブリ・マヨネーズ・ヨーグルト・コショウ・レモン)。神奈川県スーパーヤオマサで買った木綿豆腐(サカグチヤ 静岡県御殿場市)。こごみ胡麻よごし(コゴミ、煮きりみりん少量、醤油)。神奈川県小田原市産タチウオ塩焼き。クロマグロあら煮。わかめのみそ汁。たぶんカロリーは低めだと思う。満身創痍なので、できるだけ理想的な朝ご飯を目指している。
郷土料理

日常食、塩蔵の塩がつお

コラム

小田原魚市場そばで市場人の朝ご飯

2024年4月19日、神奈川県小田原市、小田原魚市場そば、港のおっかさんのところで市場人のための市場飯。この日は漁師さんも市場人もてんてこ舞いの忙しさで、ボク一人っきりの寂しすぎる、市場飯となる。市場人用の飯は、すぐ食べられて、しかも味がよくないとダメだ。ギンダラは地物ではないが、おっかさんが市場人のために仕入れた上物で、しかも名人でなければ作り出せぬ味。市場人は、観光客のように地物でもない魚介類たっぷりの海鮮丼に散在したいわけでもなく、ただただおいしい朝ご飯が食べたいのである。その点ではおっかさんの作る飯は天下一品なのだ。
コラム

小田原はタチウオ祭でも、大騒ぎ

相模湾をはじめ日本各地で、ブリ大漁にわいている。お祭りだーい、ブリ祭だーい、と騒いでいたら、担ぐ神輿がもうひとつあった、タチウオである。小田原魚市場には発泡に入りきらないサイズのタチウオの尾っぽが、あっちでひらひら、こっちでひらひらしている。定置網の中で大量の獲物に揉まれてギンギラギンではなく、銀皮が鈍色になっている。ともにかみ合った傷もある。魚を知らない人はこりゃダメだろうと思ってしまいそうだが、タチウオの場合、ギンギラギンはだめなのだ。脂があるほど剥げやすい。それなのに流通上はギンギンギラギラした方が高いなど、不思議でならない。小田原魚市場二宮定置に数尾いただいて、車に帰ったら、またいただいていた。二宮定置、どなたか知らないけどもうひとかた、ありがとう。タチウオだらけなので近所に配り、ブリは『市場寿司 たか』と半分こする。『市場寿司 たか』では、丼にしてお出ししたと思うがいかがだっただろう。そしてタチウオだが、きらめきはなかったが案の定、脂がたっぷり硬く締まった身に混在して白濁させているではないか。ちなみに相模湾だけではなく、東京湾にもタチウオがわいているのである。相模湾のも上等なら東京湾のも上等だと言っておきたい。ちなみに昔は相模湾にはあまりタチウオがいなかった。ましてや東京湾にはタチウオがほとんどいなかったはずである。このタチウオの増大は明らかに温暖化の影響だ。産卵場所が北に広がっているのである。もっともっとたくさんタチウオがわいている海域がほかにもあると思うが、いつからこの国はタチウオだらけになったのだろう。とれているときに、とれている魚種を食べるのがいちばん自然に優しい。今、タチウオとブリはたんとたんとおあがりやす、なのだ。
料理法・レシピ

焼きホタルに惚れに惚れたる春の宵

今年はホタルイカが安い。非常に慌ただしい年でボイルは何度か食べているが、生ホタルは買っていない。そんなことを考えての市場行、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産でヤギの剥き身を買っていて、すぐ隣にあったのが生ホタルだ。昔は丸のまま生で食べていた人がいたが、寄生虫(旋尾線虫)が問題となり、大型のイカと同様に下ろして刺身にするか、足(腕)だけにするかとなっている。生ホタルの魅力は半減した。今回、久しぶりの生を、リゾットにしたり、パスタにしたりするとボイルにはない味があることを発見した。生である意味は意外にも大きいではないか!当たり前だけど、ゆでたてを温かい内に食べてもおいしい。
料理法・レシピ

重宝します、ヒガンフグの塩もん

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウはフグ調理師である。時季にはいつもフグを在庫として持っている。4月になれば、フグも終い、終いのフグと言えばヒガンフグである。以上は以前書いたこと。ヒガンフグを買った目的は塩蔵ものを作るためだ。フグ科トラフグ属の魚は塩もの向きだと思っているので、じょじょに全種で作っていきたいと考えている。ヒガンフグはみがいて(毒を除去し)、三枚に下ろす。両側の身にべた塩をつけて、数時間ごとにひっくり返す。これを2日くらい続ける。表面の塩を洗い流し、水分を切り、ビニールなどに密閉する。数日間寝かせる。(今回は1週間)
コラム

メガロパはカニの子

神奈川県小田原市、小田原魚市場、江の安、ワタルさんのところに揚がったオニオコゼをおろしていたら、可愛らしいおもちゃのような子がポロリンコとこぼれ落ちた。16mmの、カニの赤ちゃん、メガロパである。このエビでもカニでもない、どことなくぎょうげた形の子が大好きである。春、堤防などで釣りをしていると、きらきらコバルトグリーンに輝くメガロパがミズスマシのように泳いでいることがある。これをバケツに放り込んで見ていると、ロボットのようだし、小さな宇宙船のようようでもある。のぞいている内に、釣りなどやっていられなくなるのはどうしてだろう。今回は、カニの赤ちゃんの話だが、この場合のカニは短尾下目というグループで、カニの研究者として世界的に有名であった酒井恒は真生のカニとしている。エビ(クルマエビなど根鰓下目)、エビ(抱卵下目)やヤドカリやタラバガニの異尾下目、カニの短尾下目などを十脚目という。動いたりはったりする足(脚)が10本だからだ。
コラム

2024年4月19日、小田原はブリ祭で、大騒ぎ

深海のある相模湾の魚種の豊富さと水産生物の移り変わりがわかる。それにしてもブリとタチウオは大漁、大量。マフグ、イネゴチ、クエ、スズキ、マグフグ、ホウボウ、タカノハダイ、イシダイ、イシガキダイ、ソコイトヨリ、マダイ、ブリ(ブリサイズ・ワラササイズ・イナダサイズ)、カイワリ、イボダイ、イサキ、ヤマトカマス、シロサバフグ、クロダイ、マンボウ、メアジ、オニオコゼ、ミノカサゴ、ニジマス、マトウダイ、アカアマダイ、ハマトビウオ、ヒラマサ、カツオ、ヒラメ、ボラギンザメ、ミシマオコゼ、ボラ、アカヤガアラ、チダイ、ウマヅラハギ、シマウシノシタ、ツバメウオ、キジハタ、ネコザメ、ムシガレイ、タチウオ、アカエイ、ホシエイ。レイシガイ、クロアワビ、メイタガレイ、スルメイカ、アオリイカ、ケンサキイカ、マダコ、シマダコ。ウチワエビ、セミエビ、ゾウリエビ、カマクラエビ(ハコエビ)。アカナマコ。ワカメ。
コラム

小田原はブリ祭で、大騒ぎ

日本各地で、ブリ大漁にわいている。昔、本州中部以南といわれた地域で外洋に面した海域に、ブリの大きな群れが入っているのだ。本来、4月、5月といえば高知県や愛媛県南部、九州南部でブリの大漁をみる。この時季の個体は、卵巣精巣は膨らみすぎて柔らかく、脂が少なく、身が痩せ気味というのが本来の形だ。ちなみにこの痩せたブリがまずいか? というとそんなこともない。需要もあって、これを上手に料理する人もいて、存在価値はそれなりに大きいということも忘れてはならない。今年はその産卵群が大量に入る鹿児島県東シナ海側で漁が安定していないのである。その代わりにとれた個体に脂があり、身に張りもある。今現在、全国的に揚がっているブはおしなべて、脂が乗っていて体層うまいということだ。以下は小田原ブリの話にしぼるが、今回の春ブリ大量は全国的であることもお忘れなく。相模湾で揚がっている個体は、ワラサかブリかと迷う6㎏〜8kgサイズが多いものの水揚げを見ているだけで、脂ののりが保証できそう、といったものばかりだ。とすると、相模湾でのブリの旬で漁の最盛期は弥生、4月になってしまうが、小田原のブリはまだ生殖巣がそれほど大きくなく、5月までいけそうなのである。6月の声をきけばオホーツクでブリが揚がり始めるだろう。これじゃ年がら年中ブリだ。そのひとつ、神奈川県小田原のブリ水揚げもまるで祭のときのように騒がしく、漁師も買受人もどことなく浮き浮きとして楽しそうでもある。
コラム

ヤギの日々を、送っているよな八重桜どき

昔々築地場内で、貝を剥くバアチャンに「ヤギ(バカガイ)好きだね」、と何度か言われたことがある。築地には貝専門店がいくつもあって、帰り際に剥き身にしてもらっていたものである。貝を剥く情景が市場から消えて久しく、これこそが東京本来の市場らしさだと思っていたボクは、わずかに残っていた江戸のよすがが消えたと思っている。八王子の市場に今、貝屋はないので、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産でヤギの剥き身を買う。間違いなく産地は北海道である。足(刺身で食べる部分で。二枚貝が砂にもぐり込むときに使う)の色が淡いのである。それでも足に膨らみがあって春らしい。ときどき「北海道産よりも江戸前、木更津あたりが上だね」という人がいるが、ボク個人としてはそんなに違いがあるとは思えない。だいたい最近、江戸前の船橋、木更津、富津のバカゲェを食べていない。ちなみに元禄期(1700年前後)に、江戸の町は100万人前後の人口を抱えるようになり、水産物を江戸前である品川〜大島あたりではまかなえなくなり、旧葛飾郡(行徳、船橋市、千葉市、市原市)でも足りなくなり、木更津あたりに供給地を求めるようになる。この下総の二枚貝の集積地が市原市青柳になったのは、供給地の広がり故だと思っている。これが縁で、日本橋にあったときから魚河岸の仲買の里(出身地)が佃島だけではなく、浦安であったり、行徳であったり、船橋であったりしたのだ。まさか後に、三河(愛知県)、北海道と主産地が移り変わるとは思ってもいなかったはずだ。ヤギはあまりにも日常的なので深夜酒の前にさささっと仕込む。剥き身の水管とひもをはずし、皮膜を切り捨てる。水管・ひもは塩水で洗い水分をきって保存する。足は開いて、「イチ」と言う間ほどに湯に通す。水分をよくきる。これで刺身の出来上がりなので超簡単である。ちょっと贅沢にわさびをすり、福島県猪苗代町、稲川本醸造を冷やして1ぱいだけ。本醸造は香り弱く、辛口でバカに合う。ヤギはあまりにも日常的なので、味の表現が難しい。味覚学の世界では、いくつかのアミノ酸が合わさると甘いと感じると言うが、それだと思う。その甘味以上に感じられるのが渋味である。シ・ブ・ミと音にしていうとハードボイルドな感じがしていい。
郷土料理

兵庫県明石浦漁協の桜鯛で南予の鯛めし

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に兵庫県明石市、明石浦漁業協同組合から明石鯛(マダイ)が来ていた。桜はまだちらほら残っているので、ぎりぎり桜鯛という言語を使ってもいいだろう。以上は前回に書きとめた。このときお茶菓子代わりに兜焼きを作り、一度ダウンして昼下がりに腹の虫を慰めるために飯もんを作った。いちばん簡単にできる「南予風 鯛めし(鯛飯)」である。
コラム

このところの焼きそばは「あとがけ」なのだ

鼻水攻撃で1日棒に振り、貴重な時間が消えてなくなる。今年もなんの収穫もなしに過ぎていくんだろうなと思いながら、埼玉県川島町、大河戸製麺の太焼きそば麺で焼きそばを作る。ときどき焼きそばを無性に食べたくなるボクだけど、今年になって、ずーっと「あとがけ」である。「あとがけ焼きそば」は山形県酒田市の名物でもあるが、調理の途中、ソースをからめ、ソースを焦がすという工程がない。味つけはテーブルのソースで好きにやってくれ、といった投げやりさが逆にいい。ソースをかけすぎると大変なことになるが、自己責任なので、文句のいいようがない。いろいろ上にのってゴージャスだったが、逆に麺は平凡だった。焼きそばとか、お好み焼きとかは明らかに1945年の戦後のものである。いろいろ歴史を語る向きがあるが、基本的に新しいと考えないとダメだと思っている。1945年以前にたどるのは歴史を複雑化して面白いけど、本質から大はずれしている気がする。江東区の老人は、小麦粉が世に氾濫したのは敗戦後、アメリカ軍によるという。関東平野の土壌とか小麦の生産量とかいろんなことを関東の名物焼きそばを語るときにつけ加えるが、戦後の粉食は意外に単純かも。当然、1960年前後の酒田市の「あとがけ焼きそば」も同様だと思う。ただ、中華の焼きそばと、この国の庶民が作り出したソースの焼きそばの違いは、調べると面白いと思う。さて、ボクが作るのは、あり合わせのものだけで作り、何も乗っけないで、とてもシンプルなものだ。味のいい埼玉の麺で作るので香ばしくソテーして麺そのものの味を楽しんでいる。ソースは千葉県で買ったカゴメのウスターソース。カゴメソースとブルドッグはどちらかというと酸味が薄く、優等生的な味だ。ソースに関しては。イカリソース、名前が出てこない北海道で買ったソースなど、ちょっとずつ地域によって違いがあるのが楽しい。こんな日常的なものの違いを楽しむのも旅だと考えている。
コラム

千葉市地方卸売市場関連棟のミルクスタンド

千葉県千葉市、千葉市地方卸売市場は規模が大きく、関連棟も充実している。あまりにも細長いのが難点で、できれば正方形に近い形で作って欲しかった。長すぎるので途中で一休みしたくなる。そんな中間地点にあったのがミルクスタンド カワイだ。看板にたばこ、新聞、雑誌、牛乳、パンとある。この総てが今では斜陽である。あえて言えば菓子パンは売れるかも。あまりにも懐かしいので、ここで牛乳を飲む。フルヤ牛乳の4.2特濃牛乳だった。4.2は意味不明だったが、ガラスケースの上でフィルムをはがしてフタを開けてくれた。本当に懐かしいさがこみ上げてきた。
同定

オオエッチュウバイは白バイの王

東京都東久留米市、東京北魚で買い求めた新潟県佐渡産白バイは、明らかに富山湾、朝鮮半島東岸などにいる、カガバイよりも北にいるタイプ、ノッポバイだと考えた。このあたりは貝類学者の黒住耐二さんの考えとも一致する。中に1個体だけオオエッチュウバイが混ざっていた。とするとバイかご(バイガイ用のかご)の水深は400mくらいではないかと思われる。オオエッチュウバイはエッチュウバイ・ノッポバイと比べると深い場所にいるが、今回の佐渡沖ではその中間地点で漁が行われていて、オオエッチュウバイとノッポバイを水揚げ後選別している可能性を感じる。ちなみにノッポバイと比べるとオオエッチュウバイは大きいというのもあるが、ずんぐりむっくりして膨らみが強く、貝殻が薄くもろい。オオエッチュウバイは島根県、山口県などで大量に揚がる白バイ(エッチュウバイ)などと比べて、遙かに美味である。新潟県で名物として高値がつくのもわかる気がする。
料理法・レシピ

ツナマヨお握りは今や一般名詞だと思う

かなり前の話だけど、コンビニで「ツナマヨがない」と騒いでいるお子様がいたので、そのときボクはー♪ 気がついたー♪ そうだ春休みだと。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で目的があってカツオを1尾買っていた。ツナマヨが頭にあったので、じっくりしみじみツナについて考えた。目的があって買ったカツオだが、余り半身を刺身で、というのをやめてツナマヨ作ろう!さて、ツナマヨとはなんだろう?ツナという魚の一覧に関してはサイトを見てもらうしかないのではしょる。料理であって料理ではないようなもので、ツナ(マグロ属)、カツオのツナ缶(オイル漬け・水煮缶)とマヨネーズを和えたものだ。どの家でも普通に作っているものが、コンビニのせいで一般名詞化した例のひとつだろう。考えてみると1985年に、まだ新人モデルだった広田けいこ(漢字忘れた)が、深夜にいなりずしを食べたくなったせいで、「いなりずし」が一般名詞化したのと同じである。蛇足だけど、このせいで「きつねずし」という言語が駆逐される。
コラム

今季最後のカキフライ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で広島市産カンカン入り剥きガキを5つ買う。225円だった。あくまでもボクの場合だけど、マガキは10月から3月いっぱいまでにしている。今年はちょっとだけ遅れて、4月中旬にマガキ終いをする。そのための5つである。ちなみに懐石ではそろそろ「名残の」、とつきそうなマガキだけど、この4月がいちばんぽってり太っているのが残念でならない。近年、食い時を4月いっぱいまでに延長したくなっているが、イワガキと重なるのがいやなので、迷いに迷っている。思えば初カキフライは遅れ、昨年11月も末のことだった。振り返ってみると昔は10月の声を聞くと間違いなく秋深し、だったのに最近では11月に秋の気配を感じている。海水温の上昇にもだえくるしむ海藻たちの気持ちがわかる。さて、4月半ば、広島市江波の剥きガキは触ると弾力があり上々のものであった。帰宅後、剥きガキは大根おろしできれいにして、水分をきって、冷蔵庫で一休みしてもらう。市場から帰宅すると、買ったもの、送られて来たものを処理しなくてはいけないので、2時間前後魚介類にまみれる。ここでシャワーをあびるのだけど、お昼ご飯の大方を作っておく。カキフライの材料を集めて置く。剥き身に塩コショウし、小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせ、パン粉をつける。水産生物の細かい部分まで見たり撮影したりすると、脳みそも身体も疲れ切るので、この日はシャワーではなく湯船で身体を癒やす。風呂上がりに、皿にキャベツがなかったので、セルバティコを敷き、カキフライを揚げて並べてお終いである。これでビールといきたいところだけど、さんぴん茶を氷入りで。早く昼ビールをやりたいものだと思うけど、人生我慢が肝心なのだ。終いのカキフライがたった5個というのが、ボクの体調のせいなのも悲しい。でも、揚げたてのカキフライにご飯、ワカメのみそ汁にさんぴん茶は、いい昼ご飯だと思う。揚げたてのカキフライの、じゅわりと出てくるジュのうまさたるや筆舌に尽くしがたい。ご飯との相性がいいことにも喜びを感じる。ふと、「あ、あ」、今季もこれで、この渋甘い、濃厚なカキフライともおさらばか、なんて切なくもなる。
コラム

兵庫県明石浦漁協の桜鯛 1 兜焼き

ちょっとだけ日記風に。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に兵庫県明石市、明石浦漁業協同組合から明石鯛(マダイ)が来ていた。桜はまだちらほら残っているので、ぎりぎり桜鯛という言語を使ってもいいだろう。目の下一尺、1.1kg の理想的な大きさのマダイである。ちなみにマダイはこの目の下一尺から一尺半くらいがいいと思っておりまする。執念深い明石人(原はつきまへん)が飛ばしてきたタイなので、鮮度抜群やし、ちゃんと血抜きされてますので、これ以上望めない、といったものである。瀬戸内海といえば産卵期に大漁が続く「魚島の鯛」だが、5月、6月に大量に揚がるタイはそれほどはうまくない。「魚島の鯛」の手前まで文句なしにおいしくて、「魚島の鯛」になったら「これはこれで重宝します。おかずにします」と考えるべきである。産卵間近、産卵後のマダイを猫またぎというアホな魚通がいるが、大間違い。これはこれで料理のやりかた次第で抜群にうまいと、わざわざつけ加えておきたい。基本的に買った魚は計測して、撮影する。タイ科の魚は下ろす難易度が極めて低いのでほんの数分でばらばら事件となる。まっさきに作ったのが兜焼きである。「兜焼きなんぞ、なんで作ってもおんなしですがな」と昔、大阪市にある、長い長い商店街の曾我廼家五郎八に、養殖もののマダイの兜をすすめられたが、兜の塩焼きほど、そのタイの素性がわかるものはない。兜焼きは上物のタイで作らなあきまへん。ちなみにこの日、我が家にはおやつが枯渇していた。お茶を飲んでもつまむものがない。お菓子代わりの兜焼きでもある。
コラム

千葉市地方卸売市場には上物多し

千葉県には船橋、柏市、松戸市、成田市、そして千葉市に水産を含む市場がある。それぞれに個性があり、地域を反映している。柏市は完全に消費地市場で上物も多く、荷の量も多い。仲卸が魅力的である。船橋市は東京湾を強く感じるところで、昔の築地を思わせるよさがある。松戸市は比較的安く、しかも仲卸が一般人に対して親切である、関連棟が魅力的だ。千葉市地方卸売市場の水産棟は規模が大きく、上物あり、マグロ屋が多く、比較的廉価なものもあり、塩乾などもある総合的な水産市場である。場内には、上物がたくさん並んでいた。生を扱うマグロ屋もあり、クエなどの超高級魚も並ぶ。
同定

連続するか、しないか、モロハバイ

北海道室蘭市、『ヤマサン 渡辺』、山本涼子さんたちに送って頂いた、エゾバイ科モロハバイ属の巻き貝を完全に処理するのにはまだまだ時間がかかる。合計10㎏近くが我が家に眠っていて、基本的に全部のタイプを分けたつもりだだけど、全然行き着く先はわからない。千葉県立博物館に何㎏か送り、そのうちモロハバイ属の座談会をひらく。我が家にある貝類図鑑は13冊だが、県立博物館にはこの何倍もあり、紙で保存している論文も多い。この1つの属をめぐってああでもない、こうでもないと議論することは非常に有意義である。偉大なる貝類学者の一人である、吉良哲明(1888-1965。僧侶でもあった)は、この座談会的なものの中心にいて、貝類の分類をすすめていたのだと考えている。この非常においしい、北国の巻き貝は、我が家にある貝類図鑑では、モロハバイ、ヤゲンバイ、ヒモカケヤゲンバイ、ヒトハバイになるが、1種にまとめるべきか、それぞれ亜種としていいかは、ボクの段階ではわからない。ことほどさように同定というものは難しい。テレビの監修をやっていたことがあるし、問い合わせに応じたこともあるけど、画像だけで見るのは不可能なものがいっぱいある。4月中には結論を出すつもりだが、亜種すべてをページ化する。
加工品

竹輪は竹輪で蒲鉾は蒲鉾、徳島県の竹ちくわ

ウナギの旅を続けているとき、ボクの出身県である徳島県小松島の「竹ちくわ」を送って頂いたのはタイムリーだった。この「竹ちくわ」と関西に多い焼き蒲鉾はウナギ料理の歴史を考える上で非常に重要なのだ。徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町貞光)に生まれたので、生まれて初めての都会は徳島市だった。面白いもので、徳島県でももっと西の池田町(現三好市)の老人に聞くと最初の都会は高松だったという。ことの真意はともかく、池田町で食べられていた竹輪など練り製品は「えびちくわ」だったり、普通の穴の開いた竹輪など香川県観音寺あたりのもの。これが徳島本線の池田と徳島の中間地点のボクの町では、どちらかというと小松島市・徳島市・鳴門市で作った「竹ちくわ」、「かつ」、「長天」になる。同じ県の練り製品を考えてもこれだけの違いがある。水産物など食べ物を考えるとき、ぜったいにやってはいけないのが県単位で区切ることだ。家族と一緒に徳島市内にでて、丸新デパートとかつぼみやとかを連れ歩かれて、我慢に我慢を重ねる代わりに買ってもらったのがプラモデルや本だった。それと帰りに必ずねだるのが徳島駅売店の「竹ちくわ」だ。黄緑色の包み紙を持つのはボクの役割だったと思う。この「竹ちくわ」と冷凍ミカン、機関車の煤がボクの徳島本線の最初の想い出だ。横道にそれるが、子供の頃、機関車とディーゼルカーは知っていたけど高知に行って初めて電車に乗ったとき、都会だと感じたものだ。家族のいる東京に行くときの、大阪から東京までの電車では走り回るほど興奮した。電車に都会を感じるのは国内広といえども徳島県人と沖縄県人だけだったと思う。沖縄県にはすでに電車が走っているので、追い越された感が非常に強い。小学校に上がる前後から、「竹ちくわ」はボクの好物だった。たぶんかなり高かったのではないか? だから徳島駅で買うお土産だった。あまりに好きなのでボクだけが2本、3本食べていたっけなー。さて、なぜ竹輪は竹輪なのか? それは細い竹を切り、竹を適当な長さに切る。乾燥させない生の竹に魚肉(最初は主に淡水魚)を握りつけて、直火で焼く。古代には竹についた状態が完成形だったと思う。これが後に焼き上がったら竹から外すようになる。竹につけて焼き、切ると断面が輪なので、竹輪だ。徳島の「竹ちくわ」は焼いて抜かないままだ。たぶんこの国広しといえども、こんな原始的な姿を残した竹輪はないだろう。ちなみに蒲鉾の語源を同じように棒状のものに握りつけて焼く。この形が蒲の穂に似ているから、蒲鉾だとしているが、大間違いだと思っている。これは別項で述べたい。徳島の竹輪はやや甘めである。足(弾力といっても間違いではない)はある方だと思うが、その足が強すぎないのがいい。「竹ちくわ」を食べると、Homeward Bound ♪徳島県の山崎さんには感謝の致しようがない。
コラム

オオヒメって、もう普通の高級魚、じゃないかな?

八王子綜合卸売センター、舵丸水産、クマゴロウが銭州通いを開始した。名人なのだろう、今年はシマアジ爆釣で、ゲストが少ない。ヒレナガカンパチ、ナンヨウカイワリ、オオヒメが本命の脇を彩る存在だけど、考えたらなんて豪華絢爛であることか。今回はこの準主役級、オオヒメ(体長35cm・920g)を密かに連れ帰ってきた。少し難しい話になるが、魚類のほとんどはスズキ目(非常に上の階級)に所属するので、ニュースなどで「スズキの仲間」というくらい意味不明の言葉はない。上から階級をたどると界→門→綱→目→科→属→種、で、本当に魚介類が知りたかったら目から種くらいまでの階級は知って置くといい。オオヒメはスズキ目フエダイ科ヒメダイ属である。フエダイ科は全国的とは言えないが、関東、静岡や紀伊半島、四国南部、九州南部、琉球列島で流通のプロには当たり前の魚なのである。高級魚は流通のプロが主に作り出すものだが、その高級魚の主役もタイ科からフエダイ科に移行している。東京には、小笠原からの定期便や伊豆諸島からも「おなが(ハマダイ)」、シマチビキ、同属のヒメダイとともにやってきているので、古くからフエダイ科に慣れ親しんでいる。ヒメダイ、オオヒメは極めて似ていて、東京を始め関東周辺では、ともに「おごだい」である。種は違っているが、流通上は同種と見なされているのだ。この2種を分けるのは魚類学者か魚類学に関心を持っている一部の人間だけである。種の見分け方は慣れないとできない。ただし、「大姫」の名の通りに、ヒメダイよりもオオヒメの方が大型になる。伊豆諸島からくるヒメダイ属2種では、昔は圧倒的にヒメダイの方が多かった。ところが最近、温暖化のせいかオオヒメの比率が上がってきているようなのだ。「おごだい」の味のよさは昔から東京では知られている。ここにオオヒメが混ざり、「おごだい」は量的にも増えている。安定的に入荷しているので、価格がやや高値ではあるが安定しているのである。ここにきて魚価全般が高騰しているために、最近、ヒメダイ・オオヒメの値段が安く感じるのだ。年間を通して味がよく、その上、歩留まりがいいので、お買いでもある。この専門家にとっては平凡な魚は、いまのところ一般人には遠い存在でしかない。これを機会に、一般人にも平凡な魚になるといい。

該当するコラムが多い為ページを分割して表示します。
全853コラム中 101番目~200番目までを表示中


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