熊野産さごしの刺身、焼霜造り
刺身を食べてみると、加熱料理にしたときの味が想像できる

高級魚とされるサワラは2キロ以上で、活け締めでなければならない。
大きくても野締めは平凡な値段でしかないし、まして2キロ以下は安い。
それでもものがよければ、刺身にもなるし、いろんな料理にも使えて経済的である。
今回の熊野市産は野締めではあるが、鮮度がいい上に身に張りがある。
切り身にして指でなぞると脂が感じられる。
もっとも固体本来の味がわかるのが刺身である。
ここから焼いたらどう変化するか、とか、煮たら、というのがわかる。
野締めだし、「さごし」だし、当然、食感は望めないが、サバ科らしくうま味豊かだ。
思ったよりも脂があるのは、白子持ちで産卵を控えているからだろう。
今回は尾鰭近くの身を刺身にしてみたが、やはり細長い魚の尾鰭前の味は素晴らしい。
焼霜造りにするとさごしがサワラになる

焼霜造り(あぶり)は近年、サワラの定番的な料理となっている。
取り分け70cm(やなぎ)以下はあぶった方が数段うまい。
今回の「さごし」は脂がそこそこ乗っていて甘みがあった。
サバ科らしいうま味も豊か。
そこに皮目をあぶった香ばしさが足されて、味に奥行きが生まれる。
薄切りの新玉ねぎとにんにく、すだちを添えたが、このツマ達がとても強い味方になってくれた。