体長50cm前後になる。銀色で細長く、背中に黒い斑文がある。ときに非常に肥満して体高のある「板マス型」となる。[宮城県気仙沼産3.9kg]
サクラマスの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
![体長50cm前後になる。銀色で細長く、背中に黒い斑文がある。ときに非常に肥満して体高のある「板マス型」となる。[宮城県気仙沼産3.9kg]](https://www.zukan-bouz.com/public_image/Fish/81/Thumb630/20180415097.jpg)

![体長50cm前後になる。銀色で細長く、背中に黒い斑文がある。ときに非常に肥満して体高のある「板マス型」となる。[青森県下北半島産 33.5cm・610g]](https://www.zukan-bouz.com/public_image/Fish/81/Thumb630/20200131649.jpg)
-
珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区真骨亜区正真骨下区原棘鰭上目サケ亜目サケ科サケ属外国名
学名
Oncorhynchus masou masou (Brevoort, 1856)漢字・学名由来
漢字 桜鱒 Sakuramasu
由来・語源 北海道、秋田県などでの呼び名。サクラの咲く時期にたくさんとれるため。川を遡上するため。古くは単に「鱒(麻須 マス)」。
サクラマスの遡上は本州では走りは2月から、主に3月から6月まで。
北海道では4月頃に始まり、7月くらいまで。
サクラマスの「とれ始める(沿岸により、川を上る)時期」、もしくは「その地域の人たちがサクラマスがとれるようになったのだ、と思う時期」とがサクラの開花前線が重なる。
各地での呼び名を調べると、「桜鱒」という地域は生息域全域にわたるのは、この桜の開花前線に重なるためだろう。地方名・市場名
生息域
淡水→海水→淡水[サーモンタイプ]。
日本海では山口県以北、太平洋側では静岡県以北の本州、大分県をのぞく九州、[鹿児島県南さつま市笠沙]。
日本海、オホーツク海。生態
■ 河川での仔魚期には昆虫や環形動物などを食べる。降海後はプランクトン、イカナゴなど、成長とともにイカ、魚類、オキアミなどを捕食する。
■ 河川に回帰(かいき もどってくる)するのは南で早く、北でおそい。本州では3月頃から、北海道では4月頃より川を上り始める。
■ 産卵期は8月下旬〜10月上旬。卵は11月、12月に孵化。
■ 稚魚は上流域から中流域に広く分散し、淡水で1年間過ごし、翌春1歳となって降海する。
■ 日本海、オホーツク海、北太平洋に分布して、1年海で過ごす。
■ 産卵翌年2歳の初夏(6月〜7月、もしくは9月〜10月)にまた川に戻り遡上する。
■ 川で3〜4か月すごし、秋に産卵。産卵後死んでしまう。
■ 寿命は3年弱。
■ サクラマス、ヤマメ、サツキマス、ビワマス、タイワンマスをサクラマス5型(亜種)。これにイワメを加えるという考え方もある。
■ サクラマスには降海型と、河川に残って海にくだらない陸封型がある。ヤマメ、アマゴは陸封型。今回のサクラマスは降海型のこと。基本情報
日本周辺に多いサケ科の魚。古代より、単に「鱒(ます)」というと本種のことになる。「鱒(ます)」とは本来種名であって、それ以外のないものでもない。標準和名のヤマメは同種で陸封型。またアマゴ・サツキマスは亜種。アマゴ・サツキマスよりも生息域が北にある。サケ属の中でも重用種で、養殖も行われている。
日本海や東北以北の太平洋側では食文化的にもとても重要な魚だ。本種ではサケよりも重要だったかも。祝祭日などに食べられることもある。高級魚である。
珍魚度 普通の食用魚。ただし高級魚なので消費地の普通のスーパーなどでは手に入らない。水産基本情報
選び方
銀色に輝いているもの。鰓が鮮やかに赤いもの。味わい
栄養
ー危険性など
日本海裂頭条虫(サナダムシ/扁形動物門条虫綱多節亜綱擬葉目裂頭条虫科)。はっきりした症状はない模様。アニサキス寄生の恐れもある。食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
サクラマスの料理・レシピ・食べ方/ソテー(ムニエル)、焼き物(塩焼き、幽庵焼き、西京漬けなど)、生食(刺身、マリネ)、揚げる(フライ)、煮る(煮つけ)、汁(潮汁、みそ汁)クリックで閉じます
サクラマスの刺身(ルイベ) 水洗いして三枚に下ろして小骨を抜き、腹骨をすく。冷凍庫で24時間以上凍らせたものを半解凍して、皮をはぎ刺身にしたもの。比較的低温で冷凍すると解凍しても食感が心地よく、むしろ甘味、うま味が増して非常に美味である。写真は黒コショウと岩塩、ライム。わさび醤油でも辛子酢みそでもお好みで。
サクラマスのマリネ 24時間以上冷凍した上身を白ワイン、白ワインビネガー、砂糖、塩、クールブイヨンを合わせたものでマリネしたもの。野菜やハーブなどはお好みで。サクラマスの繊細で上質の味わいを楽しめる。クリックで閉じますサクラマスの塩焼き 水洗いして三枚下ろしにして振り塩をする。1時間以上寝かせて、じっくりと焼き上げる。サケ科の独特の風味が生きていてとても味わい深い。これが嫌いなら仕上げに酒を塗って焼き上げるといい。身自体に豊かな旨味があり、白いご飯にもとても合う。クリックで閉じますサクラマスの西京焼き 三枚に下ろして切り身にする。白みそで漬け込むときには振り塩をして少し寝かせて表面にでてきた水分を拭き取る。白みそ(みそはなんでもいい)とみりんを合わせたものに漬け込んだもの。1日くらいで食べられる。みそとの相性がよく美味。クリックで閉じますサクラマスの蕗の薹みそ焼き 蕗の薹みそは蕗の薹を適当に刻み、油でいためて合わせみそ(みそ・酒・砂糖)を合わせて練り上げる。これを素焼きにして切り身にのせて焦げ目がつくまで焼く。旬のものを合わせたもので、粋な味わいである。クリックで閉じますクリックで閉じます
サクラマスのムニエル 小振りのサクラマスを水洗いする。三枚に下ろして腹骨、血合い骨、小骨などをできるだけ抜く。塩コショウして多めの油でソテー。仕上げにマーガリン(バター)としょうゆで味つけする。表面はかりっとして中はしっとりとして甘味と独特の風味がある。とてもうまい。
サクラマスのフライ サケ科の定番的な料理だ。三枚に下ろして血合い骨や腹骨を取る。切り身にして塩コショウしてパン粉をつけて揚げたもの。揚げることで適度に身が締まり、サケ科らしい風味が逆に生きてくる。クリックで閉じますサクラマスの煮つけ 水洗いして二枚に下ろし、骨つきの方を切り身にする。湯通しして冷水に落とし、霜降りにして表面のぬめりを流す。水分をよくきり、酒・砂糖・濃い口醤油・たまり醤油(なければ使わなくてもいい。)が湧いた中に入れて煮上げる。たまり醤油を使うをこくが出る。煮染めないで煮汁をつけながら食べる。クリックで閉じますサクラマスのあら煮 ここではあらを使った。2〜3キロになるとあらがたっぷりとれる。これを湯通しして冷水に落としてぬめり、残った鱗などを流す。これを酒・砂糖・しょうゆ・水の地で煮上げる。甘味はお好みで、砂糖は入れなくてもいい。身離れがよく本種本来の味わいがあってとてもおいしい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
富山県名物「ますのすし」本来の原料。塩桜鱒(サクラマス) 北海道斜里で作られているもので、斜里で揚がったサクラマスを船上締めして塩をしたもの。ザラメ塩で塩がよく浸透して馴れている。脂がのっていてとてもおいしい。サケはともかく、サクラマスの塩蔵が非常に珍しい。クリックで閉じます関連コラム(加工品)
北海道斜里みやげ、塩サクラマス
クラマスの塩蔵品は探してもなかなか見つからない、貴重なものだ、という話をしたい。 まずは余談から。 むかし「マスかサケか」などと国会でなにやらあったと思うけど・・・ 続きを開く釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
本マス と呼ばれることが多い。
■ 過去には中部西日本などにいるアマゴはサツキマス、ヤマメはサクラマスとされていたが近年は共に同種(サクラマス)であるとされることもある。
サケ属 今はサケ属「Oncorhynchus」だが、古くは大西洋のサケ科の魚とともにサケ属は「Salmo」だった。
魯山人 「鮭と鱒とは、素人目には一見似たようなものではあるが、味からいえば鮭よりも鱒の方がはるかに優る」「塩鮭、塩鱒の茶漬け」『春夏秋冬 料理王国』(北大路魯山人 ちくま文庫)参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『サケ・マスのすべて 食材魚貝類百科』(井田齊、河野博、茂木正人 平凡社)、『サケの世界市場』(佐野雅昭 成山堂)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『薩摩半島沿岸の魚類』(岩坪洸樹、伊東正英、山田守彦、本村浩之 一般社団法人鹿児島水圏生物博物館 鹿児島大学総合研究博物館 2022/02/22)