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コラム

夏には、ブリこん辛みそ鍋

若いとき、体は木製だった。年を取ると、体はコンクリート製になる。若いときは昼間の熱がすーっと去って行くが、年を取ると体の熱がこもってぜんぜん去りはしない。年寄りが、熱がこもって死にそうなとき、逆療法がいいんじゃないか?暑いときには涼やかな冷たいものではなく、濃厚かつ非常に辛くて熱々のものを食った方がいいんじゃないかな。ブリの腹身とこんにゃくだけなので、交互に食べる。いちばん脂のある部分なので切り身を舌に乗せると脆弱で、しかもとろっとしている。甘いと感じるのは脂のせいだろう。このとろっと柔らかいところに、こんにゃくのごく熱く、強く歯に抵抗感を感じるのがとてもいい。なぜだかわからないけど、最近、辛すぎると食べられない。本当はコチュジャンの辛さに追い唐辛子をするのだけどやめた。それでも汗がぽちぽちと落ちてくる。ぽちぽちふうふう鍋。辛さの中に見えてくる人生儚し、だ。ここに沖縄のハブボールを2缶は飲み過ぎかな? 逆療法なのでこれもよしかな?
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エゾボラは真ツブでAツブで刺身ツブで

食用としている軟体動物貝類(軟体動物のタコやイカ、ウミウシを除く)の基本的なものを挙げて行く。学者とか貝に興味がある人のレベルは除く。知っていると生活に生かせるレベルのものだけにした。基本的食用貝類の覚え書きだ。エゾバイ科エゾボラ属エゾボラという巻き貝の話。(科や属などの階級は知らなくてもいいけれど知って置くとのちのち便利)本種は普通の食用貝だけど、知っていたら、貝に関しては通人である。市場では標準和名ではなく「真ツブ」とか「Aツブ」と呼ばれることが多い。BがあるからA、真ではない同じような貝がいるから真で、このエゾボラ属ではもっとも味がよくて、値段の高い種でもある。消費地のスーパーなどに並ぶことはなく、一般小売店の中でも高級魚店かデパート・高級スーパーでしか買えない。
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銭州のオキアジでトルコ風サンド

まだ若くて水産生物とヒトとの関わりを調べ始めたばかりのときに、おぼえたのが「トルコ風サンド」だ。写真しかなく、トルコ在住だった人間や、行って帰ってきたばかりの人間をとっつかまえて教わり、作り方を考えたものだ。なんてことを前々前回書いた。あまりにもたくさん料理を作ったので、今回のオキアジに関してはとりとめがない。テーブルの上でアジ科の分類的変遷をたどりながら、オキアジ料理を作りすぎているのに、朝ご飯までもオキアジで、となる。オキアジの全粒粉ソテーを挟んだもので、トルコ風サンド・ソテータイプだ。全粒粉の穀物感で切身の表面がちょっとだけ餅っとして、オールスパイスの風味が立ち上がる。バタールなので食べ応えがある。それにしてもオキアジは、なんという味の実力者なんだろう。脂が口溶け感が感じられるし、アジ科らしいうま味もある。しかもソテーするとふんわりして柔らかい。塩味をつけた紫玉ねぎがとてもいい存在感を発揮しているのも、いいねー。調べごとの最中なのに、群馬県中之条町、甘い甘い三山ワイン赤を1ぱいだけ。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが銭州で釣り上げたオキアジの体長は40cmだ。この種としては最大級である。過去にこれほど大きな個体は見たことがない。以上は前回書いた。薄い切り身を作る。塩コショウして全粒粉をまぶす。ソテーする。温めたバタールにレタスを敷き、トマト、塩とオリーブオイルとにんにくで和えた紫玉ねぎをのせた、オールスパイス(お好みのものを)を振る。その上にオキアジのソテーをのせてあとはいろいろ。食べる前に思いっきり上から押し押ししてがぶり。
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大分県佐伯市産アイゴのマリネ

このところケーパーに夢中になっている。いろんな料理に使っているが、やはりマリネに使うのが、いちばんケーパーのよさが出る、と思い始めている。アイゴ、スギ、ハチビキ、ブリでマリネを作ったが、だんぜん、アイゴがウマスギだった。この一般流通ながら扱いのいいアイゴというのは非常に使える、ということもわかった。やや細く切ったアイゴにケーパーの塩気、トマトや紫玉ねぎなどの風味がライムジュースで一体化する。ものすごくゴージャスなフルバンド的な味である。しかもアイゴ自体の食感の豊かさ、身の豊かなうま味が強く強く舌を震わせる。あくまでも深夜酒のアテなのに、心に残る味であった。深夜なのに岐阜県八百津、「玉柏 原酒」の水割りを思わず2杯。
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8月12日、主菜は海水のものと陸水のものと

【めったに受けない健康診断で、いろいろ言われた。専門家に自分が食べているものを見直しなさいと言われ、同じ日に友人に食べたものを書き出せ、と言われる。いちばんしっかり食べる朝ご飯を、並べて撮影している内に面白くなってきたし、バランスを考えるようになってきた。】7月後半からいろんなことをやり、それのほとんどがお初なものばかり。それにしても周りは見知らぬ人ばかりってのはくたびれる。そんな日の翌日の祝日の日の遅い朝ご飯だ。スギのみそ汁を作っただけの朝ご飯で、しかも二度寝前のご飯なのだ。面白いもので納豆が食べたかったので、ワンパック開けたけど、変な取り合わせになる。スギみそ汁、鯉濃(コイ)、納豆、ご飯、トマト。納豆は副将軍なんてふざけた名のもの。■スギみそ汁。中骨を適当に切り、湯通しして氷水に落とす。水分をよくきり、水から煮出して、みそを溶いたもの。■鯉濃はこの時点でシチューのごときものとなっている。ご飯にやたらに合う。食った後また睡眠。
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三重県産ウルメイワシの揚げ揚げ

関東周辺のスーパーを回っていて、意外に見かける機会が多いのがウルメイワシである。小さいと劣化が早いので消費地では比較的大振りが売られていることが多い。今回のものなど手に取った時点で揚げものにしてやる、と思ってカゴに放り込んだ。買い求めた初日は、お昼なので天ぷら定食の天ぷらの1種にする。季節のなすやオクラも揚げて、おいしい、おいしい昼飯なのである。天ぷらの種は上品でくせのない味の魚ではだめなのだ。ウルメイワシのちょっと背の青い魚的なワイルドな部分、そして豊かなうま味が揚げることで凝縮する。ご飯を食べ過ぎないように1尾だけ揚げたが、それでもご飯がもっともっと欲しくなった。
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ムールガイのシェリー蒸でおしゃれなブランチ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産でこれを量りにのせると、帳場で値段(㎏単価)がわからないので、「ムールいくら」と声が飛ぶ。ムラサキイガイは、市場人総てがムール(ガイ)で、買い出し人も含めると百パーセント、ムールである。標準和名なんて誰も知らない。そしてボクも市場から帰宅して、トレビアーンと言いながら、ムールガイのシェリー蒸を作り、バゲットと合わせてブランチにする。
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銭州のオキアジで外房のなめろう

夏には「なめろう」かも知れない。「みそたたき」ではなく、「なめろう」と千葉県の郷土料理名を使うのは、酢を使うからだ。この千葉県ならではの、「なめろう」がいちばん夏向きである。マアジ、ウルメイワシ、マイワシと作ったが、意外にもオキアジがいちばん印象に残った。定番というか「なめろう」の主役であるマアジを超えたのは、意外だった。オキアジ自体に豊かなうま味があり、刺身で感じた以上の脂が感じられる。オキアジ恐るべしだけど、少量入れた青唐辛子のピリっだってやけに心地よいし、大量投入したにんにくもいい。今回は長崎県の麦みそを使ったのも正解だったかも。ついでにいえば「なめろう」を作るために徹底的に包丁研ぎをした。やはり「なめろう」は切れる包丁で叩くべし。夏バテのせいか、いけないとは思いながら、このところ毎晩酒を飲んでいる。冷やした岐阜県八百津の「玉柏」もよし、なのだ。
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2024年、今季初サンマは8月19日

8月中旬なのにこんなに痩せた身で、こんなにぺろっとした魚体なのか、とある意味、ビックリ仰天している。ただし去年の初サンマは8月31日で、今年よりももっと痩せていたのである。刺身は細く作って3、4本くらいすくっては食べたが、ちゃんとサンマらしい味はする。個人的には初サンマの味としてはこんなものかなと満足している。サンマらしい独特の渋味を伴ったうま味があるし、少ないながら脂を感じる。気温は真夏だけど、暦では秋なので、初物食いを喜びたい。
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暑すぎても大丈夫、スギのセビチェ

セビチェは高野潤の書籍で知り、だいたいのところしかわからないので、ペルーに何度か行っている知り合いに作り方を書いてもらって初めて作った。結局のところ、今の今まで本物を知らないので、少々不安ではある。ただ、ペルーに駐在していたという知り合いに、我が家まで来てもらって味見してもらったことがある。「こんなものだろう」と言ったのでこんなものなのだろう。気になるのは、ペルーでは穀物に合わせるための、おかずだ、という。それなのに、こんなに酸っぱくて塩辛くていいのだろうか? なんて最近、また不安になっている。特別わかりやすいおいしさではないが、ときになんとなく作るのが、我が家にとってのセビチェと言えそうだ。さて、夜中になっても外気温は30度近くあり、体が欲しているアルコールは日本酒よりもスピリッツだ。ここ数日立て続けに飲んでいる、アブソルートに合わせようとすると、いやが応にもセビチェを作ることになる。スギは比較的お安かったのでいろんな料理を使ったが、セビチェもそのひとつなのだ。これが実においしかった。身がしっかりしていて味がある。ライムの酸味や香り、尾鷲市の唐辛子、虎の尾の辛さにも、決して負けないうま味があった。それにしても今年の虎の尾はやけに辛い。そのひりひりを北欧のウォッカで洗う。脳みそにオーロラが浮かんできた。
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今季初ブリは根室産で、まずは刺身

根室のブリは、市場ではまだまだだな、と言っていたが、ボクには十二分を通り越して、もう限界の脂の乗りであった。正直な話、暮れから2月くらいまでの氷見の青箱からボクの嗜好がずんずんと遠ざかっていく。ブリは北海道がいちばんとさえ思っている。3月中旬以降の春ブリもいいな、とかとか。考えてみると、若い頃もそんなに脂に強かったわけではない。バブルの時、氷見ブリを専門に食べさせるという料理店で出て来た刺身が、3切れ。会食したメンバーが全部食べきれないので、若いボクに食べろよ、とどんどんよこしてくる。2切れで充分なんだけどなー、とも言えず、喜んだ振りをして食べたけど、以後の料理がまずくて困った。ブリは脂の乗りを重視してはならぬ。ほどよさが肝心なり、が24歳のときのボクの学びだった。背から食べたが、ブリの身の軟らかさと曇りガラス状に曇らせた脂とでで圧倒された。そんなに厚みのある刺身にしたわけでもないのに、もう少し薄めでよかったかもと思う。酸味がわずかなので、脂の口溶け感とねっとりした舌触りとで、とてもおいしさの量が多い。濃口醤油をやめて刺身醤油に替えてみた。正解だったかも。
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キジハタのこってりこってこて煮つけ

こってり煮つけたら魚の味が死んでしまう、なんてありゃしない。煮つけはこってりと甘々がいい気がしてきた。知り合いの料理人をとっ捕まえて聞いたら、某所(東京都西部)では原始時代から砂糖どばっで甘くて醤油辛い煮つけを作っているという(あくまでも個人的意見だけど)。ボクの場合、そんなに単純ではないし、砂糖ではなくみりん甘いだけど、暑さに疲れてくるとどんどん煮つけが甘辛くなる。今回のキジハタの煮つけなんざー、初めて暮らし始めた東京都江戸川区小岩の食堂で食べた味そのものになってしまっている。それでもちゃんとキジハタの持ち味が感じられる。筋肉に染みている煮汁の中で、ほどほどの脂のある身の軟らかさ、キジハタ本来のうま味が浮き上がって来ている。大体皮がおいしい。今回残念だったのは肝が小さかったことだけど、この肝だっておいしいし、胃袋だっておいしい。
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北海道根室市、夏のオオノガイ漁と干もの

根室周辺(根室市根室湾、風蓮湖、春国岱)の広大な浅瀬では貝類の手掘り漁が行われている。少し沖では桁引もある。中でも貝類は多彩で、アサリ、バカガイ、「ほっきがい(ウバガイ)」がとれる。これにやや沖のホタテガイ桁引のホタテガイを加えると計4種も揚がる。食用二枚貝は1種類の漁獲量が多く、地域内で揚がる種類が少ないのが一般的なので、根室周辺は国内でも希有な二枚貝多種類漁獲地域だ。この二枚貝が豊富な根室市の干潟で夏、5月から7月、大潮の干潮時に行われているのがオオノガイ漁である。たった2日間だけの、最干潮の前後4時間ほどの漁である。根室湾中部漁業協同組合の組合員によって漁が行われているが、組合員1軒につき2名(鍬2本)までが漁を行える。オオノガイは干潟の表面から30cm前後の深さのところにいる。漁は手掘りで、歯が3本の備中鍬で掘り進む。ひたすら前に少しずつ掘り進んでいく。漁獲していいのは殻長70㎜以上で、小さなものは埋め戻される。それにしても30㎝も鍬で掘り進み、大型をバスケットに入れ、小型を埋め戻すのは重労働である。家族が多い家では2本の鍬を交代交代に掘る。1人だけだと、たった1人で4時間掘り続けることになる。この漁業規制が末永いオオノガイ漁の保証になるのだと思われる。それにしても根室湾中部漁業協同組合の取り組みは素晴らしい。このとったオオノガイの水管は干ものになり、その他の部分は自家消費される参考/『オオノガイ資源を守るために-オオガイ生態調査に取り組んで-』(根室湾中部漁業協同組合貝手掘部会 オオノガイ研究グループ 木下秀雄)
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観音崎沖のアジは昨日のカレー

木皿泉の『昨日のカレー、明日のパン』があまりにも好きで、ときどき鬱に落ちると読む。東京神田神保町、東京堂のお勧めコーナーに並んでいて、いつもはこのコーナーの本を買わない主義なのに買った本。タイトルからもわかるように悲喜劇はあるものの、日常がなんとなく過ぎていくという、起伏がないのに強い引力がある小説である。ボクの人生もこんな感じかなと観音崎灯台沖の、特上のマアジを食べながら思ったのだ。有名な、神奈川県横須賀市走水の大アジもいいけれど、個人的にはもう少し小さいほうが好き。釣り師ではないので釣りアジではなく、アジの味が大切なのだ。刺身はここ数ヶ月でトップの味だった。脂はほどほどながらうま味があり、釣り上げて首を折って、丸一日なので食感も豊かである。ジンの薄めの水割りを飲みながら、ついつい箸が伸びる。止まらない。1尾丸ごと食べきってしまいそうなので、途中でふと箸を止めて考えた。3分の1を醤油にみりん少し、しょうがの漬けにして仕舞う。ちょっともの足りないのも結構じゃござんせんか。
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今年の新イカは残暑の頃

新イカにこだわっているわけではないが、東京の夏の風物詩のひとつでもあるので新イカらしいときに、必ず1度だけ買っている。コウイカ(西日本ではハリイカということが多い)に味が出るのは外套長(刺身などにする部分の長さ)12cmくらいからなので、今回の外套長6㎝前後では味がない。味がないのにこのサイズに1ぱいに1000円以上出したいのが、東京人、特に高級すし屋の奇妙さなのである。当然、客は、「新イカをつまみましたよ」と大枚腹って通ぶりたいのだろう。ちなみにボクが買うのは1ぱい100円前後になってからだが、それでも高価である。刺身と言っても軽く湯に潜らせたものだが、淡い淡い味しかない。非常に脆弱で、食べていてはかない。手放しでうまいとはいえない。今回合わせた酒は岐阜県八百津の「玉柏」だが、酸味がほどんど感じられずさらりとしている。このさらり軽やかなところが新イカに合う。
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スギのちょいツマ、シラチャーソース和え

ちょいとつまみでも作ろうか、というのを自分に対して自分で「ちょいツマ」とは、本当は言わないけど「ちょいツマ」の話。サイト内の料理は本来は生・焼く・煮る・ソテー・汁、の基本的なものだけを載せていたが、コラムページが出来たので、出来心で作ったものもコラムで公開していく。さて、お盆休みであまり魚が来ないため、文字の世界にどっぷり浸かっている。サイトの改訂につぐ改訂である。あまりにも座ってばかりで、ちょっとだけ体調不良に陥る。持病の眩暈に不定愁訴で体がしゃきっとしない。そうだ、昼酒しよう、と思ったのはなぜだろう? 無謀な気がするものの、冷蔵庫をあさって本能のままに作ったのが、スギのシラチャーソース和えである。猛暑なんて言語が追いつかないくらい熱い今日この頃、なぜかコチュジャンをよく使う。暑いとコチュジャンとか唐辛子が欲しくなるのかも。普段はチューブのコチュジャン、蜂蜜、ごま油少々、にんにくで甘いソースを作り魚や野菜と和えるのが好きだけど、ここで大変なことが発覚。コチュジャンが切れていたのだ。残っている調味料を広げに広げて、やっと見つけたのがシラチャーソースだ。タイの辛いソースだけど、辛甘いという意味ではコチュジャンで作るものとそんなに変わらない。ただし辛いものに強くないボクにはちょっとだけ辛すぎる。そんな冒険心を奮い立たせての、スギのシラチャーソース和えである。それにしても普段は甘すぎるくらい甘いコチュジャンソースなのに、このタイのチリソースは少しだけ蜂蜜を足したのも関わらず辛すぎてハーハーする。ただし、スギの塩焼きに辛いソースがよく合う。エゴマの葉が入るとコチュジャンを使ってないのに韓国風になる。この辛味は不定愁訴をちょっとだけ吹っ飛ばす効果がある、みたいだ。韓国の酒飲みに笑われそうだけど、これにチェジュの水割りで、あとはそっとー、そっとー♪ お休み自分なのである。八王子綜合卸売センター福泉で買ったスギも残りわずか。尾に近い部分に弱い振り塩をする。少し置き、じっくり焼き上げる。焼いたスギ、エゴマの葉、きゅうりを太めのせん切りにしてシラチャーソース+蜂蜜で和える。
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銭州の大オキアジで天ぷらそば

たまりにたまった情報を処理しているので、今年に入ってじっくりご飯を食べる暇がない。救いのない生活の合間に、群馬県吉岡町で買ってきた蒸しそばできりぎり昼前、11時半に朝ご飯を摂る。目の前で蒸しそばに、超簡単なそばつゆをかける。そばつゆは煮きりみりん+カツオ節出し+加減をみながら足す醤油、といったもの。あわただしいので火は入れない。みりんの代わりに砂糖でもケッコウ毛だらけだ。究極のそばつゆなんて下らないことは考えない、やたらめたら手抜きしすぎ、のつゆだ。ここに撮影のため作ったオキアジの天ぷらに、野菜の天ぷらをのせて、きざみねぎをそえる。わさびはチューブのもので、最近のものはよく出来ていて、いい香りいい辛味だ。オキアジの天ぷらはふわっと軽く、身が甘いのもあり、とても味わい深い。きちっと動物たんぱくならではの実力をみせてくれている。あとの夏野菜の天ぷらだって、撮影台の上で食べているとは思えないくらいにおいしい。それにしても群馬県で買う、麺はぜんぶうまい。今回の蒸しそばだって小麦粉多めなのに、とてもいい味だし、そばの風味も十二分にする。群馬県ってすごいかも。
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八月美味なるアイゴの塩焼き

宇井縫蔵の『紀州魚譜』にもある「八九月頗美味」なアイゴの塩焼きを作った。水洗いして内臓をとって焼くべきか、丸のまま焼くべきか、悩んだ。産卵期のアイゴは比較的臭味がなく、しかも今回のものは扱いがとてもよかった。高知県大月町道の駅で出会った方の教え通り、丸のまま何もしないで焼いてみた。水洗いして頭部を落とした塩焼きは何度も作っているが、丸のまま焼くのは冒険に思えた。
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絵を描くように作るスギのカルパッチョ

カルパッチョを作ったらいい絵が描けたかなとまずは愛でる。この料理の語源はいろいろあるらしく、昔、専門料理では肉を並べた情景がカルパッチョの絵のようだから、というのがあって、そんなもんじゃねーかな、どうせこじつけだろうからと思っている。この国でこれを魚介類にアレンジしたのだと思う。ただイタリアでは、肉を薄切りにして並べてオイルやチーズ、調味料で味つけをするというのが基本であるなら、その縁を忍べるように作りたいと考えている。だから並べるというのと、下になにかを敷いて、上になにかを乗せて描くように作っている。今回のスギは脂の乗りはそこそこだが、うま味が豊かで食感もよかった。ここに足したのはオリーブオイル・にんにく・塩につぶしたフルーツトマト、黒コショウにタイムとかぼすである。昔、フレンチの店で甘みのあるキウイを乗せたのがあったが、白身(ヒラメ)には甘味が勝ちすぎていると思った。甘味は最低限でいい。取り分け、我が家の場合は甘味は最小限にしている。魚本来の味と塩、スパイスが主で、そこに柑橘類の酸味がくると、きりりとした味になる。いろんなものを抽象画のようになぐり描いたら、ちゃんとオリーブオイルが全体をまとめてくれている。1枚1枚くるくると丸めて食べる時間もいいし、実においしいし、安い白ワインに合う。
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タナカゲンゲとは、いったい何だ?

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」を知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい。しかもちょっとだけ自慢できる!】タナカゲンゲは国内では日本海の深場に生息している。珍しい魚とまでは言えないが、見た目が非常に変なのだ。顔つきが人のようだし、キツネとか耳の長〜い犬のようにも見える。しかも1m以上になり、やたらに大きい。大きくて変な姿なので思わず目が引き寄せられる。これはいったい「何だ?」と思わない人はいない、「隣の珍魚」だ。一般的に考えると、日本海周辺では比較的普通の食用魚で、ちょっとだけ珍しいくらいなので「隣の珍魚」、太平洋側では「珍魚」である。ちなみに消費地でも関西の方が「隣の珍魚」的であり、関東では「珍魚」中の「珍魚」だと思う。東京都内ではときどき珍魚大好きな魚屋が看板代わりに並べていることもあるが、極めて珍しいから大看板になる。
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コウイカの甲は貝殻なのだ

この話は数億年前から始まるが、その細かい年代記はここでは書かないつもり。階級にも触れない。自分で年代記・階級などなどを作ってくれるとありがたい。軟体動物(門)という体が柔らかい動物がいて、最初はミミズのような形をしていて、徐々に水中にたっぷりある炭酸カルシウムを取り込んで貝殻を作る。お椀を伏せたような貝殻、板を繋ぎ合わせた貝殻を持つ動物が生まれる。これがネオピリナであり、ヒザラガイである。徐々に卵から孵化するとすぐ、渦巻きを描きながら巻き巻きした貝殻を作るような動物に進化する。軟体類でもっとも多数を占めるサザエやバイなどの巻き貝である。この巻き貝の貝殻は重いし、動きにくいので、自由が欲しいと思った動物が誕生する。貝殻を持ちながら泳ぐようになる。絶滅したアンモナイトやオウムガイだ。この貝殻をつけたままでは早く泳げない。貝殻を捨てようと思った生物がいて、それがイカである。貝殻を体の中に封じ込めてハンディータイプの靴べらのようなもの(ある人は船に似ているものという人もいる)にして体に取り込む。それが、甲(写真はコウイカの甲)である。甲は貝殻でイカが貝だった証拠なのだ。この甲を持っているのがイカの仲間が、コウイカであり、シリヤケイカであり、カミナリイカだ。コウイカの貝殻には先に棘があるので、「針イカ」と西日本で呼ばれている。その内、こんな貝殻はいらんといい始めた生き物が生まれる。貝殻は徐々にもっと小さくなり、フィルム状になる。これが筒状の体をしたイカであるスルメイカ、ヤリイカ、アオリイカなのだ。そしてタコになり貝殻が消滅するが、それは別項にて。
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旬はこれから、銭州の大オキアジの刺身

オキアジの端正な味の表現が難しい。白身でもなく、アジ科の背の青い魚でもない。あえて言うと、身が白濁しやすいということでは、サバ科のサワラやハガツオに似ている。うま味の強さも似ている。今回の脂はそれほどという個体も実においしいと思うのは、切りつけた身にうま味成分が多く、食感は強くなく、どちらかというと柔らかいからだろう。最近、神奈川県小田原などでも手に入れにくい魚になりつつあるのは、とれると欲しい人が多いためだ。お昼ご飯にご飯の菜としながら、この脂ではなくうま味成分の豊かさ故の味に感服している。ご飯にのせて食べるとなおうまいのは、オキアジの身に甘味があるからだろう。今年の秋は去年以上にオキアジ食うぞと思っている。
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がやがや、エゾメバル

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」を知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】全部、「めばる」になってしまう不思議。最近でこそ、スーパーなどで標準和名で表記されているが、現メバル科メバル属の多くがただただ「めばる」だった。急激に人気が陰っている「めばる」とされる魚で、標準和名が知られている種はまったく存在しない。この知名度の低さは、昔、メバルだった魚が3種類に分かれたのも原因だし、もっといえば「めばる」が多すぎるのも問題である。余談だが、メバル科には一般的に「めばる」と呼ばれるものと、「そい」がいて、ともに岩礁域(根周り)にいる。クロソイ、ムラソイなどの「そい」は根(底)についているが、「めばる」と呼ばれる魚は全部が全部ではないが少し海底から浮いて暮らしているのだ。北海道、東北などではこの違いが、もちろん漁業関係者の間ではだが明確にわかっているようだ。その問題多すぎの「めばる」の中でももっとも問題を抱えているのがエゾメバルである。
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民芸の名品にクサヤモロのきゅうりもみ

暑さ疲れもピークに達している今日この頃、毎日欠かさず酢のものを食べている。いつもは保存容器に入れてそこから直で食べているが、たまには器に盛ってみた。使ったのは、ひょっとしたら明治時代のものかも、という、いっちんの小鉢である。青みを帯びた灰釉に白い線がなんともいえず、しゃれている。以下はボクの知識ではなく、東京都駒場東大前『べにや民芸店』のりょうさんから教わったこと。いっちんは釉薬とか陶土をクリーム状にして、袋に入れて少しずつ絞り出して、線を描いたもの、非常に高度な技術を要す。このような民芸的な器に盛っていただくと、息苦しいほどに蒸し暑い夏に涼を感じる。酢に混ぜ込んだクサヤモロのうま味豊かであること、きゅうりの歯触り、青い風味も夏にこそのものだ。長野県諏訪の「真澄 銀撰パック」を冷たくして正一合だけ。
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スマとレッドアンデスに結婚してもらう

スマは野菜や芋類などと煮るとことが多い。今回はじゃがいものレッドアンデス、翌日は丸ナスと煮てみたが、レッドアンデスの方が上かな。あまりにも相性がよかったので、翌々日にもまた作る。岐阜県で大量買いしたレッドアンデスをスマ1尾と煮て使い切る。普段は生節(塩ゆでにして放冷)にして煮るのだが、今回は生炊きにしてみたがこれも正解。サバ科の魚の特徴はイノシンが多いことではないか。おいしい成分を大量にもっているので、煮合わせるとやたらにその真価を発揮するのだ。また、レッドアンデスのよいところは、じゃがいもとしてのうま味もあり、煮崩れにくいことだ。これがスマのおいしいと合体すると敵なしの味になる。またスマは何度か煮直したが硬く締まらなかった。ほどよい硬さでうま味に満ちているのでじゃがいもも、スマも食べ飽きない。これなど大発見かも。
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夏が来れば食べたくなる、鯉濃

鯉濃(こいこく)は煮れば煮るほど、みそとコイが一体化し、液体というよりも味は違うけどドミグラスソースのようなものに変化してくる。この過程が面白い。鯉濃はみそ汁でもなくみそ煮でもない。作った翌日が、一日目で、ことことと煮て、冷まして温めたものは骨が気になるやら、みその味が馴染んでいないやらで、おいしくはない。
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大分県佐伯市産アイゴの刺身

アイゴはすべてが臭いわけではない。海域にもよるが、臭い個体があるにはあるが、そんなに臭い個体の比率が高いわけではない。今回の大分県佐伯市から来たものなど、とりたてて特別な締め方をしているようには思えないのに臭い個体は皆無だった。しかも非常に脂が乗っていた。いろいろ作ったが、まずイの一番に刺身について。へぎ造りにした身の表面に脂の層が出来ている。わさび醤油で食べた刺身は、今夏食べた魚の中でもトップクラスの味であった。一日に多種類の魚を食べないといけないので、普段食べる刺身は最小限味見程度としているが、1尾丸ごと14切れ食べてしまった。それでも飽きが来ない。もともと身質がよく、うま味に満ちているが、そこにたっぷりの脂が乗っているので、甘味が感じられる。盆で魚の流通が止まっている今、もっとたくさん買って来ればよかった、と後悔さえしている。
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タイプ標本が丹後半島沖なのにエッチュウバイ

群馬県吉岡町、『スーパーマーケット ツルヤ』で買った福井県産白バイを食べながら考える。それにしてもこの白バイは文句なしの美味で指が汚れるのもいとわず、ついつい手が伸びる。関東のスーパーにもよく並んでいて、見つけると必ず買う水産生物のひとつだ。念のために煮方をば。まずは流水でていねいに泥などを流す。鍋に水・醤油・酒(みりんでも)を入れて10分前後煮る。このまま冷ます。泥を噛んでいることが多いので、軟体を貝から出し、煮た汁の中で洗う。軟体は貝に戻す。今回『ツルヤ』で買った福井県産白バイの標準和名はエッチュウバイである。このエッチュウバイをはじめ日本貝類学にはびっくりするくらい謎が多い。別の分野の専門家で貝類学は謎学だといった人がいるくらいで、ボクなど門外漢は入り込むこと自体が危険だな、と思っている。ただし、このようなありふれた食用貝に関しての謎を避けて通るわけにはいかない。この謎の端切れを述べたいが、ここでは海域に関してに限定し、水深に関しては省く。複雑になりすぎるからだ。以下、気にならない方は読む必要はない。また、貝殻を愛でて楽しんでいる限り、あえていうと深みにはまり込まない限り、こんな永久迷路にはまり込むことはない。楽しもうぜ、貝の世界とも言っておきたい。
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キジハタ薄造り、塩ライム&黒コショウ&タイム

自宅では主に水産生物を食べているので、持続、そして持続するためにあれこれ工夫する。目の前にキジハタ(西日本ではアコウ)の薄造りがあり、わさび醤油と柑橘類にしたいと思って造ったら箸が伸びない。大好きなライムと塩で、オリーブオイルは抜きにしてみても、今ひとつ足りない。あらびき黒コショウをパラパラと散らし、タイムを乗せてみた。意外にも完成度が高い。
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北海道産マイワシの全粒粉揚げ

ほどよく脂が乗っているのでマイワシは、ふんわり柔らかく揚がっている。つけた全粒粉は粉というよりも穀物的な味がする。かりっとではなく半分餅っとした揚がり具合である。ノンアルコールではあるが、ビールにとても合う。ふんわり餅々ってのもいいものだ。
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見極めが難しいツムブリの刺身

抱卵個体で、値段が安かったので、それなりの味だろう、と思ったらけっこうイケル味であった。ツムブリは遺伝子的にはブリ類を代表する魚で、味わいの方向性もブリに近い。ブリほどではないが微かな酸味があるのもブリを感じさせる。嫌みのない優等生的な味と言ってもいいだろう。2日間にわたって刺身にしてみたが、初日はわさび醤油、2日目はごま油・唐辛子・塩・にんにくで食べてみた。夏なので柑橘類にわさびであっさりがいい、と思ったら、ごま油の方に惹かれた。これなら優等生的で単調になりがちなところがリカバリーできる。このごま油塩は大阪で教わった食べ方で、実際に鶴橋の飲食店で食べてもいるが、実に優れている。ツムブリのように歩留まりがよい魚は、刺身の食べ方もいろいろ工夫すべきかも。
コラム

小クサヤモロのコチュジャン和え

やはり夏は辛味だなと思う。皮付きのクサヤモロをコチュジャン、酢、にんにく、ごま油と、普段はやらない食べ方で食べるのも、外気温が38度もあるせいだと思う。小型のクサヤモロは釣り上げてすぐに首を折ってあったので、刺身でもいけたが、今回は強い味にしてみた。夏は辛味と酸味というが、この韓国風の味を体が求めているといたのかも知れぬ。こんなに小さな個体なのにコチュジャンの辛さに負けないで、おいしさの存在感があるところなど、意外でもあった。深夜にこれででチェジュをやったら、ぐっすり眠ることができた。余談になるが、小出楢重(1887-1931)は夏に弱く、食欲不振のまま食べるものも食べないで、夏をやり過ごしていたようだ。この短い人生のあり方がこんなところにあった気がする。この天才的な画家の話を持ち出すまでもなく、この残酷なほどの暑さの中ででも、なにかを食べたいという気持ちこそがとても大切なのである。そこに辛味だ。夏はあれこれ味を変えて水産生物の料理に取り組むべしだ。
コラム

頭を触ればガンコだとわかる

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」を知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】この魚、ガンコは山陰以北の日本海、銚子以北の太平洋の深場に生息している。全長50cm弱で、普通の人がいきなり見たら魚だとは思うだろうけど、それ以上なにもわからないと思う。見た目がかなり厳つい。一見刺々しく見えないし、ぶよぶよしているので触ってみようかな、と思うはずである。触ったらわかることだけど、この魚、皮膚の下が棘だらけなのだ。チクリと刺されるような棘ではなくゴツゴツトゲトゲしていて、痛いけどケガはしないはずだ。しかもまるで西部劇の悪役俳優のような頬髭、口髭を生やし、実に精悍な面構えをしている。とても根は気のいい頑固オヤジには見えない。
郷土料理

スマのスパゲッティは〈delizioso〉

7月はじめに魚のパスタを作り始めて、目から鱗というと月並みだが、魚魚しいパスタがこんなにもおいしいのかと、作るたびにデカイ腹を突き出しのけぞっている。そして、スマ、だー。比較してはいけないかも知れないが、食べているときには正しい評価が出来ないものだが、ここに魚魚しいパスタの頂点をみた気がする。(もちろんどんどん評価は変わるけど)ソテーしたスマの中落ちがやけにうまいだけではなく、中からにじみ出てきたうま味が非常に豊かだ。最近、できるだけ塩を使わないのに濃厚に思えるのは、スマのうま味成分がぎょうさん出ているためだろう。ここに今回のひらめきで入れたヒメグルミのこくが追加される。ナッツ系の濃厚な油分ありのうま味と香ばしさって、足しても余計ではなく、うまさが倍増する役割を担うのだ。うま味を含んだ油とスパゲッティだけでも、ごっついええな、と思う。そこにケーパーの酸味と塩気がくるのもいい。こんなに魚のうま味と、ケーパーの酸味が合うなんて思わなかった。しかもしかもプラスティックのケースに入って高かったスイートバジルではなく、袋にどばっと入って安い直売所のものを、どんどんちぎり入れたら、これもええ、ではないか。ハーブとか香りのものは高値だからと、ケチケチ使っていたのではよさがちっともわからないってのも最近わかってきた。ネットで調べると、イタリア語で、おいしいは、〈delizioso〉らしいけど、この一皿で感じることは、それだな。〈delizioso〉でボクの腹が、また一回り膨らんだ。早く昼ワインを飲んでも、仕事が継続できる体にもどりたい。
コラム

7月26日、シロギス天丼で朝昼兼用

【めったに受けない健康診断で、いろいろ言われた。専門家に自分が食べたものを見直しなさいと言われ、同じ日に友人に食べたものを書き出せ、と言われる。いちばんしっかり食べる朝ご飯を、並べて撮影している内に面白くなってきたし、バランスを考えるようになってきた。】最近、丼ものが多いな、と思っているが、これも朝方の作業がなかなか終わらないからだ。そんなに忙しい人間ではなく、比較的世の中とのリンクもほとんどない孤立無援の淋しいボクなのに、なぜかやることなすこと多し、なのだ。期限がある仕事すら終わっていないわけで、行き詰まっていた日でもあった。この日は朝から揚げ物ばかりの撮影をしていた。味見をしていたらご飯を食べる気がなくなり、なんと午後4時に朝昼兼用のシロギス天丼を食べた、ヤマトシジミは前日から砂出だしをして、これまたこの朝、撮影したもの。八王子綜合卸売センター、八百角で買った四葉きゅうりの漬物をつけたのは昨夜のこととなる。丼も汁も漬物も残り物、作り置きものだ。■シロギス天丼。シロギスは前日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で開いたものを買い、この日の朝、少し成形して揚げて撮影、味見した残り。野菜も同様。■シジミのみそ汁。島根県産ヤマトシジミを泥だししてこの朝、600gほどをみそ汁にしたもの。すぐに冷蔵して食べたいときに温めて食べる。みそは愛知県岡崎市の八丁味噌。撮影に使った脚立に腰掛けてパクパクと。名残のキスの天ぷらを名残惜しむ暇もなし。これじゃ現場飯である。夜にはもっと面倒くさいことが待っている。
コラム

黒くて何が悪い、クロダイの話

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」を知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】タイとそっくりな姿だけど赤くない、黒いけどタイ科のタイだからそのものずばり黒鯛である。実際に本種を見るととてもカッコイイし、うまそうなのだ。最低限、赤いタイ(マダイ)と黒いタイがいることくらいは知って置いてもらいたいものだ。
コラム

野菜・植物について ミニかぼす素晴らしい

ミニなかぼすを八王子綜合卸売センター『八百角』で買った。果汁はともかく普通のかぼすよりも香りは数倍上だった。いろんな料理に使ったが素晴らしいったらありゃしない。国内の青果市場の大きいほど高い、という原則ほどつまらないことはない。おかしいんじゃないと思っている。もっと普通にミニかぼす買えるようにならないかな?さて、念のため。水産生物の食べ方も多種多様でなければならないが、野菜もそうだと思っている。地球上の全生物が危険なのだから、既成概念などぶっ飛ばさないとだめだ。ときどき八百屋で思う事は、夏にほうれん草、夏に小松菜、夏に白菜や止めた方がいいということ。空心菜、ヒユナ、ツルムラサキ、ニガウリ、カボチャの茎などなど本来東南アジア・沖縄で作られていた、売られていた野菜が、今や関東でも作られているし、売られているのだからそっちを使おうよ。夏にアブラナ科の植物を作ってなんの意味がある。ほうれん草もしかりだ。テレビや雑誌などに出ている料理研究家ってバカだねと思うのは、この季候をおもんばかって料理を考えていないだろうということ。これはマスコミも悪い。バングラデシュ人がバングラデシュよりも何倍も暑いと言わしめる、この国の実情をわかっているのかね。いかん! 話がそれたが、要するにいろんな野菜、果物を季候に合わせて食べようぜ、ということ。
コラム

トコブシの炊き込みご飯はウマスギてこまっちゃう

あまりにも定番的な料理で恥ずかしいけど、やはりトコブシの炊き込みご飯はとても、とてもうまい。芸がないのにうまいので、自慢できないのも困りものである。トコブシの足(筋肉)からも「つのわた(肝膵臓)」からもたっぷりおいしい、のが染み出してきて、ご飯にくまなく行き渡る。このご飯がしみじみうまい上に、トコブシの足のほどよい歯ごたえと甘味が来て、おいしさが表現できなくなってこまっちゃうくらいなのだ。そしてとどめが「つのわた」の味である。小さな塊なのに、ここだけ熱い気がするくらいうま味が強い。茶碗いっぱいで大河ドラマを1年見終わった気がするから壮大かつ、無辺である。
料理法・レシピ

スマ汁ものバリエーション

あらなどを汁にするとき、非常にいいだしが出るので、おかずにもなるみそ汁にするといい。これがもっとも基本的なスマの汁である。いいだしが出る上に身質がいいので、汁にしても上等なのである。汁をスマの本ページにすべて繁栄できないので、バリエーションを展開してみる。
コラム

7月23日、主菜はマナガツオなどなど

【めったに受けない健康診断で、いろいろ言われた。専門家に自分が食べたものを見直しなさいと言われ、同じ日に友人に食べたものを書き出せ、と言われる。いちばんしっかり食べる朝ご飯を、並べて撮影している内に面白くなってきたし、バランスを考えるようになってきた。】水産生物とヒトとの関係を調べているだけだけど、意外にとてもびっくりするくらいせわしない。徳島県海陽町から徳島市の前田浩史さんを通じてナガザルが送られて来た。ナガザルが載っている図鑑類をすべて床に並べる。資料も集める。前日頂いた魚の撮影があり、そのメモをテキスト化する。当然、水産生物の料理を作る。こんなことをやっていると午後2時を超えていたので、とても朝ご飯とは言えないけど、この日最初のちゃんとしたご飯なので朝ご飯かなー。しかも早朝からまんじゅうばかり食べていて、ちゃんとしたものを食べていない。ちょっとだけ飢えている。その仕事の内の水産生物の料理を主菜にする。マナガツオ兜煮、マナガツオの和風ムニエル和風(醤油・みりん・酒でデグラッセ)・ピーマン、前日につくったみそたたきを焼いてクサヤモロのさんが焼き、ワカメのみそ汁、トマト、岐阜県関市『志葉屋』のからし豆腐。■マナガツオ兜煮。大きく育ちすぎた四葉きゅうりとたき合わせた。マナガツオの煮つけは語るまでもない。非常にうまし、だけど、意外にもくたっと煮た四葉きゅうりがおいしい。■マナガツオの和風ムニエル和風。マナガツオはムニエルにするとふわふわになる。そこに甘辛いソースで、ご飯にとても合う。■クサヤモロのさんが焼きは前日のみそたたきを焼いただけ。千葉県の郷土料理でもある。
コラム

アカヤガラはとっても変だけど普通の高級魚

【学者にとっても水産のプロにとってもちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、目的の魚の隣にいて見向きもされなかったり、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」とを知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】アカヤガラは至って普通の食用魚なのに、漁港や水産物のイベントではスターである。ひとだかりができていると、かなりの確率でこいつの周りに、だ。大きさの割りに鰭が小さく、鱗がない。非常に細長く口とも喉とも区別がつかない部分がフルートのように長い。鮮度がいいと赤いのも目を引く。
コラム

マナガツオの基本は漬け魚だな

毎年、数個体漬け魚用にマナガツオを買う。あくまでも日々の総菜だけど、食べるたびにマナガツオは漬け魚用だ、と思ってしまう。今回は西京味噌(会社名)の漬けもの用みそと、群馬県で買った漬物用酒粕で漬けてみたが、ご飯のたびに焼くという日常がとてもいい感じである。みそも粕もマナガツオの身をほどよく締めて、よい味をプラスしてくれる。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 シマメノウフネガイ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾でもあり外洋でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。中にアカニシがあって、おさだまりの厄介者がついていた。シマメノウフネガイである。ひっくり返すとスリッパのように足(軟体)の先を刺し込む板状のものがある。北米原産で1960年代から国内でも見られるようになった。実はおいしい貝で、たくさん集められたらいつも塩ゆでにして食べている。出間リカさんに感謝。(FB 安楽島新鮮組)
コラム

ミニなタチウオのグリエ

タチウオの半身にオリーブオイルと全粒粉を混ぜ巻き込んでいるので、全体に香ばしく焼き上がり香り高い。見た目が魚料理的ではない。
コラム

酷暑なのでスマと夕顔の韓国風スープ

あご煮干(平戸市)だしのうま味に、振り塩をしておいたスマのあらから濃厚な味が水に溶け込んでいる。塩気がちだが、韓国唐辛子のほどよい辛味がきて、抵抗なく体の隅々に行き渡る。スマと夕顔だけのスープだとは思えない妙がある。味のない表面だけしか火が通っていない夕顔の実が、とてもいい役をこなしているのである。味はないけど独特の食感とボリューム感がある。冬瓜でもいいが、冬瓜以上に味がない夕顔は融通無碍でいい。源氏物語は読んだことがないが、夕顔という登場人物はやはり夕べに咲く清楚な白い花のような女性かな?その夕顔の花の先に、こんなにでかい実をつけるとは光源氏も知るまいに。
コラム

アサリとトマトでボンゴレロッソ

終日、資料読みと撮影とサイト運営をしているので、ご飯はほぼすべて自宅で食べる。ご飯が主だが、お昼にパスタもいいもんだ、なんて思っている。大量に買い置いている安値安定のトマトやスイートバジルを有意義に消費できる。この日の昼下がりに、トマトを使ったアサリのパスタを作った。これぞボンゴレロッソ(Vongole rosso)だと思っているが、自信はない。ただただ、トマト、スイートバジル消費のためのパスタである。トマトの溶けた汁気とリングイーネをからめて食べると、トマトを使わないボンゴレビアンコ(Vongole bianche)よりもよりアサリのうま味が強く感じる。きっとトマトのうま味成分であるグルタミン酸と、アサリのうま味が相乗効果を生み出しているのかな、なんて考える。思った以上に甘いと感じるのも、トマトの持つ糖分ゆえだろう。木更津の小アサリの軟体が、ぷっくり膨らんでいて甘味がある。リングイーネはこのような、うま味の豊かなソースをからめるのにとてもよいことがわかる。お昼なので、定番中の定番、凍頂烏龍茶をアイスで。昼アルコールが少しは飲めるようになりたいものだ。
コラム

「長にし」は塩ゆでにして食べた

標準和名テングニシは日本各地で食用になっているが、基本的には塩ゆでにして、剥き身にしてそのまま、もしくは酢みそをつけて食べる。くせがなくゆでたときに独特の香りがとてもよく、おいしいものである。三重県鳥羽市安楽島で「長にし」と呼ばれている。鳥羽市には干潟を形成するよう内海と、荒磯に揉まれるような外洋の両方あって、本種は内湾そのものの恵みである。やはり塩ゆでにして酢みそにていただいた。安楽島から送って頂いて、関東ではなかなか手に入らないので、とてもありがたかった。鳥羽に行くことがあれば、この多様な海の幸を楽しんで欲しい。出間リカさんに感謝。(FB 安楽島新鮮組)
コラム

スマとタイムに結婚してもらう

スマとにんにく醤油和えに箸を伸ばしながら、当たり前すぎて、なにを今更と思えてきた。今回の鹿児島県産スマは8月になっても脂がのっていて、単に刺身にして十二分にうまい。うまいんだけどにんにく醤油で和えてみたのは、このところ何固体か、脂の乗り具合を見ているので、ボク自身、飽きが来ているせいだ。それにしても醤油・にんにくとスマの相性は抜群にいい。魚のうま味、酸味、脂と絶妙にバランスがとれている。でも、これだって至極在り来たりなものに思えてきた、なんとかしなくてはならぬ。古い上着をずーっと着続けているような、そんな思いに駆られる。そこで取り出したるはタイム(コモンタイム)である。当然、スカボロフェアを歌いながら、葉をこそげ取っては散らし散らしする。タイムの香りは意外に強い。甘いに香りの中に、少し鼻に抜けるような、ツンとくるものもある。ベストカップルに余計なものを、と思ったら、意外にもなくてはならない香りに思えてきた。スマに、にんにく醤油にタイムはとても合うという小さな小さな発見をして、なんだか小躍りしたくなる。これに岐阜県八百津の「玉柏」をば、正一合。
コラム

アンニュイな午後はキンメダイの炊き込みご飯

いろんなことがあると体がついて行けなくなる。脆弱にだらけてくる。それでもお腹が空くので、困ったときの炊き込みご飯。仕掛けてから1時間以内に食べられるので何とか我慢できる。この鍋のふたを開けたときの感動は、何十回、何百回とやっているのに繰り返し繰り返し押し寄せるのである。キンメダイの頭部を取りだして硬い骨だけ取り除く。棘鰭類なのに、細かな骨は柔らかいのでキチンバサミで細かく切る。刻んだみょうがとキンメダイの身と皮をご飯に混ぜ込んで、後は食うだけだ。濃口醤油とキンメダイの香りがまずは御馳走である。ご飯に染み込んだキンメダイの味も名状しがたい。ただただうまいのがキンメダイの炊き込みご飯なのである。問題は7勺前後の飯では足りないということだけ。
コラム

キジハタの刺身を虎の尾で

キジハタ(アコウ)の刺身に虎の尾をちょんとのせて、酢・醤油をからめて口に運ぶと、刺身の豊かなうま味と甘味がきて、虎の尾の青い香りがして辛味がずんずんときて、酢と醤油がきて、となる。今年の虎の尾はやけに辛い。キジハタは下ろして2日目で、佐渡産は比較的〆が弱いので、食感は弱くなっているがうま味は豊か、だ。体に熱が溜まっているので、刺身だけでは、あっさりしたうまい刺身を食べただけの中途半端な気分にしかならない。鋭角的な刺激を放つ、青い唐辛子は、味の強いアクセントにもなるし、体の熱を取り去ってくれる。夜の無気力さがとれるのもいい。この日の深夜酒はソジュ1ぱいだけだけど、いい一時が過ごせた。
コラム

7月21日、イシガレイの煮つけは煮凝りに

【めったに受けない健康診断で、いろいろ言われた。専門家に自分が食べたものを見直しなさいと言われ、同じ日に友人に食べたものを書き出せ、と言われる。いちばんしっかり食べる朝ご飯を、並べて撮影している内に面白くなってきたし、バランスを考えるようになってきた。】人に見られて自慢できる面じゃなし。最近のPCで打ち合わせが苦手だ。今回は午前11時からPCの前に座り、相手は3名でいろいろいろいろ。その前に魚と海藻の撮影を終えてシャワーを浴びている。大型魚の撮影をすると全身汗まみれ、そこから魚を解体すると鱗まみれにもなる。打ち合わせが終わったのが12時半なのでブランチかな?岐阜県瑞浪市、バローで買った札幌市丸加水産のさんまみそ漬け、イシガレイの煮凝り、オクラ生、千葉県君津市の「おかずみそ」は要するに金山寺みその一種、飛騨高山の切りづけ(白菜、赤かぶ)、じゃがいものみそ汁、八王子綜合卸売センター福泉で買ったコロッケ。早朝からまんじゅう2個でがんばったので、もっともっとでもよかった。■イシガレイの切り身は岐阜県可児市で買ったもので、北海道産である。煮つけた翌日なので、残が煮凝りに。このご飯の上でとける煮汁がご飯に合う。■札幌市丸加水産の「さんまみそ漬け」は非常によくできたものであった。もちろん最近のサンマなのでやせているが、みその味がとてもよい。
コラム

ミニなタチウオでフィッシュ&ティップス

やりすぎたかな、と思うくらいモルトビネガーをかけ回して、食べた。濡れているはずなのにさくさくと香ばしい。一切れがふんわりしていて軽い。ついつい手が伸びるのはさくっの下にタチウオの味があり、指二本半なのにほどほど脂があって、どこかしら溶けていく感じがするためだ。それにしても小タチは揚げ物にするとうまい。一緒に揚げたレッドアンデス(じゃがいも)がいい合いの手になっている。終いに中骨の素揚げを輪になった尾の方からかりかりと食べ尽くす。まさかのビール 置行堀と なりにける。
コラム

トコブシのフライは初めての味

天ぷらは何度もやっているが、トコブシのフライはお初である。お初に食べて、なぜもっと早くやってみなかったんだろう。そっくりさんである、イボアナゴではなんども作っているので、余計である。揚げたてを食べると、これが非常においしいのである。パン粉とちょっと厚めの衣に守られて、トコブシの足もつのわた(肝膵臓)もあまり熱が通り過ぎていない。口に放り込むと、途端に貝らしい風味がじわっと来て、甘味がどんと舌に来る。この強い味を包み込むパン粉の香ばしさとに大きな差があるのも素晴らしい。トコブシはめったに八王子には来ないので、豊洲まで買いに行き、作ってもいい、といった味である。お昼なれどもせっかくなので本物のビールをカチっとね。
コラム

「ガンゴージ」はゆでて食うのが簡単でうまい

三重県鳥羽市安楽島で「ガンゴージ」と呼ばれているオニサザエを、当地の出間リカさんに送って頂いた。このアッキガイ科の大型トゲトゲ、ごつごつの巻き貝は刺身にもなるけど、ゆでた方が簡単だし、意外にこれがいちばんうまいのかも知れない。ゆでると大豆を煮上げたときのような独特の香がする。海産物というよりも穀物のような香だ。たぶんだがこれを嗅いだだけでも、かなりおいしいと感じている気がする。足のおいしさ・甘さは多様なアミノ酸の大集団的な味だと思うし、程よい硬さで、そんなに無理しないで噛める。わた(肝膵臓)もアッキガイ科ならでは少しピリっとするけどいい味である。鳥羽に行ったらサザエ、アワビだけじゃなく、「ガンゴージ」も食べておくれやす。出間リカさんに感謝。(FB 安楽島新鮮組)
コラム

ボクはアジじゃないかも? マルアジ

【学者にとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。「隣の珍魚」とを知っているととても自然に優しいし、環境にも優しい】ぜんぜん変な魚ではない。でも意外にやっかいな存在ではある。本種は「あじ(マアジ)」にそっくりなのである。普通、「あじ」といえばマアジなのだけど、マルアジも「あじ」の内といえば、「あじ」の内で、あながち間違っているわけではない。だいたい流通のプロや魚類に関心があれば一瞬で「あじ(マアジ)」ではないことがわかる。でも普通の人に区別が出来るとは思えない。普通の人も「あじ」はマアジだけじゃない、ことを知って置くといいだろう。ときどき雑誌やテレビの写真で、「あじ(マアジ)」に化けていることがある。そんなときは「これはマルアジです」と教えてあげよう。スーパーで「あじ(マアジ)」に化けていることもあるので要注意。違いがわかると自慢できるという意味での「隣の珍魚」だ。また魚類には非常に似たもの同士で、ちょっとだけ生息域が違っている。産卵期が異なるということもある。例えば「さば(マサバ)」とゴマサバ、ムロアジとクサヤモロなどである。本種と「あじ(マアジ)」は生息域が重なっているが、本種の方がちょっとだけ南に生息域がずれている。そんなところも蘊蓄話の押さえどころだ。本種は普通の食用魚だ。一般的な「あじ」であるマアジと比べるととれる量はすくないが、水揚げ量は魚の中では多いほうだろう。なのにスーパーなどに並ぶ確率は「あじ(マアジ)」の数十分の一程度でしかないのが不思議。もっと普通にスーパーなどに登場してもいいはず。このせいで消費地ではいざ探すと、手に入れるのが難しいという意味での「隣の珍魚」だ。なぜスーパーで見つからないのだろう? 「あじ(マアジ)」と比べるとまずいとされているからだ。そんなに違いがあるわけではない、時季によってはとてもおいしいのに、とても安いのだ。この評価のせいで漁師さんは困ってもいる。
コラム

鳥羽市安楽島から来たイガイで「いのかい飯」

三重県鳥羽市安楽島町、出間リカさんに送っていただいた「いのかい(イガイ)」は活きがよく、なにを作ろうかな? と少しだけ迷った末に、「いがい飯」を作ってみた。安楽島でとれたものなので、正確には「いのかい飯」とすべきかも。日本各地で作られているが、鳥取県と瀬戸内海周辺の炊き込みご飯が有名である。イガイの強いうま味と甘味がご飯にしみ込み、少しほろ苦味がある。鳥取県であったオバアサンは、「今は好きでたまらないこの微かな苦味が、子供の頃はとてもいやだった(意訳)」という。鳥取県では夏に食べたとも聞いたが、今はどうなのだろう。7月24日に作った「いがい飯」は安楽島の海が澄んで清いためだろうか、苦味が弱く、甘味が勝っていた。あっさりしているのに、しっかりと海の香が楽しめた。挙げ句の果てに7勺を食べきってしまったのは、年中ダイエットしているボクの不覚である。それにしてもイガイの炊き込みご飯はうまい。作り方はそんなに難しくはない。剥き身にして足糸(糸状のもの)を取る。軟体の汚れなどを流水で洗い、水分をきる。これを適当に切る。炊飯の用意をして、イガイを入れて、酒・薄口醤油を加える。炊飯して炊き上がったら蒸らし、仕上げにしょうがの搾り汁と刻んだみょうがを混ぜ込む。すだちをしぼりながら食べる。出間リカさんに感謝。(FB 安楽島新鮮組)
コラム

木更津産のきれいなアサリを買っていろいろと

神奈川県小田原市にある生命の星地球博物館、佐藤宏さんに教わったことだが、アサリには外套膜に塗り壁職人がいて、貝殻をどんどんどんどん作り出す。中に色素を吐き出す能力のある異端児細胞が生まれる。その塗り壁職人の異端児が様々な模様を作り出している。この模様に一定のパターンがあるが、そのシステムは解明されていない。
コラム

ハチビキの尾の刺身は、オ、お!

最近ではハチビキのうまさを知らない流通のプロがいるはずがない。料理人にしても知らないでは生き残れない時代が来ていると思っている。その刺身を食べて、やはり、やはりただ者ではないうまさに惚れ惚れした。産卵間近というのに非常に脂がのっていて、非常識なくらいにうまい。
コラム

北海道は蕗だらけなのになぜ、ラワンぶきなのか

北海道根室市で買った「ラワンぶき」と青森県の名品、イゲタの焼き竹輪を煮合わせてみた。「ラワンぶき」はとても柔らかく、ちゃんとフキらしい味がする。イゲタの竹輪のうま味を染み染みさせて実にうまい。北海道では必ずフキの水煮を買ってきているが、買わないと忘れ物をしたような気分になる。それほどおいしい食材だと思っている。
コラム

アカガレイはいつ煮つけてもうまい

こってこっての甘辛煮にしたカレイの煮つけほどうまいものはない。特にチンしたばかりでも、炊きたてでもどっちでもいいけど、温かいご飯と一緒にするとまるで鉄人28号なのだ。合間の漬物も、汁もはじき返して煮つけだけで仲睦まじく、で完結する。しかも今回のアカガレイは非常に素晴らしかった。スーパーに並んでいるのを見て惚れた。煮た身がふくらんで甘く、皮にはちゃんとカレイ特有の野生が存在する。こってこってだからこそ、余計にアカガレイの本質が強く浮き上がる。カレイの煮つけほどうまいものはない、と痛感するとともに、今回のアカガレイがよすぎ、だった。
コラム

マナガツオの天丼はふわっうまし

一度もやっていないわけではないのに、久しぶりに天ぷらにして、おいしさに驚いてしまった。ふわふわとして、しかも香ばしく、中はとても豊潤。半身の腹側を揚げたので、ついでに追加揚げして天丼にしてみた。これがさらによかったのである。ご飯は偉大だ、と思ったのは天ぷら単体よりもうまいからだ。マナガツオの身の甘さと、うま味の豊かさが、ご飯の甘さと一緒になって、相乗効果が生まれている気がする。そしてふと考えたら、ボクの天ぷらを揚げる技能が向上している気もしてきた。若いときに作って、マナガツオの天ぷらはさほどうまくないと思ったのは、これぞまさに「若気の至り」だった。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に来ていたのは、沖合い底曳きが盛んな、愛媛県八幡浜のものである。鱗の剥がれやすい魚で、できるだけ鱗が残っているものを選ぶ。選んだ体長32cm・1.493kgは今年最大のマナガツオだ。以上は前回も書いた。三枚に下ろして腹部の薄い部分の腹骨を取り、薄くへぎ切りにする。軽く振り塩をして少し置き、出て来た水分を拭き取る。小麦粉をまぶして衣をつけて高温で揚げる。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 アカニシ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾でもあり外洋でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみた。中にアカニシが混ざっていたが、鳥羽市安楽島での呼び名は不明である。単に「にし」と呼ばれることが多く、松浦静山の甲子夜話には辛螺と漢字をあてて「あかにし」としている。北海道南部から九州までの干潟や浅い内湾に生息している。浅場にいる巻き貝の中では大型である。鹿児島県島嶼部以南を除けば日本全国で食べられている。人の名に引用されたり、またイイダコを取るのに使われたり、人との関わりの深い巻き貝である。大型で、料理法が限られるのは残念であるが、とてもおいしい。全国流通はしないものの、日本各地の小売店や市場で見られる。ぜひ一度食べていただきたい。出間リカさんに感謝。(FB 安楽島新鮮組)
コラム

猛暑につき鰯の梅干し煮を作る

どことなく体に不具合を感じている。なかなか熱気が体から消えない。午前3時から5時の間に目覚める。最近、ベッドから飛び出し、すぐにシャワーを浴びる。そのままPCを起こし、ご飯をチンして、茶碗によそう。上に鰯の梅干し煮(マイワシの梅干し煮)を乗せて、強く冷やした凍頂烏龍茶をそそぐ。表面温度が冷たい内にさばさばと食べる。温かいご飯にこれでもか、と冷やし込んだお茶が食べすすむと混じり合ってくる。凍頂烏龍茶の烏龍茶と緑茶の中間的な味が実に好ましい。残った茶碗に、今度は熱い番茶(遅摘みの茶葉の緑茶)を入れて飲んで、ふたたび喉から胃の腑にかけて温めてPCに向かう。梅干し煮はマイワシの中骨まで柔らかく炊き込んでいるので、ご飯とも冷たいお茶とも一体化している。塩気は梅干しだけで、そこにマイワシの背の青い魚特有のうま味と脂が加わる。早朝の癒やし系ご飯だと思っている。
コラム

砥部焼、池本惣一さんの器を並べて

市場魚貝類図鑑は複雑な要素で出来上がっているがとりとめもなく……。わがサイトが目指すところはぼんやりとしたものだけど、食のぐるりの総まとめだ。伝統、季節、自然がとても重要だと考えている。だからできるだけ1970年という破壊年以前を感じるものを集めている。生物や料理もそうだが、周りのもの、例えば器もそうだ。駒場東大前の『べにや民芸店』の池本惣一さんの器に興奮してしまった。それまでも何度も写真では見てきたが、写真ではわからない何か? にびっくりしたのだ。そこにあるのは「朝鮮の風」のようなもの。『べにや民藝店』のリョウさんの写真というコマセに誘われて、ボクは小アジちゃんのように欲しいものを欲しいだけ買い求めてきた。池本惣一さんは愛媛県砥部町の人だけど、四国には多くの朝鮮文化が残っている。これなどは九州と同じである。器を見ていて、同じ四国生まれのボクの中に「朝鮮の風」が吹いている、と感じた。歴史考古学の世界からも日本列島には台湾経由でたどりついたヒト、ユーラシア大陸から来たヒト、そして比較的新しく紀元後に朝鮮半島から来たヒトがいる。原始ではなく日本列島の古代文化史は朝鮮半島からのヒトによって多くが築かれ、そして戦国時代に朝鮮半島の陶工が来たことによって陶磁の世界が急激に進化する。戦国大名が朝鮮半島の陶工を連れ帰ったのも、自らの朝鮮への憧れと、「朝鮮の風」を感じたためだ。同じように柳宗悦も明らかに自分の中の「朝鮮の風」を感じた。これも民藝運動という帆船の風だと思う。ボクは、からっちゃの息子なので、器に強く惹かれて惑溺してしまう。今回も新たな器を収納していて食器棚が壊れる。壊れるくらい買うなよ、とは思わない。
郷土料理

鳥羽市の「にし汁」を作ってみる

三重県鳥羽市周辺、愛知県三河湾篠島に「にし汁(螺汁)」という郷土料理がある。この周辺だけではなく、国内各地に普通に見られる磯の小型の巻き貝である「にし」を使った、汁とも、なんとも、いえそうにない料理だ。今回は、三重県鳥羽市周辺で作られている「にし汁」を地元の方に聞いて作ってみた。思った以上に時間を要した末に出来上がったものはどろっとしたもので、決して見た目がいいとは言えそうにない。まずは汁を飲んでみる。中に混ざった「にし」の足(筋肉)の部分の部分に甘味があるものの、肝膵臓や生殖巣などが含まれる液状の部分が少々生臭い。しかも舌だけではなく、口の天井から脇、舌の裏側までぴりぴりする。今回使ったレイシガイは別名、「辛螺(からにし)」、「煙草螺(たばこにし)」というが、そんな呼び名通りの辛味というか、いがらっぽさがある。ちなみに汁と足に味があることはある。むしろ非常に豊かにあると言ってもいいだろう。ただし、おいしさ以前に刺激が口中から喉に移り、胃の腑に入ると、なんだか胃袋が熱っぽく感じられる。この口の中から胃袋にかけての刺激的な味がなかなか去ってくれない。汁だけで飲むよりも、と思ってご飯と一緒に食べたが、同じだった。食べた後、喉のあたりにいがらっぽさが強く残った。鳥羽に住んでいる人からも聞いたとおり、好きな人は好き、だめな人はなめるのもだめ、といったものだ。個人的には決して好きだとは言えそうにないが、地元の人と、もう一度試してみたい気もする。協力/出間リカさん(三重県鳥羽市)、岩尾豊紀さん(鳥羽市水産研究所)
コラム

超高級魚、オオアカムツでフィッシュ&ティップス

魚のフィッシュフライは音がするくらい硬い表面と、中の落差が楽しむものかも。中は汁気が多くて、柔らかいのである。要するに揚げても、その身は硬く締まらず、適度に味がある。超高級魚であるオオアカムツの実力発揮とはこのことだ。この日の昼下がり、あまりにも空腹だったので作って一瞬で食べきった。やはりじゃがいもは糖質そのものだと、胃の腑が温かくなることで改めて思う。じゃがいもと魚のフライを考え出したイギリス人はすごいかも。今回はモルトビネガーをじゃぶじゃぶにかける。もちろんアルコールではなく凍頂烏龍茶で。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 テングニシ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾でもあり外洋でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみた。中にテングニシが混ざっていたが、鳥羽市安楽島での呼び名は不明である。「海ほおづき」はテングニシの卵嚢である。夜店や土産物店などで売られていたらしいが、こんなところに本種と人との近しさが感じられる。
コラム

夏のブリは韓国風刺身で

あまり辛いものに強くはないが、熱暑のときには、少しだけ辛いものが食べたくなる。今回は市販の酢コチュジャンににんにくをたっぷり添えて、脂のないブリ(ワラサ?)の刺身を食べる。脂、脂というブリだけど、そのおいしさは脂ではなく、回遊性の魚の持つ、微かな酸味にある。このブリ本来の味を生かしたいと思ったら、酢コチュジャンに思い至ったのもある。コチュジャンだけでは辛すぎて食べられないが、酢が入ると辛味が緩和される。その上、酢コチュジャンの強すぎる味が、脂のない弱い味のブリを覆い隠さない。むしろブリらしいおいしさが浮き上がってくる。夏の脂のないブリってうまいな、と思う。思わず、残った酢コチュジャンを下に敷いたエゴマの葉で拭き取り、むしゃむしゃ食べると、余計に韓国の風が吹いてくる。韓国で魚の刺身などをお願いすると、アルミニウムの低い筒型の容器に入ったご飯がついてくる。韓国風に、ご飯の友としたら非常にイケル。夏は酢コチュジャンの刺身定食、いいかも知れない。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 アコヤガイ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾でもあり外洋でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみた。中にアコヤガイが混ざっていたが、鳥羽市安楽島での呼び名は不明である。別名「真珠貝」だ。
コラム

キンメダイの煮つけは東京の郷土料理

もっとも月並みな料理であるがそれでも毎回、うまいなと思うのだからキンメの煮つけはすごい。今回の煮つけは刺身などにした残りの兜半分に中骨だけなので、あっと言う間になくなってしまった。脂が身に混在してきめ細やかな舌触りのいい魚はめったにないだろう。身に甘味があって、とってもわかりやすい味なのでこんな早食いができる。おやつ代わり、腹の虫をなだめるために作った煮つけなので、こんなにあっけないもので充分なのだ。小骨が少ないのもいい。
コラム

キスの天ぷらを作り、お昼は天丼

天丼はどこから食べるか、が重要である。ご飯に天つゆを少しかけて、ご飯が見えないくらいに種を並べる。種の上からもかけて、ここからが迷い箸。個人的には野菜から、食べ始めて空いた部分のご飯を食べて。主役であるキスの天ぷらに移る。キスの天ぷらは、脳みその中で6等分しているので1枚の3分の1を食べる。それにしてもキスの天ぷらくらい味わい深いものはない。江戸時代から江戸前天ぷらの主役であり続けているのは、天ぷらにしてうまいからだ。天種は上品な白身ではダメ、少しくせがあるからいいのである。キスの味は皮にあり、そこに独特の風味があるからいい。これは個人的な意見ではあるが、最近、江戸前ならではの魚種のみの天丼よりも、精進揚げも色とりどりにの上方風が好きだ。揚げ油もごま油プラスをしなくなっている。天丼を食べると、自分の嗜好が揺れに揺れているのがわかる。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 アズマニシキ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾でもあり外洋でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみた。今回は鳥羽市安楽島で「あっぱがい」と呼ばれているニシキガイである。
コラム

マダコ北上中で「煮だこ」も北上中

「煮だこ(ゆでだこ)」は口に含んだときによしあしがわかる。独特の小豆を煮たときのような香りがあり、強い食感とともに味が広がってくる。タコの味は表現するのが難しいけど、例えば国産マダコの「煮だこ」のよさは、口の中での滞在時間が長い食べ物なのだが、その間、延々と味が消え去らない。今回の「煮だこ」は岩手県北三陸(久慈市周辺)で、国内産マダコならではの風味とうま味、強い食感ともに申し分のないものである。1尾丸ごと買って少しずつ食べているが、毎日食べても飽きが来ない。「煮だこ」の良し悪しは、マダコ自体の良し悪しもあるが、ゆで方の良し悪しで味が決まる。岩手県産「煮だこ」はゆで方がうまいのだ。
料理法・レシピ

マナガツオの障子焼きは素晴らしい

マナガツオ1尾を1週間かけて全部平らげたが、初日から、終いに食べるはずの障子焼きを中骨半分を使って作った。焼き上がりを少し冷ましてから食べる。熱々を食べると柔らかく鈍い味だが、冷めると俄然さくさくと香ばしくなる。マナガツオの魅力のひとつは進化した魚なのに骨が柔らかい点である。かぶりつくと身と骨が入り交じって喉を通過していく。この柔らかい骨と身に味がある。しかも中骨の中心、脊椎の中にある髄液の濃厚な味が感じ取れるのである。まるで交響曲を聴いているように多様で複雑な味だ。せっかくなので、この日だけは偽ビールをよしてサッポロビールの黒い星を飲む。
コラム

キンメダイは肝が肝心、肝たたき

切りつけた身の表面に見える光に、産卵期なのに脂がのっているな、と箸を伸ばす。その身に均等にからみつく肝、実はこっちの方が主役かも。キンメダイの身(筋肉)に脂はあるものの強いうま味はない。要するに脂の口溶け感が甘いと感じさせ、うまいと錯覚させるのだろうと思っている。複雑なアミノ酸が甘いと思わせるのと同様に、脂にもそのような効果があるのだ。たたいた肝には身以上に複雑な味があり、ここにも別種の甘味がある。いろいろ書いてみたが、要するに無類のおいしさがキンメダイの肝たたきにはある、ということだ。今回の個体はやや小振りだったので、半身で造っても小鉢にこんもりでしかない。別に大量に食べたいというわけではないが、食べ終わると切なくなる味だ。岐阜県八百津で買った「玉柏 笹にごり 夏」は比較的軽い酒だが、とても似合う。
コラム

7月20日、主菜はイシガレイの煮つけ

【めったに受けない健康診断で、いろいろ言われた。専門家に自分が食べたものを見直しなさいと言われ、同じ日に友人に食べたものを書き出せ、と言われる。いちばんしっかり食べる朝ご飯を、並べて撮影している内に面白くなってきたし、バランスを考えるようになってきた。】自分の食べたものを見直すと、いかに朝が忙しいか、を改めて感じる。この日に撮影したのは岐阜県で買った食品と、イワガキに付着していたフネガイ科の二枚貝などなどである。午後にはいろいろあるので、いろんなことをやり終えて時計を見ると、時刻はすでに11時45分である。昼に近い朝ご飯は、岐阜県八百津町の伝統野菜、大だいきゅうりのみそ和え、イシガレイの煮つけ、トマトとわかめのみそ汁、ツルムラサキ、アカササノハベラのきゅうりもみ。■イシガレイの切り身は岐阜県可児市で買ったもので、北海道産である。上品でくせのないカレイなので、ちょっとだけこってり甘辛に煮てみた。身以上に煮汁でご飯がすすむ。■きゅうりもみはアカササノハベラの素焼きを甘酢に溶かし込んだもの。やはりご飯には酢のものが欲しい。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 レイシガイ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾でもあり外洋でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみた。今回は鳥羽市安楽島でたぶん「にし」と呼ばれているレイシガイである。
コラム

お昼ご飯はクサヤモロの天丼

猛暑になるとやたら揚げ物が食べたくなるということは、まだまだボクもイケテル気がする。7月になって連日のようにお昼は天丼を食べている。天ぷらと言えば、普通、小柱とか、穴子(マアナゴ)、「めごち(ネズッポ科ネズッポ属の魚)」やシロギスが定番だけど、タイ科のマダイや、コチ科のマゴチ、マナガツオなどなどいろんなものを種として使っている。天種としては異色だろうがなんだろうがご飯に乗せれば天丼なのだ。この日は旬のすぎたクサヤモロである。これが二度目の天ぷらだけど、マアジよりも血合いが多いせいか個性的で天種としては上かも知れない。脂が少ないせいか揚げ上がりが軽い。大葉やみょうが、ナスなど夏野菜と合わせた天丼くらい平凡うまいものはない。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 オニサザエ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾(伊勢湾)でもあり外洋(太平洋)でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみた。今回は鳥羽市安楽島で「ガンゴージ」と呼ばれているオニサザエである。この「ガンゴージ」の意味は不明であるが、本種の地方での呼び名は非常に多く、しかも意味不明なものが多い。サザエとあるが、実はサザエとは縁もゆかりもない巻き貝で、この仲間(アッキガイ科)には食用として一般的なものはほとんどない。ちなみに一般的に「貝」とされるものは、軟体動物の巻き貝と二枚貝のことである。二枚貝はアサリなど水揚げ量の多い種はいるが種類はとても少ない。対するに巻き貝は非常に種が多い。二枚貝の数倍の種がいて、いまだに新種が生まれている。余談になるが新種発見はだれでも出来るが、新種記載は膨大な時間を要し、大変なのである。中でも本種のアッキガイ科は種類が多く、しかも同定が難しいことでも有名である。本種なども珍しい巻き貝ではないが、慣れないとどうしても同定に時間がかかる。
コラム

「すみやき」の煮つけは骨切り不要かも !?

脂があるので身がふんわりとして、箸でつまむと筋繊維の間から肉汁が吹き揚がってくる。身をさらうと小骨は長いのでキレイに身から離れていく。やはり「すみやき(クロシビカマス)」の煮つけは骨切り不要かも。
コラム

夏の土用にシジミのみそ汁

1日10時間以上デスクに座っているが、動いているだけではないので、体が疲れているわけではないと思っていた。実際、目の疲労感はあっても体の疲労感はまったく感じない。ところがシジミ(ヤマトシジミ)のみそ汁をすすると、体の方も疲れているのかも知れぬ、と感じるのである。疲れを意識するということは、疲れがとれているのだと思っている。夏のシジミ汁は基本の合わせみそでも、豆みそ比率(大豆麹を使った大豆だけのみそで、今回は岡崎市の八丁味噌)が高い。別に測っているわけではないので、本能が豆みそを多くしているようだ。豆みその渋味、酸味も疲れを取るのに一役買っているのかも。主役であるシジミのだしは非常に濃厚で、しかも微かな渋味が味に奥行きを作り出している。おいしいので多めに作って数回に分けて食べる。土用のウナギよりも安く済むのもいい。
コラム

養殖4Pなら自宅で簡単にウナギの蒲焼きに

久しぶりに焼いたのに、意外にも、少しは苦労するけれど箸で皮が切れる。蒸していないのに切れるってボクは天才かしらん。ガス台でこれでもかっという強火にして、焼き上げたもので少々不安だったけど、これなら一般家庭で焼いたとは、だれも思うめー、よ。今回のものは1尾串打ちして230gくらいなので、かなり大きい。焼きたて熱々を串のままかぶりつく。江戸時代には串を外さず、老若男女がかぶりついていた。別に行儀が悪いとかではなく、それが当たり前だからやっていただけだ。自宅でやるからそれができる。それにしてもウナギの蒲焼きは文字にしなくてもいいくらいうまい。濃厚、かつ強いうま味、かつタレの味が重なり合うのに、後口が悪くないのもすごいなー。まあ数年に一度くらいは丑の日前後にウナギの蒲焼きを食べてもいい、かも知れぬ。ちなみにこれは実験でもある。普段は土用丑の日にウナギは食べない。
郷土料理

アカササノハベは素焼きを酢のものに

常備している酢のものはいつも精進そのもので、基本はきゅうりと海藻なのである。そこに動物質のものが入ると俄然、味わい深くなる。酒の合いの手に箸をのばすものが、酢のものが酒の肴の主役になる。なによりも酢に混ぜ込んだ焼いたアカササノハベラの脂とうま味が、満足度を高めてくれる。きゅうりの食感と爽やかな青い味わいもいい。それにしても高知県宿毛市のオッカサン達の焼いた魚や、塩ゆでにした魚を酢に溶かし込むという考え方は優れている。すし酢だけではなく、酢のものに使うだけで、どこかしら御馳走めく。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 ヒメイガイ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾でもあり外洋でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみたい。今回のものを見つけて調べようなんて御仁はほぼいないかも。
コノシロの塩焼き
コラム

なかずみ、このしろサイズを塩焼き

「このしろ」サイズ、「なかずみ」サイズが、あくまでも八王子には安定して入荷をみているので、ときどき塩焼きを作っては深夜酒をやっている。骨切りしているので手づかみでむしゃむしゃ。夜中なのでスタウトと合わせているが止められない。じっくり焼くと中骨以外は食べられて、濃厚なうま味が口に広がる。なんといっても独特の風味のある脂がうますぎる。こんなにうまい魚が東京のスーパーに並ばないなんて、ほんまにおかしい。ちなみに全長20cmほど「なかずみ」なら2本は軽い。
コラム

アサリ2つかみのボンゴレ

作っておきながらこんなことを書くのも変だけど、目の前にある一皿はボンゴレ(Vongole/ヴォンゴレ)という料理なんだろうなと思ったり、思わなかったり。いつの間にか作り方を知り、いつの間にか作るようになったもので、正式に、というのはわからない。ボンゴレ ビアンコ(Spaghetti alle vongole in bianco) とすると本格的でかっこいいかも。昔、二枚貝のパスタは全部、ボンゴレでいいのよ、と言ったイタリア人に会っている。とするとサザエのパスタはボンゴレじゃないのかもなんて考えながら、アサリなんだから立派にゴンゴレ♪ ということに。とりあえず、アサリ2つかみ入りのボンゴレがうまい。パスタはスパゲッティで、デブな自分のためにアサリ多め、パスタ少なめにしておいた。ただ、問題は、食べた後の液体がもったいなくてバゲットを少し食ってしまったことだろう。それにしてもアサリとオリーブオイルが合体した液体は、めちゃくちゃでござりまする、くらいうまい。バゲットがなかったら泣いていたかも知れぬ。
コラム

アカササノハベは素焼きにして炊き込みご飯

困ったときには炊き込みご飯しかない、気がしている。早朝から小物(小型の生物)の撮影をして同定をして、限界超えのとき、釜の蓋をあけると、焼いたアカササノハベラの香りと、調味料の香りが同時に立つ。峠の釜めしの釜が水加減して炊こうかなというときに割れてしまったので、3合炊きで、7勺を炊いたが、ちゃんと炊き上がっていた。よかった、よかったと、すだちをたっぷり絞り込み食べる。ベラの味の半分以上は皮にあるのかも知れない。アカササノハベラの赤い皮は見た目にもきれいだ。中骨からいいだしが出ているし、ほぼ45分で食えるというのもラクチンである。ちなみに今回は汁なし。どうしても小物撮影をしていると、飯は最小限となる。
コラム

鳥羽市安楽島貝類図鑑 イガイ

三重県くらい海が多様なところはないと思う。北は木曽三川の河口域、伊勢湾があり、渥美半島と鳥羽市を結ぶ線から北は伊勢湾、南は太平洋になる。鳥羽市は内湾でもあり外洋でもあり、しかも人が住んでいる島が多くある。民俗学的にも面白く、生物好きにとってもパラダイスといってもいいだろう。さて、鳥羽市安楽島の出間リカさんに鳥羽市の貝いろいろを送って頂いた。ついでにとは言っては失礼だが、厳密に同定してみたい。まずは、鳥羽市安楽島で「いのかい」と呼ばれているイガイである。イガイの同定では殻長(shell length/二枚貝の場合、貝殻のいちばん長い部分の長さ)10cm以下の個体を見ると一日苦しむことになる。1920年頃まで、国内に生息している、黒っぽくて貝殻が比較的薄く、岩などに足糸(軟体から分泌して作り出した糸状のもの)でくっついている比較的大形の二枚貝はイガイだけだった。そこに同年頃、ヨーロッパからムラサキイガイがやってきた。ムラサキイガイはそれまで国内にいたイガイよりも小型で貝殻の幅が広く、表面が滑らかである。ただし、イガイと生息水深(見つかる深さ)があまり変わらない上に、若い個体(小さなもの)は見た目が非常に似ている。しかも大問題なのは貝類図鑑の標本画像が両方とも古すぎて使えない。ちなみにタイプ標本(種として記載されたときの実物)は貝の場合は貝殻だということも大問題なのである。軟体(体)が存在しないということは検索(種名を明らかにするために調べるポイント)は貝殻だけということになる。さらにさらに大変なのは貝には変異(形にばらつき)が多いのである。
コラム

マナガツオの刺身は西の味だった

脂が身に均質に混ざり込んでいて、舌に乗せると、少しとろっとする。ほの甘く、ちゃんと魚らしいうま味が感じられるけど、全体に淡い。これこそがマナガツオの味なのである。このちょっとわかりにくいおいしさが、最近、年のせいかもわからないけどわかりすぎるくらいわかるようになった。若いとき、関西などに行くと何気なく食べるものでしかなかったが、最近では積極的に求めて食べるものに変わっているのである。マナガツオは非常に高価だけれど、ついつい手が出てしまうのは、まずは刺身にしてうまいからだ、とも言えそうである。
コラム

クサヤモロの旬は過ぎたかなっ、と「みそたたき」

たっぷりのにんにくなどなどに、みそ多めと、ちょっとやりすぎな「みそたたき(なめろう)」の一箸がとても強い味である。それでも何か足りない、ということでにんにくを1かけ追加したのが大正解。塩気とにんにくを体がやたら欲しているのだ。これじゃー、主役のクサヤモロがかわいそうだろ、と思ったら、意外にクサヤモロの味がしっかり浮き上がってくる。やはり背の青い魚のうま味は豊かで、ちょっとやそっとでは調味料や野菜の味に負けることがない。少しだけ入れた青唐辛子のぴりってのもいい。合わせたのは沖縄のオリオンビール2缶、熱さ、暑さよ、去れ。
コラム

江戸前の、カレイといえばイシガレイ

久しぶりに食べるイシガレイの煮つけに江戸時代の江戸っ子の、魚の嗜好を思いやる。この淡泊でいながら味のある、嫌みのない味こそが江戸っ子好みだったのだろうな、だから江戸の街で「かれい」と言えばイシガレイだったんだろうな、と思う。東京風に濃口醤油を終いに足し入れて、少し醤油の風味を利かせたら、ご飯のおかずなのに無性に酒が欲しくなる。江戸の街で居酒屋(酒の小売店内で酒を飲む)が生まれたのは元禄期以降(18世紀初頭)で、二合半(こなから)に煮物で、現在の喫茶店でお茶を飲むように酒を飲んでいた。そこでは、江戸前で揚がる江戸を代表するカレイの中のカレイであったイシガレイなど、いちばん上等な酒のつまみであったはず。ちょっとだけ江戸の街を思いながら、普段はやらない昼酒をすこしだけやる。その日の夜の煮凝りもとても味わい深くて、イシガレイのおいしさを改めて発見した気がしてきた。
コラム

真鶴町岩のクマエビの釜飯

エビの釜飯は、ふたをとったときの香りだけでも御馳走だと思っている。殻付きのまま炊き上げたので、余計に香り高い。炊き上がりにエビを取り出して、身を刻みまた混ぜ込む。赤だけではそっけないけど、自宅で、自分で食べる釜飯に飾りめいたものは不要なのだ。薄口醤油と酒だけの単純な味つけだが、エビと醤油の風味が非常に相性がいい。あっさりとした味なので、0.7合では足りなくなりそうである。峠の釜めしの釜もそろそろダメになりそうだな、なんて思いながら最後の一粒まで食べ尽くす。
コラム

たんとバジルがあるので ホッキのパスタ・バジル・バジル

「ほっき(ウバガイ)」とスパゲッティーニを合わせたパスタにスイートバジルをどばどば入れたら、最初に入れたのがどんどん萎れたので、そこにたんと追いバジルをしてみた。いっぱい入れても見た目は、バジルいっぱいって感じが出ないけど、甘い香りがぷんぷんする。口に入れたらバジルの香りがもっともっとする。そんなに好きな香りじゃなかったのに、安いのでさんざん料理に使っていたら、いつの間にか好きになっていた。やはりハーブ類は中途半端に使ってもわからない。うんといっぱい使ってこそだ。大量に使ったオリーブオイルに、追いエキストラバージンオイルまでしている。バジルの香り高く、生のオリーブオイルの香りも高いって素晴らしいとしかいいようがない。忘れちゃならない、主役のホッキの豊かな甘味・うま味と、その味を染みこませた細目のパスタだって素晴らしいのである。ボクはまるでパヴァロッティのように、もちろん歌えないけど、せめてイタリア人のようにパスタを食らう。熱くて体調不良気味なのでワインはやめて、凍頂烏龍茶で健やかな昼ご飯だ。
コラム

ドラゴンのモデルなのか? タチウオ

【学者にとってはちっとも珍魚ではないし、超深海や、南北両極にいるわけでもない。魚屋でもスーパーでもときどき見かける魚だが、見た目が変なので普通の人にとっては珍魚だったり、何気なく見ていると普通だけど、よくよく見ると変で、ちょっとだけ珍しい、のを「隣の珍魚」という。】知り合いの老人から、タチウオは一度も見た事がないと言われて、持っていって料理したことがある。現在、90歳超えだし、学者なのだから嘘ではないと思うし、本当に現物に驚いているのをみて、ボクの方がもっと驚いた。老人に、この魚は意外に進化をとげた魚で、いちばん近いのはサバ(サバ科)であること、サバは高速で長距離を泳ぐために体の形を紡錘形にしたが、きっとタチウオは長い距離を泳ぐのを止めて、エサを近場で探すことに決めたのだ。一定の場所でエサ見つけるのはそれなりに大変で、見つけたら一発必中、噛みついたら絶対に離さないために歯がこんなになったんだ、なんて教える。東京都西部に住んでいるが、確かに近所のスーパーに切り身は並んでいるけど、丸のままでは並んでいない。そのまんまの姿を見る機会が極端に少ないという意味では「隣の珍魚」かも知れない。ただ、漁獲量も増えているし、東京都、千葉県、神奈川県にまたがる東京湾では釣れて釣れて困っている。こーんなにたくさんとれても、「隣の珍魚」だと思うはなぜか? このタチウオさんくらい変な魚はほかにいないからだ。
コラム

マンボウの刺身は体に涼しい

マンボウの身(筋肉)に味があるのか? ないのか? わからねいけどうまい。もちろん肝を入れるのが肝心だけれど、肝がおいしいとか、ではなくて全体が涼しい気がする。ちなみに普段は酢みそと肝を合わせて和えているが、改めて醤油で食べてもおいしいものである。一味唐辛子のピリっとくるのもいい。ちなみにこれで岐阜県八百津「玉柏」の本醸造を飲んだが、酒とマンボウの刺身の、食べるタイミングが難しい。
コラム

昼下がりの北海シマエビのスパゲッティ

ボクのようなむさ苦しい人間がいうのも変だけど、昔からエビだけのパスタが好きだ。バジルやパセリも、もちろんトマトソースや玉ねぎもなし、のパスタだ。目の前にその超単純なパスタが存在する、その喜びたるや名状しがたい。今回の北海シマエビ(ホッカイエビを塩ゆでにしたもの。シマエビとも)で作った、シンプルなエビのコライユ(みそ)と胴だけのパスタはあっと言う間になくなってしまうのが残念だけど、午後のちょっとだけ飲みには持って来いである。エビのコライユとバターほど相性のいいものはない。今回はゆでエビなので少し牛乳を加えたが、この濃厚な味のソースとスパゲッティが合わさると、たった10分足らずの一瞬が長い時間に思える。合わせたのは、さらりと軽い田中小実昌好みの山梨県勝沼の一升瓶白ワインだ。
コラム

7月2日、時ザケ筋子のお握りは見た目じゃない

【めったにやらない健康診断で、いろいろ言われた。専門家に自分が食べたものを見直しなさいと言われ、同じ日に友人に食べたものを書き出せ、と言われる。いちばんしっかり食べる朝ご飯を、並べて撮影している内に面白くなってきたし、バランスを考えるようになってきた。】我ながら情けなくなるような見た目である。こんなものがお握りと言えるかどうか、微妙というか「お握り失格お握り」だとさえ言えそうである。ボクにはお握りが作れない。型を使っても作れない。なんと型は2種類買って、この画像のようなものしか作れないのでお握り作りは諦めた方がよさそうである。でもトキシラズの筋子の塩漬けで作るお握りは抜群にうまい。秋ザケよりも遙かに粒が小さくて柔らかい。しかもうま味も甘味も、サケの卵巣特有の脂もある。今にも崩れそうなお握りだけど、食べたらおいしいのよ、といいたい。懺悔すると、本当は4個作って、見た目がいいのがこの2個なのである。朝ご飯にお握り4個は食べすぎ!
加工品

干キューリもっと買って来ればよかった

冷凍ものだったので、室温でもどし、匂いをかいだらウリ科の植物のキュウリのようなスイカのような香がした。キュウリウオは北海道の呼び名だが、まさにその通りだ。これをじっくり焼き上げたら、こんどはやたらに香ばしい。ガスコンロのグリルで焼きたてを肴に、ノンアルコールビールをのむ。香ばしいだけではなく、身に強い味がある。3本食べたが食べ飽きない。魚の干ものでこんなにビールに合うものはほかにはないかも知れない。ちなみに最近のノンアルコールビールっておいしいのである。仕事が控えているときなど、充分ビールを飲んだ感が得られる。キュウリウオの干ものはご飯の友ではなく酒の肴だと思ってしまったけど、いかがだろう。
コラム

今度の煮穴子は『市場寿司たか風』

煮穴子をたっぷり作っておくと1週間は楽しめる。丼にしたり、表面をあぶってみたり、きゅうりもみに添えてもいい。混ぜご飯にしてもいいと思う。煮立ては、まずはそのまま食べる。ボクはいつも頭に近い方から食べ始めるが、味のある尾から食べ始めるのも手かも。今回は肝も一緒に煮たのでちょんと真ん中に据えてみた。
コラム

6月16日、主菜なしだけど品数多し

【めったにやらない健康診断で、いろいろ言われた。専門家に自分が食べたものを見直しなさいと言われ、同じ日に友人に食べたものを書き出せ、と言われる。いちばんしっかり食べる朝ご飯を、並べて撮影している内に面白くなってきたし、バランスを考えるようになってきた。】約束事のない日だけど、たまったものはある。それにしても水産生物とヒトとの関係関連の事物は膨大かつ、未知のことが多い。この日の朝ご飯は比較的早くて午前10時だった。3時くらいに起きて小さな撮影をして、その処理を終えたら、なんでもいいので固形物が欲しくなった。ご飯、茨城県産ジンドウイカ佃煮、メイチダイ?の兜焼き骨湯、ワカメ入りきゅうりもみ、卵がダメになりそうだったので煎り卵、、トマト・カリフロールなどのサラダ。■茨城県産ジンドウイカ佃煮。茨城県から来たヒイカ(ジンドウイカ)は長時間かけて撮影して、面倒くさくなりぜんぶ佃煮にする。適当に切り、醤油・酒・みりんを沸かした中で水分がなくなるまで煮たもの。1週間以上保ち、いいおかずになる。■メイチダイ属ではあるが種名なしの兜焼きの残に熱湯を満たしたもの。意外にいける味で、このみで醤油を加える。■ワカメ入りきゅうりもみ。八王子綜合卸売センター、福泉で見つけた湯通し塩蔵ワカメを刻み、薄切りキュウリといきなり和えて、水洗いして甘酢を加えたもの。ずぼらな料理だが、これでいいのかも。

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