キツネダイ

Scientific Name / Bodianus oxycephalus (Bleeker,1862)

キツネダイの形態写真

30cm SL 前後になる。体高があり吻部がとがり狐(キツネ)を思わせる。背鰭に黒斑があり、体側に2列の赤い斑紋の列がある。

    • 魚貝の物知り度

      ★★★★★
      知っていたら学者級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目ベラ亜目ベラ科タキベラ属

    外国名

    学名

    Bodianus oxycephalus (Bleeker,1862)

    漢字・学名由来

    漢字 狐鯛 Kitunedai
    由来・語源
    〈キツネダヒ 品川〉。学名を Cossyphus unimaculatus Günther, 1862 としている。これは、Bodianus unimaculatus (Günther, 1862) のシノニムで別種。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
    キツネダイ(古くはキツネダヒ)はキツネダイ属(Verro)で、Verro oxycephalus であった。田中茂穂の命名で、姿形から。田中茂穂自身が標準和名を「キツネベラ」と改名したことがある。現在、キツネベラは別種。
    〈咽顎族ベラ科キツネダヒ属キツネダイ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    Bleeker
    Pieter Bleeker(ピーター・ブリーカー 1819-1878 オランダ)。医師、魚類学者。『東インドオランダ領の魚類図鑑』(Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Netherlandaises 1862-1878)。軍医としてバタビア(現インドネシアジャカルタ)に赴任。インド洋、西太平洋の魚を採取。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。岩礁域。
    富山湾から長崎県の日本海沿岸、宇治群島、小笠原諸島、伊豆諸島、千葉県館山湾〜高知県の太平洋沿岸、屋久島、琉球列島。
    済州島、台湾、東沙群島、南沙群島。

    生態

    基本情報

    房総半島以南の比較的温かい海域で釣りや定置網、刺し網で水揚げされている。大型で体高があり見た目にも美しい。
    あまりたくさんとれない魚ではあるが、流通上は評価が高くやや高値をつける。
    ベラ科のなかでももっとも味のいい魚のひとつである。

    水産基本情報

    市場での評価 入荷は稀。やや高値がつく。
    漁法 定置網、釣り
    産地 大分県、静岡県

    選び方

    味わい

    旬は春から夏。周年を通して味がよく、寒い時期のものも味はいい。
    鱗は非常に薄く大きく取りやすい。皮はしっかりしている。
    透明感のある微かに薄紅色をした白身で、熱を通してもあまり縮まない。骨やあらなどからいいだしが出る。
    料理の方向性
    ベラ類のなかではもっとも味がいいと思う。皮目の風味もよく、料理法をあまり選ばない魚である。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    キツネダイの料理法・レシピ・食べ方/刺身(刺身、皮霜造り、湯がけ)、蒸す(蒸し魚)、揚げる(フライ、天ぷら)、煮る(煮つけ、鍋)、汁(潮汁、みそ汁)、ソテー(ポワレ)、焼く(塩焼き)

    キツネダイの刺身 ベラ科のなかでも水分が少なく身がしまっている。活け締め、活魚などは刺身にすると非常に美味。透明感のある白身で血合いは弱く、見た目にも非常に美しい。身に甘みがあり、酸味はほとんどない。万人向きの味だと思う。

    キツネダイの皮霜造りキツネダイの皮霜造り 皮が美しく、また熱湯などをかけると適度に軟らかくなる。また皮にはほんのりとした甘味が感じられる。三枚に下ろして腹骨を取り、小振りは血合い骨を抜く。皮目に湯をかけて氷水に落として粗熱を取る。水分をよく取り、刺身状に切る。

    キツネダイの湯がけ 水洗いして三枚に下ろす。腹骨と血合い骨を取り、水分をよくきる。皮付きのまま刺身状に切り、ゆをかけて氷水に落とす。冊の状態で湯をかけるよりも筋肉・皮に均等に熱を通すことができる。酢みそ、柚子胡椒などで食べて美味。
    キツネダイの蒸魚(清蒸) 中華風の蒸魚。頭部はていねいに鱗をとり、梨子割にしてよく水分を拭き取る。皿に魚の兜を置き、蒸し器で10分ほど蒸す(大きさによって蒸し時間が違う)。蒸し上がりに香味醤油・紹興酒を合わせて煮立てたものをかけ、ネギなど香りのある野菜を乗せて煙が出るくらいに熱した油をかける。とてもいいご飯のおかずになる。
    キツネダイの天ぷら 三枚に下ろして中骨・腹骨を取り適当に切る。皮目に切れ目を入れて軽く振り塩をする。表面に出て来た水分を拭き取り、小麦粉をまぶし、衣をつけて高温で短時間揚げる。皮に独特の風味があり、身がふんわりと揚がる。実に味わい深く、そして軽く上品な味。
    キツネダイのフィッシュ&チップスキツネダイのフィッシュ&チップス 塩コショウした切り身をビールで練り上げた衣をつけてあげたもの。さくっとした食感で中はジューシーなので、上質で甘味のある白身がはえる。素揚げにしたポテトをそえ、モルトビネガーをつけながら食べるといい。
    キツネダイのちりキツネダイの鍋 アラなどから実にうまいだしが出て、身は煮てあまり締まらず甘みがある。鍋に向いているが、上品な味つけの「ちり」がいい。汁は昆布だしで酒と塩のみ。上品な白身のよさが堪能できる。
    キツネダイの煮つけ 小振りのものを適宜に切り、一度湯通しして水を切る。これをみりん、酒、薄口しょうゆであっさりと煮つけたもの。煮るとふっくらとして、軟らかい。皮目にもうま味が豊かにある。身離れもよく実にうまい。
    キツネダイのポワレキツネダイのポワレ 水洗いして三枚下ろしにする。小骨などを抜き、塩コショウする。1時間以上置く。フライパンに油(オリーブオイル、グレープシードオイルなど)とつぶしたニンニクを入れて火をつける。香りがたってきたら切り身を入れてじっくり時間をかけてソテーする。日が通ったら保温をしておく。フライパンにクールブイヨン、白ワインを加えてデグラッセしてソースにする。

    キツネダイの塩焼き 兜に塩をして半日以上寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。仕上げに清酒を塗るとより一層味わい深くなる。頭部や鰓の部分にたっぷりと身が詰まっていて、うまい。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    釣り情報

    相模湾などではアジ釣りやマダイ釣りにくる。

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)

    地方名・市場名

    キツ
    場所三重県鳥羽 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    キザミ
    場所兵庫県明石 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    オテルベラ
    場所和歌山県田辺 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    キツネタルミ
    場所和歌山県田辺 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    オテルベロ
    場所和歌山県田辺市 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    イノシシ
    場所神奈川県三崎 参考『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 
    キツネ
    場所福岡県玄海 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    イナリ
    場所静岡県伊豆須崎 参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 
    アカシキ
    場所鹿児島 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    キツネ
    場所高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協、鹿児島県種子島 参考聞取、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    サクラダイ
    場所高知 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    キツネベラ[狐倍良]
    備考田中茂穂のつけた標準和名 参考『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 
  • 主食材として「キツネダイ」を使用したレシピ一覧

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