SL 20cm前後になる。赤いかオレンジ色。ササノハベラ属2種は似ているが、目の下の黒っぽい褐色の筋が胸鰭(むなびれ)方向に下に曲がり、胸鰭近くまで達する。背などに斑紋がない。[全長23.5cm・重226g]
アカササノハベラの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系ベラ亜目ベラ科ササノハベラ属外国名
学名
Pseudolabrus eoethinus (Richardson, 1846)漢字・学名由来
漢字 赤笹之葉倍良 Standard Japanese name / Akasasanohabera
由来語源/色合いの赤いササノハベラという意味合い。
古くはササノハベラは1種、 Pseudolabrus japonicus (Houttuyn, 1782) だった。それがアカササノハベラとホシササノハベラに分かれる。
また Pseudolabrus japonicus (Houttuyn, 1782) は日本産のベラ科のどれにも当てはまらないために、ホシササノハベラを新種記載 Pseudolabrus sieboldi Mabuchi & Nakabo, 1997、アカササノハベラは Pseudolabrus eoethinus (Richardson, 1846)とした。
■ 「ささのは」は「笹の葉」、「細小の歯」。歯の細かいベラ。新潟県寺泊の呼び名。
■ 「笹の葉」に似ているベラの意味だと思われる。
「べら」について
■ 「へら」は「平たい」ことをさす。「平たい魚」で「へら」。それが「べら」となる。
■ 「箆(へら)」に似ている。「箆」は平たく細長い。鼈甲(ベッコウ)、竹などでつくられた、物や汚れをかき出す道具。
■ 「べろ(舌)」に似ている。
■ 「べろ」「べり」、「べりべり」ともいう。Richardson
ジョン・リチャードソン(Sir John Richardson 1787-1865 スコットランド)、博物学者、魚類学者(ichthyology)。地方名・市場名
生息域
海水魚。岩礁域。浅場に生息するが、ホシササノハベラよりも少し深場にいる。
福井県、京都府舞鶴、福岡県沖ノ島・津屋崎、長崎県野母崎、熊本県天草、八丈島、小笠原諸島、千葉県館山湾〜九州南岸の太平洋沿岸、屋久島、沖縄島。済州島、台湾、福建省、香港。生態
■ 産卵期は夏から秋。
■ 雄を中心に縄張り、ハーレムを形成する。
■ 性転換する。小さいときはすべて雌、産卵後群の優位にある雄が死ぬもしくはいなくなると、大きい優位にある雌が順番に雄に性転換する。
■ 肉食性で環形動物、甲殻類などを捕食する。
■ 岩礁地帯と砂地が連続するような場所に多い。
■ ササノハベラ属2種ではホシササノハベラが浅場に、アカササノハベラがやや深い場所に生息。
■ 寒くなると砂にもぐって冬眠する。
■ 昼活動、エサをあさり、夜眠る(休む)。基本情報
古くはササノハベラ2種(アカササノハベラ、ホシササノハベラ)は1種類であった。分類の世界では2種でも、漁業対象として、流通上区別されることはない。
国内の浅い岩礁域に普通であるが漁獲量は安定せず、量的にも少ない。
関東ではベラ自体が安くて雑魚で、漁獲しても出荷することはなく、ほぼ流通しない。西日本ではキュウセンほどは馴染みがないものの利用されている。
安くてうまい魚なので、もっと人気が出てもいい。
珍魚度 珍しい魚ではない。ただし関東では希にしか流通しない。水産基本情報
市場での評価 関東の市場などに来ることはほとんどない。雑魚なので値段も安い。これが西日本では味の良いのが知られており、安いが流通する。
漁法 刺し網、底曳網、釣り、定置網
産地選び方
触って野締めは硬いもの。活け締めはできれば死後硬直していないもの。鰓が鮮紅色のもの。退色していないもの。味わい
旬は春〜夏。
関東ではホシササノハベラよりも大型になるように思える。
鱗は薄く、皮はあまり硬くはないがしっかりして丈夫。骨は軟らかい。
透明感のある白身だがやや水っぽい。
煮てもあまり硬くはならない。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
アカササノハベラの料理・レシピ・食べ方/煮つけ、焼く(素焼き、塩焼き、干もの)、生食(刺身、焼霜造り)、揚げる(天ぷら、フライ、唐揚げ)、ソテー(バター焼き)、汁(みそ汁、潮汁)クリックで閉じます
アカササノハベラの煮つけ 中型を水洗いして、湯引きして冷水に落とす。残った鱗やぬめりを流し、水分をよくきっておく。これを酒・しょうゆ味で煮つける。このあっさりした味つけは酒肴として。甘味のみりんや砂糖などを加えるとご飯に合う。煮ても硬く締まらず、身に甘みがあってとても味わい深い。
アカササノハベラの塩焼き もっとも基本的な料理法が煮る、焼くである。水洗いして水分をよくきり、振り塩をして1時間以上寝かせる。振り塩で出て来た水分をよく拭き取り、じっくり焼き上げる。焼きたての香りのよさは無類。身の柔らかく豊潤で、うま味豊かなところも魅力だ。冷めるとまた別種の味になる。クリックで閉じますクリックで閉じます
アカササノハベラの素焼き 小魚ではあるが皮目に強い風味があり、焼くと香り立つ。振り塩をして焼いてもいいが、素焼きにした方がふんわりと上がる。またいろんな料理に使えて便利である。たくさん釣れたときなど、素焼きにして置き、冷凍保存するといい。
水洗いして頭部を落とす。水分をよくきりじっくりと焼き上げる。
皮の豊かな香りだけでも御馳走である。脂ののった春から夏には、身がとても柔らかく焼き上がり、豊潤でえすらある。
アカササノハベラの焼霜造り 上品でイヤミのない白身ではあるが、鮮度落ちが早い。活魚以外だと水洗いして3枚に下ろす。腹骨をすき、血合い骨を抜き皮目をあぶる。冷めたら刺身状に切る。熱いうちに切ってもいいが皮が剥がれやすい。本種の味わいは皮目にありと思う味だ。クリックで閉じます
アカササノハベラの湯がけ 皮付きのまま刺身状に切り、湯をかけるのを長崎県では「湯がけ」という。絶妙な皮目への熱の通し方で実に味わい深い。他の地域にも同様の料理があると思うので、地域地域での料理名に当てはめて欲しい。三枚に下ろし腹骨・血合い骨を取り、皮付きのまま刺身状に切る。まな板などに乗せて上から湯をかけて氷水に落とし、水分をよく切る。辛子酢みそがとても合う。クリックで閉じますアカササノハベラの天ぷら 皮目に甘味・香りがあるのでとても天ダネとして優れている。三枚に下ろし腹骨・血合い骨を取る。水分をよくとり、皮目に切れ目を入れて軽く振り塩をする。小麦粉をまぶし、衣をつけて高温で揚がる。さくっと揚がり、身は豊潤で甘味がある。非常にうまい。クリックで閉じますアカササノハベラのフライ 三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮を引くと上品な白身のフライになり、皮つきだと独特の味わいが感じられる。ここでは皮付きのまま、皮目に包丁目を入れる。塩コショウして小麦粉をまぶし、衣(小麦粉・卵・水)をからめ、パン粉をつけて揚げる。クリックで閉じますアカササノハベラのバター焼き 水洗いして塩コショウして小麦粉をつけないでじっくりソテーしたもの。皮に厚みがあり、強いものに向いている。頭部は煩わしいので落として塩コショウ、多めの油でじっくりと弱火でソテーする。こんがり香ばしくなったら、バター風味を加える。つけ合わせ野菜などはお好みで。醤油を垂らすとご飯に合う。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
ー関連コラム(郷土料理)
アカササノハベは素焼きを酢のものに
常備している酢のものはいつも精進そのもので、基本はきゅうりと海藻なのである。 そこに動物質のものが入ると俄然、味わい深くなる。 酒の合いの手に箸をのばすものが、・・・ 続きを開く魚味噌・長崎県平戸市「いを味噌」を作ってみる
長崎県平戸市度島で作られている。ムツやクサビ(アカササノハベラもしくはササノハベラ属)を水洗いして素焼きにする。ほぐして硬い骨(中骨)を取りみそと・・・ 続きを開く加工品・名産品
ー釣り情報
船でのカワハギやカサゴ釣りに混ざる。関東では人気がなくてすぐに捨てられるが関西ではキュウセンとともに人気がある。歴史・ことわざ・雑学など
ササノハベラ1種だった 過去にはホシササノハベラとともにササノハベラとして1種であると思われていた。アカササノハベラはササノハベラの雌(メス)、ホシササノハベラは雄(おす)と思われていたのだ。
ベラの食文化 瀬戸内海、大阪湾など西日本ではよく食べられている。東日本ではあまり食べられることもない。参考文献・協力
協力/マルコウ水産(東京都八王子市)、岩崎薫さん(神奈川県)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本の海水魚』(岡村収、尼岡邦夫編・監修 山と渓谷社)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『魚』(1940 田中茂穂 創元社)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)