無類のうまさ、北海道様似産本マスの塩焼き
本マスは焼いた匂いだけで値千金である

標準和名、サクラマスは、市場(流通の場)ではむしろ、本マス(サクラマス)の方がわかりやすい
平安時代からの「麻須(ます)」といえば本種、もしくはビワマスである。
サクラマスは桜の咲く頃にとれ始めるので桜鱒なのであって、漁の最盛期は5月、6月で7月になっても入荷が続く。
6月は北海道産の最盛期と言ってもいいだろう。
様似産の本マスは触っただけで、脂ののりがわかるといったもので、買ってきてすぐにおろして、振り塩をして、翌日に焼き上げたものである。
このわかりやすい、ある意味誰もがおいしいと思う、塩焼きの味の表現は非常に難しい。
サケ科の魚は筋繊維が明瞭に見えるが柔らかく、熱でもろくなる。
箸で皮の方から押しつぶすと、身がミルフィーユのようになっているのがわかるだろう。
本マスの身はミルフィーユのように層になっている

この層と層の間に液化した脂がある。
塩焼きなのにとろけるような味わいなのである。
昔、築地で、そのときすでに高い値をつけていた本マスを見て、「マスはもっと高くなっても売れるな」といった仲買がいたが、高くても買ってしまうだけの魅力がある。
様似は襟裳岬の真西にある。
白老に行ったとき、襟裳岬までどうやって行くのだろう?
と知りあいに相談したことがある。
水産を調べていると、ときどき出合う産地で、「さまに」は耳に馴染んでいる。
一度行ってみたい、けど……。