神奈川県小田原の魚玉茶漬、クロダイ編

ご飯をチンすればすぐに作れる、「魚玉茶漬」


先にもマアジでやってみたが、多田鉄之助(1896-1984)の本にあった、「(神奈川県)小田原地方で広く行われている」という「魚玉茶漬」をクロダイでやってみた。
くどいようだが、1968年の本なので、1970年前後に始まる情報化の波に、地域本来の食文化が破壊される前である。
郷土料理は急速に失われつつある。
実際、小田原魚市場で「魚玉茶漬」を知っているか、聞いてもだれも知りはしない。
さて、ご飯をチンするところから。

茶漬けと言うよりも濃厚なごった煮のような味


さて、醤油多めの濃厚な漬け地に漬け込んだ、クロダイの身を温めたご飯に乗せて、ねぎともみ海苔をかけて、熱々の緑茶の番茶をかけてかき込む。
茶漬けと言っても爽やかですいすいと喉を通る体のものではない。
強いうま味のするクロダイの身と、その漬け地が染みたご飯と、それを少し薄めて広げる役割のお茶とで、ごった煮状態になる。
複雑なんだけど、端的にうまい。
ちなみに青唐辛子が合うことを今回発見した。

その夜中というよりも翌日に、いけないことをする。
深夜飯をやらかしたのだ。
単純に「魚玉茶漬」の素であるクロダイの身を、乗せただけのご飯である。
困ったことにこれもうまい。
もみ海苔もネギもなしの深夜バージョンといういい加減なものだけど、悪くなかった。
ちなみに青唐辛子、わさびなどいろんなものを乗っけてもいい。

3歳雌は産卵前だけど痩せていた


2025年6月5日に、横須賀東部産の痩せ気味のクロダイで、神奈川県小田原市の郷土料理、「魚玉茶漬」を作る。

『くいしんぼ 郷土の味めぐり』(多田鉄之助 観光展望社 1968)の魚玉茶漬をそのまま引用する。
〈魚玉茶漬 小田原地方に広く行われている。ショウ油大さじ4杯に玉子1個の割合でかきまぜ、アジ、カツオ、クロダイ、コチなどの新しい魚を刺身のように切り、この中に漬け込んでおく。三〜四十分後に炊きたての飯を茶碗に盛り、切り身を3〜4枚をのせ、上から熱い番茶をかけて、焼いた海苔を上からちらし、さらしネギを添えて食べる。〉

卵よりも醤油多めの漬け地に漬け込む


基本的な材料は醤油と卵と魚の刺身状に切ったものだ。
刻みネギともみ海苔は別に用意をしておく。

刺身を作り、卵と醤油を1対2くらいで溶いた地に30から40分漬け込む。
主は醤油で卵は半量くらいでいいようだ。
醤油辛い漬け地は意外だけどこれだけでもうまい。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。


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