関東の「竹の子」はウスメバルのことだ


今年も東京で「竹の子」と呼ばれているウスメバルを淡竹(ハチク)とたいた。
去年も淡竹だった気がするが確かめていない。
初夏らしい味、それが「竹の子目張」である。
この言葉は料理名でもあるが、ウスメバルを指す呼び名でもある。
由来はウスメバルと竹の子との相性のよさからである。

ウスメバルはとても上品な味だが、それはうわべだけだ。
濃厚な味わいが、通奏低音のように確かに存在する。
ウスメバルの基本的味の土台は上品に見えて濃厚なのだ。
また、魚の味で重要なのは筋肉(身)の繊維である。
適度に繊維質でほぐれるからおいしい。
繊維がしっかりしていないと、ぼろっとしてちっともおいしくない。
この程よい繊維の存在があるから身離れもいいのである。

さて、主役のウスメバル以上においしいのが竹の子だ。
もちろんウスメバルの味を吸収したためのうまさだが、竹の子と合わせる魚には合う合わないがある。
「竹の子目張」なわけは、グッドカップルな点にある。
食べる度に主役は竹の子に違いないと思っているけど、竹の子を食べ過ぎるのは厳禁である。

ウスメバルの味を吸収した竹の子はできれば半分は残して置きたい。
竹の子だけを別の器に移して黙って出すと、食べた人がびっくりして仰天するかもしれない。
牛肉でもない、鶏肉でもない。
遙かに相性のいい何かと出合った末の、おいしさが竹の子にある。
竹の子と結婚したのは何? と思うだろう。
そこで生まれた言葉が「竹の子目張」だとも思っている。

関東には日本海と銚子以北からやってくる


八王子綜合卸売センター、福泉に新潟県佐渡からウスメバルがきていた。
同八百角には淡竹があったのでともに買って、煮合わせた。
築地場内の老人達が「竹の子目張」と呼ぶのはウスメバルのことだった。
関東でも竹の子がとれはじめる4月くらいから入荷量が増える。
沖合いにいる魚で、関東には日本海から大量に入ってくる。
また千葉県以北でまとまって揚がるなど、産地に非常に近い。

念のために「竹の子目張」について。
関東ではウスメバルのことだが、西日本では瀬戸内海や山陰の浅場で揚がる旧メバル(3種に分かれてクロメバル、シロメバル、アカメバル)のことだ。
標準和名のタケノコメバルがいるので紛らわしいが、食用魚として一般的ではない。
西日本ではメバル3種の旬の時季に竹の子が出盛るので「竹の子目張」なのだ。

淡竹をゆでるところから料理は始まる


淡竹は糠を加えた水で1時間程度ゆでる。
そのまま冷まして糠を流し保存する。
メバルはずぼ抜きし、湯通しして冷水に落とし、残った鱗やぬめりを流す。
水分をよく切る。
淡竹、メバルを酒・砂糖・醤油・水で煮る。


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