突然とれ始めた深刻な未利用魚、ダツ
ダツ科で未利用魚ではないのはサンマだけ

オキザヨリ
さて、未利用魚、未利用魚と騒がしいが、ちゃんとわかっている人いるんだろうか。厳密な意味での未利用魚は存在しないのに未利用魚という言葉が一人歩きしている。ということで、未利用魚の基礎知識を始める。
当然国内各地で聞取をする必要があるが、例えば漁業者に聞いてもいいが、加工品業者、買受人(大卸・仲卸)、小売業の話も重要であり、消費者も重要だということを忘れている人がいる。むしろいちばん未利用魚がわからないのは行政、そして漁業者かも知れないという現実も知るべきだ。
また最近、未利用魚にマイナー魚を加えるなど、魚価の変動を知らずにいろいろ語る、間違ったことを言うヤカラまでいる。
魚価を知らなければ、未利用魚はわからない。そのためには、日常的に魚を買っていないとダメだが、そんな人間見た事がない。
未利用魚として問題になるダツとは、標準和名のオキザヨリとテンジクダツと、ダツの3種である。とりわけ前2種が深刻である。
国内海域にいるダツ科の魚は、サンマ、ハマダツ、ヒメダツ、ダツ、リュウキュウダツ、タイワンダツ、オキザヨリ、テンジクダツと8種類である。需要が高く水揚げ量の多いサンマ以外はすべての魚が未利用魚である。
ハマダツは本州青森でも見つかっているが、いまだに四国、九州以南に多く、全国的にみてそれほど問題のある存在ではない。ヒメダツ、リュウキュウダツ、タイワンダツも国内では比較的珍しい。
北上しつつあるダツ科の大型魚

小田原魚市場,ダツの水揚げ
古くから本州に見られた標準和名ダツは関東では突然大量にとれ、人の口に直接入らないという意味での未利用魚である。北海道から九州、東シナ海・南シナ海など中国大陸方面に生息域を持つ。琉球列島にはいない。全長1メートル前後になり非常に細く棒状で口が嘴状で鋭い歯を持っている。問題点は細長すぎる体と骨っぽさだ。
今、急激に増えているのはオキザヨリとテンジクダツである。この2種は非常に巨大だ。細長く口が嘴状で歯が鋭いのは同じだけど、ダツが大きくなっても数百グラムなのに対して、こちらは2㎏前後になる。インド洋や太平洋、世界中の熱帯域・亜熱帯域にいた種だが、急激に北上している。
2種とも今や本州以南に生息しているが、オキザヨリは外房、相模湾などで増えている。またテンジクダツは今のところ、紀伊半島以南で水揚げが多くなってきている。いずれにしろ、非常に歯が鋭く、しかも大型というのが特徴である。
また、サンゴ礁にもぐる沖縄のウミンチュウ(漁師)などがもっとも恐れ、もっとも嫌っているのが、この大型のダツである。鋭い嘴で向かってこられると生命の危険を感じるという。
基本的な食べ方は塩焼き、らしい

オキザヨリの塩焼き
ダツは非常に淡泊な味わいで嫌みがない。古くから食べる習慣があったのは鹿児島県島嶼部と沖縄県である。特にトカラ列島などではよく食べていたという。
ただ、北の魚もあり、深海性の魚もあり、背の青い魚ありの北海道、本州、四国、九州で、この淡泊なダツが受け入れられるかというと難しい。
鹿児島市で会ったトカラ列島生まれの方は塩焼きで食べていたと言う。
嫌みのない味わいで、皮目の風味がいい。
思った以上に味わい深い。