二宮定置の瓜坊とマダケの煮つけ

イサキは塩焼きもいいけど、煮てもいい


昔、江戸川区にいたとき、魚屋でイサキを買うと、水洗いして振り塩をしてもらっていた。イサキは塩焼きというのが当たり前だった。
初めてイサキの煮つけを食べたのは後々のことで、伊豆半島の民宿でだ。
「いさぎは煮つけで食べた方がうまい」は、島根県美保関、定置網の漁師さんがボクにイサキをくれたときに言った言葉だ。
その朝、美保関の旅館の定食(泊まったわけではない)もイサキの煮つけだった。
塩焼きと煮つけを比べても仕方がないが、煮つけは塩焼き以上に大小あまり関係がない。

そう言えば、和歌山県紀の川市ではイサキとナスと煮合わせていたし、柿を買いに寄った奈良県五條市近くでは冬瓜が添えられていた。
時季の野菜と合わせて煮ると、とても日常そのもの、季節そのものが感じられていい。
煮つけは平凡な料理で、普段、そこに何気なくあるものである。

今回は神奈川県秦野市『じばさんず』で買ったマダケと煮合わせた。
まごうことなき飯の友である。
小イサキは手づかみで食らいつき、それはそれだけで完結する。
ご飯はもっぱら竹の子で食べることとなった。なぜだろう。
小イサキは煮つけると、それ自体が非常にうまい。
身離れがよくいくらでも食らえる。
食べることに集中して、ご飯に目が移らない。

その小イサキのうま味を吸収したマダケでご飯が、とても合う。
マダケには、とれたてをゆでたので非常に柔らかく、えぐ味などまったくない。
マダケの持つ強い甘味と、ちょっとだけ歯を刺激する竹らしい繊維を感じる食感、そしてご飯というのは最強と、もちろん食べているときは思っていた。

二宮沖の小イサキと秦野市の、時季のマダケで、初夏の味、味わっているぞ、という気になるのもいい。

小イサキを狙って競る人はまずいない


5月9日の神奈川県小田原魚市場、二宮定置で小イサキを拾ってきた。瓜坊(うりぼう)と呼ばれるサイズである。
体長15cm・60g前後で、このサイズを競る人はまずいない。でも非常に欲しい人はいるので、頼む人がいれば競りに出すサイズである。
ちなみに18〜20cmは流通上見ることがあるが、それにしても安い。
非常に下ろしやすくておいしいのに、まことにもったいない。

関東周辺直売所はマダケだらけかも


これをマダケと煮る。
マダケは糠を入れた水で1時間ほどゆでて鍋止め。
水洗いして水の中で保存する。
これを食べやすい大きさに切る。
小イサキは鱗をひき、頭部を袈裟懸けに落とす。
内臓を洗い流し、湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。
これを酒・砂糖・醤油・水で煮る。


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